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《総 説》 | ||||
バレニクリン(チャンピックス™)の有害事象について | ||||
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キーワード:バレニクリン、有害事象、チャンピックス ドリーム、性格変化、自殺 利益・利害相反:著者はいかなる意味においても、ファイザー社と利益・利害相反はない。また、他の薬剤メーカーとも利益・利害相反はない。 はじめに いよいよ禁煙治療で待たれたバレニクリンが発売になる。バレニクリンはニコチン代換療法(NRT)、抗うつ薬(ブプロピオンやノルトリプチリン)に続いて第3世代の新薬である。2006年5月にアメリカのFDA(Food and Drug Administration 食品医薬品局)の認可を受け、これまでアメリカで500万人以上に処方され、優れた効果をあげている。その一方で、副作用あるいは副作用の可能性のある事象がいろいろと報告されつつある。そのあるものは新聞記事になった一例報告やウェブ上のブログなどでの報告であるが、我々がこの薬剤を使うに当たってはそういう事象を知っているかどうかが本質的に重要であると考え、ここに報告する。 また2008年4月1日にFDAがリリースしたビデオクリップをご覧に入れる。これは自殺が直接関係あるとしたところが勇み足であったため、FDAはすぐに引っ込めた。しかし、ビデオクリップ自体は参考になると思い、ご紹介する。
(ケース2)夜中に酒を飲んでいて突然暴力をふるいだし、近所の家に押し入ろうとして、撃ち殺されたという事例がコロラド州デンバーであった5)。友人によるとこの34歳の男性は普段はおとなしい性格で、酒を飲んでも暴力を振るうことは決してなかったという。彼は1週間前からガールフレンドとバレニクリンを飲み始め、週明けには禁煙をしようと計画していた。 彼と一緒に住んでいたガールフレンドによると、「1時間前にバレニクリンを服用したが午前1時頃バーでは特におかしなところは無く、酒に酔ったようにも見えなかった。午前2時に家に帰った頃からおかしな行動がはじまった。彼は乱暴にふるまい、最近読んだ本について文句を言い始めた。彼は会話に合わないおかしなヤツと言っていたが、私が理解できないでいると私に怒り始めた。でも、全く理解できなかった。帰宅して10分ほどすると、彼はコントロールが利かなくなった。出て行こうとし、私は彼にドライブさせたくなかった。この時点で、彼には私が誰だかわからなかったみたい。暴力をふるいはじめ、それでも彼が私を傷つけているなどは思ってもいないみたいだった。まるで彼は夢を見ているようだった。彼女は逃げてドアをロックした。すると彼は隣の家へ向かい、ドアをバンバンやりだした。隣家の人は、彼を驚かそうとして銃を上へ向けて撃ったつもりが、彼に当たり、即死だった。」(The Dallas Morning News 10.23.2007) さらに次のような夢を見た女性もある6)。 (ケース3)「先週末に見た夢はおかしかった。夢の中でトイレに行こうとしていた。しかしそこには並んで列ができていた。並んでいる人たちはまったく知らない人たちだった。とつぜん私の小さなトイレのドアが開いて、私の前にいた女性が入っている人を外に出すべく後ろに下がったので、私をほとんど主人のクロゼットまで押し戻した。私がトイレにはいると、私の前に使っていた女性がトイレの水を流していなかった。そして、一人の男の人がシャワー室のタイルに寝そべっていた。シャワー室の壁にはおかしな穴が空いていた。そしてその穴から別の男が隣の部屋の天井を直していた。その途端、郡がこの男達をよこしたのだと思った。私はトイレを使わずに、外に出て、どうして私が私のトイレを使いたいと思う時に郡がよこしたのかしらと不思議に思った。」 このようなあたかも現実であるかのような詳細な夢をみることのあることがその後、多くのブログで明らかになり、これをいつとはなしにChantix™ DreamあるいはCrazy Chantix™ Dreamと呼ぶようになった。 なぜこのような夢を見るのかは、いまだ明らかではない。これとよく似ている現象にナルコレプシーでみる入眠時幻覚がある7)。これはナルコレプシーの患者の40%~67%が見るとされる。色の着いた物体がただ見えるだけのことから、それが大きくなったり小さくなったり、動いたり、突然人や動物が目の前に現れることも多い。音やメロディーの聞こえる聴覚性の幻覚、匂いの幻覚、触られたりつねられるような触覚性の幻覚、宙に浮いたり揺れるような迷路性の幻覚もある。患者は幻覚とともに不安感や恐怖感を覚える。幻覚を見たことは詳細に憶えている。この入眠時幻覚は入眠時レム睡眠期に生じる。面白いことに、青斑核のノルアドレナリンニューロンと背側縫線核のセロトニンニューロンはレム睡眠期に発射が停止する。ナルコレプシーの脳内神経伝達物質の変化はアセチルコリン説が有力である。すなわちアセチルコリンのアゴニストはレム睡眠を誘発し、またレム睡眠を抑制する三環系抗うつ薬は抗アセチルコリン作用とともにセロトニンの再取り込みを抑制する作用がある7)。 