朝日新聞社代表取締役社長 木村伊量様
朝日新聞社出版事業担当取締役 藤井 龍也様
週刊朝日編集長 河畠大四様 |
NPO法人 日本禁煙学会理事長 作田 学
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週刊朝日9月28日号の記事に関する質問書 |
第1. 質問事項 |
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- 当該患者(仮称・平野さん、30代男性)は、本当に実在の方ですか。
- 本当に実在している方であるとして、記事の内容から、われわれ専門医でさえこれまで見聞したことのない稀有の症状の副作用報告ですので、その出典を明らかにするように強く求めます。
- 当該患者の担当医を明らかにされたい。担当医にも情報を伝えていないとすれば、我が国の副作用報告のシステムを根幹から否定することになります。
- 仮に、実在していない架空の患者あるいは症状であるとすれば、禁煙外来で日夜奮闘しているわれわれ医師の意欲をくじくだけでなく、タバコ病で命や健康を深刻に害されている多くのタバコ病患者を愚弄するものであって許し難いものであります。
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貴誌は、社会的公器として事実に基づいた報道をする社会的責任を負っているはずでありますので、事実を捏造する記事がなされたとすれば、その責任は極めて重大であります。その懸念を払拭するためにもこのたびの報道内容の具体的根拠を明らかにしていただくよう強く求めます。それは国民に真実を伝えるべき報道機関の当然の責務ではないでしょうか。
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第2. 質問の事情
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あの痛ましい「平野さん」の記事が9月28日号に出てから、はや1か月が過ぎました。これまで、日本禁煙学会ではこの件に関して科学的な分析・議論をおこない、それを国民に知らせてまいりました。
1) 週刊朝日9月28日号の記事に対する日本禁煙学会の緊急声明。
http://www.nosmoke55.jp/action/1209syukan_asahi.html
2) 週刊朝日9月28日号の記事に対する日本禁煙学会の緊急声明(続報)
http://www.nosmoke55.jp/action/1209syukan_asahi2.html (←HP管理者注:このページのことになります)
私たちは事実の解明を今か今かと待っておりますが、事件発生から3か月経った現在、いまだに日本国中どこにもその様な症例が報告されたと言うことを聞いておりません。
私たちは担当医の名前を教えて欲しい、そうすればすぐに連絡がつくからと坂井浩和記者に直接、2日にわたって懇願したのですが、にべもなく断られました。普通であれば、患者家族、記者が真っ先に電話をして尋ねるはずの人物に、いつまで経っても電話一本かけていないというのはあまりにも不自然ではないでしょうか。
週刊朝日に記事が出た日のことを今も忘れはしません。電車の中吊り広告にひどいタイトルが踊っているという電話をいただきました。その後は患者さんからの心配する電話で一日中禁煙学会事務局の仕事が出来ないほどでした。
あの記事でチャンピックスの服用をやめた人、禁煙をあきらめた方がどれほどいたかはわかりません。しかし、タバコは吸い続けると二人に一人はタバコが原因で亡くなると言う代物です。また、うつ病が吸わない人の2倍に起こり、それに従って自殺者も増えるという代物です。事ここに至れば、でっち上げの記事であった、どなたかがおっしゃっていたように朝日新聞の記者が自分で傷つけておいて、こんな悪いことをするやつがいると報道した沖縄の珊瑚礁の続きであった可能性がますます高くなっています。万々一にもそうであったら、これは年間の死者が10数万人であるタバコ病からの脱出を妨害した、そういう意味で週刊朝日の罪は珊瑚礁事件よりも重いのです。
週刊朝日UST劇場「禁煙薬服用者で自殺者が出た!」もじっくりと見させて頂きました。そこでも坂井裕和記者は、うつむいて週刊誌に載ったことだけを繰り返すばかりで、新たな情報は何一つありませんでした。
製薬メーカー側に副作用周知などがより求められるとしても、週刊朝日の9.28号記事には不自然さや飛躍した逸脱が少なくないのです。
チャンピックスは今までにない画期的な薬でもあり、私たち専門医は副作用にとりわけ注意をして参りました。インターネットに載る情報はウソかホントかわからないものが多いのですが、自殺例、事故例が報告されていたので、目を皿のようにしながら、使っていたというのが実際のところです。しかしながら、その後の検証で、対照薬と比べうつ病を悪化させないことが明らかになり、しかも自殺企図例の頻度が日本の自殺既遂例の10分の1以下の低頻度であることもわかり、ほっと胸をなでおろしました。
しかし、当然ながら添付文書は科学的な裏付けに遅れて改訂されるものです。
その2~3周遅れている添付文書に書いてある、ありとあらゆる副作用を生じた様に書かれていることから私たちはこの症例は実際には存在しないのではないかと疑いを持ち出したのです。もしあるとすれば、まず間違いなく本邦最初の報告例になるでしょう。貴重な症例ゆえに、報告されればすぐに気がつくはずなのですが、3か月経っても影も形もないということです。
10.26号週刊朝日での、大阪・橋下市長の出自と差別報道で、「不適切な記述があった」とする週刊朝日編集長名の謝罪コメントを発表し、「次号で『おわび』掲載」 とのことですが、言論の暴力的な記事は言論機関が絶対にしてはならないことで、9.28号のチャンピックスの記事と同根の体質(週刊朝日及び編集長・記者の)があるのでは、と強く懸念せざるを得ません。
週刊朝日は以上の事を詳細に説明する義務があります。
私たちは同時に厚生労働省の担当部局に、この症例の存在について、警察庁に照会をしていただくよう、お願いしました。 |