PDF版(132KB)はこちら WORD版(30KB)はこちら タバコ自動販売機の廃絶に至る見通しについて〜タスポ導入に当たっての声明 |
タスポ・システム全国的稼働にあたっての日本禁煙学会の見解 (JT、財務省、厚労省、財務省・厚労省記者クラブに送付) |
2008年(平成20年)7月1日 |
タスポ・システム全国的稼働にあたっての
日本禁煙学会の見解
東京都新宿区市谷薬王寺町30−5−201
NPO法人 日本禁煙学会
理事長 作田 学
タスポ自販機でこどもの喫煙は防止できない
7月1日から、未成年者の喫煙防止の名目で、タバコ自動販売機(以下、自販機)からタバコを買うにはtaspo(タスポ)というICカードが必要となる方式が日本全体に導入されました。しかし2004年から種子島で導入実験をしたところ、未成年者の喫煙による補導件数がまったく減りませんでした。種子島署は、補導された少年達が一旦取得した親のカードを持ち出したり、成人の先輩からカードを借りて購入していると指摘しております。タスポというカードシステムでこどもが自販機からタバコを買うことを防ぐことはできません。こどものタバコ入手を防止できないにもかかわらず、自販機をあれこれモデルチェンジするのは、未成年者喫煙防止に努力しているというポーズを示して、タバコ自販機の存続を図る策略にほかなりません。
また、タスポが先行的に導入された地域でタスポ取得率が低率であるからと言って、こどもの喫煙防止が期待できると考えるのは、タバコという依存性商品の性質から考えて、楽観的すぎます。
今すぐ国際条約違反のタバコ自販機の全廃が必要
本気でこどもの喫煙を防止したいなら、日本政府が国際社会にその誠実な実施を約束したタバコ規制国際枠組条約に沿って、タバコ自販機の早急な全廃を実行する必要があります。
同条約第16条は締約国に「タバコ製品の販売を禁止するため、適当な段階の政府において効果的な立法上、執行上、行政上又は他の措置を採択し及び実施」することを求め、「タバコの自動販売機の全面的な禁止」を実行することを政策的選択肢として挙げています。
こどもの喫煙防止の役に立たない今回の自販機モデルチェンジを効果的な未成年喫煙防止対策であると称して推進するJT及び外国タバコ会社の行動は国際条約違反です。
さらにタバコの広告塔となっている自販機の存在そのものが、「タバコ製品の販売を促進するあらゆる形態のタバコの広告、販売促進及び後援を禁止すること」を求めた第13条に違反しています。
未成年者喫煙防止法で義務付けられた「小売店でこどもにタバコを売らない取組」の強化も必要
未成年者にタバコを売らない方策の一つとして、タバコ規制国際枠組条約は「疑義のある場合にはたばこの購入者に対し成年に達していることを示す適当な証拠の提示を求めることを要求する」(第16条)必要があると述べています。これはわが国の未成年者喫煙禁止法第4条(煙草又ハ器具ヲ販売スル者ハ満20年ニ至ラザル者ノ喫煙ノ防止ニ資スル為年齢ノ確認其ノ他ノ必要ナル措置ヲ講ズルモノトス)にも合致した規定です。これまで、政府がこの法律の周知履行を怠ってきたことに強く抗議するとともに、タバコ小売店の法令順守状態の監視を法律に基づいて厳密に行うことを政府に強く要求します。
近年、わが国の若い女性の喫煙率が上昇の一途をたどっていることは、妊娠・出産・育児にかかわる母子保健上からも看過できない事態です。未成年者の喫煙は成長期における心身の成長に 悪い影響を与え、他の非合法ドラッグ使用のリスクを高める危険があるのではないかとの懸念も存在します。重要なことは、未成年者ほどニコチン依存症になりやすく、ひとたび吸い始めるとやめるのが困難になることです。ニコチンの依存性はアルコールよりも強く、ヘロインやコカインに匹敵すると指摘されています。
タスポさえあればこのような依存性の高いタバコ製品を自販機から入手でき、タスポがなくとも小売店で簡単に買える現状を抜本的に正す必要があります。
日本禁煙学会は、こどもたちの喫煙防止のために改めて以下を要求します。
1. タバコ自販機の速やかな全廃
2. タバコ小売店の未成年者喫煙防止法順守状態の厳格なモニター
以上