禁煙会誌 第3巻第1号 2008年2月1日


目次



《原著論文》 タバコの適正価格について 河野正道
 
《原著論文》 3か月の禁煙保険治療終了時の治療効果と今後の課題 栗岡成人
 
《原著論文》 高校生の喫煙に対する認識と禁煙教育の効果 遠藤 明
 
《原著論文》 『健康教育県SAGA「全ての中学生に防煙教育を!」』の取り組み 佐藤智丈
 
《資 料》 日本の鉄道の禁煙化の歴史と今後の対策について 清水央雄
 
《資 料》 第8回アジア・太平洋タバコ対策会議に参加して 宮﨑恭一
 
《資 料》 WALK AGAINST TOBACCO 2006 WEEK 8 REVISITED Mark Gibbens
 
《記 録》 日本禁煙学会の対外活動記録(2007年12月・2008年1月)



日本禁煙学会雑誌第3巻第1号 2008年2月
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《原著論文》

タバコの適正価格について

関西学院大学経済学部 河野正道

キーワード:社会コスト、経済メリット、適正価格

1.はじめに
 タバコの適正価格を社会科学的に導出した研究は少ない。後藤1はそのうちの一つであり、しばしば引用されている。しかし、その導出方法については、経済学の視点から見ると疑問が感じられる。伝統的な経済学の手法によって導出すると、彼が導出した金額である600円よりも高くなると思われる。
 彼が用いたデータ、および社会コスト、経済メリットの定義を用いて計算したとしても、真の適正価格は約1000円となるはずである。さらに、合理的に、社会コスト、経済メリットの定義を変更すると、更に高くなり、約1400円となる。
 本論文の主張は以下の通りである。

a)後藤は、社会コスト=経済メリット、を満たす価格を適正価格として算出しているのであるが、適正価格とは、経済メリットと社会コストの差を最大にする価格のことである。
b)タバコの社会的コストのうち、販売量に比例するのは清掃費用のみ、と後藤は考えているが、医療費などすべての費用が販売量に依存すると考えるべきである。
 以上の方針に従って計算すると、適正価格は当時の約7倍であり、約1400円と導出される。


2.後藤による導出方法
 後藤は、タバコのメリットとして、税収、タバコ関連産業の付加価値、他の産業がタバコ産業との取引によって得た付加価値を挙げている。
 1990年の資料によると、タバコ産業は総額2.8兆円のメリットを生み出した。その内訳は、税金納付1.9兆円、タバコ産業賃金、内部留保0.4兆円、経済波及効果による他産業での賃金支払い0.2兆円、他産業での内部留保0.3兆円、社会的コストは医療費3.2兆円、喪失国民所得2兆円、消防・清掃費用0.2兆円、その他0.2兆円、合計5.6兆円である2。このデータを基にタバコの最適価格を以下のようにして求めている。
 社会コスト5.6兆円のうち、消防清掃費用のみ相対需要に比例するとし、後は固定費と考え、

社会コスト= 

とする。ここではタバコの需要量である。なお、現時点での価格、需要量をそれぞれ1と基準化している。従って、後藤の用語ではおよびはそれぞれ相対需要、相対価格であるが、ここでは単純に、需要および価格と呼ぶことにする.経済メリット2.8兆円は販売金額(価格×需要)に対して比例的に変化するとして 

経済メリット= 

とする。そして、適正価格とは、 

 

社会コスト=経済メリット

(1)

を成立させる価格であるとしている。なお、タバコ需要の価格弾力性は0.2として推計し、その需要関数を 

 

(2)

と仮定している。需要の価格弾力性とは、で定義され、価格が1%変化したときに、需要量は何%変化するかを示すものである。なお、(2)で需要関数が与えられるときには、となり、現時点において、つまりのときにはとなる。このように需要関数を仮定し、後藤は(1)を用いて適正価格をと導出している。つまり、タバコの適正価格は現行価格(当時は200円)の2.9倍であり、約600円であると。
 しかし、経済メリットから社会的な費用を引いた残りである純経済的メリットを最大化する価格を適正価格と考えるべきである。つまり、政策当局に期待されることは、(1)を成立させるような価格を設定することではない。純経済的メリットを最大化することが期待されているのである。以下に、 

 

純経済的メリット=経済メリット社会コスト

(3)

を最大化する価格を求めてみよう。社会コスト、経済メリットについての後藤の定義をそのまま用いると、純経済的メリット 

 

(4)

であるから、この関数のに関する最大化は よりのときに実現され、よって、現在のタバコ価格の約5倍、つまり、約1000 円が適正価格となる。

3.より適切な社会コストと経済的メリットの定義に基づく計算
 後藤は、清掃費のみが比例すると考え、他の社会コストは不変であると考えている。 しかし、第1節のb)で挙げたように、社会コストはタバコの販売量そのものに比例すると考えるべきである。つまり、タバコ販売量が2倍になれば医療費を含め、すべての社会コストも2倍になると考えるのが自然であろう。このように考えると、社会コストはとして表すことができる。 よって最大化するべき純経済的メリットは

 

(5)

となり、この最大値は、より、でもたらされことが分かる。よって、適正価格は現行価格(当時は200)の約7倍となり、約1400円となる。そのときの販売量はとなり、現在の約3割となる。
 なお、一般的に、利潤最大化を目指す企業が設定する価格は税率に依存する。しかし、現在のところ、JTは株式の過半数は政府によって保有されているのであり、よって、政府は税率とは無関係にタバコの適正価格を設定できる立場にある。したがって、本論文では、後藤と同じく、税収は販売金額に比例すると単純に仮定して適正価格を算出した。

4.さいごに
 以上に導出した適正価格の値は、需要関数を(2)のように特定化したことに依存している。需要の価格弾力性は0.2であるという推計値を後藤は示しているが、しかし、これは価格に応じて変化する可能性のある値である。後藤は、この弾力性を価格に比例すると考えて需要関数を(2)のように特定化したのであるが、その根拠は示されていない。現在の価格の近傍での需要関数のみならず、大域的な範囲での需要関数を推計することに成功すれば、導出される適正価格は十分に説得力があるであろう。先に導出した約1400円という適正価格は、需要の価格弾力性が価格に比例し、現時点では0.2である、という前提の下でのものである。なお、山岡3は需要の価格弾力性を0.4としている。仮に0.4として以上に説明した方法で計算すると、適正価格は950円となる。(なお、山岡は弾力性を世界銀行の資料に基づいてマイナスで示しているが、慣習的に絶対値で示すことが多い。この論文ではこの慣習に従い、絶対値で示した。)
 また、需要関数が特定化されたら、喫煙者本人がタバコを消費するときに獲得する喫煙者本人の受ける心理的メリットである消費者余剰も導出することができる。しかし、この消費者余剰を算入するならば、同時に非喫煙者に与える心理的なダメージも考慮に入れなければならない。確かに喫煙者の中にはかなりの高額でも需要する喫煙者は存在し、よって消費者余剰は大きい。しかし、非喫煙者が受ける心理的なダメージもまた大きい。この第三者に対するダメージがタバコ問題の核心である。他人のタバコによる喘息患者の苦しみは、依存症喫煙者がタバコで感じる満足よりもはるかに大きいことは明らかである。このような、金銭的に評価できない第三者に対するダメージとしての外部不経済を考慮の外におくとしても、タバコの適正価格が約1400円となることは、十分に考慮に値することである。
 中原、望月4はタバコの社会的損失を測定しているが、この金銭に換算できない心理的コストについては、「統計データの得られない項目や推量の域を出ないと思われる項目は算出対象から外すこととした」、としている。しかし、経済学の本来の方法としては、消費者余剰のような、金銭的には表に出ないような心理的コストが極めて重要である。したがって、非喫煙者に対するダメージである外部不経済の測定・推計が、タバコ問題の経済分析において今後の重要な課題となるであろう。

文献
1)
 後藤公彦:社会コストを負担した適正価格の算定.In:後藤公彦著,環境経済学概論.朝倉書店,東京,1988p69-71
2)
 後藤前掲書,p.30.
3)
 山岡雅顕:タバコ値上げの必要性.In:禁煙学会編.禁煙学.初版.南山堂,東京,2007p202-206
4)
 中原俊隆,望月友美子:たばこによる社会的損失.In:厚生の指標,199542p3-10


On Optimal Price of Tobacco

Masamichi Kawano
Department of Economics, Kwansei Gakuin University

Goto derived the optimal price of tobacco by the method of cost-benefit analysis. The cost of tobacco includes medical cost, lost national income due to tobacco diseases, etc. The benefit measures economic merits such as the tax revenue and the profit of the tobacco industry, etc. His optimal price equated the social benefit and social cost, however, the true optimal price should equate the marginal social benefit and the marginal social cost, or, it should maximize the social benefit minus social cost. Thus we can derive that the true optimal price is much higher and it is about 1400 yen per package.

Key words: optimal price of tobacco, social cost of tobacco, economic merit.



