禁煙会誌 第3巻第4号 2008年8月1日


目次



《原著論文》 看護学生の禁煙に関する研究の動向 中田芳子
 
《総 説》 喫煙と薬の相互作用
~薬物代謝酵素チトクロームP450 1A2の誘導による影響を中心に~

前田真貴子
 
《特別寄稿》 サービス業(バー・レストラン・ホテル等)を法律で完全禁煙にしても売り上げは減らなかった
―海外の経験のまとめ―

松崎道幸
 
《報 告》 第14回世界禁煙デー・宮城フォーラム
「女性とタバコとアンチエイジング」2008年5月31日(土)開催

田浦勝彦
 
《資 料》 WALK AGAINST TOBACCO 2006 WEEK 11 REVISITED Mark Gibbens
 
《記 録》 日本禁煙学会の対外活動記録(2008年6・7月)

日本禁煙学会雑誌第3巻第4号 2008年8月
第3巻第4号PDF版
(1,286KB)




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《原著論文》

看護学生の禁煙に関する研究の動向

東海大学医療技術短期大学
中田 芳子

連絡先
〒259-1201 神奈川県平塚市南金目143 東海大学医療技術短期大学
  中田芳子
  TEL 0463-58-1211(内線)5423
  e-mail : yoshi27@keyaki.cc.u-tokai.ac.jp

キーワード:看護学生、禁煙、禁煙教育、文献研究、防煙教育

はじめに
 看護職の禁煙に関しては、日本看護協会が2001年に「看護職とたばこ・実態調査」を行ったところ、喫煙率は25.7%で、そのうち女性の喫煙率は、24.5%で、男性は54.4%であった1)。そのため、日本看護協会では「2006年までに看護職の喫煙率を半減する」「職場での喫煙をゼロにする」を目標に『たばこのない社会をめざして、看護者たちの禁煙アクションプラン2004』を作成した。この指針を元に組織的に活動し、目標の2006年に実態調査を行った。その結果、喫煙率は19.9%に減少し、女性は18.5%、男性54.2%となり、女性看護職の喫煙率が低下したが、男性は横ばいという状況であった。中でも20歳代は2001年には27.8%だったが、2006年には18.1%と大幅に低下している2)
 このプランには、看護学生の防煙・禁煙教育の推進という内容が盛り込まれており、国民の健康を担う専門職として行動できる、看護者育成のための教育や禁煙環境の推進が必要であるとしている。人々の健康を守る専門職の初学者である看護学生に禁煙教育をすすめていくことは、看護職の禁煙にも繋がる。しかし、看護教育基礎調査(2003年)3)によると看護教育機関の防煙教育は遅れている。
 そこで、本研究では、これまでの看護学生の喫煙の実態調査や禁煙支援及び教育に関する研究論文からその動向を分析し、研究課題を明らかにすることを目的とする。

研究方法
1.研究デザイン 文献研究
2.文献抽出経過
 「看護学生and禁煙and喫煙」というキーワードで「医学中央雑誌Web」と「JSTPlus、JMEDPlus」で検索した。1997年度~2006年度の10年間の原著論文を検索したところ、「医学中央雑誌Web」では27件、「JSTPlus、JMEDPlus」は21件ヒットしたが、相互の重複が10件あった。また、テーマや内容が違っていたものを削除した結果、31件を対象とした。

結果
1.年度別文献数(図1
 1997年度から1999年度は1件ずつ、2000年度と2001年度は5件であったが、2002年度には3件となり、2003年度は1件に減少、2004、2005年度は6件で、2006年度は2件であった。
2.研究内容別分類(表1
 研究内容を分類したところ、看護学生の喫煙の実態に関する研究は22件で、その内訳は、ある特定の集団の実態調査15件、看護学生と他の集団との比較5件、その他2件であった。看護教育における禁煙教育の効果の研究は7件であり、その他は2件になった。
3.看護学生の喫煙の実態
1)看護学生の喫煙率(表23
 2004年の「たばこのない社会をめざして、看護者たちの禁煙アクションプラン2004」(以下「アクションプラン」と略す)が発表された前後で、喫煙率を整理したところ、1997年~2003年は8.3~34.9%で、アクションプラン後の2004年~2006年では5.8~22.4%となっていた。研究対象となる学生の背景や調査方法の違いにより、喫煙率に大きな差があった。
2)喫煙開始年齢、喫煙動機及び影響要因
 喫煙開始年齢は、看護教育機関(看護専門学校、短期大学、大学)入学前に多く、中学校、高等学校から継続して喫煙している4-7)という結果であった。
 喫煙の動機は「なんとなく」や「友人との関連」8-13)が多く、看護教育機関に入学後、学年が上がるほど喫煙率が高くなる14)という結果であった。その要因として、佐藤15)は看護学生の場合、臨床実習時間数が多く、実習での多様な人間関係に直面することによってストレスが高くなることを指摘している。鈴木16)も喫煙行動を変化させるためにはストレスとうまくつきあう方法や工夫を見出すことが必至としている。
 葛西ら17)によると喫煙者は、学習意欲の低い者が多いとし、渡辺18)は飲酒、ストレス、不眠、身近な人の喫煙が喫煙の影響要因となっていると述べている。山崎ら19)は母親から娘への喫煙の伝播が示唆されるとし、緒方ら20)は、「両親とも喫煙」、「きょうだいが喫煙」する家庭で生活している学生は喫煙学生が多いとしている。
3)保健医療従事者の喫煙に対する捉え方
 大林ら21)によると看護学生は、医療職の禁煙の必要性について半数が個人の自由と捉えていると指摘している。また、木勢22)の調査でも喫煙者は「保健医療従事者であることと禁煙は無関係」と考えている傾向があると述べている。ほとんどの学生が看護職の喫煙について分煙を条件に容認しているという結果もある23,24)
図1 年度別文献数
図1 年度別文献数
看護学生の禁煙や喫煙に関する文献は、次第に増加してきている



表1 研究内容別文献数

内 容

件数

看護学生の喫煙の実態に関する研究

22

 ある集団の実態調査

(15)

看護学生と他集団との比較

 ( 5)

その他

 ( 2)

看護教育における禁煙教育の効果の研究

7

その他

2

看護学生の喫煙実態に関する研究が7割程度を占めており、他に禁煙教育の効果の研究があった



表2 看護学生の喫煙率の推移

19972003年 8.334.9%

2004年 「看護者たちの禁煙アクションプラン」発表

20042006年 5.822.4%

アクションプラン後、看護学生の喫煙率は少し減少している

表3 研究対象者別看護学生の喫煙率

研究発表年度

調査年

研究対象者

看護学生の喫煙率(%)

