2012年10月4日掲載 2012年10月21日更新

週刊朝日9月28日号の記事に対する日本禁煙学会の緊急声明
(続報)

9/21付け緊急声明はこちら
週刊朝日への質問状(9/23) 週刊朝日からの回答(9/28) 週刊朝日記事の疑問点(10/3)
週刊朝日への質問状(2)(10/21)



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週刊朝日への質問状(9月23日付)
平成24年9月23日
週刊朝日編集長 河畠大四様
日本禁煙学会 理事長 作田 学

 日頃は、正しい報道に努められていることに感銘を覚えております。
さて、9月28日号の記事につきまして、疑義がありますので、お答えを願いたいと思います。
 我が国の医療行政上、副作用報告ということはもっともゆるがせに出来ないことはご承知の通りです。これが無くしては、医薬品を安心して使うことは出来なくなります。ましてや死亡事故(異常死、自殺等)が起こった場合は必ずや副作用報告として、国にあげられるようなシステムになっております。
 しかるに、9月28日号で大々的に全国に報道されたチャンピクスによる30代男性の自殺例は、睡眠障害、消化器症状、滅裂、暴力行為、幻覚、気分易変容など多彩な症状の末、自殺に至っているように書かれています。この症例は病院の禁煙外来の医師からファイザー社を経由してすでに国に報告が上がっているものとばかり思っておりましたところ、2ヶ月たってもファイザー社でも把握していないと言うことが分かりました。これはどういうことでしょうか。
 さらに不審なのは、ご両親が酒のせいにされては悔しいと言いながら、あれほど微に入り細をうがって時間経過とともに何が生じたのかを明らかにしていながら、担当の医師に相談した様子が全くないことです。これは病院名が分かっていますし、睡眠薬と胃腸薬(この内容を分かるとはたいしたものと思いますが)を貰っているのですから、また禁煙手帳を付けているのが分かっているのですから、禁煙外来の担当医師に連絡を取るのは至極簡単なことのはずです。坂井裕和記者は担当医にも裏を取っていないそうです。
 これはいったいどういうことなのでしょうか。
しかも、坂井浩和記者は警察にも裏を取っていないと言うのです。
病院にも連絡しない、警察にも電話一本で済むはずの裏を取っていない。それであれほど大々的な記事にしても良いものでしょうか。
 お調べいただき、9月末日までにお返事を頂きたく存じます。




PDF版
(232KB、1ページ)
週刊朝日質問状(9月23日)





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週刊朝日からの回答(9月28日)
2012年9月28日
日本禁煙学会理事長
 作田 学様
株式会社 朝日新聞出版
「週刊朝日」編集長 河畠大四
回答書

冠省
 週刊朝日2012年9月28日号の記事「有名禁煙薬 服用者が自殺していた」に対する質問書を9月24日にいただきました。 
 同記事は、有名禁煙薬を服用していた男性が自殺した事実とともに、同禁煙薬に関する米食品医薬品局(FDA)の報告、日本の医薬品医療機器総合機構(PMDA)が把握している事例などを報じたものであり、確かな取材に基づくものです。
 取材の経緯等に関するご質問につきましては、お答えいたしかねます。
 以上、ご理解下さいますようお願い申し上げます。
早々








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週刊朝日記事の疑問点(10月3日)
  1. この自殺された平野隆さん(30代、仮名)について、記事を読む限り、禁煙薬を処方した医師は登場していない(両親も記者も話を聞いていない)し、警察も「自殺と判断している」とのみ書かれているに過ぎない。

  2. であるのに、他者が知り得ないはずの、平野さんの禁煙薬処方や禁煙手帳、飲み会や、飲酒や、携帯メールや、銀行からの現金5万円の引き出しと財布の5万円現金や(銀行から5万円下ろして、それがそのまま財布に残っていた、なんて断定的に言えるはずがない。既に何万円かを使って、残りがたまたま5万円あっただけのことかも知れないし… それをもって「状況からは、自殺を念頭に入れていたとは考えにくい。」なんて論拠には到底ならないし、そもそもこんな私的なことまで他者が知り得るはずがない)、また親との電話のやり取りなど、死亡前のご本人の個人状況が余りに事細か過ぎて、反って何か不自然さ・作為が感じられる。20ページ2段目で「平野さんにも、ひょっとしたらその副作用(自殺念慮など)が起きていたのかもしれない。」と、強引とも言える状況推測(憶測)をしているに過ぎない。