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《原著論文》

3か月の禁煙保険治療終了時の治療効果と今後の課題

栗岡成人1、師岡康江1、吉井千春2、稲垣幸司3、瀬在 泉4、加濃正人5
1.城北病院
2.産業医科大学呼吸器内科
3..愛知学院大学短期大学部歯科衛生学科
4.筑波大学大学院体育研究科
5..新中川病院

キーワード:禁煙治療、保険医療、禁煙成功率、加濃式社会的ニコチン依存度調査票(KTSND)

1.はじめに
 喫煙は各種のガン、虚血性心疾患、脳血管障害など生活習慣病の最大の危険因子であり、禁煙治療・支援は医療機関の重大な社会的使命である。禁煙治療の保険適用は長年の懸案であったが、2005年秋に禁煙関連9学会の「禁煙ガイドライン」が公開され、喫煙は“喫煙病”という全身疾患であり、喫煙者は“積極的禁煙治療を必要とする患者”である1)という認識が示された。このような流れを受けて、2006年4月から禁煙治療に保険が適用となり、同年6月からニコチネルTTSも薬価収載され、禁煙治療の新しい幕が開いた。今回は城北病院禁煙外来における3か月の禁煙保険治療終了時の成績を報告し、禁煙治療の現状と問題点につき考察する。

2.対象と方法
 2006年4月から2007年3月末までに城北病院禁煙外来を受診した61名を対象に、そのプロフィールを集計し、分析した。初診時に「禁煙治療のための標準手順書第2版」2)の帳票を一部改変したアンケートを施行し、その中から検討項目として、性別、年齢、喫煙開始年齢、1日喫煙本数、喫煙指数(喫煙年数×喫煙本数)、タバコ依存度スクリーニングテスト(TDS)、Fagerström Tolerance Questionnaire(FTQ)、加濃式社会的ニコチン依存度調査票(KTSND)、一酸化炭素(CO)濃度、受診回数、転帰(治療終了時の禁煙成功(禁煙)または禁煙不成功(不成功))、禁煙外来受診のきっかけ、禁煙歴、同居人の喫煙、喫煙の自信度(「全く自信がない」を0%、「大いに自信がある」を100%として0-100%の当てはまる数字を書く)、気になる症状(症状)、治療中の病気(持病)、精神疾患の有無を取り上げた。なお、治療終了時の禁煙成功は3か月の治療終了時に受診しCO濃度測定で禁煙を確認したものとした。統計処理として、男性と女性および禁煙と不成功との比較にはMann-Whitney検定、Fisherの直接確率法を、KTSNDの初診時、終了時の比較にはWilcoxon符号付き順位検定を用い、p<0.05を有意とした(SPSS 11.0J for Windows)。

3.結果
 受診のきっかけは、他の医療機関からの紹介が23%と最も多く、知人・友人・家族の紹介22%、インターネット・ホームページ20%、院内パンフレット・ポスター15%の順であった。その他には、保健所3、院内他科医師2、電話帳などがあった。
 初診患者数の月別の推移に関しては、ニコチネルTTSが薬価収載された6月に14名と一挙に患者数が増え、その後は漸減し、2007年1~3月の初診患者は月3~4人であった。
 受診者61名のプロフィールは、男性35名、女性26名、年齢28~74歳、平均51.7±13.2歳、 喫煙開始年齢13~58歳、平均22.9±8.2歳、1日喫煙本数8~90本、平均27.6±13.8本、喫煙指数200~2,520、平均767.2±469.0、TDS 5~10、平均7.8±1.5、FTQ 3~10、平均6.1±1.9、KTSND 総合得点3~28、平均15.1±4.9、CO濃度4~78ppm、平均25.5±14.5ppmであった(表1)。また、禁煙歴、同居人の喫煙、喫煙の自信度、症状、持病、精神疾患の有無については表2のとおりであった。
 男女別に受診者のプロフィールをみると、女性で喫煙開始年齢が有意に高く、喫煙指数、KTSNDの総合得点が有意に低値であった。また女性で同居人の喫煙ありが有意に多かった。年齢は男性が高く、CO濃度は女性で高い傾向があったが有意ではなかった。その他の項目では男女間に差はなかった。受診者の年齢分布は、男性では50代にピーク、女性では40代にピークがあった。
 受診者61名のうち、3か月の禁煙治療終了者数は38名(62.3%)、途中脱落者は23名(37.7%)であった。なお、このうち5名が手紙、電話等で禁煙していると回答した。治療終了者のうち禁煙成功者は29名、3か月の治療終了時の禁煙成功率は47.5%であった。男女別では、禁煙成功者は男性17名(48.6%)、女性12名(46.2%)で、男女差はなかった。
 3か月の治療終了時点で禁煙成功群(禁煙)と、脱落例を含む不成功群(不成功)を比較すると(表3)、不成功で1日喫煙本数が有意に多かった。喫煙指数、CO濃度は禁煙で低い傾向にあったが有意差はなかった。
 受診回数はプロトコルどおりの5回が19例、次いで6回が10例、3回が7例であった(図1)。受診回数は不成功で有意に少なかった。また不成功で禁煙の自信、同居人の喫煙比率が高い傾向にあったが有意ではなかった(表4)。その他の項目では禁煙と不成功に差は見られなかった。不成功に含まれる脱落群で自信度100%が4名あったが、そのうち3名は禁煙していることが確認された。
 禁煙者におけるKTSND総合得点の推移を見ると、女性では12例中1例を除いて低下しており、初診時平均12.3±3.2、終了時平均7.9±5.5で、初診時に比較して終了時に有意に低下していた(図2)。男性では17例中13例は低下していたが、4例は上昇しており、初診時平均16.5±5.0、終了時平均14.0±7.4で、低下傾向にあるが有意差はなかった(図3)。

4.考察
 保険診療では、ニコチン依存症管理料の算定は5回と決められているが、受診回数はプロトコルどおりの5回が19例、次いで6回が10例、3回が7例であった。受診回数が少ないのは主に途中脱落のためであり、途中脱落者を少なくするための対策が必要である。途中脱落群の中でも禁煙に成功して、その後来院しなくなるものも存在する。これらの人の中には、元々自力でも禁煙可能であったが、禁煙外来を禁煙のきっかけに利用したものもいると考えられる。また精神疾患を有する患者には「こまめな頻回のサポート」3)が必要であり、受診回数は弾力的な運用が望ましい。
 3か月の禁煙治療終了者数は61名中38名(62.3%)で、この成績は中央社会保険医療協議会(中医協)の禁煙成功率実態調査報告4)よりも良好であった。受診時に次回の予約を必ず取ることや、受診中断者に対して3か月目に受診勧奨の手紙を出していることも有効なのかもしれない。
 3か月の治療終了時の禁煙率47.5%は他の報告4,5)よりも若干低い値で、禁煙治療方法にはまだ改良の余地がある。なお、今回は脱落例を禁煙不成功群に含めたが、脱落例には禁煙に成功したものも含まれているので、禁煙率はこの数字よりも高い可能性がある。いずれにせよ3か月の禁煙治療終了時はあくまでも仮のエンドポイントであり、今回の結果は禁煙導入の成績を示していると考えられる。今後少なくとも1年後の禁煙状況で再度分析する必要がある。
 今回の成績では禁煙成功率は男女で差がなかったが、一般に女性は男性より禁煙しにくいといわれている。日本禁煙学会の認定専門医を対象とした調査でも、禁煙成功率は男性58.2%、 女性43.0%であり、明らかに女性における成功率が低値であった5)。女性が禁煙しにくいのは、次のような理由があると考えられている6)。女性は男性よりニコチン依存度が高いといわれている。女性のほうがニコチンの代謝が遅いため、ニコチン依存になりやすいのではないかと考えられている。また女性はタバコからより多くの満足を得ているためタバコを止めにくいのではないかと考えられている。一方、女性では隠れ喫煙や、一人で吸うことが多く、また男性より喫煙による不快な症状が出やすいにもかかわらず吸っているため、自己に対するネガティヴな感情を持ちやすいと考えられる。
 我々の成績では女性は男性よりKTSND総合得点が有意に低いが、禁煙成功率は変わらなかった。KTSNDは、「喫煙の効用の過大評価(正当化・害の否定)」と「嗜好・文化性の主張(美化・合理化)」を定量化する質問群から成り立っている7)。KTSNDは心理的依存の指標とされているが、心理的依存の構成要素を大別すると、タバコの害を軽視して効用を盲信し「禁煙が不必要」と考える要素群と、禁煙の障害を過大評価して、禁煙の自信度が低下し「禁煙は不可能」と考える要素群に分かれると考えられ8)、KTSNDでは後者を十分評価できない可能性があると思われる。女性のKTSND総合得点が低いのは、女性は男性ほど喫煙を肯定的に捉えていないが、女性の喫煙者の方が禁煙は困難と考えるものが多いからかもしれない。あるいは女性ではKTSNDの点数が十分低い、すなわち喫煙を肯定的に捉えていないにもかかわらず禁煙しにくい他の要因があるのかもしれない。
 禁煙者におけるKTSND総合得点の推移を見ると、女性では初診時に比較して終了時に低下して、タバコに対する認知の歪みの改善が示唆された。一方男性では初診時と終了時で低下傾向にあるが有意差はなかった。男性は比較的KTSNDが高くても禁煙しているものがある。しかしKTSNDが上昇した4例は、タバコに対する認知の歪みが解消されず、吸いたい気持ちを我慢する「努力型禁煙」9)で再喫煙の可能性が高いと思われ、今後の経過観察が必要である。KTSNDの値やその推移が禁煙達成度や再喫煙を予測できるか否かは、さらに症例を重ね、長期の予後を観察する必要がある。
 同居人が喫煙するものが、女性に多いのは喫煙率の男女差を考えれば当然の結果である。同居人に喫煙者がいるものが禁煙しにくい傾向にあったことから、内田が指摘するように10)配偶者やパートナーが喫煙することも、女性が禁煙しにくい原因の一つと考えられる。
 禁煙治療の保険適用はわが国の喫煙対策に大きなインパクトを与えたが、制度としては多くの問題点を抱えている。受診者数は、禁煙治療保険適用後一時的に増加したが、その後は低い数字で推移している。中医協の報告書4)によると、ニコチン依存症管理料を算定している施設で1施設あたりの1か月の初診患者数(2006年11月)は2.92人であった。この数字を2007年12月現在の5,002施設に敷衍すると、禁煙治療を受けたものは1年間に約146,000人と推定される。これは日本の成年喫煙者総数約2,700万人の0.5%に相当する。喫煙者は積極的治療を要する患者であるという認識や、タバコを止めたい、減らしたいと考える喫煙者が7割程度といわれていることからして、この数字は非常に少なく、禁煙治療の広報・普及が望まれるところである。
 禁煙治療保険適用の問題点としては、早期に禁煙できると3か月の治療終了時に受診しないものがある、入院患者に適用できない、禁煙指数による制限のため若年喫煙者が治療を受けられない、ニコチン依存管理料の算定回数が限定されている、禁煙に失敗すると1年間は保険治療ができないなどの問題があり、禁煙治療普及のため、保険上の制限撤廃が望まれる。また、禁煙外来受診者を増やし、禁煙成功率を高めるためには、禁煙環境の整備、タバコ代の値上げなど総合的なタバコ対策が必要であることは論を俟たない。

