無煙映画大賞 主催 NPO法人日本禁煙学会 後援 タバコ問題首都圏協議会 |
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※PP:プロダクト・プレイスメント(Product Placement)とは広告手法の一つで、映画や テレビドラマの劇中において、役者に特定の商品を絡ませるやり方。現在はCM飛ばし等の流行により、テレビ番組だけでなくCMの効力そのものが急降下している為、新たな宣伝手段として日本でも活発化し始めた。P.P.とも呼ばれる。(Wikipediaより) | ||||||||||
2010年5月20日発表 |
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2009年無煙映画大賞 |
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2009年無煙映画大賞の各賞は以下のように決定いたしました。 表彰は2010年5月29日東京しごとセンター(千代田区飯田橋3-10-3)で行います。 |
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大人の恋をテーマにした映画が無煙でとても好感が持てます。その上街中や喫茶店の場面でも「たばこ」の文字や灰皿などもなく完璧なタバコフリーフィルムです。 都会のアパートに住むカメラマンの聡と花屋に勤める七緒は隣同士ですがお互いに顔は見たことがありません。お互いの生活する音だけがなにかほっとさせる存在なのでした。二人にはそれぞれ男女がからんだ小さな事件が起こりますがなかなか二人は出会わないのです。いつになったら出会うのかちょっとイライラさせられながら物語は展開していきます。 おとなの恋を扱った作品ですが無煙でした。その上タバコフリーです。 ・コンビニで買い物するシーン。いつもならここで店員の後ろにタバコがズラリなのですが、タバコフリー。 ・コンビニの看板に付き物なのが「酒・たばこ」。しかし「酒」のみでタバコはありません。(コンビニはファミリーマート) ・ふたりがすれちがいながらも通っている喫茶店。ここも灰皿なしのタバコフリー。 ・後半で二人が出会う高校の同窓会の懇親会場もタバコフリー。 無煙映画担当としては「熊澤監督はもしかして無煙映画評を読んでいるのではないか」と思わせるほど完璧なタバコフリーフィルムでした。 上映館のリニューアルした新宿ピカデリーも全館禁煙でした。 <主演男優賞> 藤原 竜也 出演作品「カイジ 人生逆転ゲーム」 知人の多額の借金を抱え込んでしまう人がよくて頼りない前半のカイジと、ゲームに負けて強制労働所からはいあがるための課題に挑戦しなければならなくなったタフなカイジを好演しました。 フリーターのカイジ(藤原竜也)は友達の借金を背負ってしまいにっちもさっちもゆかなくなり、サラ金の社長(天海祐希)から参加すれば大金を手に入れるチャンスがある賭けに挑戦することを持ちかけられます。他に手立てのない彼はその誘いを受け、会場となっている大型客船に乗りこみます。そこには主催者が言うところの「人間のクズ」が集まっていました。勝利を目前に人のいいカイジはあるオッサンを助けたために結局地下の強制労働者にされ奴隷のように酷使されます。そこから這い上がるべく今度は「ブレイブマンロード」に挑戦見事クリアするのですが・・・ 金持ちが搾取をしている構図もちらつかせて現在の社会を批判している面もありますが貧しい人が死んで行くのを笑ってみる人種が描かれ後味の悪い作品です。 タバコはカイジがアルバイトをしているコンビニにもタバコはなく喫煙シーンもない無煙の作品です。船に乗り込む場面では「船内は禁煙だ」ということばも小さくですがききとれます。藤原竜也がいい演技をしています。 <主演女優賞> 長澤 まさみ 出演作品「群青」 幼いころに母親を亡くした上に、結婚を約束した漁師の恋人まで海で亡くしてしまい、心を病んでしまう涼子役を繊細に演じました。いつまでもタバコを口にしてほしくない女優のひとりです。 沖縄の小島に病気療養でやってきたピアニスト。彼女に一人の漁師が恋をします。