また、ナルコレプシーの治療薬であるメチルフェニデートの類似薬を注意欠陥・多動性障害の患者に使っていたところ、バレニクリンの作用が減弱したという報告がある8)。このことから、バレニクリンの本質的な作用と関係している可能性があり、この夢は、副作用ではなく、重要な作用であるという意見もある9)。 Chantix™ dreamをまとめると次のようになろう。 1.見出すと毎日のように見ることがある。 2.あたかも現実であるかのような夢である。 3.起きても夢の内容を事細かく覚えている。 4. 起きてすぐは現実なのか、夢なのかわからないことがある。 性格変化について 性格が剣呑で怒りっぽく、醜悪になると言うこともたびたび報告がある。たとえば、とてもベッドを共にできず、地下に避難した。バレニクリンを中止して、1週間ではまだこの症状が持続していた例があった10)。 こういう事例もあった11)。 「私がバレニクリンを飲み始めてから、おかしな経験をした。以前はそんなことはなかったのに、敏感で怒りをすぐに爆発させるのだった。この怒りには私もほとほと困っており、この薬剤を飲むのは今日限りとしたい。私はシカゴの証券取引所に勤務している。それは攻撃的な環境で、怒鳴ることは日常茶飯事だった。しかし、バレニクリンを飲み始めてからというもの異常な、必要のない攻撃的な行動に私のみならず同僚も気づいている。私の頭はいつも霧がかかっているようで、いつも二日酔のようだ。同時に人々が十分に早く動かないように感じる。これは感じすぎだと思う。昨晩と今晩に2つの友人グループと外出した。彼らはともに、私のちょっとした行動の変化に気づいていた。私が新しい薬剤を飲んでいるというと、私が最近異様な事を言っていると言った。私の人との接触の仕方がこれまでと違い、正常でなく、楽しくもないと言った。私は1時間半おきに目が覚めている。」 これはニコチンの離脱症状にも似ている。これに対してこういう意見があった。「私もバレニクリンを服用し、同じような睡眠障害を経験した。しかしながら、日に日に不安感と共に現実から解離しているような感じがあった。とうとう32日目にグラス1杯のワインで私は言葉だけでなく肉体的に激しくののしったのだった。その後私は禁煙と禁酒を守り、幸運なことにまだここにいる。」 約1~2週間のバレニクリンの中断で、性格変化は元に戻るようである。 性格変化をまとめると、怒りっぽく剣呑な性格になる。とくに酒が入るとコントロールできなくなることもあり、注意しなければならないということだろう。 精神疾患とバレニクリン 2007年8月号のアメリカ精神医学雑誌に2つのレターが出た。 バレニクリンを使用中の統合失調症と躁病のそれぞれ1例の症状が悪化したという12,13)。統合失調症は42歳の女性で、バレニクリンの処方と中止に一致して、急性の増悪を見たという。躁病の症例は63歳の男性で、症状は安定していたが、バレニクリンを処方されてから1週間で躁症状が悪化して入院した。バレニクリンを切ったところ、1週間で軽快したという。興奮、攻撃性と気分の変調は希な精神科的副作用としてFDAに臨床研究の前に報告されていた。また、躁症状、興奮と精神症状も希な精神科的副作用として報告されていた。 Jonathan Foulds医師によると、統合失調症あるいは躁鬱病と言った精神疾患のあるケースはバレニクリンの二重盲検試験から除外されていたという。Foulds医師は精神疾患のある患者が禁煙をしたいと求めてきたならば、次のようなことを勧めるという14)。 (1)手に入るすべての禁煙法を教え、これを使うことを勧める。 (2)薬物としては、ニコチン代換療法(NRT)の良いところをあげる。 (3)バレニクリンに関しては、精神疾患の患者で十分な研究がおこなわれていないことをあげる。そして医師がこの薬剤を選択した場合、その医師が十分綿密に患者の様子を観察することが大切である。 (4)しかし、私の近親者がすでにNRTで失敗して、別の薬剤を望んでいる時には、バレニクリンを投与することをいとわない。というのも、多くの臨床家が精神疾患のある患者にバレニクリンを投与し、成功しているからである。
この優れた薬剤を今後大きく育てていくためには、今後の慎重な投与と、観察がなによりも必要と思われる。 患者への使用上の注意の十分な説明とフォロー、及び禁煙治療専門医の情報交換、また処方医と薬局へのメーカーからの情報提供なども望まれる。 参考 1) Tsai ST, Cho HJ, Chen HS, et al : A randomized, placebo-controlled trial of varenicline, a selective alpha4beta2 nicotinic acetylcholine receptor partial agonist, as a new therapy for smoking cessation in Asian smokers. Clin Ther 2007; 29: 1027-1029. 