1998

1997

首都圏の看護学生421

26.0

1999

1999

A県内看護学生585

23.8

2000

 ―

B看護系短期大学生169

24.5

2000

 ―

C看護専門学校生62

34.9

2000

1997

D県内の看護系大学、短期大学、看護専門学校生1040

31.5

2001

2001

E看護系大学、短期大学生229

10.3

2001

1999

F県看護系短期大学生191

13.0

2002

2001

G看護系短期大学生308

9.3

2002

 ―

H県の看護専門学校生101

17.8

2003

2000

全国の看護学生4169

24.6

2004

2003

I県の看護系大学、短期大学、専門学校生

24.6

2004

2002

J県看護系大学、専門学校生1943

17.3

2004

 ―

看護系大学生55

8.3

2004

2003

K県内の看護系大学生320

14.8

2004

 ―

L県内看護学生875

22.4

2005

2004

看護系大学生

9.0

2005

2001

N県下の看護系大学、短期大学生743

6.2

2005

2005

O看護系短期大学生148

5.8

2006

2006

P看護系短期大学生133

7.5

研究対象学生の教育機関、地域、人数等によって喫煙率は違っているが、大きな流れでみると喫煙率は年々減少してきている


4)看護学生と看護師の喫煙行動の関連
 鈴木25)は、看護学生、看護職ともにストレス解消の手段として喫煙していると述べている。大井田26)は、看護学生と新人看護師の喫煙行動を調査し、看護教育機関では、在学中に喫煙防止教育が不十分であること、友人の喫煙動向は看護学生及び看護師の喫煙行動に影響していると指摘し、そのために喫煙行動の開始を防止できる教育が必要としている。また、関島27)は、看護教育における禁煙指導者の養成が課題としている。
5)その他
 大井田ら28)によるコーホート研究で看護専門学校生の1年間を追跡調査している。その結果、1年間で喫煙率が5~10%上昇し、友人の喫煙行動が看護学生に影響していることが明らかになった。
荒木ら29)は、喫煙している看護学生に対して、フォーカスインタビューを用いた研究をしている。その結果、喫煙をとおして仲間意識が働いていること、ファッションや理想の女性像を求めて喫煙していることが明らかとなり、看護職者としての倫理観を刺激するかかわりや喫煙仲間同士の禁煙の取り組みが必要、と指摘している。
4.看護教育における禁煙教育
 基礎看護教育で禁煙教育を行い、その効果を検討した研究が7件あった。高橋30)は、外来講師による禁煙教育を実施した結果、学年が上がっても喫煙率は増加しないで推移した、と報告している。寺山ら31)は、学年進行に合わせて禁煙教育プログラムを組み、講義、小テスト、グループワーク、ロールプレイングを取り入れた内容を実施し、ある程度の禁煙効果をあげた、としている。また、寺山ら32)は、禁煙教育プログラムに加えて学生間での禁煙サポートを行った結果を報告している。これは、禁煙サポーター役の学生が禁煙トライアルに参加してきた喫煙している学生を3か月間、電話や携帯電話メールで支援するというものである。
 岡田ら33-35)は、禁煙教育プログラムの中に講義、グループディスカッションを取り入れ、その後、講義を受けた学生が禁煙用自主学習教材を使用して、周囲の喫煙者に禁煙を呼びかけるという教育方法を開発している。
緒方ら36)は、短期大学2年生に対して、身近な喫煙者に禁煙教育を行う課題を設定した結果、「喫煙の害」に対する理解を深めたとしている。
5.その他
 川根37)は、看護師国家試験に出題された喫煙の問題を定期試験に出題したところ全問正解者は5%、という調査から喫煙と健康障害に関する正しい情報提供が必要と述べている。鷲尾ら38)の研究は、看護師を対象に看護学生のときの喫煙状況を調査し、有能な看護師を養成するためには看護教育における防煙・禁煙教育は不可欠、と指摘している。

考察
1. 看護学生の喫煙の実態
 喫煙率に関しては、調査方法や対象とする集団によって差があった。このことについて岡田39)も同様の傾向を指摘し、その要因として喫煙者の定義の違いによる問題、調査方法、対象者の地域性等が関連していると述べている。  
 桜井ら40)の全国調査によると2000年での看護学生の喫煙率は24.6%で、助産師学生の22.1%や保健師学生13.0%に比較して高率となっている。また、2005年国民栄養調査による20~29歳の女性の喫煙習慣者18.9%であり、これと比較しても高率である。今回使用した文献では、アクションプランが発表された2004年以降も5.8~22.4%となっており、大幅な喫煙率の低下は難しい現状であると推測できる。
 喫煙開始の年齢は、看護教育機関入学前が多く、入学後、学年が上がるほど喫煙率が高くなっている。その影響要因の一つとしてストレスがあり、「なんとなく」「友人」が吸っているので吸い始めた、というつながりが明らかになった。そして、そのストレスを抱えたまま看護師になり、更なるストレスから喫煙を継続したり、新たに喫煙する看護師もいるという構図がみえてくる。
 そのストレスを他の方法で解消できれば良いのだが、喫煙と健康障害の知識が不十分なため、喫煙を個人の自由と考えている傾向がある。だからこそ、看護学生が喫煙と健康障害に関して十分な知識を持ち、保健医療従事者の倫理問題として喫煙はすべきではない、と考えられるような禁煙教育が必要ではないかと考える。
 研究方法としては、アンケート調査がほとんどであったが、喫煙者のフォーカスインタビューはユニークな取り組みである。今後、看護学生の喫煙の実態を把握し、禁煙支援をする上で有用な研究方法ではないかと考える。
2.看護教育における禁煙教育
 文献の分析から禁煙教育の方法は、集合教育や個別教育が工夫されていて、禁煙教育を行うことによる効果も明らかになっている。しかし、2003年度の看護教育基礎調査で防煙教育を教科外でしている施設は、41.4%41)にすぎず、積極的に取り組んでいるとは言い難い状況である。このような背景が看護学生の知識不足の要因の一つになり、看護学生は、保健医療従事者としての禁煙の必要性が理解できにくいのだと考えられる。
 禁煙教育の開始時期としては、加藤42)も指摘しているように、入学初期に看護職の責務として禁煙の必要性を説明し、その後、系統的に学年進行に合わせて各科目で触れることができるとよいのではないかと考える。しかし、三徳43)は、看護教育に用いられている教科書には禁煙についての記述が少ないと述べている。そのため、集団指導と同時に個別指導も合わせて取り組み、学生自ら行動することによって知識が定着するよう働きかけることも必要であると考える。
3.結果及び今後の研究課題
 結果として、看護学生の喫煙率は、若い女性と比較して高率であること、看護学生は看護師養成機関入学前に喫煙を開始している等が確認できた。今後の研究の課題としては、①喫煙率を低下させるためには、看護学生の特殊性を考慮した影響因子を検討していく、②研究方法としては、フォーカスインタビューや個別面接も有用、③看護学生に対する禁煙教育として、入学後早期に看護師の責務として、禁煙すべきことを説明し、以後系統的に参加型の教育方法を取り入れて教育する必要がある、等があげられる。
 本論文の要旨は、第2回日本禁煙学会(2007年8月、東京)で発表した。