ふたりはやがて結婚し娘=涼子を授かりますが、ピアニストはしばらくして亡くなってしまいます。涼子は同い年のふたりの男の子一也と大介とともに3人で仲良く成長するのですが、高校を卒業する時期を迎え3人は微妙な関係となっていきます。涼子は漁師となった一也との結婚を父親に打ち明けますが「まだ一人前ではないだろう」と言われ、一也は無理な漁(深い海にある宝石サンゴを採る)をして帰らぬ人となってしまうのでした。正気をなくした涼子のもとに島を出ていた大介がもどってきますが、涼子の心は閉ざされたままなのでした。沖縄の自然が沖縄のリズムとともにとても気持ちよくて印象的です。 タバコに関しては、海辺の居酒屋などの場面や大介の大学入学祝いの宴会の場面もありましたが無煙でした。 <監督賞> 中江 裕司 監督作品「真夏の夜の夢」 「ナビィの恋」「ホテルハイビスカス」に続く沖縄三部作の3作目で見事に無煙となりました。時代や社会の変化をきちんととらえることができたことを賞します。 ご存じシェイクスピア原作の作品です。舞台は沖縄です。時代は現代で、原作とは趣が全く異なりますが芝居がかった演出が効果的でした。神様のちょっとしたいたずらが巻き起こす恋愛喜劇は古今東西を問わずおもしろいですね。加えてリゾート開発の波に翻弄される話が現代性を与え、沖縄の自然とうちなーぐち(琉球方言)が原作にはないおもしろさにしました。 タバコは出てこなかったのがよかったです。 <ファミリー賞>「ウルルの森の物語」 長沼誠 監督作品 母親が病気のため別居していた北海道の父親に預けられた幼い兄妹がオオカミの子かもしれないウルルとの出会いを通し成長していく姿を描きます。家族で安心して観ることができます。 母親が急病のために北海道で獣医をしている別れた父親のもとに預けられた兄と妹は都会の生活とは全くちがう大自然の中での生活にはじめは戸惑ったり反発をしたりします。あるときその兄弟は子犬と出会いウルルと名付け飼い始めます。獣医の父親は「もしかしてウルルは絶滅したオオカミの子供なのではないか」と思い専門の研究者に検査を依頼しますが・・・。子供たちはウルルを母親のもとに返してやろうとアイヌの伝説をヒントに旅に出るのでした。 無煙です。家族で楽しめるだけでなく自然と動物そして人間のかかわりなどを考えさせる内容も好感が持てます。人間社会での絶滅危惧種のマタギが登場したり、絶滅危惧言語のアイヌ語が出てきたりと、絶滅の危機に瀕しているにはオオカミだけではないことも伝わってきます。ウルルがオオカミの母親と再会する場面はベストCG賞をあげたいくらいよく撮れていました。 上記以外の無煙作品は以下のとおりでした。 「ホノカア ボーイ」 真田敦 監督 ハワイのホノカアという町の小さな映画館が舞台です。大学を休学してホノカアの映画館で働くことになった主人公を取り巻くかつての移民の人々、だからでしょうか、日本語を話します。豊かな自然のなかでほのぼのとしながらも人は孤独であり、だからこそつながっていたいというせつなさをユーモアと意外なキャスティングと哀愁のある音楽で表現しています。 無煙映画です。灰皿、タバコなどもなく、禁煙マークはしっかりと映ります。ハワイだから当たり前かもしれませんが・・・。こんなところだったら、空気もおいしいし、のんびりと気持ちよく過ごせそうです。 「MW ムウ」 岩本仁志 監督 手塚治原作のサスペンス映画です。16年前に小さな島で起き、闇に葬られた毒ガス(MW)製造とガス漏れ、そして島民全員の虐殺という国家機密事件がありました。しかし奇跡的にふたりの少年は逃げ出して大人になったのですが、ひとりは牧師にもうひとりは毒ガスを微量ながらも吸ってしまったためか悪魔のような復讐の怪物になっていたのです。そして事件に関係した人を次々と殺戮していくのでした。 勧善懲悪のわかりやすい話ではなく、「悪」が主役なので(実はもっと大きな悪が存在するのですが)全編にわたって緊張感のある展開となっていて肩のこる作品です。 タバコは無煙ですが、唯一冒頭で起きる誘拐事件の被害者の女性の写真がタバコを持ってポーズを取っています。この写真が何回か映ります。女性は薬物依存もあり、人格を表わす小道具としてマイナスイメージを表わしています。スモークフリーですがタバコフリーではありません。 