2) Nakamura M, Oshima A, Fujimoto Y, et al: Efficacy and tolerability of varenicline, an alpha4beta2 nicotinic acetylcholine receptor partial agonist, in a 12-week, randomized, placebo-controlled, dose-response study with 40-week follow-up for smoking cessation in Japanese smokers. Clin Ther 2007; 29: 1040-1056. 3) 作田 学:ニコチン以外の薬物療法. 禁煙学, 日本禁煙学会編. 南山堂, 東京, 2007;62-64. 4) http://content.hamptonroads.com/ story.cfm?story=114938&ran=55083 5) http://www.dallasnews.com/sharedcontent/dws/news/localnews/stories/DN-musiciandead_05met.ART.State.Edition2.4247864.html 6) http://amandajustice.blogspot.com/2007/08/crazy-chantix-dreams-and-other-stuff.html 7) 作田 学:睡眠障害. 神経内科学書, 豊倉康夫編, 朝倉書店, 東京, 2004; 692. 8) Whitley HP, Moorman KL: Interference with smoking-cessation effects of varenicline after administration of immediate-release amphetamine-dextroamphetamine. Pharmacotherapy 2007; 27 ; 1440-1445. 9) http://pharmamkting.blogspot.com/2007/10/chantix-californication-dreamin-viagra.html 10) http://www.associatedcontent.com/article/388366/chantix_the_new_stop_smoking_drug_is.html 11) http://www.topix.com/forum/law/healthcare/TMPBA0OJTHO00PSEE 12)Freedman R: Exacerbation of Schizophrenia by Varenicline. Am J Psychiatry 2007; 164; 1269. http://ajp.psychiatryonline.org/cgi/content/full/164/8/1269 13) Kohen I , Kremen N : Varenicline-Induced Manic Episode in a Patient with Bipolar Disorder. Am J Psychiatry 1269; 164; 1269-1270. http://ajp.psychiatryonline.org/cgi/content/full/164/8/1269-a 14) http://www.healthline.com/blogs/smoking_cessation/2007/08/chantix-and-mental-illness.html 15) ファイザー製飲む禁煙薬、自殺との関連性警告・FDA(日経2008/2/3報道) http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20080203AT1G0200P02022008.html 16) 米ファイザー、飲む禁煙薬で警告——服用でうつ、自殺の懸念 http://health.nikkei.co.jp/news/top/index.cfm?i=2008011901654h1 17) 【ヘルスハイライト】禁煙補助薬により自殺リスクが増大 http://www.yakuji.co.jp/entry5751.html |
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On the adverse effects of varenicline (Champix™) |
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《原著論文》 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
加濃式社会的ニコチン依存度調査票(KTSND)を用いた「みやこ禁煙学会」参加者の喫煙に関する意識調査 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
吉井千春1, 11、栗岡成人2, 11、加濃正人3, 11、天貝賢二 4, 11、稲垣幸司 5, 11、瀬在 泉 6, 11、北田雅子7, 11、大谷哲也8, 11、 原田正平 9, 11、田中善紹10
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《Editorial(論説)》 | ||
こどもの喫煙開始を防ぐ包括的取り組みのきっかけとなるNGOと地方自治体の共同 |