5.まとめ
• 3か月の禁煙治療終了時の禁煙率は47.5%であり、さらなる禁煙率の向上のために、治療・支援方法を改良する必要がある。
• 禁煙治療普及のため、保険上の制限撤廃が望まれる。
• 禁煙外来受診者を増やし、禁煙成功率を高めるためには、禁煙環境の整備、タバコ代の値上げなど総合的なタバコ対策が必要である。

本論文の要旨は、2007年8月第2回日本禁煙学会総会(東京)にて発表した。

謝辞:共著者以外の全ての加濃式ニコチン依存度ワーキンググループメンバーの日頃の熱心な議論に感謝いたします。
(敬称・所属略、五十音順)
相沢政明、青柳智和、安陪隆明、天貝賢二、磯村毅、遠藤明、大島民旗、大谷哲也、大塚敏子、大林浩幸、川合厚子、北田雅子、国友史雄、久保田聰美、今野美紀、西條亜利子、島基、鈴木秀樹、高山重光、竹中利彦、谷口千枝、谷口治子、長野寛志、中村清一、中村典生、林真一郎、原めぐみ、原田正平、原田久、藤原芳人、星野啓一、眞柄佳代子、毛利貴子、山岡雅顕、吉見逸郎















文献
1) 日本循環器学会等合同研究班:禁煙ガイドライン. Circulation Journal 2005;69. Supple. :1006-1103.
2) 日本循環器学会・日本肺癌学会・日本癌学会編:禁煙治療のための標準手順書第2版. 2007年
http://www.j-circ.or.jp/kinen/anti_smoke_std/anti_smoke_std_rev2.pdf Accessed for Dec 27, 2007
3) 川合厚子:精神障害者におけるニコチン依存症管理下の短期禁煙治療成績.禁煙会誌2007;2(6).
4) 平成18年度診療報酬改定結果検証に係る調査「ニコチン依存症管理料算定保険医療機関における禁煙成功率実態調査」報告書(案). 2007年
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/04/dl/s0418-3d.pdf Accessed for Dec 27, 2007
5) 山本蒔子:日本禁煙学会認定専門医による禁煙治療成績. 禁煙会誌 2007;2(8).
6) Perkins KA. Smoking cessation in women: special considerations. CNS Drugs 2001;15:391-411.
7) 吉井千春, 加濃正人, 稲垣幸司, ほか: 加濃式社会的ニコチン依存度調査票を用いた病院職員(福岡県内3病院)における社会的ニコチン依存の評価. 禁煙会誌 2007;2:6-9.
8) 神奈川県内科医学会編:日常診療での禁煙指導.禁煙医療のための基礎知識(改訂版). 中和印刷,東京,2006;42-44.
9) 磯村毅:禁煙支援:「リセット禁煙」による心理的ニコチン依存へのアプローチ. 治療 2005;87:1947-1951.
10) 内田和宏:内田クリニックの禁煙外来の状況と禁煙成功率の検討,女性の禁煙成功率が低い理由. 日呼吸会誌 2007;45:673-678.


Efficacy and ongoing problems in a three-month smoking cessation program established under the public health insurance system in Japan

Narito Kurioka1, Yasue Morooka1, Chiharu Yoshii2, Koji Inagaki3, Izumi Sezai4, Masato Kano5

We evaluated sixty-one outpatients who visited the smoking cessation clinic at Johoku Hospital from April 1st 2006 to March 31st 2007. A profile of the patients is as follows: 35 male and 26 female, from 28 to 74 years old, (mean ± SD; 51.7±13.2), age of starting smoking from 13 to 58 years old, (22.9±8.2), number of cigarettes per day from 8 to 90, (mean number 27.6), smoking index(number of cigarettes per day×years of smoking) from 200 to 2520, (767.2±469.0), TDS(Tobacco Dependence Screener) from 5 to 10, (7.8±1.5), FTQ (Fagerström Tolerance Questionnaire) from 3 to 10, (6.1±1.9), KTSND (The Kano Test for Social Nicotine Dependence ) from 3 to 28, (15.1±4.9), CO concentration from 4 to 78 ppm, (25.5±14.5 ppm). The starting age of smoking was significantly higher in females and the smoking index and the values on the KTSND were significantly lower in females. The number of patients who completed three-month session was 38(62.3%), whereas 23(37.7%) patients did not. Among the patients who completed the sessions, 29 quit smoking, that is, the success rate at the end of the treatment was 47.5%. Comparing the successful group to the unsuccessful group, the number of consultations was significantly lower and the number of cigarettes per day was significantly higher in the unsuccessful group. The methods of smoking cessation treatment still leave room for improvement. With regard to public funding for treatment, there are several problems. Under the guidelines of the health insurance system, inpatients and younger patients are not allowed to receive treatment and patients who fail to quit aren’t allowed to receive further treatment for one year. It is advisable that these restrictions be lifted in order for the smoking cessation treatment to successfully spread in Japan.

Key words: smoking cessation, health insurance system, smoking cessation rate, The Kano Test for Social Nicotine Dependence (KTSND)

1. Johoku Hospital, Kyoto, Japan
2. Division of Respiratory Disease, University of Occupational and Environmental Health Japan, Kitakyushu, Japan
3. Department of Dental Hygiene, Aichi-Gakuin University Junior College, Nagoya, Japan
4. Master's Program in Health and Physical Education, University of Tsukuba, Tsukuba, Japan
5. Shinnakagawa Hospital, Yokohama, Japan


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《原著論文》

高校生の喫煙に対する認識と禁煙教育の効果

遠藤明1,9, 加濃正人2,9, 吉井千春3,9, 相沢政明4,9, 国友史雄5,9, 磯村毅6,9, 稲垣幸司7,9, 天貝賢二8,9


1. 医療法人社団えんどう桔梗こどもクリニック
2. 新中川病院内科
3. 産業医科大学呼吸器内科
4. 北里大学病院薬剤部
5. 千葉労災病院呼吸器内科
6. リセット禁煙研究会
7. 愛知学院大学短期大学部歯科衛生学科
8. 茨城県立中央病院・茨城県地域ガンセンタ-内科
9. 加濃式社会的ニコチン依存度ワ-キンググル-プ

キーワード:高校生、加濃式社会的ニコチン依存度調査票(KTSND)、喫煙、禁煙教育

 喫煙者は喫煙に関して認知の歪みを有し、自分の喫煙行為を正当化する傾向がある。この認知の歪みを測定する尺度として社会的ニコチン依存が提唱され1,2)、いろいろな集団を対象として研究されている1~9)。認知の歪みは喫煙者に高度に認められ3,4)、自己の禁煙と社会の禁煙推進に対して抑制的な行動をとりやすい。また、前喫煙者6)、非喫煙者、小学校高学年生5)においても喫煙行為に寛容な認知の歪みの高い集団が存在し、将来の喫煙開始が危惧されている。今回、われわれは高校生の喫煙に対する認識と禁煙教育の効果を加濃式社会的ニコチン依存度調査票を用いて調査したので報告する。

対象と方法
【対象】
 北海道函館市A高校の587人中記載漏れのない423人。うちわけは男子225人(1年69人、2年80人、3年76人)、女子198人(1年71人、2年58人、3年69人)。

【方法】
1) 高校生の生活指導の一環として平成16年に禁煙の教育講演を実施した。高校生の喫煙に対する認識および禁煙教育の効果を加濃式社会的ニコチン依存度調査票(Kano Test for Social Nicotine Dependence:KTSND)version2を用いて調査した。講演の直前に質問票を配布し、学年と性別を記載させたが無記名とした。B4用紙の左ペ-ジ(表1)に印刷された内容を著者が1文ずつ読み上げ、自分の喫煙状況と家族構成員の喫煙者の有無を記載させ、問に対して自分が最も近いと思う番号を〇で囲むように指示した。さらに、喫煙者のみを対象にして禁煙のステ-ジを記載させた。講演直後にB4用紙の右ペ-ジに印刷された質問と禁煙ステ-ジを再び著者が読み上げて自分が最も近いと思う番号を〇で囲ませた。終了後、質問票を会場で回収した。
2) 統計解析:家族構成員に喫煙者がいる場合の高校生が喫煙する割合と家族構成員に喫煙者がいない場合のそれとの有意差計算にカイ二乗検定を用いた。禁煙教育前後のKTSND総得点の変化をWilcoxon符号付順位和検定により有意差検定した。喫煙経験の有無、家族構成員の喫煙者の有無によるKTSND総得点および各設問の得点の差の検定、高校生の性別によるKTSND総得点の差の検定にWilcoxon順位和検定を用いた。学年別のKTSND総得点の差はSteel-Dwass検定を用いて有意差検定した。禁煙ステ-ジを全く関心がない:4点、禁煙に関心はあるが今後6ケ月以内に禁煙しようとは思わない:3点、6ケ月以内に禁煙しようと考えているが1ケ月以内に禁煙する予定はない:2点、この1ケ月以内に禁煙する予定である:1点とし、禁煙教育後の変化をWilcoxon符号付順位和検定により有意差検定した。結果を中央値、四分位点(25%点、75%点)で表示し、有意水準5%未満を有意と判定した。