引用文献
1) 社団法人日本看護協会:2001年「看護職とたばこ・実態調査」報告書.2002;13.
2) 社団法人日本看護協会:2006年「看護職とたばこ・実態調査」報告書.2007;4.
3) 社団法人日本看護協会:2003年「看護教育基礎調査」.2003;20.
4) 関島香代子:新潟県における看護学生・看護師の喫煙行動と喫煙に対する禁煙支援行動の状況-卒前卒後看護師における喫煙関連教育カリキュラム導入をめざして-.新潟医学会雑誌 2005;119(9):540.
5) 関島香代子、関奈緒、鈴木宏:国立大学看護教育機関における看護学生の喫煙行動と喫煙に関する意識.新潟大学医学部保健学科紀要 2001;7(3):322.
6) 斉藤智子、山元智穂、杉田収他:看護学生の喫煙行動及び喫煙意識と喫煙防止教育のあり方.新潟県立看護短期大学紀要 2002;8;29.
7) 柳川育子、吉田広美、村上静子:看護学生に対する「たばこ」調査の結果と今後の方向性-禁煙・防煙態度の向上及び環境の改善を目指して-. 京都市立看護短期大学紀要 2005;30:1.
8) 吉田広美、柳川育子:看護学生の喫煙に関する認識と禁煙・防煙意識の向上にむけて-看護学生に対するたばこ調査の結果から-. 京都市立看護短期大学紀要、2006;31:33.
9) 斉藤智子、山元智穂、杉田収他:看護学生の喫煙行動及び喫煙意識と喫煙防止教育のあり方.新潟県立看護短期大学紀要 2002;8;29.
10) 大林浩幸、蓑谷淑子、鷹野千賀子他:JA岐阜厚生連看護専門学校生の喫煙状況調査結果. 日本農村医学会誌 2002;5(1);37.
11) 大井田隆、尾崎米厚、岡田加奈子:看護学生、新人看護婦の喫煙行動関連要因. 学校保健、1998;40:335.
12) 矢島まさえ、大野絢子、秋山美加他:喫煙に対する意識と行動に関する調査研究-看護短期大学学生の実態から-. パース看護短期大学紀要 2000;3(1):14.
13) 安藤正子、小川忍、倉田トシ子他:山梨県内の看護学生の喫煙に対する意識調査、第35回日本看護学会. 看護教育 2004;90.
14) 大井田隆、尾崎米厚、岡田加奈子:看護学生、新人看護婦の喫煙行動関連要因. 学校保健、1998;40:339.
15) 佐藤隆子:看護学生の喫煙行動とセルフエフィカシーとの関連、第30回日本看護学会. 看護教育. 1999;73.
16) 鈴木由美:看護職の喫煙行動に影響を及ぼす因子-栃木県内の看護学生597名、病院看護職597名へのアンケート調査から-.桐生短期大学紀要 2004;15:13.
17) 葛西敦子、本間久美子、花田久美子他:看護学生の喫煙と学習意欲・精神的健康との関連. 日本看護研究学会雑誌 2001; 24(1):69.
18) 渡辺孝子:看護学生の喫煙行動と影響要因、第36回日本看護学会. 看護教育 2005;115.
19) 山崎由美子、中山和美、久保田隆子他:看護系大学における女子学生の喫煙と健康に関する実態調査-喫煙防止対策の模索にむけて-. 母性衛生2005;45(4):406.
20) 緒方巧、本多容子:本学学生の喫煙実態と授業による禁煙・防煙教育の効果. 藍野学院紀要 2002;16:65-66.
21) 大林浩幸、蓑谷淑子、鷹野千賀子他:JA岐阜厚生連看護専門学校生の喫煙状況調査結果. 日本農村医学会誌 2002;5(1);37-38.
22) 木勢育子、丸銭笑子、井岡道子他:石川県下の全看護学生の受動喫煙に関する実態調査(第1報)-喫煙状況の実態-. 北陸公衆衛生学会誌 2004;31(1):27-28.
23) 大林浩幸、蓑谷淑子、鷹野千賀子他:JA岐阜厚生連看護専門学校生の喫煙状況調査結果. 日本農村医学会誌 2002;5(1);37.
24) 斉藤智子、山元智穂、杉田収他:看護学生の喫煙行動及び喫煙意識と喫煙防止教育のあり方.新潟県立看護短期大学紀要 2002;8;32.
25) 鈴木由美:看護職の喫煙行動に影響を及ぼす因子-栃木県内の看護学生597名、病院看護職597名へのアンケート調査から-.桐生短期大学紀要 2004;15:15-16.
26) 大井田隆、尾崎米厚、岡田加奈子:看護学生、新人看護婦の喫煙行動関連要因. 学校保健、1998;40:339.
27) 関島香代子:新潟県における看護学生・看護師の喫煙行動と喫煙に対する禁煙支援行動の状況-卒前卒後看護師における喫煙関連教育カリキュラム導入をめざして-.新潟医学会雑誌 2005;119(9):543.
28) 大井田隆、石井敏弘、尾崎米厚他:看護学生の喫煙行動および関連要因に関するコーホート研究. 日本公衆衛生学会誌 2000;47(7):562-570.
29) 荒木節子、坂本真理子、金子宏他:フォーカスグループインタビューの手法を用いた看護学生の喫煙意識に関する研究. 教員と実習指導者 2005;2(1):107-115.
30) 高橋美砂子:喫煙防止教育の開始時期が3年課程看護学生の喫煙に与える影響. 秋田県看護教育研究会誌 2006;31:8-12.
31) 寺山和幸、福良薫、守村洋他:将来の看護職者の喫煙行動とライフサイクル. 北方産業衛生 2001;43:21-24.
32) 寺山和幸、船根妃都美、結城佳子他:短大看護学生による喫煙学生に対するサポート.北海道公衆衛生学雑誌 2004;18:104-107.
33) 岡田加奈子、川田智恵子:看護学生に対する喫煙に関する教育プログラムの検討. 日本看護研究学会雑誌 1998; 21(1):27-38.
34) 岡田加奈子、川田智恵子、畑栄一、受講した看護学生の「喫煙に関する授業」への受け止め. 日本看護研究学会雑誌 2002;25(1):27-38.
35) 岡田加奈子、川田智恵子、中村正和他:看護学生の実施した「禁煙の呼びかけ」に対する評価. 日本健康教育学会誌 2001;9(1~2):27-37.
36) 緒方巧、本多容子:本学学生の喫煙実態と授業による禁煙・防煙教育の効果. 藍野学院紀要 2002;16:69-72.
37) 川根博司:看護学生における喫煙の知識に関する調査、日本赤十字広島看護大学紀要.2001;1;29-32.
38) 鷲尾昌一、和泉比佐子、稲葉佳江他:看護師の喫煙経験と喫煙に対する意識-大学病院での調査から-. 看護教育 2006;47(2):184-187.
39) 岡田加奈子:女子短期大学生の期中煙行動の実態及び関連要因の検討. 帝京平成短期大学紀要 1992;2:41.
40) 桜井愛子、大井田隆、竹村真治他:わが国における看護学生、保健婦学生、助産婦学生の喫煙の実態調査. 厚生の指標 2003;56(6):9-16.
41) 社団法人日本看護協会:2003年「看護教育基礎調査」.2003: 20-22.
42) 加藤清司:たばこ対策の現状と課題-福島県立医科大学敷地内禁煙にあたって-. 福島県立医科大学看護学部紀要 2006;8:5.
43) 三徳和子:看護学生のためのたばこ教育を考える. 看護教育 2004;45(9):760-766.



The trend of the study about anti-smoking of nursing students

Yoshiko Nakada
Tokai University Junior College of Nursing and Medical Technology

This study was literature review about anti-smoking of nursing students. The documents were 31 cases, ten years of 1997-2006.
As a result: The smoking prevalence of nursing students was higher than young women. Many students began to smoke before they entered the nursing school.
As a future research subject:We should investigate an influence factor of smoking of nursing students in detail, because they are feeling a lot of stress. It is important to adopt interview or group interview as research methods. We must begin education of anti-smoking as soon as nursing students entered the school. And we need to adopt education of participation type.

Key words: nursing students, anti-smoking, education of anti-smoking, literature review


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《総 説》

喫煙と薬の相互作用
~薬物代謝酵素チトクロームP450 1A2の誘導による影響を中心に~

前田真貴子1,2、増永結子1、大野雅子1、藤尾 慈1、東 純一1

1. 大阪大学大学院薬学研究科 臨床薬効解析学分野
2. 兵庫医療大学 薬学部 医療薬学科

連絡先
〒650-8530
神戸市中央区港島1-3-6
兵庫医療大学薬学部医療薬学科ゲノム薬理学講座
  前田真貴子
  TEL: 078-304-3143 FAX: 078-304-2843
  e-mail: makikom@huhs.ac.jp

キーワード:喫煙、薬物相互作用、薬物動態学、薬物代謝酵素、CYP1A2

1. はじめに
 2剤以上の薬物を併用する際、相互作用により憂慮すべき事態が引き起こされることは、いわゆる、「のみあわせ」として医学薬学の専門家ではない患者にも理解されている。一方、飲食物・嗜好品(グレープフルーツジュース、喫煙・アルコール等)が薬と相互作用を起こすことは、臨床上軽視することのできない事例にも関らず、十分な注意喚起がなされていない。
 相互作用の機序は、薬物動態学的相互作用と薬力学的相互作用の2つに大別される。薬物動態学的相互作用は、投与された薬物の体内動態(吸収、分布、代謝および排泄)の各過程で生じる相互作用で、薬物の血中濃度や作用部位の濃度が変動することにより薬理作用の増強や減弱が生じる。一方、薬力学的相互作用では、併用された薬物同士が同一あるいは異なる部位(レセプターなど)に作用する結果、薬理作用の増強や減弱が起こる。
 喫煙者が薬物を服用すると、喫煙行為により体内に取り込まれる種々の物質が薬物動態学的あるいは薬力学的相互作用を引き起こし、薬効の減弱や病状の悪化などに繋がることが知られている。例えば、喫煙により引き起こされる薬物動態学的な相互作用の代表薬として、気管支拡張薬テオフィリンがある1-5)。しかし、確かな科学的根拠もなく、喫煙により影響を受けると流布されている医薬品も少なくはない。一方、薬力学的相互作用を引き起こす薬には、アドレナリン遮断薬およびアドレナリン作動薬が挙げられる6)。例えば、アドレナリン遮断薬の場合、喫煙によって体内に取り込まれたニコチンがアドレナリン遮断薬と受容体を介して薬力学的に拮抗作用を示し、アドレナリン遮断薬の薬効を抑制する。このように、薬力学的相互作用の大半については、ニコチンが交感神経終末からのカテコールアミン遊離や大動脈体及び頚動脈小体の受容体活性に関与し、血管収縮、頻脈、血圧上昇をもたらすというニコチンの薬理作用7)との関連から説明可能である。
 以上のような背景から、本稿では、喫煙によって薬物動態学的に影響を受ける医薬品について、特に明確なエビデンスがあるものを取り上げ、解説する。尚、本稿で言う「喫煙」は喫煙行為とその結果、化学物質が体内に取り込まれ、排泄されるまでの全ての過程を示すものである。

