WHO世界禁煙デー2007
http://www.who.int/tobacco/communications/events/wntd/2007/en/index.html

世界保健機関のHPに掲載された2007年世界禁煙デーのアピールです。訳文の文責は松崎道幸。
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World No Tobacco Day 2007

2007年世界禁煙デー



室内は禁煙 完全禁煙環境を実現しよう

テーマ : タバコの煙のない環境 SMOKE-FREE ENVIRONMENTS


 タバコは全世界で第2位の死亡原因となっています(第1位は低栄養)。世界中の喫煙者の半数=6億5千万人=が最終的に喫煙によって命を奪われることはよく知られています。また、毎年数十万人の非喫煙者が受動喫煙によって命を奪われる事態となっていることも重大です。

はじめに:厳密な調査研究によりゆるぎない事実が明らかになっている

 疑問の余地はありません:受動喫煙はあなたの健康を大きくそこないます。こどもや大人に重い呼吸器や心臓の病気をおこすだけでなく、ガンも起こし、命が奪われることも少なくありません。受動喫煙にはこれ以下なら病気を起こさないという安全許容濃度はありません。
 長年の広範で厳密なレビューのもとに発表された研究成果を根拠とした国際規模の、あるいは各国における専門機関の研究調査により、疑問の余地のない結論が出されています。以下に代表的な3文献を紹介します:


- The 2004 IARC Monograph 83: Tobacco Smoke and Involuntary Smoking
- The 2005 California Environmental Protection Agency (CalEPA) Environmental Health Hazard Assessment of Environmental Tobacco Smoke
- The 2006 U.S. Surgeon General's Report on The Health Consequences of Involuntary Exposure to Tobacco Smoke

厳密な研究によって明らかにされた事実

その1

喫煙で汚染された空気(以下SHSと略)には、250種以上の発ガン物質や有毒物質をはじめとする化学物質が数千種類も含まれています。たとえば、無味無臭の猛毒一酸化炭素、アセトアルデヒド、アクロレイン、フォルムアルデヒドなどの有害化学物質がたくさん含まれています。これらを吸い込むと、またたく間に濃縮され、体全体に広がり、様々な病気を起こす原因となります。

その2

おもな受動喫煙場所:
職場
公衆の集まる場所
家庭

その3

SHSは人間に対する発ガン物質であることが、公式に認定されています。それだけでなく、急性ならびに慢性の重症の心臓病も起こします。受動喫煙にさらされた場合、大人は気管支炎・肺炎・喘息になりやすく、こどもは気管支炎・肺炎・喘息・中耳炎・乳幼児突然死を起こしやすく、妊娠中受動喫煙にさらされた場合低体重出生が増えます。

完全禁煙以外に解決法はありません

換気量を増やしたり、空気清浄機を置いたりしても、室内のタバコの煙濃度を、臭いや健康被害の許容レベルまで下げることはできません(後述「ウソ」参照)。
証拠に基づき、すべての人々の健康を守るために、早急に断固とした決定を行う必要があります。

なぜ完全禁煙でなければならないのか?

理由
受動喫煙は人の命を奪い重い病気の原因となります。
完全禁煙だけが、職場の労働者を受動喫煙の害からしっかり守る対策です。
タバコの煙の混じっていないきれいな空気を吸うことは人間の権利です。
人類の多数はタバコを吸いません。タバコを吸わない者は他人の出したタバコの煙にさらされないという権利を持っています。
タバコをすう者も吸わない者も室内の禁煙化を圧倒的に支持しています。
完全禁煙はビジネスの利益を増やし、家族やこどもおよび非喫煙者のためになります。さらに喫煙者であっても禁煙の場所を望む人もいます。
室内の禁煙化は、タバコをやめたい喫煙者が禁煙する大きなきっかけとなります。
室内の禁煙化は、とりわけ若者が喫煙者になることを防ぎます。
完全禁煙はほとんど費用がかからない効果的な対策です。

行動しよう!

完全禁煙が常識の世の中になりつつあります。この世界の流れに合流しましょう!

今年の世界禁煙デーは、受動喫煙から女性・こども・職場の労働者を守る唯一の効果的な対策は「100% SMOKE-FREE ENVIRONMENTS完全禁煙環境」以外にないということに焦点を絞りました。
:どこでもタバコが吸えた。:室内はすべて完全禁煙。

まだ完全禁煙ではないのですか?行動しましょう!