結果
1) 高校生の喫煙状況(表2):タバコを毎日吸う、時々吸う、いたずらで吸ったことがある、などの喫煙を経験した高校生は全生徒423人中110人(26.0%)、男子225人中67人(29.8%)、女子198人中43人(21.7%)であった。毎日喫煙する高校生は全生徒423人中52人(12.3%)、男子225人中34人(15.1%)、女子198人中18人(9.1%)であった。
2) 家族構成員の喫煙と高校生の喫煙経験の関係:家族構成員に喫煙者がいる場合の高校生が喫煙経験のある率(30.1%:279人中84人)は家族構成員に喫煙者がいない場合のそれ(18.1%:144人中26人)より有意に高値であった(p=0.007)。
3) KTSND総得点と禁煙教育後の変化(表3):喫煙経験の有無、家族構成員の喫煙者の有無にかかわらず禁煙教育によりKTSND総得点は有意に減少した。
4) 喫煙経験の有無および家族構成員の喫煙の有無によるKTSND総得点の差(表4):喫煙経験のある高校生のKTSND総得点は喫煙経験のないそれらより、禁煙教育前および禁煙教育後ともに有意に高値であった。家族構成員に喫煙者のいる高校生のKTSND総得点は喫煙者のいないそれらと有意差はなかった。
5) 学年別、性別によるKTSND総得点の差(表5):喫煙経験のある3年男子の禁煙教育後のKTSND総得点は喫煙経験のある1年男子および2年男子のそれらより有意に高値であった。家族構成員に喫煙者のいる3年男子の禁煙教育後のKTSND総得点は家族構成員に喫煙者のいる1年男子のそれより有意に高値であった。家族構成員に喫煙者のいる3年男子の禁煙教育後のKTSND総得点は家族構成員に喫煙者のいる3年女子のそれより有意に高値であった。
6) 禁煙ステ-ジの変化():毎日喫煙する高校生52人の禁煙ステ-ジは、全く関心がない:27人→19人(52%→37%)、禁煙に関心はあるが今後6ケ月以内に禁煙しようとは思わない:14人→14人(27%→27%)、6ケ月以内に禁煙しようと考えているが1ケ月以内に禁煙する予定はない:4人→10人(8%→19%)、1ケ月以内に禁煙する予定:7人→9人(13%→17%)へと変化した(p=0.019)。

考察
1) 家族構成員の喫煙と高校生の喫煙の関係
 家族構成員に喫煙者のいる高校生のKTSND総得点は喫煙者のいないそれと有意差はなかったが、家族構成員に喫煙者がいる高校生は家族構成員に喫煙者がいない高校生より喫煙経験率が高かった。親の喫煙は思春期の子どもの喫煙率を増加させるが10,11)、親が禁煙すると思春期の子どもの喫煙率は低下する12)。家族が喫煙しないことは次世代の喫煙を開始、増強させないために重要である。
2) 禁煙教育が高校生の認識におよぼす影響
 喫煙経験の有無と家族構成員の喫煙者の有無にかかわらず、禁煙教育によりKTSND総得点は有意に減少した。また、毎日喫煙する高校生の禁煙ステ-ジは禁煙側にシフトした。これらの結果は禁煙集団教育が喫煙者のみでなく、非喫煙者においても有効であること示している。喫煙経験のある3年男子と家族構成員に喫煙者のいる3年男子では禁煙教育による社会的ニコチン依存度の低下度が小さく、禁煙教育に抵抗する傾向が強かった。家族構成員の喫煙は高校生の喫煙と関係があり、喫煙を経験した高校生は自分の喫煙行為を正当化し、進級後は禁煙教育に抵抗する傾向が強まるというパタ-ンが形成されていた。今回の研究で喫煙経験のある3年生の認知の歪みは大学生3)および成人2,4)のレベルまで増強していることが判明したが、その原因として喫煙する生徒同士の狭い交友関係の影響11,13)、マスコミを通じて暴露される喫煙シ-ンをみる機会の増加14)などがあり、早期からの禁煙教育が必要である。
 以上より、高校生の喫煙を防止するためには家族構成員が喫煙しないライフスタイルの確立を援助し、禁煙教育を早期からくり返しておこなうことが重要と考えられる。

本論の要旨は第17回日本外来小児科学会年次集会(平成19年8月25日 熊本市)において発表した。
表1.加濃式社会的ニコチン依存度調査票(Kano Test for Social Nicotine Dependence:KTSND)version2


表2.学年別喫煙状況


表3.喫煙経験の有無、家族構成員の喫煙者の
有無別にみたKTSND総得点



表4.喫煙経験の有無,家族構成員の喫煙者の
有無によるKTSND総得点の差



表5.学年別,性別によるKTSND総得点の差

図 毎日喫煙する高校生の禁煙ステージの変化


参考文献
1) 吉井千春,加濃正人,相沢政明,他.加濃式社会的ニコチン依存度調査票の試用(製薬会社編).日本禁煙医師連盟通信2004;13:6-11.
2) Yoshii C, Kano M, Isomura T, et al.Innovative questionnaire examining psychological nicotine dependence, "The Kano Test for Social Nicotine Dependence (KTSND)". J UOEH 2006;28:45-55.
3) 北田雅子,武蔵学,谷口治子,他.加濃式社会的ニコチン依存度調査表Version 2を用いた防煙教育の可能性についての検討. 日本禁煙医師連盟通信 2006;15:9-10.
4) 吉井千春,加濃正人,稲垣幸司,他.加濃式社会的ニコチン依存度調査票を用いた病院職員(福岡県内3病院)における社会的ニコチン依存の評価.禁煙会誌2007;2(1):6-9.
5) 遠藤明,加濃正人,吉井千春,他.小学校高学年生の喫煙に対する認識と禁煙教育の効果 禁煙会誌2007;2(1):10-12.
6) 栗岡成人,稲垣幸司,吉井千春,他.加濃式ニコチン依存度調査票による女子大生のタバコに対する意識調査(2006年度).禁煙会誌2007;2(5)
7) 星野啓一,吉井千春,中久木一乗,他.加濃式社会的ニコチン依存度調査票を用いた小学校高学年および中学生における喫煙防止教育の評価 禁煙会誌2007;2(7)
8) Jeong JH, Choi SB, Jung WY, et al. Evaluation of social nicotine dependence using Kano Test for Social Nicotine Dependence (KTSND-K) Questionnaire in Korea. Tuberc Respir Dis 2007;62(5):365-373(in Korean).
9) 栗岡成人,吉井千春,加濃正人. 女子学生のタバコに対する意識-加濃式社会的ニコチン依存度調査票Version 2による解析-. 京都医学会雑誌2007;54(1):181-185.
10) Courtois R, Caudrelier N, Legay E, et al. Influence of parental tobacco dependence and parenting styles on adolescents' tobacco use. Presse Med 2007;36:1341-1349.
11) 林謙治.2004年度未成年者の喫煙および飲酒行動に関する全国調査報告書 2005:9-13.
12) Andersen MR, Leroux BG, Bricker JB, et al. Antismoking parenting practices are associated with reduced rates of adolescent smoking. Arch Pediatr Adolesc Med 2004;158:348-52.
13) Bricker JB, Peterson AV Jr, Andersen MR, et al. Childhood friends who smoke: do they influence adolescents to make smoking transitions? Addict Behav 2006;31:889-900.
14) Charlesworth A, Glantz SA.:Smoking in the movies increases adolescent smoking:a review. Pediatrics 2005;116:1516-1528.


Recognition of smoking and the effect of anti-smoking education on the recognition among high school students.

Akira Endo1,9, Masato Kano2,9, Chiharu Yoshii3,9, Masaaki Aizawa4,9, Fumio Kunitomo5,9, Takeshi Isomura6,9, Koji Inagaki7,9, Kenji Amagai8,9

Recognition of smoking and the effect of anti-smoking education for 423 high school students were studied by the Kano Test for Social Nicotine Dependence version2(KTSND). Parental smoking is associated with increased risk of their teenaged children's daily smoking. KTSND scores were high among students who had experience of smoking. The KTSND scores decreased after anti-smoking education. Social nicotine dependence was maintained strongly among third grader high school boys with experience of smoking and with smoking family members, even after anti-smoking education. The results provide new findings suggesting that third grader high school boys were resistant to anti-smoking education. Anti-smoking education from younger age and support of smoking cessation for family members are important to decrease social nicotine dependence of high school students, resulting a prevention students from making smoking transitions.