  3. 同じく20ページの1段目で「服用と自殺との間に因果関係があったかどうか不明だが、」と書きつつ、続く記事文では、薬害訴訟を専門に扱うT弁護士が「服用から自殺までの時間が近接していることを考えると、関連性を否定することはできないしょう。」と何ら医学的根拠があるとは言えない発言をし、また同ページの5段目で「チャンピックスの安全性について問題提起を続けてきた薬害オンブズパースン会議の事務局長…M弁護士は怒りを込めて話す。「『添付文書』には、いちおう『自殺』という言葉が書かれていますが、『禁煙手帳』やパンフレットでは自殺についてまったく触れていません。重大な副作用の疑いを、必死に伝えようとする印象がまるでない」。  これら2人の弁護士の発言を受けて、上記2項の推測(憶測)がなされたようにも思われるが、1項のように処方医師も警察も何の発言もしていないことからすれば、またご本人が飲酒していたなどから、平野さんの自殺と禁煙薬処方に直接的な因果関係があると推測(憶測)し断定するかのごとき記事には、飛躍がないとは言えないのではないだろうか?

  4. 何よりもおかしいのは、PMDA・添付文書などを攻撃しながら、その元になる副作用報告をこの例では、2か月以上経っても行っていないことだ。どこにもその様な報告がなされていない。また、処方医の名前を知っていると記者は言うが、なぜ一度もその医師に連絡をとらないのだろうか。もっとも考えられることは、その平野さんがそもそも存在しなかったのではないかという疑問だ。

  5. もちろんFDAでも自殺行動や自殺念慮の事例が報告され、チャンピックスの添付文書にもその旨が記載されていることからすれば、より一層の注意喚起や周知が望まれるとしても、今回の平野さんの事例を具体的な医学的証拠に基づかず、他者が知り得ないはずの個人状況を事細かに予断列挙し、それらを含め単なる状況推測(憶測)で記事としたことは、週刊朝日として告発のつもりだったのかも知れないとしても、禁煙治療に取り組む全国の医療関係者、及び多くの禁煙希望者の方々に、無用の多大な不安を与えることになったのではないだろうか? 影響力の大きい言論機関として、その正しいとは言えない取材方法と報道姿勢・手法に是正を強く求めるものである。
PDF版
(168KB、2ページ)
週刊朝日記事の疑問点(10月3日)




NPO法人 日本禁煙学会







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週刊朝日記事への質問状(2) (10月21日)
朝日新聞社代表取締役社長 木村伊量様
朝日新聞社出版事業担当取締役 藤井 龍也様
週刊朝日編集長 河畠大四様
NPO法人 日本禁煙学会理事長  作田 学

週刊朝日9月28日号の記事に関する質問書
第1.  質問事項
  1. 当該患者(仮称・平野さん、30代男性)は、本当に実在の方ですか。

  2. 本当に実在している方であるとして、記事の内容から、われわれ専門医でさえこれまで見聞したことのない稀有の症状の副作用報告ですので、その出典を明らかにするように強く求めます。

  3. 当該患者の担当医を明らかにされたい。担当医にも情報を伝えていないとすれば、我が国の副作用報告のシステムを根幹から否定することになります。

  4. 仮に、実在していない架空の患者あるいは症状であるとすれば、禁煙外来で日夜奮闘しているわれわれ医師の意欲をくじくだけでなく、タバコ病で命や健康を深刻に害されている多くのタバコ病患者を愚弄するものであって許し難いものであります。
 貴誌は、社会的公器として事実に基づいた報道をする社会的責任を負っているはずでありますので、事実を捏造する記事がなされたとすれば、その責任は極めて重大であります。その懸念を払拭するためにもこのたびの報道内容の具体的根拠を明らかにしていただくよう強く求めます。それは国民に真実を伝えるべき報道機関の当然の責務ではないでしょうか。