「プール」 大森美香 監督 タイの片田舎のゲストハウスが舞台です。主役の母親は娘を祖母に預けひとりでタイでゲストハウスの仕事をしています。そこへ卒業旅行で会いに娘がやってきます。はじめはうちとけないのですがゲストハウスのプールサイドでくりひろげられるちょっとわけのある人々との穏やかな時間をすごすうちに母親を許す気になっていきます。 タバコはさすがにタイが舞台のせいか風景や周囲のひとびとにも全く登場しませんでした。すがすがしく観ていても気持ちの良い作品でした。 「サイドウェイズ」 チェリン グラク 監督 第77回米アカデミー賞脚本賞受賞作を日本映画として生まれ変わらせたおもしろい試みの作品です。脚本賞受賞作ということで独り者の男同士の会話がおかしくもあり切なさもあります。ワインで有名なカリフォルニア ナパバレーの美しい風景も見逃せません。 タバコはもちろんありません。アメリカの一般市民の間ではタバコフリーが常識なのでしょうか。 「のだめカンタービレ 最終章前編」 武内英樹 監督 コミック誌で人気を博しテレビドラマ化したその最終章の前編です。音楽学生の現実をのだめこと野田恵と千明先輩の恋のゆくえとともにコミカルに描いています。人間関係のやりとりにははちゃめちゃなところもありますが、クラッシック音楽の魅力をわかりやすく説いていることはこの映画の社会的貢献でしょう。のだめを演ずる上野樹里が恋するせつなさや音楽の楽しさを深刻になりすぎずに好演しています。 若者中心のドラマが無煙というのはとても評価できます。原作では喫煙する場面もあるようですがそれならばなお、無煙にしたことをほめてあげたいですね。ただ、前編ということなので後編を観てからにしましょうか。 無煙ではないが惜しかった作品は以下のとおりです。 「ガマの油」 役所広司 監督 少年院から出所する友達を迎えに恋人とのデートを切り上げて急いで行く途中交通事故会ってしまった息子。その息子のケータイが鳴り父親は思わず息子のふりをしてしまいます。電話で声を聞くことしかできない恋人を思う少女、親友を自分のせいで死なせてしまったと心をとざす少年、息子を亡くした悲しみをなんとか乗り越えようとする父親、3者はいつしか存在しない息子を通して心が通い合っていくのでした。タイトルは父親が子供のころ出会ったガマの油売りがいくつかの人生訓を聞いた思い出からつけられました。生きること死ぬことを考えさせられます。 登場人物はだれもタバコを吸わないのですが、冒頭に渋谷の雑踏が映りそこで残念なことに喫煙所にたむろして喫煙する人が映ってしまいました。役所広司初監督の作品ですが、監督はロケの細かいところも見逃さないでほしいものです。ちなみに、同じ場面でセンター街の「路上喫煙禁止」の横断幕も映ります。 「鴨川ホルモー」 本木克英 監督 ホルモーというオニ合戦を真面目に行う京大生の話です。奇想天外ですが、ついこの間まで陰陽師が現役だった(今もかな?)京都ならそれほど違和感はないかもしれません。客観的には現実的ではない話だけれど、いつのまにか引き込まれ楽しめます。なんといっても見せ場はメンバーが素っ裸で踊る(女人禁制の神社で)ワンサカワンサのレナウン娘の曲がサイコーです。筆者の好みの映画です。 タバコは残念なことに最初の新歓コンパの会場で紫煙が漂ったり、京大の学生寮で吸殻いっぱいの灰皿などが映りました。主な登場人物は吸いません。 「ベイビイ ベイビイ ベイビイ」 両沢和幸 監督 大手出版社の副編集長としてさっそうと仕事に励む陽子(観月ありさ)は新雑誌の編集長に抜擢されますが妊娠が発覚します。すると抜擢の話も消え、悩みながらも産婦人科で出会った妊婦仲間やあてにはならないけど「おれの子を産んでくれ」とすがる赤ちゃんの父親(谷原章介)に励まされ仕事を辞め出産する決意をします。ドタバタのコメディーではありますが、女が男社会で仕事を続けることの難しさやキャリアからはなれることのさみしさなど笑わせながらも考えさせられます。それにつけても観月ありさは素敵です。日本映画界唯一の美形コメディアンヌです。もしこの作品が無煙だったら主演女優賞はまちがいなかったのに・・・ たった1度父親のカネラマンが仕事を頼みに行った胡散臭い出版社の薄汚い編集長がタバコを吸うのです。残念です。「惜しかったで賞」候補?