Key words: high school students, The Kano Test for Social Nicotine Dependence (KTSND), smoking, anti-smoking education

1. Endo Kikyo Children's Clinic, Hakodate, Hokkaido 041-0808, Japan
2. Department of Internal Medicine, Shinnakagawa Hospital, Izumi-ku, Yokohama, Kanagawa 245-0001, Japan
3. Division of Respiratory Disease, University of Occupational and Environmental Health, Japan. Yahatanishi-ku, Kitakyushu, Fukuoka 807-8555, Japan
4. Department of Pharmacy, Kitasato University Hospital, Sagamihara, Kanagawa 228-8555, Japan
5. Department of Pulmonary Disease, Chiba Rosai Hospital, Ichihara, Chiba 290-0003, Japan
6. Reset Behavioral Research Group, Atsuta-ku, Nagoya, Aichi 456-0027, Japan
7. Department of Dental Hygiene, Aichi-Gakuin University Junior College, Nagoya, Aichi 464-8650, Japan
8. Division of Gastroenterology and G.I. Oncology, Ibaraki prefectural Central Hospital and Cancer Center, Koibuchi, Kasama, Ibaraki 309-1793, Japan
9. KTSND working group, Japan.


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《原著論文》

『健康教育県SAGA「全ての中学生に防煙教育を!」』の取り組み

佐藤智丈1、徳永 剛1、樗木 等1、内田有美2
1.佐賀県医師会喫煙対策委員会
2.佐賀県健康福祉本部健康増進課

キーワード:禁煙教育、中学生、健康教育県SAGA

はじめに
 喫煙者の多くが未成年のときにすでに喫煙習慣に陥っていることを考えるとき、学校での禁煙教育が非常に重要である1)。しかしながら、禁煙教育の講師の確保やそれにかかる費用、カリキュラムの問題など、禁煙教育を行うためには色々な障害がある。今回、佐賀県医師会は佐賀県の行政と協力して、平成18年度に「全ての中学生に禁煙教育を!」と題して佐賀県内全ての中学校で、授業の一環として禁煙教育を行ない良好な成果を収めたので報告する。

1.対象と方法
 平成18年4月から平成19年3月までの期間に、佐賀県内100校全ての中学1年生において約1時間の禁煙教育を行った。希望する学校には中学2、3年生も禁煙教育に参加した。この計画は佐賀県医師会喫煙対策委員会と佐賀県健康福祉本部健康増進課によって立案され実行された。禁煙教育を行う講師は、主に学校医などがボランティアとして務めた。禁煙教育用教材は佐賀県医師会が作成したスライドを用いた。禁煙教育を行う前に、講師が授業を円滑に行なえるように、あらかじめ医師会が準備したスライドを用いて、講師として参加される先生方を対象に禁煙教育のデモンストレーションの講演会を開催した。このため、禁煙教育を行う講師も均一化された授業が可能となった。
 講演の前後において25校の生徒からアンケート調査を行いその結果を解析した。更に、講演後講師に対してもアンケート調査を行いその結果も解析した。

2.結果
 生徒のアンケートでは、事前2962名、事後2844名から回答が得られ(表1)、事前のアンケートでは、男子が8.8%、女子が3.1%「喫煙経験ある」と回答し、特に中学3年生の男子では23.0%が「喫煙経験ある」と回答していた(表2)。次に「20歳のときに絶対タバコを吸っていないと思うか」 という質問に対し、 男子は講演前に43.5%であったの対し講演後は57.3%、女子は講演前に59.7%であったの対し講演後は70.2%と、男女ともに講演後に「絶対タバコは吸わない」と回答したものが増加していた(図12)。最後に、「友達からたばこをすすめられたら断ることが出来るか」という質問に対し、男子は講演前に47.2%であったの対し講演後は54.8%、女子は講演前に51.5%であったの対し講演後は57.8%と、男女ともに講演後に「断ることが出来る」と回答したものが増加していた(図34)。
 講師からのアンケートは16名から回答が得られた。禁煙教育を行った講師は56.3%が学校医で、その他は外部講師、学校薬剤師、保健福祉事務所職員などで構成されていた。講師に対する「禁煙教育の効果は期待できると思いますか」という質問の回答では「効果が期待できる」81.3%「効果が期待できない」0%「どちらともいえない」12.5%「無回答」6.2%であった(表3)。次に、「禁煙教育をした後の感想はどうですか」の回答には、「次回もやってみたい」56.3%、「難しかった」6.2%、「どちらともいえない」25.0%、無回答12.5%であった(表4)。

3.考察
 喫煙者の約90%はすでに未成年のうちに喫煙習慣に陥っているとする報告もあり2)、こどもでは喫煙開始年齢が早いほど短期間でニコチン依存が形成され、その後の健康被害も大きい3)。このため、禁煙を広げるためには学生のより早いうちに喫煙の弊害を教育し、喫煙者にならないようにすることが重要である。高校1年生の時点において、すでに30%以上の生徒に喫煙経験が認められるという現状を考えるとき3),4)、生徒が喫煙経験のまだ少ない中学生のうちにタバコの弊害について教育することは効果的であると思われる。このことを踏まえ、今回佐賀県内100校全ての中学校で禁煙教育を行った。それぞれの学校単位での禁煙教育は各地で行われているが、今回は佐賀県全校で基本的に同じ教材を使用しており、この様な試みは全国で初めてであると思われる。
 中学生にタバコによる発癌など病気の事を中心に話しても、数十年後の病気のことをまだ実感しえないとも思われる5)。今回の講演では、タバコにより持久力が低下し運動能力が落ちることや、学習能力の低下すること、美容にも悪影響を及ぼすことなど盛り込み、中学生にも興味を持って聞いてくれるよう講演内容にも配慮してスライドを作成した。
 今回の試みで、講演後において「20歳のときに絶対タバコを吸っていないと思うか」という質問にも、「友達からたばこをすすめられたら断ることが出来るか」という質問にも、「絶対に吸っていない」「断ることが出来る」と回答した生徒が増加しており、今回の禁煙教育は非常に効果的であると思われた。更に、講演後の生徒の感想も「改めてタバコの怖さを知った」「家族にもタバコを止めてもらいたい」「スポーツをしたいのでタバコは吸わない」といったものが多く、講演を興味深く聴いてくれたものと思われた。
 禁煙教育をした講師も授業に手ごたえを感じており、有意義な試みであると思われた。しかしながら、今回のアンケートの結果で中学1年生でもすでに6.3%がすでに喫煙経験があると回答している現実があり、更に踏み込んで小学高学年に禁煙教育を広げていく必要があるのかもしれない。
 平成19年度も今回の禁煙教育のプロジェクトは進行中である。このような試みが全国に広がっていくならば、更に禁煙が浸透していくことであろう。

おわりに
 平成18年度、佐賀県内100校全ての中学1年生に医師会と佐賀県が協力して禁煙教育を行ない、良好な成績を納めた。佐賀県外にもこのような試みが広がっていくことが望まれる。

本論文の要旨は、第2回日本禁煙学会学術総会(2007年8月、東京:国立がんセンター)にて発表した。

参考文献
1) David Simpson:医師とたばこ. 日本医師会, 2002.
2) 池上 達義:日本赤十字社和歌山医療センター調査 ,2001
3) 日本禁煙学会:禁煙学. 南山堂. 2007.
4) 斉藤麗子:たばこがやめられる本. 女子栄養大学出版部, 2000.
5) 北川純:学校での喫煙防止教育の実践から. 月刊保団連 2004;818:31-35











The effect of standardized anti-smoking education to all students of first grade junior high school in Saga prefecture

Tomotake Satou1, Takeshi Tokunaga1, Hitoshi Ohteki1 and Yumi Uchida2

It is important for children to educate anti-smoking, because almost smokers have started to smoke in their teenagers. From April in 2006 to March in 2007, we carried out an hour standardized anti-smoking education to all students of first grade junior high school in Saga prefecture. The lecturers of this education were mainly school doctors.
We investigated the effects of this education by questionnaire survey to students and lecturers. After this education, a number of students both who would not like to smoke when 20 years old and who could reject to smoke even if their friends recommend smoking increased. 81.3% of lecturers think that this education was very effective, and 56.3% of lecturers would like to join this anti-smoking education again.

Key words: standardized anti-smoking education, junior high school students, Saga prefecture

1. Anti-smoking committee of Saga medical association
2. Health promotion division of Saga prefectural government


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《資 料》

日本の鉄道の禁煙化の歴史と今後の対策について

かもめ歯科 清水央雄

キーワード:禁煙車、受動喫煙、利用者の声

<近距離列車の禁煙化の歴史>
 日本の鉄道の禁煙化は諸外国に比較すると、かなり遅れている。ただし、近距離列車に限ると、比較的早くから禁煙化が進んだ。 当初は東京電車鉄道という私鉄で、のちに東京市が買収した東京市電は1903年8月22日に開業したが、早くも翌1904年2月18日には禁煙になり、さらに同年、京浜電車(現・京浜急行電鉄)も禁煙になった。1)
 京浜電車はその後、ふたたび喫煙可能になった時期もあるものの、1910年からは完全に禁煙になった。 1)
 また、1908年には新橋~横浜・横須賀・国府津間の鉄道院線(現・JR)の急行に禁煙車が登場した。1)
 山手線、中央線などの院電(のちに省電→国電→E電と名称を変更する)は、1919年から全車禁煙になった。1)