第2. 質問の事情

 あの痛ましい「平野さん」の記事が9月28日号に出てから、はや1か月が過ぎました。これまで、日本禁煙学会ではこの件に関して科学的な分析・議論をおこない、それを国民に知らせてまいりました。
1) 週刊朝日9月28日号の記事に対する日本禁煙学会の緊急声明。
http://www.nosmoke55.jp/action/1209syukan_asahi.html
2) 週刊朝日9月28日号の記事に対する日本禁煙学会の緊急声明(続報)
http://www.nosmoke55.jp/action/1209syukan_asahi2.html (←HP管理者注:このページのことになります)

 私たちは事実の解明を今か今かと待っておりますが、事件発生から3か月経った現在、いまだに日本国中どこにもその様な症例が報告されたと言うことを聞いておりません。
 私たちは担当医の名前を教えて欲しい、そうすればすぐに連絡がつくからと坂井浩和記者に直接、2日にわたって懇願したのですが、にべもなく断られました。普通であれば、患者家族、記者が真っ先に電話をして尋ねるはずの人物に、いつまで経っても電話一本かけていないというのはあまりにも不自然ではないでしょうか。

 週刊朝日に記事が出た日のことを今も忘れはしません。電車の中吊り広告にひどいタイトルが踊っているという電話をいただきました。その後は患者さんからの心配する電話で一日中禁煙学会事務局の仕事が出来ないほどでした。
 あの記事でチャンピックスの服用をやめた人、禁煙をあきらめた方がどれほどいたかはわかりません。しかし、タバコは吸い続けると二人に一人はタバコが原因で亡くなると言う代物です。また、うつ病が吸わない人の2倍に起こり、それに従って自殺者も増えるという代物です。事ここに至れば、でっち上げの記事であった、どなたかがおっしゃっていたように朝日新聞の記者が自分で傷つけておいて、こんな悪いことをするやつがいると報道した沖縄の珊瑚礁の続きであった可能性がますます高くなっています。万々一にもそうであったら、これは年間の死者が10数万人であるタバコ病からの脱出を妨害した、そういう意味で週刊朝日の罪は珊瑚礁事件よりも重いのです。
 週刊朝日UST劇場「禁煙薬服用者で自殺者が出た!」もじっくりと見させて頂きました。そこでも坂井裕和記者は、うつむいて週刊誌に載ったことだけを繰り返すばかりで、新たな情報は何一つありませんでした。

 製薬メーカー側に副作用周知などがより求められるとしても、週刊朝日の9.28号記事には不自然さや飛躍した逸脱が少なくないのです。
 チャンピックスは今までにない画期的な薬でもあり、私たち専門医は副作用にとりわけ注意をして参りました。インターネットに載る情報はウソかホントかわからないものが多いのですが、自殺例、事故例が報告されていたので、目を皿のようにしながら、使っていたというのが実際のところです。しかしながら、その後の検証で、対照薬と比べうつ病を悪化させないことが明らかになり、しかも自殺企図例の頻度が日本の自殺既遂例の10分の1以下の低頻度であることもわかり、ほっと胸をなでおろしました。

 しかし、当然ながら添付文書は科学的な裏付けに遅れて改訂されるものです。
その2~3周遅れている添付文書に書いてある、ありとあらゆる副作用を生じた様に書かれていることから私たちはこの症例は実際には存在しないのではないかと疑いを持ち出したのです。もしあるとすれば、まず間違いなく本邦最初の報告例になるでしょう。貴重な症例ゆえに、報告されればすぐに気がつくはずなのですが、3か月経っても影も形もないということです。

 10.26号週刊朝日での、大阪・橋下市長の出自と差別報道で、「不適切な記述があった」とする週刊朝日編集長名の謝罪コメントを発表し、「次号で『おわび』掲載」 とのことですが、言論の暴力的な記事は言論機関が絶対にしてはならないことで、9.28号のチャンピックスの記事と同根の体質(週刊朝日及び編集長・記者の)があるのでは、と強く懸念せざるを得ません。

 週刊朝日は以上の事を詳細に説明する義務があります。

 私たちは同時に厚生労働省の担当部局に、この症例の存在について、警察庁に照会をしていただくよう、お願いしました。
PDF版
(264KB、3ページ)
週刊朝日質問状2(10月21日)




以上