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松崎道幸(深川市立病院・日本禁煙学会理事) |
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《資 料》 | ||
わが国初の行政と市民団体による多数校対象の大規模かつ計画的な防煙教育 ~平成18年度千葉県委託「喫煙防止出前健康教室」事業への取り組み実践報告~ |
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タバコ問題を考える会・千葉 大谷美津子、中久木一乗、紅谷 歩、丸山恵梨子、星野啓一、田那村雅子、大国義弘 |
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キーワード:喫煙防止教育、出前健康教室、市民団体、行政委託、実践報告 はじめに わが国のタバコ対策は、国民の健康を守る厚生労働省ではなく、タバコ産業の利益を守る財務省により握られている。その根拠法が「たばこ事業法」である。これが足かせとなり、海外から喫煙対策後進国と指摘されてきた。能動喫煙対策と受動喫煙対策の遅れにより日本国民は大きな健康被害を負わされている。多くの心ある市民は、未成年や若い女性の喫煙増加を憂慮している。次世代を担う青少年やこれから生まれてくるであろう子どもたちに喫煙による疾病・障害のリスクを背負わせるべきではない。 私たちの「タバコ問題を考える会・千葉」(市民団体)はこの状況を憂いて県内で禁煙活動を続けていたが、千葉県当局もまたこの問題を憂慮していた。 後述する経緯によりこの二者が問題を共有することにより行政と市民団体との防煙教育コラボレーションが実現した。私どもの知る限り、この規模の共同作業はわが国初と思われる。平成18年度の千葉県委託「喫煙防止出前健康教室」事業(これ以降「出前教室」と略)は、行政(県)が未成年喫煙問題の本質を捉えた実践的かつ有効な包括的取り組みであったと考える。他の都道府県による同様な喫煙防止活動推進の広がりを期待しつつ、企画をしてくださった千葉県健康福祉部への敬意と感謝の念を込めて実践報告とする。 タバコ問題を考える会・千葉とは 当会の特徴と活動内容は以下のとおりである。 1.市民運動として発足(平成11年) ホームページ http://homepage3.nifty.com/tmkc-island/ 2. 薬物防止運動の一部としての活動ではなく、タバコ問題に特化した県内唯一の団体 3. 毎月の定例会開催と会報発行(平成20年2月現在113号) 4. 医師、歯科医師など医療者を中心とした異業種・多職種による非営利の市民団体 5. 啓発講演実績(平成16年1月から17年12月) 千葉県警関連ー9回(対象:24施設) 、中学高校・学校保健会等ー7回、その他、学校、企業、民間グループなど 個人対応講演ー多数 6. 各種活動 1) 船橋市環境フェアへの出展 2) 受動喫煙対策優良店情報発信 3) 優良店への感謝状贈呈 4) 要望活動 5) 記念講演・勉強会の開催他 委託打診までの経緯 平成11年の会結成直後から、当会はタバコ対策に関して県当局と良好な関係を築いていたが、平成15年頃より急に禁煙関連の講習会の通知が届かなくなるなど県側の対応が変化し、戸惑いを覚えていた。しかし平成18年4月上旬、千葉県健康福祉部より「出前教室」の委託に関する打診があった。われわれは当初この打診に驚いたが、とりあえず説明を伺うこととした。 県がどのような認識と期待を当会に持っているかが、受託の前提となるため問うたところ、次のような説明がなされた。「貴会発足当初より、毎月発行され県の担当課にも贈呈されていた会報を全て読みました。平成6年の船橋駅事件(歩きタバコが幼女の目を直撃)をきっかけに立ち上がり地道な活動をし、市民運動として純粋にタバコ問題に取組んできた貴団体に依頼すれば、必ず効果的な事業となると確信いたしました。毎月の定例会・会報発行・県警及び学校講演などの実績など、どれを見ても本当に真剣な思いがなければ続けて来られるものではありません。この事業は、限られた予算と期日で、効率的に多数校への周知、実施を必要としています。また、タバコ問題の進展には医療職のみではなく、ボトムアップを目指した社会全体の取り組みが必要であり、その為には貴会のような異業種・多職種による非営利団体が相応しいと判断しました」(平成18年4月18日船橋フェイス・市民サポートセンターでの県・健康福祉部担当者からの委託依頼説明より) この「喫煙防止出前教室」事業は若年者、特に若い女性の喫煙を防止する為に早い時期に喫煙防止教育が必要であるとの県の判断に基づいたものである。後に千葉県健康福祉部健康づくり支援課長はこう語っている。「近年、若い世代の喫煙者の減少率が鈍化し、さらには若い女性の喫煙率が増加する傾向が伺えます。若い世代での喫煙は、健康に影響が大きいうえ、特に女性は妊娠した場合に胎児への影響はもちろんのこと、出産後も乳幼児への悪影響が考えられます。そのため、千葉県では今年度から、若年女性の喫煙対策の一環として、「出前教室」を「タバコ問題を考える会・千葉」に業務委託し開始いたしました。