<近距離列車が早い時期に禁煙になった理由>
 近距離列車が比較的早く禁煙化したのは、近距離列車だと、ロングシートの車両が多く、また、立席もある構造であるため、ロングシートに座った乗客が喫煙すると、目の前の立席にいる乗客の顔面へ煙が流れて、非常に不快なことや、混雑時は火傷の恐れがあることや、灰皿を設置するのが困難なことから火災の懸念もあることが理由として考えられる。
 もちろん、立席の乗客が喫煙すると、さらに危険が増すことは容易に想像できる。
 実際、1903年9月21日の読売新聞のコラム「イロハ便」に「乗合馬車にて喫煙し火と煙と灰とを以て他人に迷惑を及ぼすを意とせざる者」を厳しく非難し、法律で取り締まるべきだと主張したことや、同年12月7日付の同紙社説「電車に対する要望」で、「車室内で煙草は吸はぬやうにすること」と述べている1) など、鉄道(馬鉄等を含む)の禁煙化の世論が初期からあったのではないだろうか。

 また、1923年には軌道運輸規程で市街電車は法的に禁煙が義務づけられた。

軌道運輸規程(大正十二年十二月二十九日鉄道省令第四号)
第七条 旅客ハ市街地ヲ運転スル客車内ニ於テハ喫煙ヲ為スヘカラス
第八条 軌道カ指定スル客車内亦同シ

<長距離列車の禁煙化の歴史>
 一方、長距離列車(国鉄特急列車)に禁煙車が登場したのは1976年、東海道新幹線こだま号で、全国の特急に拡大したのは1982年だった。しかし、どの特急列車も自由席に1両しか禁煙車がなく、指定席車に禁煙車が登場したのは新幹線、在来線ともに1985年だった。TGV(フランス新幹線)は開業した1981年では、10両編成のうち6両が禁煙車であるなど、この時代、すでにヨーロッパ各国では禁煙車の導入が十分進んでいたにもかかわらず、日本の特急列車は、1編成に1両あるかどうかというレベルであった。
 欧米では、かなり早くから長距離列車に禁煙車が登場したと言われているが、その歴史に関する資料は乏しく、いつからどの程度禁煙車が普及したのかの詳細は現在のところわからないが、トーマスクック・ヨーロッパ時刻表日本語版・1993年12月版には、以下のような記述があり、日本とは大きな違いがあったと思われる。

「最近、日本でも"嫌煙権"が社会的に認められ始め、新幹線から普通列車まで全区間禁煙車を設けるのが一般化してきた。ただ、この"禁煙車"に関してはヨーロッパの方が50年以上も早く登場したことは、よくおぼえておこう。すべての列車には禁煙車、または禁煙室が設けられていて、喫煙室と半室ごとに区切られている場合が多い。No Smoking(英) Défense de Fumer(仏) Nichtraucher(独) No fumar(西) などと表示されていたら、タバコは吸ってはならない。たとえその国の人が表示を無視して吸っていても、喫煙すべきじゃない。子供と老人が相席の場合などは、そこが喫煙車であったとしても、それなりの配慮はほしい。特に、コンパートメント車は開放型客車(オープン・サロン車、日本と同じタイプ)に比べて室内の空気が汚れやすいので、通路にある灰皿を利用するよう心がけたい。」

 日本の特急列車の半数の車両が禁煙車になったのは、1997年頃であった。3)

<長距離列車の禁煙化が日本で遅れた理由>
 日本で対策が遅れた理由は、欧米では古くから女性の前での喫煙に対して配慮する習慣があったと言われており、実際、1909年にドイツ陸軍省が、婦人列席の場での喫煙を禁じる軍人禁煙令を出すなど、早くから非喫煙者へ配慮する社会であったのに対し、日本ではそのような意識が希薄だった可能性が考えられる。
 また、ヨーロッパの列車は、かつてはコンパートメント車(6~8人程度の相席の個室車)が大半で、個室で喫煙するとタバコ煙の充満がひどいことや、個室単位で分煙が容易であることなども、分煙が進んだ理由ではないかと考えられる。

<日本の鉄道の現況>
 現在、JR北海道とJR東日本では一部を除いて全席禁煙となったが、JR東海・JR西日本・JR九州では喫煙車が数多く残っているし、JR四国は08年3月から全席禁煙となるものの、ほとんどの特急に喫煙コーナーを設置することになっており、日本の鉄道の完全禁煙化は、まだまだ先のことになる。
 欧米の多くの国やタイ、台湾、韓国、ニュージーランド、オーストラリアなどはすでに鉄道の完全禁煙が実現しており、遅れていたドイツでも、2007年9月1日から完全に禁煙になった。 依然として日本の鉄道の対策が、諸外国から比べて遅れたままである。

<分煙の問題点>
 体験された人も多いと思うが、喫煙車から通路を伝わってタバコ煙が禁煙車に流れ込むため、禁煙車なのにタバコ臭いという現象が、しばしば見られる。航空機が分煙不可能であるのと同様、鉄道も同一編成列車内での分煙は不可能であり、鉄道車両は完全に禁煙にする必要がある。4)
 どうしても分煙に拘るのであれば、気密性の極めて高いドアを用い、ドアに施錠し、車両間を通り抜け禁止にするしかないだろうが、仮にそうしたとしても、全ての問題が解決できるわけではない。分煙では、喫煙車に立ち入る乗務員や車内販売員などに受動喫煙を引き起こすし、喫煙車希望者に付き合って(付き合わされて)喫煙車に乗車する非喫煙者もいる。
 また、禁煙車が満席で、仕方なく喫煙車を利用するケースも多々あるなど、分煙では非常に多くの問題がある。東海道山陽新幹線では、16両編成のうち4両が喫煙車、12両が禁煙車であるが、喫煙車に接する禁煙車がタバコ汚染されるため、実質的には禁煙車は7両しかないことになる。
 2007年7月に登場した新型の東海道山陽新幹線車両であるN700型は全席禁煙であるが、車内4箇所に喫煙コーナーを設置している。このため、喫煙コーナーからタバコ煙が漏れるのと、喫煙直後の喫煙者の肺からタバコ煙が吐き出されることによって、客室内にタバコ煙が充満する深刻な事態となっている。このため、日本禁煙学会では、07年10月、JR東海に申し入れを行った。5)

<今後の対策>
 今後、鉄道の完全禁煙化を進めるには、法律で公共機関の禁煙化を制定するのが最善だろうが、タバコ税収入を優先する政策をとり続ける日本政府には、その方法はあまり期待できず、実現したとしても時間がかかると思われるため、禁煙学会などからの申し入れなどの組織的な活動の他、利用者が利用者の立場で地道に要望活動を行う草の根の活動が非常に重要である。
 JR各社の中ではJR北海道が真っ先に全面禁煙(本州方面への列車を除く)を打ち出したが、これは、利用者からタバコに関するクレームが多かったため、乗客にアンケートを実施したところ、全車両禁煙・禁煙車拡大賛成が45%、喫煙車拡大賛成が15% という結果をもとに検討した結果である。6)
このように、利用者が声を出すことは非常に重要である。なお、2004年10月にJR北海道が、「2~3年後をめどに全車禁煙化する」と発表 したが、実際はかなり前倒しし、1年5ヶ月後の06年3月に実施した。JR東日本のホームページで、全面禁煙化に際して利用者へ「ご理解とご協力をお願いします」と書かれた文章のなかに「列車という限られた空間では、扉の開閉により禁煙車に煙が流入するなど、受動喫煙がなくならないというご意見を多数いただいておりました。」とある通り、これもまた多くの利用者が声をあげたことが大きく影響したと思われる。

 以下、JR各社の要望先を記しておくので、是非、多くの声を出してほしい。

JR北海道・お客様の声を聴く相談室 011-700-5733 Fax 011-700-5734
https://www.jrhokkaido.co.jp/mailform/mail1-2.html
JR東日本・お客様相談室(東京駅) 03-3240-5587
http://www.jreast.co.jp/info/voice.html
https://voice2.jreast.co.jp/user_input.aspx
JR東海・サービス相談室 050-3772-3910
https://jr-central.co.jp/orgbox.nsf/post
JR西日本・お客様センター 0570-00-2486、078-382-8686
https://kikuzo.westjr.co.jp/cgi-bin/kikuzo.cfg/php/enduser/cci/form_kikuzo.php
JR四国・総務課087-825-1636
https://www.jr-shikoku.co.jp/uketuke/mail/question.asp?id=8
JR九州・電話案内センター092-471-8111
http://www.jrkyushu.co.jp/faq/q_and_a/train/index.jsp

文献
1) 明治の読売新聞CD-ROM 、 読売新聞社1999年11月1日発行
2) ThomasCook EUROPEANTIMETABLE December1993 ThomasCookLTD.PeterboroughEngland日本語版 地球の歩き方編集室 翻訳・編集 1994年1月10日発行
3) JTB時刻表列車編成表 1997年1月号及び1998年1月号、 JTB日本交通公社出版事業局 1997年1月1日及び1998年1月1日発行
4) 大和浩: 受動喫煙を防ぐには-乗り物の場合.禁煙学会編.禁煙学.初版.南山堂,東京,2007;p35-36.
5) http://www.nosmoke55.jp/action/0710jr_toukai.html
6) 北海道新聞記事、2004年10月13日


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《資 料》

国際学会・会議報告
第8回アジア・太平洋タバコ対策会議に参加して


東京衛生病院 健康教育科 全国禁煙・分煙推進協議会事務局長(APACT日本代表)
宮﨑恭一

キーワード:アジア・太平洋タバコ対策会議、APACT、Asia Pacific Association for Control Tobacco、台北、テッド・チェン