受動喫煙禁止法を作る運動

あなたの職場は禁煙ではないのですか?完全禁煙を求める運動を一緒にやりませんか?
行動しましょう。意見を述べましょう。きれいな空気を吸う権利を主張しましょう。あなたと周りの人の健康を危険なタバコの煙から守りましょう。

1. すべての働く者の健康を守るために雇用主と一緒に職場を完全禁煙にする相談をしましょう。今年の世界禁煙デーを職場禁煙の開始日としましょう。すべての人が完全禁煙の職場で働く権利を持っています。
2. あなたの地域の政治家(政策決定者)に受動喫煙禁止法の制定を求める手紙作戦を実行しましょう(別項の文案参照)。
3. 愛する家族を守るため、自宅も完全禁煙としましょう。


受動喫煙禁止法を要請する手紙(文案)

世界保健機関の勧告に沿って○○○を完全禁煙にしてください

○○様
 受動喫煙の有害性についての科学的調査研究が20年以上にわたって行われてきました。その結果、受動喫煙が、大人やこどもにガンや重い肺の病気、心臓の病気や死亡をもたらし、人類の健康にとって極めて有害であることがゆるぎない事実として明らかにされました。
 世界保健機関は、受動喫煙にこれ以下なら安全であるという許容レベルはないとの見解に基づき、屋内完全禁煙のみが公衆を受動喫煙被害から守る唯一の対策であることを、受動喫煙対策に関する政策的勧告として発表する事になっています。
 タバコの煙の混じっていないきれいな空気を吸うことは人権のひとつです。
 以上の理由から、私(我々)は、雇用主、労働者、一般公衆の健康を守るために、飲食店・娯楽施設を含むすべての屋内職場を完全禁煙とする法令の制定を要請いたします。これが、我々とこども達の健康を守るための決定的に重要なステップであると考えます。
敬具


完全禁煙政策の実行

 もしあなたが政策決定者なら、今年の世界禁煙デー当日の禁煙化を実施してはいかがですか?そして、その禁煙措置を恒久化していただければ幸いです。
 世界保健機関は政策決定者に職場と公衆の集まる施設内を完全禁煙とする法律を作るよう呼びかけています。法的拘束力のない自主的措置によって市民を受動喫煙から守る事は不可能であり、満足のいく解決法とはなりません。すべての働く者を例外なく受動喫煙被害からしっかり守る事のできる法的措置のみが容認可能な解決策です。これは自主的措置を廃止して法的規制を実施した多くの国々の経験により明らかになっています。
 同様に、換気系統が独立していようといまいと「分煙」によって受動喫煙曝露を安全なレベルに抑える事は不可能であり、「分煙」は絶対に行うべきではありません。

タバコ産業が作り出した「ウソ」をあばく

はじめに

タバコ産業は人々を受動喫煙被害から守る対策が進むと利潤が大幅に減る恐れがあることをずっと以前から認識していました:
「(受動喫煙問題は)タバコ産業の盛衰を左右する最大の難題」
A Study of Public Attitudes Toward Cigarette Smoking and the Tobacco Industry in 840000 Jun 1984. Bates: 539001438-539001701.
「もし喫煙者が通勤中、作業中、銀行、レストラン、ショッピングセンターなどの公衆の集まる場所でタバコを吸えなくなったら、タバコをやめたり減らすようになるだろう…」
Merlo describes Philip Morris' motivation for fighting smoking restrictions: Corporate author, Philip Morris.Philip Morris Magazine 890300 - 890400 the Best of America 19890315/P. Bates: 2040236324A-204026324AV.
タバコ産業は、繰り返し、公衆に、受動喫煙の健康被害や禁煙による経済影響について誤った情報を伝えてきました。タバコ産業は直接あるいは偽装組織を使い、労働者や一般市民を受動喫煙被害から守る効果的な法的措置の実施を遅らせる策動を続けてきました。
タバコ産業が振りまいてきた禁煙対策や科学的根拠に基づいた主張に反対するためのいくつかの「ウソ」を紹介します。

ウソ その1:受動喫煙はたんなる迷惑問題にすぎない

? 間違っています!たんなる迷惑ではありません。受動喫煙は健康を破壊します。職場の受動喫煙だけで全世界で毎年少なくとも20万人が命を落としています(これは職業関連病死の14%を占める)。また職場の受動喫煙は全肺ガン死の2.8%の原因となっています2。さらに、世界中の病気の5%は受動喫煙が原因で発生しています3
? 真実:タバコ産業は、受動喫煙の有害性を証明する十分な証拠がないと言う、直接あるいは偽装組織を通じた資金提供によって作られた時代遅れの研究を引用して、自分達の主張が正しいと言い張ってきました。前にも挙げましたが、以下の3文献は受動喫煙の健康影響に関する最新の科学資料です。
i. The 2004 IARC Monograph 83: Tobacco Smoke and Involuntary Smoking
ii. The 2005 California Environmental Protection Agency (CalEPA) Environmental Health Hazard Assessment of Environmental Tobacco Smoke
iii. The 2006 U.S. Surgeon General's Report on The Health Consequences of Involuntary Exposure to Tobacco Smoke.
1. The tobacco industry refers to SHS as Environmental tobacco smoke (ETS)
2. Takala, J. Introductory Report: Decent Work - Safe Work. International Labour Office, Geneva, 2005.
3. The World Bank Group. Economics of tobacco control. 1999. Presentation notes from Children's Exposure to ETS in Developing Countries: Current Situation and Implications for Health and Development.