にでもしましょうかね 「曲がれ スプーン」 本広克行 監督 超常現象番組の制作者のよね(長澤まさみ)はエスパー探しの旅に出て「カフェ念力」に集まっていたエスパーたちと出会います。本物のエスパーたちは自分がエスパーであることを隠していますが、よねの取材はなんとかうまくいかせてやりたいとあれこれ策を練るのでした。 地味目の個性派俳優たちが実力発揮の楽しい作品です。 タバコも最後まで出なかったので「主演女優賞は長澤まさみに決定だな」と思った直後に最後のエンドロールでほんの1,2秒ですが病院の喫煙所で喫煙する寺島進と松重豊が映りました。こんなシーンをわざわざ入れる必要がないのに残念でなりません。 「パンドラの匣」 冨永昌敏 監督 暗い印象の太宰治にしては珍しく青春を描いた作品で、結核療養所が舞台ながらも明るいやりとりのある映画となっています。結核を患ってはいるが恋もするし振られもする、また嫉妬もしたりと普通の若者の姿を描いています。「やっとるか?」「やっとるよ」、「がんばれよ!」「よーしきた」など言葉遣いがさわやかで終戦直後の新鮮な青春が心地よく表現されています。 タバコは療養所が舞台なので出るはずないと思っていましたが、なんと看護婦長(芥川賞作家川上未映子)が1回だけ喫煙します。この頃から看護婦の喫煙率は高かったのでしょうか。 「キラーヴァージンロード」 岸谷五朗 監督 俳優の岸谷さんの初監督作品です。子供の時からいつもビリで「ドン尻ビリ子」と呼ばれていたひろ子は育ての親のおじいちゃんに花嫁姿を見せられるという前日に、弾みで殺人をおかしてしまいます。死体をスーツケースに詰めて樹海へと逃げますが、彼女の前には男運の悪い「死にたくても死ねない」小林さんがいきなり現れます。そしていきがかりでふたりいっしょのとんでもない逃避行が始まります。小林さん役の木村佳乃がコメディに挑戦し笑わせてくれます。冒頭の木村さんの歌う「わかれうた」(中島みゆき)がよかったです。笑いながらも、自分を必要とする人がいるということの大切さを再確認できます。チョイ役の高島礼子もコメディエンヌの才能を感じさせていました。 タバコは二人の乗った車が暴走族に囲まれる場面で煙がチラッとただよいました。また、コンビニではレジの後ろの陳列棚にいつものタバコがしっかりと映っていました。とても残念です。監督にはこのようなチェックもきちんとしてほしいものです。 「僕らのワンダフルデイズ」 星田良子 監督 余命半年と宣告された主人公(竹中直人)は落ち込んでいましたがふとしたことから高校時代のバンドを死ぬ前に再結成しようとします。それぞれ仕事や家庭に問題を抱えながらも協力する昔の仲間たちです。すったもんだしつつもワンダフルデイズを過ごしますが、仲間の一人が倒れたことがきっかけで事情が変わってくるのでした。 竹中のオーバーな動きはコメディそのものですが、不況や介護などの現代の社会問題も織り交ぜ、笑いと涙の傑作になりました。脇役がうまいと安心して楽しめます。久々の映画出演というドラム担当の稲垣潤一が裕福なボンボンぶりを好演していました。 タバコは主役の5人が吸わず期待していたのですが、なぜか料亭の隣席の客の持つタバコがちらっと映ったり、不動産屋でいやな客が1回吸いました。どちらもあまり意味がなく、なんでこんなところでタバコなのか理解できません。もっとタバコに対して神経を使ってほしいものです。 <汚い灰皿賞>(喫煙シーン、プロダクトプレースメントが目に余る作品)は以下のとおりです。 「少年メリケンサック」 宮藤官九郎 監督 25年前のパンクバンドを復活させようという音楽プロと中年になったバンドメンバーとのドタバタ劇です。着眼点は面白いし、キャストもなかなかの役者がそろっていますが、なにか大きなものが足りないのでただのうるさいドタバタ劇でしかありませんでした。才能のある宮藤監督だがニコチンで脳が働かなくなっているんじゃないのかしら。残念ですね。と言いたくなるくらい喫煙シーンの多いモクモク映画でした。特に佐藤浩市扮するギタリストは常にタバコを手放さず満員の車の中でも喫煙します。高校生の時代にも喫煙。ライブハウスや食堂のシーンでも客の多くが喫煙。これでは出演者はたまったものではありません。無煙だったのは音楽プロのオフィスのシーンくらいでした。 