1.はじめに
 アジア・太平洋タバコ対策会議(Asia Pacific Association for Control Tobacco, 以下APACT会議)は1989年3月に第1回を台湾で開催した。会議のきっかけは1987年に台湾への米国タバコから市場開放を迫られたことであった。台湾国内のタバコ消費減少を訴えていた財団法人董氏基金会は外国タバコが国内に入ったら喫煙者が増えることを憂慮したのである。すぐにアメリカに飛んで、台湾出身のマサチューセッツ大学公衆衛生学教授のテッド・チェン氏に相談し、さらに同大医学部の教授であったグレゴリー・コノリー氏の知恵をいただき、ワシントンDCで当時のジョージ・ブッシュ大統領に掛け合ったのであった。「アメリカは台湾の味方なのか敵なのか」というスローガンで新聞の全面広告までして訴えたのだが、市場開放の圧力は強く、アメリカタバコ会社の勝利となったのである。
 これは台湾だけの問題ではなく、すでに1986年に日本も無関税でアメリカタバコの輸入を中曽根首相が受け入れてしまい、1987年に台湾、1988年には韓国とアジア販売拡張タバコ戦略の猛威に見舞われた。
 米国では1964年の公衆衛生局総監の「Smoking and Health」発表以来急激に喫煙率が低下し、そのためタバコロビーは政府を動かし、1974年に貿易法第301条(一般にセクション301と呼んでいる)を通過させたのである。これは「すべての米国に輸出している国は自由貿易として米国の生産物を関税なしか低関税で受け入れなくてはならない」といった内容のかなり一方的な法律であった。タバコ産業はセクション301を盾に当時の発展途上国にマーケットを広げようと画策したわけである。
 この動きが1989年タイ国に向かってなされようとしたとき、董基金会の理事長であるデビッド・エン氏はアメリカのテッド・チェン氏、韓国の消費者連盟会長のチョン女史と相談し、日本からは平山雄氏を招いて、アジア・太平洋地域のタバコ対策会議を開催したのがアジア・太平洋タバコ対策会議すなわちAPACT会議の第1回となったのである。

2.APACT開催国
 APACT会議は第2回は1991年に韓国ソウルで開催され、1993年には日本の大宮で第3回が開催された。続いて第4回をタイのチェンマイ、第5回をフィリッピンのスービック、第6回が香港、第7回が再び韓国の慶州、そして今回第8回を台湾での開催となった。今回は18年目ということで一つの区切りとするため、オープニングセッションで、各会議代表が表彰された。しかし、韓国のチョン女史もフィリッピンのダニエル・タン氏も諸事情で来ることができず、日本の代表であった心臓財団事務総長(当時)の大和久泰太郎氏も他界されたので、少々さびしい表彰式となった。日本代表として全国禁煙・分煙推進協議会の事務局長である私が僭越ながら記念の盾を受領させていただいた。

3.第8回APACT会議前 理事会
 学会が始まる前の2時間、APACT理事会がもたれ、テッド・チェン学会長のもとに、台湾、韓国、香港、オーストラリア、日本の代表が集まった。そこでの発表によると、久しぶりに台湾に戻ったせいか、登録参加者は40カ国以上562名となり過去最高の集まりとなった。場所は台北市内のハワード・プラザ・ホテルで、60名の中国本土からの参加者が含まれている。台湾が主導権を持っているこのタバコ対策会議は過去何回も名称などのことで中国代表ともめたこともあったが、今回は静かにしてもらうよう調整したとのことで、大きなトラブルにはならなかった。これはひとえに故エン名誉会長の人柄によるものである。新しい董基金会の理事長に黄鎮台氏が着任し、故エン氏の思想を引き継いでいる。
 シカゴのRush Universityの整形外科教授であるケン・クオ氏が現在台湾の国家形成研究院所長(National Health Research Institute)をされており、学術委員長として重責を果たした。①政策、②行動計画、③調査研究の三部門に分かれ、委員会を11回開催し、レビュー委員会は28名の学者によってなされた。218本のアブストラクトが提出され審査を受けて60本に絞られた。青年研究者(45歳以下)のアブストラクトは61本になった。
 今回の学会で一つの汚点が指摘された。無煙タバコの研究がポスターセッションで受け入れられたが、タバコ産業の関係者であることが開催間近で判明し、会場で注意するように発表された。
 
4.第8回APACT会議の特徴
 第8回APACT会議の特徴を3つにまとめる。
 #1.学会の前の勉強会の設定 7種類のワークショップや展示会、講習会など開催
 #2.45歳以下の若い研究者や指導者を養成するために奨学金を授与した
 #3.台湾のタバコ政策・対策の確実な発展
 1987年の外国タバコ輸入規制解除による、外国タバコ攻勢が発端となり、1990年にはタバコ対策5カ年計画が始まった。1997年にはタバコの害予防法が施行され、中学校以下の学校は校舎内禁煙となった。2007年7月11日に予防法の改正がなされ、全学校内禁煙も含まれている。2009年1月12日から施行される。税金に関して2002年にはTND5ドルのタバコ税が上乗せされ、健康保険、福祉資金に活用され、10%約30億円が健康教育に使われるようになった。2006年にはさらにTND5ドルの増税がなされ、特別税収が600億円となり、その3%が健康教育に活用される。

5.ゲストスピーカー
 ハーバード大学のグレゴリー・コノリー教授がエン氏の業績をたたえつつ、タバコ産業の猛反撃が続いていることに警告を発した。1987年からアジアタバコ対策に加わった、ジュディス・マッカイ氏も新たな研究費の可能性を紹介した。元ニューヨーク市長の寄付によるブルームバーグ国際機関(BGI機関)の発足は大きな可能性を持っている。マッカイ氏はアジアの国々を支援するうえで、BGI機関の窓口となっている。台湾の国家衛生研究院(NHRI)院長のケン・クオ氏が学術委員会委員長の働きをし、米国から帰国したチー・パン・ウエン氏(NHRI)も台湾政府のブレインとなっている。その他アジア系の科学者が専門分野の最新情報を報告した。
 日本からは坂口早苗氏(川村学園女子大学・大学院)がテレビドラマの喫煙シーンに関する研究、中村正和氏(大阪府立健康科学センター)が禁煙外来の保険カバーの推移とバレニクリンの臨床治験に関する研究で、学会より招待を受けた。

6.印象に残ったこと
 懇親会には台湾の衛生大臣(日本の厚生大臣)も出席し、第1日目には衛生副大臣のツァイ・ジン・チェン氏が会議の前にスピーチをし、台湾の喫煙対策を述べるとともに、喫煙対策の方法論で、一本に絞るのではなく多くの方法を駆使して取り組む方がよいという意見を述べた。
 衛生署(厚生省)を後押しするように董基金会が積極的に喫煙対策を展開し、さらにTIMA(Taiwan International Medical Association)は若い研究者や活動リーダーを招待して学会を盛り上げた。こういった財団のチームワークが大きな力となっている。
 日本からの出席者は作田学日本禁煙学会理事長、薗潤・はじめ夫妻、市来英雄氏、渡辺文学氏らの常連はもちろん、各方面から合計25名が参加してくださった。日本政府のタバコ対策室長も参加してくださればという願いがかなうのはいつのことだろうか。

7.2010年の第9回APACT会議
 ハーリー・スタントン氏がテッド・チェン氏からメダルと印鑑を預かり、2010年の学会長(同時にAPACT理事長)となった。3年後にはオーストラリアで開催され、シドニーのダーリンハーバーにあるコンベンションセンターで開催される。

開催前の記者会見で、左からタイのチョットヌンダ喫煙対策室長、ハーバード大学のグレゴリー・コノリー氏、テッド・チェン学会長、クン・ユ・チャオ国民健康局副局長、ジェン・タイ・フアン董氏基金会理事長



開会式の演奏


受付にて。禁煙キャンペーンのモデルになった俳優さんと、董氏基金会の理事長秘書





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《WAT特集》

WALK AGAINST TOBACCO
2006
WEEK 8 REVISITED

Mark Gibbens

 なぜ、歩こうと思ったか
 鹿児島の佐多岬から、北海道の宗谷岬までの約3000 Kmを歩いて、このメッセージを伝えていきたいと考えています。

 あなたの健康を大事にして下さい。
 あなたの家族を大事にして下さい。
 あなたの友達を大事にして下さい。
 あなたの国 を大事にして下さい。
 禁煙は愛です!