ウソ その2:問題はマナーで解決できる

間違っています!タバコを吸わない者の我慢を強いる自発的合意によって受動喫煙被害を防止する事はできないどころか、真に効果的な受動喫煙防止対策を実施する障害になっています。
真実:吸う者と吸わない者が共存できる「マナー」が大事だという考え方は、タバコ産業が最も力を入れて行ってきた販売促進キャンペーンのひとつです。タバコ産業は、お互いを思いやるマナーの実践によって同じ室内で喫煙者と非喫煙者が共存できると主張してきました。フィンランド、アイルランド、ニュージーランド、ウルグアイ、カリフォルニア州などで、政策決定者は、法的強制力のない自主規制措置では市民の健康を守る事はできないという結論に達し、受動喫煙禁止法令を制定したのです。

ウソ その3:換気を十分に行えば問題ない

間違っています!タバコ産業は、喫煙者と非喫煙者が同じ室内に居られるように、とても費用のかかる換気空調設備を導入するよう主張してきました。これは法律により室内での喫煙の完全禁止が行われることを防ぐ策略です。しかし、換気は恐ろしくコストがかさむだけでなく、全く効果がないのです。室内の完全禁煙以外に受動喫煙被害をなくす方法はありません。
真実:タバコの煙は粒子とガスから成り立っています。いくら換気をしてもすべての粒子とガスを除去する事はできません。また、換気中でも、多量の粒子成分がどんどん体に吸収されたり、衣服・家具・壁・天井などに付着したりします。換気速度をあげると、タバコ煙などの室内汚染物質濃度は減りますが、タバコの煙の臭いがしなくなるレベルまで濃度を減らすには、通常の換気速度の100倍以上の換気が必要なのです。健康を守るために必要なレベルまで有害物質濃度を下げるためには、さらに換気速度をあげる必要があります。タバコの煙によって汚染された室内の空気から有毒物質を取り除くためには、膨大なコストと設備が必要な上、室内を強風が吹きぬけるような換気状態に耐えなければなりません。従って、換気で受動喫煙問題を解決することは、非現実的で不可能なのです。

ウソ その4:法律で禁煙としても、守られるはずがない

間違っています!屋内喫煙禁止法は、タバコを吸う者と吸わない者の大多数に支持されています。適切に施行されるなら、受動喫煙からすべての市民を守る最も効果的な対策となります。受動喫煙禁止法は、タバコを止めたいと思っている多くの喫煙者を禁煙させ、タバコを止めた人々の禁煙を継続させる大きな力となっています。
真実:アイルランド、ニュージーランド、ノルウェー、スコットランド、サンフランシスコ、エルパソ、ボストン、ニューヨークなどでは、受動喫煙禁止法がしっかり守られ、効果をあげていることが証明されています。法律を守らせる適切な工夫がなされているなら、受動喫煙禁止法は公衆から支持され、100%の遵守率が達成できます。

ウソ その5:バーやレストランの売上が減る

間違っています!カナダ、アイルランド、イタリア、ノルウェー、エルパソ、ニューヨークなどの調査によれば、室内禁煙の実施後関連業界の売上は横ばいもしくは増加する事が示されています。
真実:中立機関が厳密に実施した調査のなかでこれまでに禁煙法施行後経済が悪化したという結果がひとつも報告されていないのに、タバコ産業は、バイアスのかかった不正確な調査結果を引き合いに出して、偽装組織を通じて受動喫煙禁止法制定を遅らせたり断念させる策動を続けながら、経営者や政策決定者に禁煙法は経済を悪化させると吹き込み続けるでしょう。

ウソ その6:タバコを吸う権利と選択の自由の侵害だ

間違っています!室内喫煙禁止法は喫煙者の権利を侵害するものではなく、人々の健康を守るためのものです。
真実:タバコを吸わない人の方がタバコをすう人よりもずっと多いのです。また喫煙者の多くが禁煙したいと思っているのです。喫煙者の多くは、自由意志のもとにタバコを吸うことを選んだのでなく、タバコに含まれるニコチンに対する依存症のためにタバコを吸わない事を選べなくなっているのです。有毒物質の混じっていないきれいな空気を呼吸する権利は、他人が吸う空気を汚染する喫煙者のいかなる種類の人権にも優越する根本的に重要な権利なのです。合法的な商品を使用する場所の確保とか権利を保障するかどうかというレベルの問題ではありません。室内で喫煙すると他人の健康を危険にさらすのだから、室内では喫煙をすべきでないということなのです。

以上