また、酔っぱらったおっさんたちが酒の勢いで行くハダカ同然の服を着た女性がいる何とかマッサージの店には「禁煙ルームあります」の看板が嫌みのようにぶら下がっていました。宮藤ってホントにいやなやつですね。 受動喫煙で健康被害は受けるし、「篤姫」のあとの最初の主演映画がこんな迷画で宮崎あおいはかわいそう。次回からはもっと監督を選びましょう。 「南極料理人」 沖田修一 監督 南極のそれも高度4000mの基地に1年以上缶づめになって、さまざまな調査をする7人の研究者の食事を担当する人が主人公です。来たくて来たわけじゃないけれど食べることが唯一の楽しみなメンバーのために限られた食材であれこれ工夫して食事を作る姿を描きます。大きな事件は起こりませんがウィルスも住めないようなところで同じメンバーでいるとささいないざこざは起こります。そんなときもとりあえずおいしいものを食べれば元気が出てくるのです。食べることがいかに大切なことかよくわかります。主役の堺雅人の手際もおみごとです。 しかしながら、タバコは大問題です。まず密閉された狭い室内で平気で喫煙します。特に医者がいつもタバコをくわえているのはどうかと思います。肉体的に吸える状態なのでしょうか。時代設定はさだかではありませんがまさか今でも喫煙野放しではないでしょうね。 「ハゲタカ」 大友啓史 監督 テレビではおもしろかったのに映画にしたら白けちゃったというパターンの代表作です。登場人物はみんな実力のある俳優なので一つ一つの場面はよくできているのですが、それが一つの作品としてまとまっていないのです。共感できる登場人物がいない、みんな中途半端でちぐはぐな描き方です。あれこれ盛り込みすぎなのです。また社会性もなし。何を伝えたいのか全然わからないのです。久々につまらない映画でした。どんな名優の名演も脚本がだめなら意味がないということでしょうか。(脚本 林宏司) タバコ的には大問題作です。日本・中国のハゲタカつまり主役と悪役のふたりが喫煙します。それぞれに関わる派遣工と元ハゲタカも喫煙します。それだけでなく「最近はどこも禁煙になっちゃってこんなところでしか吸えない。」というセリフがあります。このセリフは元ハゲタカで現在は旅館の社長のセリフですが、ちなみに彼の旅館は全室禁煙で経営は順調だそうです。前半はタバコを吸わなかった主役が彼を応援にたのむときのセリフが「タバコ1本くれる?」と、まるでタバコが仲間のシンボルのようです。中学生の不良仲間のセリフみたいですね。悪役の赤いハゲタカが派遣工を利用するために近づく場面でもタバコが使われています。そのほかファミレスで食事をする場面でも平気で喫煙していました。NHKドラマではこんなにタバコが出てきた記憶がないのですが、いったいどうしたのでしょうね。制作はNHKエンタープライズです 「余命1カ月の花嫁」 廣木隆一 監督 乳がんと診断された千恵は症状が隠せなくなり、恋人の太郎と別れることを決意します。しかし、太郎は「一緒にがんばろう」と励まします。ところが、病魔は千恵の体を蝕み「余命は長くて1カ月」と宣告されます。太郎はウエディングドレスを着せてあげたい、結婚指輪をさせたいと思い実現させるのでした。 実際に病気と闘う姿をドキュメンタリー番組として撮影し、若年の乳がん患者の存在をマスコミを通して一般に認知させ、20代の検診の必要性を訴えた長島千恵さんがモデルになっています。「明日があるのは奇跡」という彼女のメッセージがよく伝わってくる作品です。 タバコは千恵の父親役の柄本明がたびたび喫煙します。実は千恵の母親は卵巣がんで千恵が10歳のときに亡くなっているのにもかかわらず、その後も父親は喫煙を続けていたことになるのです。タバコががんの原因ということを知らなかったのでしょうか。ちなみに原作は2007年4月5日が結婚式です。タバコががんの原因であることをもっともっと周知させなければなりません。がんの予防は検診よりも禁煙、受動喫煙を避けることですよね。 また、病院の外でも白衣の数人の喫煙シーンもありました。 「沈まぬ太陽」 若松節朗 監督 国民航空の組合の委員長として空の安全のために会社とストを予告して交渉をしていた恩地(渡辺謙)は報復人事としてカラチ、テヘラン、ナイロビと10年間へき地勤務を命ぜられます。