新しい日本禁煙学会認定専門指導者・認定指導者制度について
2010年7月11日掲載 2011年10月5日補足

日本禁煙学会認定委員会 常任委員会
     作田学、栗岡成人、高橋正行、加藤正隆、久保田 聰美、北野正剛
     檜垣實男、北村諭、相沢政明、戸田紘子


現行の日本禁煙学会認定専門指導者・認定指導者制度を厚労省の基準に合わせるために、以下のように認定制度の改定を行います。
適用は2011年1月から(第9回認定試験は2011年3月予定)になりますが、詳細は今後変更される可能性もあり、決定次第、順次追加掲載します。
赤字が改定部分

1. 認定指導者資格取得について
卒後3年以上で、禁煙指導歴が3年あり、禁煙学会会員であれば、認定指導者試験を受けることができる。(現行のまま)

2. 認定指導者資格取得者が専門指導者資格を取得する場合について
認定指導者に合格して3年経って、5年間の禁煙指導歴と禁煙講習会での講師歴または禁煙学会発表または学会誌発表などがあり、日本禁煙学会研修カリキュラムを履修した者は、認知行動療法、動機づけ面接法などに関する課題について論文を書き、他の書類とあわせて事務局に送り、合格すれば、専門指導者となれる。
ただし、医療の国家資格あるいはこれに準ずるものを持たない者を除く。(新規定)
→第8回認定試験(2010年9月)までに認定指導者の資格を取得しておられる方については旧規定に従いますのでこちらをご覧下さい

3. 専門指導者資格取得について
卒後5年以上、5年間の禁煙指導歴と禁煙講習会での講師歴または禁煙学会発表または学会誌発表などがあり、禁煙学会入会歴が5年以上で、日本禁煙学会研修カリキュラムを履修した者は、専門指導者試験を受けることができる。
合格すれば、専門指導者となる。ただし、医療の国家資格あるいはこれに準ずるものを持たない者は、受験できない。(新規定)

得点が80%に満たず、60%以上をとった場合は認定指導者とする。(現行)

「医療の国家資格あるいはこれに準ずるもの」について詳しくは学会事務局までお問い合わせ下さい。

主な変更点
・専門指導者の受験資格に、日本禁煙学会研修カリキュラムの履修が必須となります

・認定指導者資格をとってから、専門指導者資格をとる場合の条件が厳しくなります
 改定前:経過期間2年、試験不要 → 改定後:経過期間3年、日本禁煙学会研修カリキュラムの履修必要、論文必要
医療の国家資格あるいはこれに準ずるものを持たない人は、専門指導者にはなれなくなります(認定指導者にはなれます)
 つまり、医療の国家資格あるいはこれに準ずるものを持たない人にとっては、第8回試験が専門指導者になる最後の機会になります。



認定制度のプログラムについて
日本禁煙学会研修カリキュラム

 本学会専門指導者制度は、日本の人々がより高い水準の禁煙治療や禁煙・防煙教育を受けられることで、国民の健康・福祉に貢献することを目的としている。本研修カリキュラムは、研修途上にある者がめざすべき到達目標を設定したものである。カリキュラムは研修病医院あるいは研修関連病医院にておこなう。


 カリキュラムの大綱を以下に示す。各項目については研修レベルを段階表示した。
1.A、Bは知識のレベルで達成目標である。
 A:内容を詳細に理解している。
 B:内容を概略理解している。
2.a, bは理解・実施・活用できる能力のレベルあるいは症例の受け持ち経験のレベルを示す。
 a :独立して完全に実施できること。
 b :見学も含めて経験すること。

(1)喫煙の医学
1.タバコ煙の成分
 A.タバコ煙に含まれる成分
 B.タバコの添加物
 C.マイルド・ライトの欺瞞性
A
2.能動喫煙による疾患
 A.喫煙と寿命
 B.悪性腫瘍
 C.循環器疾患
 D.脳血管障害
 E.慢性閉塞性肺疾患(COPD)
 F.その他の肺疾患
 G.糖尿病
 H.消化器疾患
 I. 慢性腎臓病(CKD)
 L. 産婦人科疾患
 M. 子どもへの影響
 N. 認知症、精神疾患
 O. スモーカーズフェイス
 P. 歯周疾患
Ab
3.受動喫煙による疾患
 A. 受動喫煙の影響
 B. 化学物質過敏症
 C. 受動喫煙防止による効果
Aa
4. 受動喫煙症の診断 Aa
5. 受動喫煙症の治療と予防 Aa
II. 禁煙の医学
1.タバコをやめさせる基本原則
 A. タバコの依存性
 B. 禁煙の心理学
 C. やめかたの基本原則
Aa
2.薬局・薬店での禁煙指導・支援
 A .薬の種類、副・相互作用
 B. 薬局・薬店での禁煙指導
Ab
3.医療機関での禁煙指導・支援
 A. 禁煙外来に必要な物品 Aa
 B. 経口治療薬の種類と副作用 Aa
 C. 保険適用と治療のガイドライン Aa
 D. 5A、5Rなどの指導法 Aa
 E. ニコチン置換療法を使った指導法 Aa
 F. バレニクリンを使った指導法 Aa
 G. 子どもに対する禁煙支援 Ab
 H. 女性に対する禁煙支援 Ab
 I. 妊婦に対する禁煙支援 Ab
 J. 精神疾患患者に対する禁煙支援 Ab
 K. 禁煙後の肥満 Aa
 L. 歯科の禁煙支援 Ab
 M. 病院・診療所の薬剤師の役割 Ab
 N. 禁煙外来における看護師の役割 Ab
 O. 看護師・保健師の役割 Ab
 P. 行政保健師の役割 Ab
 Q. 外来治療からのドロップアウト防止策 Aa
 R. 治療終了後の再発防止 Aa
 S. 日常の一般診療・健診での禁煙勧奨 Aa
III. 世界の潮流と日本の現状
1.受動喫煙の防止
 A. FCTC第8条
 B. 世界の潮流
 C. 日本の現状
 D. 介護と禁煙
 E. タクシーと禁煙
 F. サービス産業と禁煙
 G. 病院の敷地内禁煙の方法
 H. 精神科単科病院の禁煙
 I. 大学の禁煙化
B
2.禁煙教育
 A. FCTC第12条
 B. 幼稚園・小学校・中学校での教育
 C. 高校・大学での教育、成人へ向けた教育
 D. スポーツとタバコ
B
3.タバコの値上げ
 A. FCTC第6条
 B. 世界の潮流
 C.  日本の現状
B
4.タバコのパッケージ
 A. FCTC第11条
 B. 世界の潮流
 C. 日本の現状
B
5.タバコ広告の禁止
 A. FCTC第13条
 B. 世界の潮流
 C. 日本の現状
B
6.タバコ規制で各国が守らなければならない事
 A. FCTC第5条3項
 B. 世界の潮流
 C. 日本の現状
B
7.タバコ栽培の危険性と代換作物 B
8.ネオシーダー、禁煙草、電子タバコなどについて   A
IV 認知行動療法
 A. 理論               Aa
 B. 実践 Aa
V. 動機づけ面接法
 A. 基礎               Bb
 B. 実践 Bb

参考書
1.日本禁煙学会:禁煙学、改訂第二版、南山堂、東京、2010
2.イヴィングス:喫煙の心理学、産調出版、東京、2007
3.ミラー他:動機づけ面接法、星和書店、東京、2007
4.ロルニック他:動機づけ面接法 実践入門、星和書店、東京、2010