2. 薬物代謝
 喫煙と医薬品との相互作用は、薬物代謝酵素、特にチクロームP450 (CYP)の誘導を介して生じる。一般に、体内に取り込まれた薬物は小腸で吸収され、門脈を経て肝で代謝を受け、全身に分布される。この時、脂溶性の薬物は、主に肝細胞にある薬物代謝酵素CYPやその他の酵素の働きによって代謝され、水溶性を増して体外へ排泄されやすい代謝物へと変化する。
 ヒトの薬物代謝酵素CYPには40種類以上の分子種が存在するが、CYP3A (約30%)、CYP2C(約20%)、CYP1A2(約13%)、CYP2E1(約7%)、CYP2A6(約4%)、CYP2D6(約2%)およびCYP2B6(1%未満)でCYP全体の70%以上を占める8)。これら薬物代謝酵素は、生体が異物にさらされる環境条件(他の薬物との併用や生活習慣など)下で、その発現や酵素活性が影響を受ける。すなわち、異物によって薬物代謝酵素の発現が誘導されたり、酵素活性が阻害されたりすることで、薬物の血中濃度がそれぞれ低下あるいは上昇する。各CYP分子種によって代謝される物質(基質)と酵素誘導や活性阻害を引き起こす物質については、日々情報が更新されておりhttp://medicine.iupui.edu/flockhart/table.htmを参照されたい。

3. 喫煙による薬物動態学的相互作用の機序
 喫煙による薬物動態学的相互作用は、タバコ煙に含まれるがん原物質である多環芳香族炭化水素類(Polycyclic aromatic hydrocarbon;PAHs)が薬物代謝酵素CYP 1A1、1A2、2E1を誘導することによるとされている9-10)。なかでも、CYP1A2 は、抗精神病薬(クロザピン、オランザピン、ハロペリドール)、抗うつ薬(クロミプラミン、塩酸イミプラミン、フルボキサミン)、キサンチン系気管支拡張薬(テオフィリン)、βブロッカー(塩酸プロプラノロール)など多数の医薬品を代謝し11-12)、これらの薬物と喫煙との薬物動態学的相互作用における重要性が報告されている。ニコチン、アセトン、ピリジン、ベンゼン、一酸化炭素、重金属などもタバコ煙に含まれおり薬物代謝酵素を誘導するが、薬物動態学的相互作用への影響は現在のところ少ないとされている。CYP1A2で代謝される薬剤(基質薬物)で、喫煙との薬物動態学的相互作用に関し文献報告があるものを表1にまとめた。
 これらの薬剤は、喫煙によりCYP1A2が誘導されることにより代謝が促進される。その結果、喫煙者では非喫煙者と比べてこれら医薬品のクリアランスの増大、血中濃度下面積(Area Under the Curve;AUC)や血中濃度の低下が起こり、薬効が減弱する。喫煙者にこれらの薬物を投与する際には、有効血中濃度を維持するために投与量の増量や投与間隔を短くするなど、薬効維持のための処方変更が必要となる。一方、禁煙すると、CYP1A2の酵素誘導が解除され薬物の血中濃度が上昇するので、投与量の漸減もしくは投与間隔の延長が必要になる。
 留意すべきは、これらの薬物動態学的相互作用はタバコ煙に含まれる PAHs によって引き起こされるので、受動喫煙者においても代謝酵素の誘導が起こる可能性が否定できない点である。すなわち、受動喫煙者においても喫煙者と同様の注意が必要となる。事実、テオフィリンについては、受動喫煙で代謝が亢進することが報告されている13)

表1.喫煙との薬物動態学的相互作用が報告されているCYP1A2で代謝される薬剤(基質薬剤)
薬効 CYP1A2基質薬剤 喫煙による影響 参考文献
気管支拡張薬 テオフィリン クリアランスの上昇、半減期の減少、    分布容積の上昇、  禁煙によりテオフィリンの中毒症状があらわれることがある。 1-5
鎮痛薬 カフェイン 血中濃度の低下、クリアランスの上昇 14-16
ホルモン剤 エストラジオール 血中濃度の低下、クリアランスの上昇 17, 18
抗うつ薬 (三環系) 塩酸アミトリプチリン 血中濃度の低下 19
クロミプラミン 血中濃度の低下 20
塩酸イミプラミン 血中濃度の低下 21
抗うつ薬(SSRI) フルボキサミン 血中濃度の低下、  AUCの減少 22, 23
抗精神病薬(ベンゾジアゼピン系) クロザピン クリアランスの上昇、血中濃度の低下 24
抗精神病薬(SDA) オランザピン 血中濃度の低下、   クリアランスの上昇 25-27
抗精神病薬(ブチロフェノン系) ハロペリドール 血中濃度の低下 28
局所麻酔薬 塩酸ロピバカイン水和物 尿中排泄が増加 29
β遮断薬 塩酸プロプラノロール クリアランスの上昇 30
抗不整脈薬 メキシレチン クリアランスの上昇、半減期の低下 31
筋萎縮性側索硬化症用薬 リルゾール クリアランスの上昇 32
痙縮・筋緊張治療薬 塩酸チザニジン 血中濃度の低下、半減期の減少、AUCの減少 33



4. TDM対象薬
 治療域が狭く、相互作用が多い薬物に対しては血中濃度モニタリング(Therapeutic Drug Monitoring; TDM)が適応される。表1に示した薬の中でも、テオフィリン、ハロペリドール、メキシレチンは臨床的に血中濃度のモニターが重要で、TDM対象薬として挙げられている。これらの医薬品では、喫煙による薬物血中濃度の低下、それに伴う薬理作用の減弱や病状の悪化に特別な注意が必要となる。一方、これらの医薬品服用中に禁煙を実施すると、喫煙によるCYP1A2誘導が消失し、医薬品の代謝速度が元に戻る。すなわち、クリアランスが減少、AUCや血中濃度が上昇し、喫煙時の服用量を維持し続けると中毒域へと達する。実際、テオフィリン服用患者において、禁煙後TDMに基づく投与量の調節を行わなかったことで血中濃度が中毒域に達し、死に至った事例が報告されている。従って、これらの薬物については禁煙治療時に服用量をチェックするとともに、TDMが適正使用に重要な情報をもたらす。

5. 禁煙後の管理
 禁煙後に薬物代謝酵素CYP1A2の酵素活性が誘導前の状態に戻るのに要する時間については、1週間以上34-35),という報告がある。しかし、酵素誘導および誘導された酵素が誘導前の状態に戻るのに要する時間には個人差があり、禁煙後、上述のようなTDMが推奨される医薬品では、血中濃度測定あるいは薬効の経時的変化の観察を行い、投与量を調節する必要があることを銘記すべきである。また、TDM対象薬物を用いて治療を行う際、治療開始時に非喫煙者であっても、治療開始直前まで喫煙歴があれば薬物代謝酵素CYP1A2の酵素誘導が残存している可能性も否定できず、適正な薬物療法を行う上で、患者の喫煙歴を把握することは重要である。

6. おわりに
 本稿では、喫煙の影響を受ける薬物動態学的相互作用について、科学的な根拠のあるCYP1A2の基質となる医薬品のみに絞って概説した。これら全ての相互作用が臨床的な意義をもつわけではなく、投与量や薬剤を変更する必要のない相互作用もある。また数々の相互作用に関する報告中にも一定の見解を得ることのできないものもあるが、それらの原因としては、CYP1A2遺伝子多型の存在や人種差、臨床試験時の対象患者群の違いなどの複合的な要因があると考えられる。
 すべての薬との相互作用を考えて処方することは困難であるが、作用機序の明らかな相互作用を熟知することは、薬物治療における、期待した効果の減弱・副作用発現の可能性の予測に繋がる。さらに、喫煙との相互作用の可能性を排除するためにも、「患者のみならずその家族を含めた周囲の人々の禁煙は必須」との認識を喚起すべきである。本総説の結論として、喫煙の直接的な健康被害のみならず、薬物の適正使用の観点からも、禁煙活動および禁煙治療の強力な推進の意義を強調したい。

参考文献
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25) ジプレキサ®医薬品インタビューフォーム 2005年7月(改定第9版); p 36
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27) Bigos KL, Pollock BG, Coley KC, et al. Sex, race, and smoking impact olanzapine exposure. J Clin Pharmacol 2008; 48:157-65.
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31) Labbe L, Turgeon J. Clinical pharmacokinetics of mexiletine. Clin Pharmacokinet 1999; 37:361-84.
32) Bruno R, Vivier N, Montay G, et al. Population pharmacokinetics of riluzole in patients with amyotrophic lateral sclerosis. Clin Pharmacol Ther 1997; 62:518-26.
33) Backman JT, Schroder MT, Neuvonen PJ. Effects of gender and moderate smoking on the pharmacokinetics and effects of the CYP1A2 substrate tizanidine. Eur J Clin Pharmacol 2008; 64:17-24.
34) Lee BL, Benowitz NL, Jacob P, 3rd. Cigarette abstinence, nicotine gum, and theophylline disposition. Ann Intern Med 1987; 106:553-555.
35) Faber MS, Fuhr U. Time response of cytochrome P450 1A2 activity on cessation of heavy smoking. Clin Pharmacol Ther 2004; 76:178-184.