その間に副委員長だった行天(三浦友和)は会社側に取り込まれ御用組合を結成し、共に闘ってきた仲間を裏切り組合つぶしや見せしめ人事をするのでした。そしてやっと日本に戻った恩地を迎えたのは航空史上最悪の御巣鷹山墜落事故だったのです。恩地は被害者の家族担当をすることになり、ここでもまた冷酷な会社と家族との間に立ち恩地の苦しみは続くのでした。 フィクションとはいえ思い当たる企業や政治家が容易に察しがつき当時の関係者は直視できないのではないかと思えるほど鮮明に再現しています。新聞記者もたかり屋のように描かれ、その報復かこの映画については紙面でふれないといううわさも流れています。しかしそれにもめげず平日の昼間でも観客は多かったし映画の出来もよかったので今年の1、2を争う作品となることでしょう。 タバコ的にも1、2を争うモクモク作品でした。上映開始後いきなり渡辺謙のタバコシーンにはギョウテンです。渡辺謙は白血病だったというのにこんなに喫煙して大丈夫なのでしょうか。国際派のスターだけに心配です。三浦友和もJTのCMを彷彿とさせる喫煙シーンばかり。その他の登場人物周囲でも喫煙する場面が多く、煙や灰皿などタバコ関係が映っている時間が8割くらいあったのではないかと思えるほどでした。案の定「たばこと塩の博物館」が協力していました。どおりで灰皿なども年代に合わせて時代考証がよくできていましたね。原作の山崎豊子には是非ともJTの内幕もこの作品同様真実を書いてほしいものです。 「ディア・ドクター」 西川美和 監督 過疎の村で献身的に働く医師のもとに若いおぼっちゃまの研修医がやってきたところから物語は始まります。その仕事ぶりに研修医も心を動かされ、「彼こそが本当の医者だ」と尊敬をするようになっていきます。ある一人の患者の「家族には自分の病気のことを知られたくない」という願いに応えようとした時に実は彼がニセ医者だったという秘密が明らかになってしまうのでした。 前作「ゆれる」で各賞を総なめ(とはいっても無煙映画賞は取っていませんが)した西川監督の過疎地の医療や末期患者の医療など様々な問題を織り交ぜた上に、田舎の美しい自然と主役の笑福帝鶴瓶の名演で秀作となりましたがタバコの扱いでは大いに問題です。(残念ながら今回も無煙映画賞の対象外ですね。) ・失踪したニセ医者を捜査する刑事へのわいろに村長が渡したのは数箱のタバコ。 ・「禁煙」という張り紙の前で製薬会社のセールス担当者がしみじみ喫煙。 ・ニセ医者がばれるとそれまで吸わなかった鶴瓶が駅の売店でタバコを買いその場で火をつける。 ・駅のホームの喫煙所で逃げる鶴瓶と刑事二人がニアミス。3人とも喫煙する。 などタバコを小道具に使いすぎです。 電通が制作に名を連ねているとタバコが出てくるというのは私の考えすぎでしょうか。気になります。 「笑う警官」 角川春樹 監督 実際に起きた北海道警の裏金作りを内部告発した事件をモデルにした小説の映画化です。オープニングでジャズが流れバーのカウンターのサックス、ウィスキーグラス、そして煙が上がる葉巻・・・という陳腐な雰囲気で始まりイヤーな予感がしましたが、予感通りのモクモク映画でした。その上ジタンというタバコが重要な小道具になっていました。5人の刑事のうちひとりだけが喫煙します。 「ポチの告白」同様警察の腐敗ぶりには呆れるばかりです。 「フィッシュストーリー」 中村義洋 監督 2012年、彗星の地球衝突まであと5時間というときに避難もせずに中古レコード店で聴いている曲は「フィッシュストーリー」。1975年、売れないバンドが「俺たちのやっていることが役に立つのかよ」と思いながらも最後のレコーディングをしているその曲は「フィッシュストーリー」。1982年、禁煙の車内で喫煙する友人に「禁煙だよ」と言うこともできない気弱な大学生に勇気を与えたその曲はカーステレオから流れる「フィッシュストーリー」。2009年、シージャックに巻き込まれた女子高生と正義の味方になりたかった青年の話。そして2012年、彗星の衝突を回避するために立ち上がった正義の味方とは・・・と、いくつもの話が最後にはひとつになります。一生懸命やっていることは巡り巡って誰かを動かす原動力になるのだというメッセージが込められた前向きな作品です。 しかし、タバコの方は全く後ろ向き。1975年のバンドのメンバー4人が演奏中以外はほとんど喫煙しているし、82年の場面でもおバカちゃんの学生が喫煙します。最悪なのは小さな子どものいるところで喫煙する場面です。虐待以外の何物でもないですね。内容がおもしろかっただけに大変残念です。