 なぜ私がこのキャンペーンを計画したか、それは私はオーストラリアから来ています。オーストラリアは喫煙率の低い国です。でも、昔からではありません。人々が喫煙、受動喫煙の危険を知り、今の数字になっていったのです。政府はとても明確な喫煙の害のCMを流し、タバコの表示も写真付きでわかりやすくしています。タバコ税も高く、建物、バーであっても禁煙エリアは何%と法律で決まっています。
 今、世界の多くの国が禁煙の動きになってきています。政府の広告も日本に比べ、とてもはっきりと喫煙の危険を警告しています。
 ところが、日本は成人男性の47%が喫煙者と、驚く数字です。
 また、若い女性の喫煙率は増えていっているようです。
 これは、喫煙、受動喫煙の危険性の認識がそれほど重要視されてないからではと思いました。ただ、体に悪いとは知っていても、どう悪いのかといった知る機会がない。三度の食事より口にするのに何が成分でそれはどう体に影響する、またその煙の方が害があるのに、その影響もあまり知られていない。吸う人も吸わない人もそこを知る機会もなく、禁煙、分煙と言われてもただ困惑し、憤慨すると思います。それを知るべきだ、知ってもらいたいと歩く事にしたのです。
 また、私自身が主にICUの看護師でした。多くの医師、歯科医師が禁煙を推進しています。吸い続ける事がどんな事になるか、知っている私達が教えてあげなくてはいけない。治す事だけが、医療ではなく予防をする事も医療だと思います。こうして、歩くことも私の日本においてできる看護師としての仕事の一つと考えています。
 こうして、歩く事ははたして意味があるのかと思われるかもしれません。でも、何もしないよりした方がいいと思っています。このメッセージが一人でも多くの人に伝わるきっかけになればいいなと願い、遍路姿で歩きます。


前号からの続き―

 Walk, Day 49, World No Tobacco Day, May 31st 2006, and as you would expect a very busy day commencing at 6:30am with a drive across town in a “Tokyo FM” car for a live three minute interview outside the Science Museum, site of the WNTD, Ministry of Health Symposium. Then back to the hotel for breakfast and a free two hours to prepare my speech for the symposium.
 At 11am again towed along by Mr Watanabe we were introduced to the Japan Walking Association President and a presentation of gifts, most notably some toed socks, for my walking efforts. From here we were accompanied by 4 or 5 no-smoking NPO members for the short walk to the Ministry of Health Symposium. After listening to some very informative speeches, it was my turn to deliver a strongly worded, seven minute, anti-smoking speech, translated by my wife Reiko. Unfortunately I had directed my speech at the politicians who were conspicuous by their absence; still the 300+ people who did make the effort to attend seemed to appreciate my sentiments and their translation.
 Knowing that politicians are the last people to vote for change, I left the symposium thankful to those ‘ordinary’ people who gave up their equally precious time to try to make a difference in tackling the Japanese smoking problem. I salute their courage and conviction.
 Next, again across town to the Tokyo Women’s Medical University Hospital and a combined Quit Smoking presentation with Dr Ariko Saijo in which we showed slides of my walk and answered questions from the 80 people in attendance, including hospital patients. After this it was back into the non-smoking taxi to a Korean BBQ restaurant for a farewell dinner with many of the stalwarts of the anti-smoking movement in Tokyo and a surprise visit from our good friend Dr Kawane from Kurashiki.
 June 1st and the second half of my pilgrimage began with Dr Sakuta, Dr Watanabe (dentist), Mr Tsuda (dental technician) and my reporter friend and fellow runner Mr Tatsumi as we set off from Nihonbashi bound for Kasukabe some 42km away. Unfortunately after only 4km Dr Sakuta was called away to a medical emergency at his hospital, but at lunch time we were joined by some of Dr Watanabe ’s dental nurses to help me in the walk north. As the day wore on Mr Tatsumi returned to work in Tokyo and my dental team with their own support car began to take shifts walking with me as the pace and distance increased.
 Meeting up with Reiko in Kasukabe, five of us enjoyed a bath and dinner together at a local spa before bedding down for the night in Dr Watanabe ’s dental clinic.
 The next morning we said goodbye to the Watanabe’s and headed for our first engagement and one of my personal highlights from the walk. A visit to Kuki School for the Intellectually and Physically Disabled where we gave a 30 minute presentation about the dangers of smoking. These third year high school students were wonderful, having made a welcome board, prepared questions to ask us and letters to cheer us on. One student, Imai-kun had even hand made some wooden figures as a present for me. More able minded/bodied teenagers could certainly learn a lot from interacting with these kids and it was certainly a pleasure spending some time interacting with them.
 Bidding them farewell, I spent the rest of the day walking through Saitama Prefecture, briefly through Ibaraki Prefecture and finally into Tochigi Prefecture, followed by a Tochigi TV reporter who did an excellent story for the evening news. I finished the days walk at the home of anti-smoking activist Mr Itako, then returned to Oyama train station to meet Dr Mise our coordinator for this area. A brief local newspaper interview and then a 40 minute drive back into Ibaraki for a welcome party hosted by Dr Hirama and about 20 members of his NPO group at a spa and country club where we were to stay the night.
 Day 52 was a rest day in Oyama and saw us heading to our first appointment with the city Mayor after breakfast, briefly meeting with Ms Tomako and her husband in the city office car park. They had driven an hour from Saitama to meet us and give us some snacks and good wishes. She unfortunately suffers from CS which means she is allergic to most man made chemicals and of course tobacco smoke with its more than 4000 chemicals, some of them carcinogenic. Dr Mise, having organised the days events was on hand to guide us on a whirlwind tour of local city offices and medical associations meeting Mayors and Medical Presidents to encourage them to take a more vigorous and active approach to the smoking problem in their constituency. Our last meeting of the day was at Jichi Medical University, Dr Kato ’s (Niihama) alma mater and a cordial meeting with its President Dr Takaku, before ending the day in the late afternoon with a refreshing stroll around the organic farm and wetland bird sanctuary of our home stay host, Mr Itako and a healthy dinner of home grown vegetables.
 By 8am on June 4th Mr Itako’s house had become the meeting place for today ’s walkers including Dr Morishima who was so excited he had arrived early and Dr Kato who had flown from Shikoku to Tokyo and then by train to Oyama just to walk with me and visit his old university. On a perfect weather day, with perfect support and perfect walkers, our group of 10 set off in the cool morning air under a cloudy sky. The day was certainly well planned, organised and executed by the Shioya-gun Medical Association, from the posters of me pasted to shop windows by Mr Itako announcing when I would pass-by, the aid stations and lunch refreshments and volunteer groups accompanying us and especially Dr Oka who kept everything on schedule in his own support vehicle.
 Thanks to the posters and the two previous days of media coverage we received more than 200 cheers of encouragement from drivers and pedestrians, by far the largest expression of public support over the whole campaign, so thankyou very much to the people of Tochigi Prefecture.
 The next morning we were farewelled by Dr Oka, Dr Morishima and the Mayor and staff of Sakura City as we set off at a slow pace with a group of 13 elderly walkers wearing no-smoking campaign bibs. I had planned to walk 51km today but hadn ’t realised there would be a whole series of events across Yaita Town, including a group of locals welcoming me with hand made maps of Australia, a drink stop at Dr Nishikawa ’s Hospital, a visit with the Yaita Town Mayor, and a crowd of 50 or 60 staff and patients lining the road outside a psychiatric hospital to wish me well before I settled into an uninterrupted walking pace to the far side of Kuroiso City. After which I returned by car with Reiko to Dr Watanabe ’s Hospital in Kuroiso for another welcome dinner and anti-smoking doctors meeting sponsored by Novartis (nicotine patch) pharmaceutical company. We retired for the night at the mansion of Dr Fujioka our home stay host, where I once again regretted my decision to abstain from alcohol as he produced several bottles of Australian and French wine from his collection.
 Unfortunately Dr Fujioka had headed off to work early the next morning but had graciously left two bottles of Australian wine and thoughtfully provided a bottle opener for his wife to present to us for use on completion of the walk. It was she who directed us to the Kuroiso City Office to say goodbye to Dr Watanabe and be sent off with a very brief farewell speech by the City ’s heavy smoking Mayor. After a sham walk of 300m I got into the car and headed for the previous day ’s finish line and began my walk in earnest, to be joined an hour later by Dr Yoshida as we continued on together at a strong 7km/hour pace, stopping only for drinks at a small aid station prepared for us by the Shirakawa Doctors Association. Around lunch time we were dragged off the main route to the local hospital of Dr Aida where we were again plied with drinks and given a gift of two large jars of local honey. Shortly after this Dr Yoshida and Mr Ota a rehabilitation therapist who joined us in Shirakawa, said goodbye, having walked further and harder than they had originally planned. I continued on at the same fast pace only slowing when Reiko telephoned to say that our business hotel had no internet connection for me to update my internet diary which had been my reason for walking so hard and fast. This news had ruined my good mood which didn ’t return until dinner with Dr Hasebe and his wife and Mrs Kasuga who was standing in for her Medical Association President husband who was engaged at a dinner meeting with the Sukugawa Town Mayor. Tomorrow would be another day to catch up with my internet diary.


To be continued・・・

写真1 6月1日東京出発


写真2 辰巳記者と渡辺歯科スタッフ


写真3 久喜養護学校で講演


写真4 下妻市の平間先生による歓迎会


写真5 宇都宮市商店街にて


写真6 自治医大三瀬先生、小山市保健福祉部の皆さんと


写真7 矢板市で歓迎受ける



写真8 板子さん宅の玄関前


写真10 宇都宮市での沿道の歓迎


写真12 栃木県塩谷群市医師会有志


写真14 須賀川前医師会長と現医師会長ご夫妻

写真9 板子さんの無農薬農園


写真11 さくら市役所にて


写真13 宇都宮社会保険病院にて


写真15 大河原保健所にて

参考サイト:Walk Against Tobacco 2006 (Galleryにいろいろな写真があります)
※WAT:WALK AGAINST TOBACCO


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日本禁煙学会の対外活動記録
(2007年12月・2008年1月)
12月10日 声明「タバコ産業からいかなる資金も受け取るべきではない」を掲載
12月14日 「子どもの心身、安全・安心の確保のためのタバコフリースクールの実現」を求める意見をパブリックコメントに送付
12月20日 タバコに関する全国規制改革要望の回答・再要望を提出
12月28日 日本禁煙学会が選ぶ2007年タバコ問題10大ニュース公表
1月25日 中医協の診療報酬改定パブリックコメントに「禁煙治療の保険改定意見」送付


日本禁煙学会雑誌
(禁煙会誌)
ISSN 1882-6806

第3巻第1号 2008年2月1日

発行 特定非営利活動法人 日本禁煙学会


〒162-0063
新宿区市谷薬王寺町30-5-201 日本禁煙学会事務局内
電話 090-4435-9673
ファックス 03-5360-6736
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