Review on Drug-Smoking Interacitions caused by Cytochrome P450 1A2 induction.

Makiko Maeda1,2、Yuiko Masunaga2、Masako Ohno2、Yasushi Fujio2、Junichi Azuma2

Drug interactions can sometimes lead severe health problems to human bodies, and it is important for health-care providers to understand the mechanisms of drug interactions, especially clinical significant interactions.
Smoking can also evoke the drug interactions, and the mechanisms are classified roughly into two groups, the pharmacokinetic (ie, the relationship between the administered dose and the concentrations of the drug in the systemic circulation) and pharmacodynamic (ie, the relationship between concentrations of the drug in the systemic circulation and observed pharmacologic response) interactions. Polycyclic aromatic hydrocarbons (PAHs) in tobacco smoke work as potent inducers of the hepatic cytochrome P-450 (CYP) isoenzymes 1A1, 1A2, and, possibly, 2E1. Then, PAHs play important roles for the drug interactions with smoking.
In this review article, we focus on the pharmacokinetic drug interactions with smoking, mainly caused by CYP 1A2 inductions, and summarize the drugs known as the CYP1A2 substrates, such as theophylline. In addition, we mention the effects of passive smoking and smoking cessation on the drug interactions from the pharmacokinetic aspect.


Key words:Smoking, Drug interactions, Pharmacokinetics, Drug metabolizing enzyme, Cytocrome P450 1A2 (CYP1A2)


1.School of Pharmacy, Hyogo University of Health Sciences
2.
Department of Clinical Pharmacology and Pharmacogenomics, Graduate School of Pharmaceutical Sciences Osaka University


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《特別寄稿》

サービス業(バー・レストラン・ホテル等)を法律で完全禁煙にしても売り上げは減らなかった
―海外の経験のまとめ―

深川市立病院
松崎道幸

連絡先
〒074-0006
北海道深川市6条6番1号 深川市立病院
  松崎道幸
  TEL 0164-22-1101 Fax 0164-22-5929
  e-mail: matsuzak@maple.ocn.ne.jp

キーワード:屋内喫煙禁止法、サービス産業、経済影響

要 約
 サミット参加先進8か国中、イギリス、フランス、イタリアが全国レベルでアメリカ、カナダが大半の州で公共施設、職場、バー、レストランを法律により完全禁煙としている一方、日本、ドイツ、ロシアでは屋内禁煙法制そのものが存在しない。レストラン・バー・ホテルなどのサービス産業を法律で禁煙にしたことで生ずる経済影響を論じた100件近い研究のレビューによれば、客観的指標に基づき、長期的総合的な分析手法を用い、タバコ産業の資金提供を受けず、査読システムのある専門誌に掲載された研究調査のほとんどすべてが、サービス産業完全禁煙法令によるマイナスの経済影響は生じないとの結論を出していたことが明らかになった。ニュージーランドでは、屋内禁煙法の施行後もサービス産業の売上にマイナスの影響は発生せず、諸都市諸州でのホテル禁煙条例施行後の米国においても、日欧からの観光客は減らなかった。これらの知見は、サービス産業を完全禁煙としても、売り上げの減るおそれがないことを示し、飲食娯楽施設完全禁煙法制が関連業界に経済的悪影響を与えるとする主張に根拠がないことを示すものである。


はじめに
 サミットに参加する先進8か国中、イギリス・フランス・イタリアおよびカナダ・アメリカの州の大半が、公共施設・民間職場、バー・レストランなどのサービス産業を法律で完全禁煙としている(表1図1)。日本はドイツ・ロシアとともに受動喫煙対策後進国となっている。
 現在、日本の各地で、受動喫煙防止のために、公共施設は言うまでもなく、職場、飲食店の完全禁煙を法律で決めるべきだという声が沸き起こっている。これに対して、バー・レストラン・飲食店などのサービス産業を完全禁煙にすると売り上げが落ちる恐れがあるという理由で反対する声も少なからず上がっている。
 レストランやバーなどのサービス産業を完全禁煙にすると、売上はどうなるだろうか?サービス産業に悪影響があるだろうか?これらの問いに対する答えはすでに出ている。以下にそれを紹介する。

EBMに基づいた研究によれば、サービス業の完全禁煙による売り上げの低下はない
 最近10数年間にバーやレストランの完全禁煙によってサービス産業にどのような経済影響がもたらされたかを検討した論文は90件以上発表されている。そして完全禁煙が売り上げを減らした、増やした、変わらなかったなど様々な結論が報告されている。しかし、研究の内容を詳しく見ると、経営者の印象や根拠のない主観的推測を判断材料として用いた信頼性の疑わしい「論文」もあれば、増収・減収の客観的指標となる課税額や雇用者数・倒産統計などを根拠とした信頼性の高い研究もある。また、サービス業の禁煙化を防ぎたいと思っている直接の利害関係者=タバコ産業の資金を直接的あるいは間接的に受け取った研究も全体の3分の1を占めており、そのような研究の「結論」がタバコ産業の意向に沿うよう出されている懸念も大きい。
 したがって、客観的で、しっかりした手法で実施され、タバコ産業の資金援助を受けていない研究の結論がどのようなものかを知ることが、サービス産業禁煙化の経済影響を正しく判断するカギとなる。
 Scollo(オーストラリアビクトリア州タバコ対策センター)等は、2003年までに公表されたサービス産業の完全禁煙化に伴う経済影響に関する研究調査約100件についてその質を詳しく検討した2)。本稿では、まず、この論文の要旨を紹介する。
 特定の業界が特定の政策によりどのような経済影響を受けたかを正しく知るには、いくつかの要点を押さえる必要がある。Scolloは、Siegelのクライテリア(客観的指標、十分な観察期間、適切な統計学的処理、経済全体のトレンドに基づいた総合判断の4項目)に沿って研究を評価することが重要だと述べている。(表2)。Siegelのクライテリアの最初に挙げられている客観的指標とは何か、主観的指標とどのように違うかについてScolloらは次のように説明している。

 結論的指標が「客観的」とみなされるのは、独立の機関が日常的に収集しているデータで、かつ禁煙法の施行前後の十分な期間をカバーしたものである必要がある。客観指標には、課税のために収集している売上高、雇用保険のために政府機関に報告される雇用状況のデータ、営業許可申請書または認可行政当局の登録に基づく新規のあるいは既存の事業所数、そして破産データである。
 真偽の証明の出来ない将来の予測あるいは営業成績や顧客の支出の最近の変化についての推測は「主観的」と分類される。主観的指標には、禁煙法実施の前あるいは後に行われた、レストラン・バーなどのサービス業の経営者や利用者へのアンケート調査、インタビューなどの個別体験、自己報告データが含まれる。