一度タバコを吸ってしまってからでは、タバコに含まれるニコチンの影響により、やめようとしてもなかなかやめられなくなります。そのため、タバコを吸う前のなるべく早い段階の小・中学生等を対象に正しい知識を伝える必要があります。実際に、出前教室に何度か足を運びました。その中で、講師が話すタバコの害などについて熱心に聞き入る子どもたちが、「誰に最もタバコをやめてほしいですか」という質問を受けて、直ちに「お母さん、お父さん」と言うことを聞いていると、この子たちが生涯喫煙しないことを願うとともに、喫煙する母や父に、ぜひこの声を届けたいと願ってやみません。」(県から大谷への私信要旨) このような県の姿勢と認識を知り、タバコ対策問題を社会に広める上で有意義な活動であり、行政と共にタバコ対策を進める絶好の機会であると考え、当会は千葉県委託「喫煙防止出前教室」事業を受託することとした。 実施に向けた取り組み 平成18年6月に受託した事業のあらましと県側の要望は以下のとおりである。 ①なるべく多くの子ども達(幼・小・中)と教職員・保護者、最終的には地域も視野に効果的な啓発をしていただきたい。 ②全学年同時に行い授業参観日の利用も考慮して受講者を増やす。 ③予算は100万円。40校以上で実施されたい。 ④講演先は当会で探す。探す援助はする。
県からの要望として「限られた予算をより効果的に使う為にはクラス単位でなくせめて最小でも学年別、できれば学校全体を集めての教室にしてほしい、そして教職員・保護者の参加が望ましく、近隣の方々の参加も可」というものがあった。これは喫煙が今世紀最大の疫病という「伝染性」の強さを思えば非常に重要な視点である。クラス別や学年別に教室を開いたとしても、上級生場合によっては他クラスや問題グループの下級生による喫煙強要すらある現実を考えると、できる限り学校全体を集めての教室(講演)実施が効果的であろう。その上で学校内での養護、保健に関わる先生方が学年・クラス単位といった教室講話を繰り返し積み重ねることによって、無煙世代の育成が実質的に期待できる。 県レベルの行政機関から市民団体への委託による多数校対象の計画的防煙教育は、この規模としては、恐らく全国初であろう。行政と民間の禁煙啓発団体との実効性あるコラボレーションが多くの都道府県で実践されることが、無煙世代を作るという壮大な事業の有力な推進力の一つとなるであろう。 謝辞 この貴重な事業を委託して下さいました千葉県に心より感謝しいたします。本事業が次世代の健康社会を守るため、安定的に継続されることをお願い致します。 また、経済的に厳しい社会情勢にもかかわらず草の根の市民が本業との調整をつけてボランティア活動を続けることはとても大変なことです。またこの事業の成功には演壇に立った講師ばかりでなく、水面下で支えてくれた会員達の尽力も多大でありました。空調から流れ込む副流煙による受動喫煙被害にもめげず、無煙世界の実現への祈りを込め縁の下で支えてくれた会員も多数おられました。そうした力を得て、皆で支えあい成功させた事業であったことを特記致します。 |
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Local government-funded "Smokefree Youth Lecture Project" performed
by a Chiba-based nongovernmental organization for smokefree society: Experiences
and lessons from the first large scale collaborated project by the local
government and NGO in Japan |
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《資 料》 | ||||||||
受動喫煙対策を行う上で欠かせないタバコ臭についての論考 | ||||||||
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キーワード:タバコ臭、環境タバコ煙、タバコ煙濃度、受動喫煙、浮遊粉じん濃度 <1> タバコ臭とは何か 非喫煙区域にタバコの臭いが漏れたなら、厚生労働省の分煙基準違反である 厚生労働省分煙効果判定基準策定検討会報告書(平成14年6月)「4.新しい分煙効果の基準」http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/06/h0607-3.htmlは「喫煙場所から非喫煙場所に環境たばこ煙成分(粒子状物質及びガス状物質)が漏れ出ないこと」を受動喫煙防止の条件としている。それを受けて作られた「職場における喫煙対策のためのガイドライン」では、「視覚・嗅覚による煙の漏れのチェック」を分煙効果の評価項目のひとつとして挙げている。 http://www.mhlw.go.jp/houdou/2003/05/h0509-2.html http://www.mhlw.go.jp/houdou/2003/05/h0509-2c.html タバコ煙には悪臭防止法で規制されている悪臭物質が9種類含まれている タバコを吸わない者は、なぜタバコの煙の臭いを嫌うのだろうか。それは、タバコの煙に悪臭防止法が規制する特定悪臭物質22種のうち9種類(アンモニア、アセトアルデヒド、ノルマルブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ノルマルバレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、トルエン、スチレン、キシレン)が含まれているためである。しかもこれらの臭気物質は同時に有害化学物質そのものであるから、臭いを吸い込むだけで健康に実害がもたらされる。これが他の迷惑臭、たとえばきつい香水などの匂いなどと違う点である。