無煙映画は資料にあるとおり10本と多くはないものの全体的には明らかにタバコ会社の汚れた資金が投入されていると疑われる作品以外では喫煙シーンそのものは少なくなっていると感じています。これは脱タバコをめざす当会や賛同者の地道な活動が功をなし、後進的な映画界も少しずつ変化してきていることと思われます。 しかしながら、気になるのは、ほとんど無煙なのになぜここでタバコを出すのか理解に苦しむといったタバコシーンが出てきたことです。(「曲がれスプーン」「パンドラの匣」など。)それはタバコについての知識は多少付いてきたもののまだまだ私たちと比べると喫煙及び受動喫煙に対する理解が浅いため「これくらいなら問題ないでしょう」という安易な考えからなのか、もしくはタバコ会社からの巧妙な働きかけのもとタバコの存在を全く否定せずにあたりまえに存在するものなのですよ、というメッセージをさりげなく送っているとするならば、たとえ1回のシーンだったとしても大きな問題です。 一方タバコのシーンが多いモクモク映画には、制作に電通が関わっている作品、特定の監督や脚本家(宮藤官九郎、西川美和など)の作品、吉本興業、ジャニーズ事務所、元JTのイメージキャラクターだった俳優が出演している作品などがタバコ会社との関連を疑わせます。それ以外でもタバコが出てきたらそこには何らかの形でタバコ会社の有形無形の協力があると考えるべきでしょう。なぜなら、有害性が明らかになっているものをあえて使うということはそこに利害関係が絡んでいるとしか考えられないからです。疑われたくなかったら李下の冠のたとえのとおりタバコを使わないことです。 今後は、子役の前での喫煙は虐待となること、またパッケージそのものをアップで映すことなどはFCTCの実効に伴い条約違反となることを周知徹底する必要があります。これからは監督や制作会社に対して直接指導助言をしていきたいと思っています。 外国の作品について簡単にふれますと、アメリカ映画ではタバコは基本的には出てきませんが、歴史的にタバコの存在が認められる時代やタバコのイメージが強い過去の偉人を扱った作品でタバコを宣伝するケースが多くなりました。たとえば今年はココ・シャネル生誕100年で3本ほど関連映画がありますが予告の段階からすべてモクモクです。この傾向は今後も続くことが予想されます。(なおこのシャネルの映画についてはパリの交通局はシャネルがタバコをくゆらすポーズのポスターを貼ることを禁止したというニュースがキネマ旬報2009年6月上旬号に出ています。さすがフランスです。FCTCを先取りしています。) 日本にファンの多い韓国映画ですがこちらはお話にならないくらいモクモクです。予告でモクモクなので観る気になりません。実際、2009年12月にソウルに行きましたが男性の喫煙率の高いことにはびっくりしました。 映画の中でのタバコについては観ないと苦情を言えないと思われるかもしれませんが、チラシにタバコがクローズアップされているような悪質なものもあり観なくても指導することが可能です。また、ビデオで観たものでも構いません。気になるタバコについてはどんどん意見を言って映画界からタバコマネーを排除していきましょう。 |
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無煙映画大賞審査委員長 見上喜美江 | ||||||||||
過去の受賞歴 |
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参考:タバコはダメよ!映画評 |
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主催 NPO法人日本禁煙学会 後援 タバコ問題首都圏協議会 | ||||||||||
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