 学術論文の価値は、その論文の手法が客観的であるだけでは不十分である。その論文あるいは著者が利害関係のある業界から資金援助を受けていないかどうか、さらに、掲載に値するかどうかを事前に審査する「査読」制度(peer review)のある専門雑誌の論文であるかどうかでも大きく左右される。表3に示す3項目にそって点検するだけで、その論文のおよその学問的価値が判断できる。
 さて、Scolloらが検討対象とした100件近い論文の学問的質とタバコ産業の資金授受との関連を調べたところ、タバコマネーをもらわない研究はもらった研究の5倍客観的指標に基づいており、論文審査のある専門誌に掲載されている率が18.5倍高かった。一方タバコマネーをもらった研究のなかでSiegelのクライテリアすべてを満たしたものはひとつもなかった(表4)。
 質の高い研究はサービス産業の完全禁煙がどのような経済影響をもたらしていると結論していたか?それを表5に示した。Siegelの全クライテリアを満たしている研究のすべて、客観的指標に基づいた研究の8割、論文審査のある専門誌に掲載された研究の96%、タバコマネーを受け取っていない研究のすべてが経済的悪影響なしとの結論を出していた。つまり、質の高い研究のほとんどは、サービス産業の完全禁煙によってマイナスの経済影響がもたらされることはないとの結論を出していた。
 一方、完全禁煙がマイナスの経済影響をもたらすと結論を出した研究とはどのようなものだったか?表6にそれを示したが、Siegelの全クライテリアに合致したものは皆無で、8割が主観的指標に基づいてものを言い、論文審査のある専門誌に掲載されたものはわずか3%で、タバコマネーを受け取っていない研究はひとつもなかった。

 ここで、参考のために、タバコ産業がスポンサーとなってはいるが、表5で「質の高い研究」に分類された3研究の内容を紹介する。Applied Economics調査3)は、禁煙条例が施行された2か月後の1996年7~8月の売上を昨年同時期の売上と比べたものである。売上税を禁煙条例の影響の指標として採用した点は適切だが、前年だけでなく、先行する数年間の平均トレンドとばらつきを基準点としてデータを評価しなかった欠点がある。Dunhamら4)の調査は、タバコ産業の資金をもらっている研究のうち唯一ピアレビュー雑誌に掲載されたものであるが、フィリップモリス社員が研究に参加している。この研究は、喫煙区域の面積と経営者の営業成績の予測が関連するという仮説のもとに、サービス業の38%が減収となるだろうと予測した。しかし売上税のデータを見ると、この予測が誤りだったことが明らかとなった。Laventholら5)は、ビバリーヒルの完全禁煙条例施行中のある特定の3ヶ月間の売り上げの増減を示したが、無作為に選ばれたのではない6軒のレストラン経営者の証言を根拠としているため結論の客観性が損なわれている。

 Scolloらは、この論文の結論を以下のように述べている。

 しっかりとしたデザインのもとで実行された研究のすべてが、バー・レストランの完全禁煙法が売り上げや雇用を悪化させなかったという結論を出していた。政策決定者は自信をもって経済的に悪影響が生ずると主張する関連業界の主張を跳ね返して、受動喫煙の有害物質から顧客と従業員を守ることができる。

 バー・レストランを完全禁煙としても経済的には不変もしくはプラスとなるというのが、これまでの世界各国における実体験で得られた客観的事実である。

ニュージーランド禁煙法
 Scollo論文の発表後、ニュージーランドのバー・レストラン・クラブ・カジノは2004年12月から法律で全面禁煙となった。この法的対策実施によってニュージーランドのサービス産業にもたらされた経済影響について紹介する。ニュージーランド喘息呼吸器財団6)によれば、全国の売上は、レストラン・カフェではそれまでの増加傾向を維持し、バー・クラブならびに酒類小売は従来と同じレベルを維持していた(図2)。また、政府統計によれば、サービス産業の雇用者数は禁煙法施行後も減少しなかった(図37)

アメリカのホテル業界・観光業界
 Glantzら8)は、米国各地のバー・レストラン完全禁煙法施行がホテル収入と海外からの観光客数に及ぼす影響を検討した。図45に示すように、禁煙法の導入前に是非に関する論議があった4州と5都市では、完全禁煙後もホテルの売上は増加し、1都市で横ばいとなっていた。
 また、カリフォルニア州とニューヨーク市への日本、ドイツ、アジア、ヨーロッパからの観光客数は禁煙法施行後も増加あるいは横ばいだった(図6)。
 以上から、アメリカでは、州または都市単位で屋内完全禁煙法を施行しても、ホテル業あるいは観光業への悪影響は生じなかったということが言える。

おわりに
 レストラン・バー・ホテルなどのサービス産業を法律や条例によって完全禁煙としても、売り上げが減るなどの経済的悪影響は発生しなかった。これが、禁煙法を施行した世界各地で実際に観察された事実である。もちろん、よしんば、ある程度のマイナスの経済影響が予測されたとしても、受動喫煙をなくすことにより非喫煙者の命と健康を守る法令の実施が優先されなければならないのは言うまでもない。しかし幸いなことに、受動喫煙防止とサービス産業の経営の安定は両立することがわかった。わが国でも、この事実に沿って1、2年以内にすべてのサービス産業を含むあらゆる公共の場、職場の完全禁煙を実現するよう急速に努力を強める必要がある。

引用文献
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6) Asthma and Respiratory Foundation of New Zealand. Aotearoa New Zealand Smokefree Workplaces: A 12-month report. Wellington, Asthma and Respiratory Foundation of New Zealand, December 2005. http://www.asthmanz.co.nz/files/PDF-files/Aotearoa_NZ_Smokefree_Workplaces_12_month_report.pdf.Accessed: January 2006より2008年6月10日にダウンロード
7) Thomson G, Wilson N : One year of smokefree bars and restaurants in New Zealand: Impacts and responses. BMC Public Health. 2006; 6: 64.
http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?artid=1475576より2008年6月10日にダウンロード
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表1 北海道洞爺湖サミット参加8カ国における法律による屋内完全禁煙実施率.
松崎道幸まとめ.2008年6月現在.

表1.北海道洞爺湖サミット参加8カ国における法律による屋内完全禁煙実施率.松崎道幸まとめ.2008年6月現在.

図1 屋内禁煙法のある米州数の推移.規制範囲別.1960~2003年.(引用文献1)
図1 屋内禁煙法のある米州数の推移.
規制範囲別.1960~2003年.(引用文献1)


表2.屋内禁煙法の経済影響に関する研究の質についてのSiegelのクライテリア(引用文献2)
表2.屋内禁煙法の経済影響に関する研究の質についてのSiegelのクライテリア(引用文献2)

表3.政策決定者が研究の質を判別するために利用できる簡易テスト(引用文献2)
表3.政策決定者が研究の質を判別するために利用できる簡易テスト(引用文献2)

表4.タバコ産業の資金(タバコマネー)授受と研究の質(引用文献2)
表4.タバコ産業の資金(タバコマネー)授受と研究の質(引用文献2)

表5.質の高い研究の結論(引用文献2)
表5.質の高い研究の結論(引用文献2)

表6.経済悪影響ありとした研究の質(引用文献2)

表6.経済悪影響ありとした研究の質(引用文献2)

図2.禁煙法施行前後のニュージーランドのレストラン・バー4半期毎売上高
図2.禁煙法施行前後のニュージーランドの
レストラン・バー4半期毎売上高

縦軸 売上高(100万ドル)(引用文献6)

図3.ニュージーランドにおける2003~2005年の飲食サービス業雇用者数(千人.フルタイム換算)(引用文献4)
図3.ニュージーランドにおける2003~2005年の
飲食サービス業雇用者数(千人.フルタイム換算)

(引用文献7)
◆パブ・バー・居酒屋 ■カフェ・レストラン  △クラブ

図4.禁煙条例前後のホテル収入の変化(1)(引用文献5)
図4.禁煙条例前後のホテル収入の変化(1)
(引用文献8)
縦軸=ホテル収入(1997年ドル換算).横軸=西暦
完全禁煙法施行前=○ 施行後=●
図5.禁煙条例前後のホテル収入の変化(2)(引用文献5)
図5.禁煙条例前後のホテル収入の変化(2)
(引用文献8)

図6.禁煙条例と年間外国人観光客数の関係.(引用文献5)
図6.禁煙条例と年間外国人観光客数の関係.
(引用文献8)
縦軸 海外からの観光客数(年間 千人)横軸=西暦
完全禁煙法施行前=○ 施行後=●
カリフォルニア州(日本)とニューヨーク市(ヨーロッパ)で禁煙条例施行後海外からの観光客が有意に増加した.*禁煙条例施行後有意の変化あり。ユタ州におけるドイツ観光客数の変化は有意でない。

Complete smoking ban have no negative economic impact on hospitality industry: summary of studies worldwide

Michiyuki Matsuzaki, MD.
Fukagawa City Hospital, Hokkaido,Japan

Among eight Summit countries, smoking is prohibited by law or ordinance in England, France, Italy and most of USA and Canada states. But Japan, Germany and Russia have no indoor smoke free legislation. According to a review of nearly one hundred papers about economic impact of smoking ban in hospitality industries, most of studies by objective indices, without accepting tobacco money, with relevant statistical methods revealed no negative economic impact. Recent research after the implementation of total smoking ban in New Zealand and USA showed no decrease in revenues of hospitality industries or in numbers of guests from abroad. These findings denied a case that total smoking ban had negative economic impact on hospitality industry revenue.