タバコ煙濃度が100~200µg/m3のオフィスでの受動喫煙死生涯リスクが10万人あたり1万~2万人なのだから、100分の1の濃度=1µg/m3のタバコ煙にさらされたときの受動喫煙死生涯リスクは10万人あたり100人~200人となる。 わずかでもタバコのにおいがするというだけで、そこはすでに環境基準を100~200倍上回る致死的室内気汚染環境となっているのである。 忘れてならないのは、1µg/m3の濃度でもタバコのにおいがわかると言うのは、他の臭い成分をカットした純粋な実験環境だからであり、様々な臭いが混じっている実際の職場環境では、タバコ煙を知覚する閾値はさらに数倍高濃度となることがじゅうぶん予想される。とすれば、現実の職場でタバコのにおいがするとわかったときには、10万人中数百人が受動喫煙死する環境となっていると考えなければならない。 受動喫煙による急性健康障害が起きるタバコ煙濃度 (1)で引用したJunker等(2001年)の実験によれば、タバコ煙濃度が4 µg/m3になると、頭痛・めまい・はきけ・目・鼻・のどの刺激症状が発生する。
浮遊粉塵濃度が低いにもかかわらず、タバコの臭気成分だけが検出される場合もある 喫煙後換気をしても、室内の表面に付着したタバコ煙成分が再び空気中に遊離すると、浮遊粉塵濃度が低いのに、タバコ臭が存在するという状態になる。この場合、タバコ煙の粒子成分は少ないが、ガス成分が大量に残っていることになる。喫煙室や、長期間喫煙規制の行われていないオフィスや車両内でよく見られる現象である。 この状況において、PM2.5の測定値だけで受動喫煙の状態を判断すると、再遊離ガス成分による化学物質汚染を見逃す危険がある。 したがって、受動喫煙の有無の判定にあたっては、厚生労働省の基準に従い、粒子成分の指標(PM2.5)と嗅覚によるチェックの両方を行うことが必要である。 まとめ 1. 厚生労働省の分煙基準の要諦は喫煙室から煙が漏れないことにあるのであり、非喫煙区域にタバコ臭が広がっているならば、厚生労働省の分煙基準違反である 2. タバコ煙には悪臭防止法の規制対象悪臭物質が9種類含まれている 3. 喫煙区域からタバコ煙の漏れが防げないオフィスでは、いくら空気を入れ替えても、壁・床・窓・家具・空調システムに付着したタバコ臭成分が遊離するからタバコの臭いは残る 4. タバコ臭の主要成分であるフォルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン・スチレン・ベンゼンなどの揮発性炭化水素化合物、アンモニアは、シックハウス症候群あるいは化学物質過敏症を引き起こす有害物質である 5. ヒトの嗅覚は鋭敏であり、1立方メートル当たり100万分の1グラムのオーダーで喫煙所から漏れるわずかなタバコ煙を感知することができる 6. 喫煙所よりわずかでもタバコ煙が漏れるだけで、環境基準を数百倍上回る致死的空気汚染状態になる 7. 喫煙所よりわずかでもタバコ煙が漏れるだけで、非喫煙者に急性の健康障害が発症する 8. タバコ臭が感知されるということは、受動喫煙による健康被害が許容できないレベルであることの直接証拠である 9. 受動喫煙対策が万全であるかどうかを判定するには、粉塵濃度測定とタバコ臭の有無に関する嗅覚による判定の両方が必要である 10. 職場における受動喫煙被害をなくするためには、喫煙室の全廃が必要である |
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以上 |
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《WAT特集》 | |||||||||||||
WALK AGAINST TOBACCO 2006 WEEK 9 REVISITED |
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Mark Gibbens |
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参考サイト:Walk Against Tobacco 2006 (Galleryにいろいろな写真があります) ※WAT:WALK AGAINST TOBACCO |
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日本禁煙学会の対外活動記録 (2008年2・3月) |
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