Key words:smoking ban, hospitality industry, economic impact

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《報 告》

第14回世界禁煙デー・宮城フォーラム
「女性とタバコとアンチエイジング」2008年5月31日(土)開催


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田浦勝彦

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キーワード:世界禁煙デー、宮城フォーラム、タバコの害

 第14回宮城フォーラムは世界禁煙デーに、エル・パーク仙台ギャラリーホール(141ビル6F)で、「女性とタバコとアンチエイジング」をテーマに開催したので報告する。
 当日は、生憎の雨模様であったにも係らず118名の参加者を得て、医療分野の各専門家7名のシンポジストによるスライド講演を中心に、特に女性にとって<タバコは健康にも美容にもマイナスである>ことが示された。
 フォーラムの冒頭、NPO法人禁煙みやぎの山本蒔子理事長は「今回は主催者のNPO禁煙みやぎが本年1月に特定非営利法人の認証を受けてから初めてのフォーラムであること。昨年度のタバコ調査によると、宮城県の女性の喫煙率は悪い方から全国一番の13.7%であった(参考文献)ので、本フォーラムのテーマを取り上げた」と開会の挨拶で述べた。
 「女性とタバコとアンチエイジング」シンポジストの要点をまとめる。
① 「肌の老化とタバコ」花田勝美氏(弘前大学医学部附属病院)は喫煙者特有のスモーカーズフェイスをあげて、双子の姉妹で喫煙習慣の有無による差を示した。
② 「歯肉とインプラントとタバコ」川村秋夫氏(宮城野区川村歯科医院)はタバコが口臭や歯肉のメラニン色素沈着を引き起こすだけでなく、非喫煙者に較べて2〜6倍も歯周病のリスクが高く、喫煙者の歯周病は発見が遅れやすいことを示した。また、歯の喪失に対する処置にインプラント治療にとっても、喫煙者では7倍のリスクを抱えているため、本療法に際してとりわけ喫煙者での治療は禁忌であると指摘した。
③ 「眼の病気とタバコ」吉田晶子氏(平成眼科病院)はタバコ煙の中の一酸化炭素が網膜に酸素不足を来たし、またニコチンが血管収縮作用ために、加齢黄斑変性症という50歳以降に好発する網膜の黄斑部が障害される。これの原因にタバコがあげられ、眼を健康に守るために<タバコを吸わない>ことが第一であると結んだ。
④ 「女性における心臓血管系への影響」佐藤 研氏(JR仙台病院健康管理センター)は、女性の喫煙はエストロゲンの心臓血管保護作用を阻害して非喫煙女性に較べて冠動脈疾患リスクを5倍以上高めること、また、喫煙者が経口避妊薬を使用すると冠動脈疾患のリスクを増すことから、女性における喫煙の害について注意を喚起した。
⑤ 「肺とタバコ」安達哲也氏(NTT東日本東北病院内科)は呼吸器系のタバコ病について解説し、肺がん発症リスクの低下、気管支喘息の発作予防と治療による緩和、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の発症予防と進行遅延のために禁煙を勧めた。
⑥ 「骨とタバコ」西尾美栄子氏(西尾美栄子整形外科)は喫煙者の骨密度は非喫煙者のそれに比して低く、喫煙が骨の成長を妨げ、骨粗鬆症のリスクを高めるなど、喫煙は骨にも悪影響を及ぼすことを強調した。
⑦ 「妊婦と胎児へのタバコの影響」岩本 充氏(NTT東日本東北病院産婦人科)は外来データから、全体の8%の妊婦が喫煙の胎児への危険性を知りながら喫煙して、その約半数は切迫流産、胎児発育遅延、妊娠中毒症になり、体重が平均して200g少ない赤ちゃんを出産したことを報告して、喫煙の悪影響を指摘して、タバコの煙のない健康な生活を送れるように訴えた。
 会場から、禁煙の実際的な方法についての質問や喫煙の美容だけでなく、スポーツに対する影響に関する質問も出された。さらに、16名の参加者から感想が寄せられ、喫煙の全身に及ぼす悪影響を学べたとの感想と、もっと喫煙の害について問題提起する必要性を感じたとの意見もあった。
 本シンポジウムは女性、タバコ、アンチエイジングをテーマとしたが、女性のみなならずすべての人々に<タバコは百害あって一利なし>を実証することとなり、<タバコのない社会>の実現を目指して閉会した。
 会場の一角にはお肌チェックとして肌年齢測定コーナー、肺年齢測定コーナーが設置されて、人気を集めた。
 本シンポジウムと並行して、同会場に防煙教育スライド、女性と喫煙、小中学生のポスターを禁煙週間期間中に展示した。さらに、JR仙台駅の新幹線改札広場にも禁煙啓発ポスターを掲示した。
 また、本フォーラムは河北新報6月4日に「禁煙美人になろう」との見出しで紹介されたことを付記する。

参考文献 
加藤一晴、作田学:47都道府県喫煙対策の実際.禁煙会誌 2007;2


図1 
図1 第14回宮城フォーラム「女性とタバコと
アンチエイジング」のシンポジウムの一幕





図2 
図2 禁煙スライドとポスターの貼付
(エル・パーク仙台)
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《WAT特集》

WALK AGAINST TOBACCO
2006
WEEK 11 REVISITED

Mark Gibbens

 なぜ、歩こうと思ったか
 鹿児島の佐多岬から、北海道の宗谷岬までの約3000kmを歩いて、このメッセージを伝えていきたいと考えています。

 あなたの健康を大事にして下さい。
 あなたの家族を大事にして下さい。
 あなたの友達を大事にして下さい。
 あなたの国 を大事にして下さい。
 禁煙は愛です!


 なぜ私がこのキャンペーンを計画したか、それは私はオーストラリアから来ています。オーストラリアは喫煙率の低い国です。でも、昔からではありません。人々が喫煙、受動喫煙の危険を知り、今の数字になっていったのです。政府はとても明確な喫煙の害のCMを流し、タバコの表示も写真付きでわかりやすくしています。タバコ税も高く、建物、バーであっても禁煙エリアは何%と法律で決まっています。
 今、世界の多くの国が禁煙の動きになってきています。政府の広告も日本に比べ、とてもはっきりと喫煙の危険を警告しています。
 ところが、日本は成人男性の47%が喫煙者と、驚く数字です。
 また、若い女性の喫煙率は増えていっているようです。
 これは、喫煙、受動喫煙の危険性の認識がそれほど重要視されてないからではと思いました。ただ、体に悪いとは知っていても、どう悪いのかといった知る機会がない。三度の食事より口にするのに何が成分でそれはどう体に影響する、またその煙の方が害があるのに、その影響もあまり知られていない。吸う人も吸わない人もそこを知る機会もなく、禁煙、分煙と言われてもただ困惑し、憤慨すると思います。それを知るべきだ、知ってもらいたいと歩く事にしたのです。
 また、私自身が主にICUの看護師でした。多くの医師、歯科医師が禁煙を推進しています。吸い続ける事がどんな事になるか、知っている私達が教えてあげなくてはいけない。治す事だけが、医療ではなく予防をする事も医療だと思います。こうして、歩くことも私の日本においてできる看護師としての仕事の一つと考えています。
 こうして、歩く事ははたして意味があるのかと思われるかもしれません。でも、何もしないよりした方がいいと思っています。このメッセージが一人でも多くの人に伝わるきっかけになればいいなと願い、遍路姿で歩きます。


前号からの続き―

 June 22nd 2006 and a short but fast Day 71 walk saw Mr Tsunokane and I arrive at Honshu’s most northerly point, Omazaki, at 12:30pm to be welcomed by a local NHK camera man along with local personality Ms Shima and some of her “Blue Sky” group waving banners and presenting a t-shirt to commemorate my arrival at the top of Honshu. We had a brief lunch here, then an even shorter 3km walk to the ferry port to purchase our tickets to Hokkaido. With time to spare we visited the local onsen for a bath and a freshen-up before returning to the ferry port to bid farewell to Mr Tsunokane, the camera man and the Blue Sky supporters as they waved their huge colourful flags in a memorable send-off to Hokkaido.
 At this stage I must say a special thankyou to Mr Tsunokane who at 73 years of age, walked with me for five days and though his shorter legs couldn’t always keep up with my pace, he pushed me along and kept me working hard. I hope I am as energetic and community spirited when I reach his age. I know I wont be able to do the one-handed push-ups and hand stand that he demonstrated to the school students we visited.
 Anyway, it was with mixed emotions that I said goodbye to Honshu and hello to Hokkaido, but I think with the finish within our grasp, mostly Reiko and I were just tired and counting down the days to the finish, unaware of the wonderful people we were yet to meet in the northern island.
 After disembarking at Hakodate from our one hour forty minute ferry ride we were immediately asked to do an interview for the local newspaper, then a short drive to the Hakodate Kokusai Hotel where we met Dr Yuri Nakata and Dr Endo (our local host) just as they were entering the hotel reception room for the nights anti-smoking presentation to about 40 doctors. Dr Nakata looked lovely as usual and gave a wonderful presentation about passive smoking and her analytical research. Reiko and I followed on from this with our own brief 5 minute presentation about anti-smoking activities around the world which went 8 minutes over time, for which we later apologised. Again I would like to say a big thankyou to Dr Endo for his hard work in providing the symposium and our accommodation and to Dr Nakata for giving up some of her own presentation time to incorporate us.
 The next day, despite being a rest day for us, we were honoured to accompany Dr Nakata and Dr Endo at 7am to the Hakodate Fish Market to test the levels of passive smoke in the market with Dr Nakata’s sensing equipment. As a measure of Dr Nakata’s friendship, she extend her stay and together she and Reiko spent the afternoon exploring Hakodate whilst I chained myself to the computer and updated my blog and webpage until we met again for a relaxing dinner.
 The following day, after breakfast and another newspaper interview about my anti-smoking initiative, we headed back to the ferry port with Dr Nakata and the reporter to begin my first days walk in Hokkaido. After some photos for the paper and saying goodbye to Yuri-chan I set off north travelling along the long valley created by the low lying green hills surrounding this port town. I had woken up feeling good but not long into the walk my body began to feel tired and lethargic and I never really got out of first gear all day, despite the beautiful scenery as I climbed the pass out of Hakodate and wound my way through volcanic lakes and peaks across the neck of the peninsular to Mori. I was so exhausted after walking the 42km that upon arriving at our business hotel I immediately took a nap. An onsen bath later in the evening and some dinner revived me a little but I still went to bed quite early.
 On a pleasant morning the next day I set off with the ruptured cone of Mt Komagadake at my back and the large expanse of Funka Bay to my right looking much like Port Phillip Bay in Melbourne, minus the big city, as I headed towards Oshamanbe. The morning was made even more pleasant by a phone call from my parents in Australia as I walked along looking towards the hazy landforms across the bay to which I would eventually arrive. The afternoon brought a new challenge that I hadn’t previously experienced in Japan; a monotonously straight and flat road for as far as the eye could see. Still, by putting my head down and concentrating on my feet I completed my third longest walking day just before 7pm and joined Reiko at the small guest house for dinner.
 On a cool misty Day 75 morning, I increased the pace by running along the long flat stretch of beach heading out of Oshamanbe. Unlike the previous day’s sunshine, this morning’s grey sea met a grey sky with no opposing coastline to separate the view. After 10km the beach ended abruptly with craggy cliffs and the road turned inland climbing into the misty mountains. A thin fog was wafting through the stunted pines and with spasmodic traffic there was little to disturb the silence except the rasp of my breathing and the occasional moan of a boat horn in the distance. Hokkaido was certainly proving to be different and despite the lack of people to read my “No Smoking is Love” flag I did enjoy the solitude as I travelled through this region. The scene again changed as the road dipped back to sea level then rose again to a table-land dotted with vegetable farms and horse studs more reminiscent of north America than the Japan I had become accustomed to. Thus I finished my days walk at the 88km marker from Sapporo and drove with Reiko down to our guest house at Lake Toya, being made famous as I write by the G8 summit.
 Day 76 was a wet and misty morning as I set out from the “88km to Sapporo” marker with my red safety light flashing and protected from the weather by my Gore-Tex rain suit. However at my walking pace I soon became hot and sweaty so during a lull in the rain I reverted to my Henro clothes. The rain to spite me returned heavier than ever and I was soon saturated, walking in soggy socks and squelching shoes, but making good time by running to keep warm. Much of the afternoon was spent on an uphill climb to Nakayama Toge Pass, not as steep as the road to Hakone but it felt longer in the gloomy weather. It would have been easier to have had a holiday today at Lake Toya but there were too many events that had been organised in Sapporo and I didn’t want to disappoint the hard working people that had organised them so I forged ahead. Once at the top of Nakayama Toge Pass it was all down hill through layers of cloudy mist with my flashing red lights hopefully alerting the increasing number of cars to my presence on the road as I walked for the last hour to Jozenkai Onsen town where Reiko had organised a very reasonable room in a hotel for retired city office workers. After the included dinner we did a short relaxing walk through the town, stoping at the frequent public foot baths to relax my aching feet.
 The final day of week 11, I was joined at the start by Mr Toyama for the spurt into Sapporo City. Unfortunately for him, after the curative waters of Jozankei I was feeling in very good condition, travelling down hill with a slight breeze at my back I walked the first 30km in 4 hours leaving him to twice hop on a bus to catch up with me. By lunch time I had reached Sapporo Central Train Station, where Reiko had by chance organised an interview with a journalist who was actually covering a story about the City’s “No Walking Tobacco” area patrol. In summary if people are caught smoking within the designated 800m x 2km area they are fined a mere 1000 yen; still its better than nothing and it is having a deterring effect.
 A couple more hours walk in the mid afternoon and I reached Shin-Sapporo Town and the Sapporo Social Insurance General Hospital where the Hospital Director, Dr Hata had kindly organised a billet for us in the Hospital’s dormitory accommodation. With an added rest day the next day and some free time this night we decided after 77days to allow ourselves a personal indulgence and went to the movies. Forgetting about tobacco issues for a few hours we enjoyed Tom Hanks cracking the Da Vinci Code, relaxing our minds before the next round of speaking engagements in Sapporo, but more about that next time.

To be continued・・・

写真1 角金先生と青空組の皆さんと(大間崎)


写真2 大間崎からフェリーで北海道へ


写真3 函館の朝市で粉塵テストをする中田先生と遠藤先生


写真4 6月24日、中田先生ともお別れ


写真5 いよいよ函館港から北海道へウオークスタート

写真6 新聞を見て駆けつけた松野さん、函館新聞も持って


写真7 6月28日、定山渓から札幌までの山道を
一緒に歩かれた遠山さん。

参考サイト:Walk Against Tobacco 2006 (Galleryにいろいろな写真があります)
※WAT:WALK AGAINST TOBACCO


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日本禁煙学会の対外活動記録
(2008年6・7月)
6月23日 「タバコ1箱1000円以上に値上げ」を支持する声明
7月 1日 タスポ・システム全国的稼働にあたっての日本禁煙学会の見解(JT、財務省、厚労省、財務省・厚労省記者クラブに送付)
7月 1日 タバコ自動販売機の廃絶に至る見通しについて~タスポ導入に当たっての声明(JT、財務省、厚労省、財務省・厚労省記者クラブに送付)


日本禁煙学会雑誌
(禁煙会誌)
ISSN 1882-6806

第3巻第4号 2008年8月1日

発行 特定非営利活動法人 日本禁煙学会


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新宿区市谷薬王寺町30-5-201 日本禁煙学会事務局内
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