禁煙会誌 第2巻第8号 2007年12月1日


目次



《総 説》 公共の場・職場の法的喫煙規制は心臓病を減少させる
―わが国でも法的に全面的受動喫煙禁止地区を設定し、疾患発生が減少するかを調査する時期ではないか?―
藤原久義
《原著論文》 日本禁煙学会認定専門医による禁煙治療成績
山本蒔子
《原著論文》 「健康日本21」等の喫煙率と消費量の半減目標達成の推計試算
-対2000年の10年後の半減は少し遅れても達成する可能性-
野上浩志
《資 料》 日本呼吸器学会総会(1996-2007)参加者の喫煙アンケート調査 (速報)
北村 諭
《資 料》 WALK AGAINST TOBACCO 2006 WEEK 7 REVISITED
Mark Gibbens
《文献紹介》 国内文献紹介
北村 諭
海外文献紹介
吉井千春
《記 録》 日本禁煙学会の対外活動記録(2007年10・11月)
日本禁煙学会雑誌第2巻第8号 2007年12月

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《総 説》

公共の場・職場の法的喫煙規制は心臓病を減少させる
-わが国でも法的に全面的受動喫煙禁止地区を設定し、疾患発生が減少するかを調査する時期ではないか?-


藤原久義1)、飯田真美2)


1.兵庫県立尼崎病院病院長、 岐阜大学名誉教授
2.JA岐阜厚生連中濃厚生病院総合内科部長、 岐阜大学循環・呼吸病態学非常勤講師


キーワード:法的喫煙規制、喫煙禁止、受動喫煙、心血管疾患、血管内皮機能障害

1.はじめに
 わが国では2003年5月に施行された健康増進法の下、公共の場における受動喫煙からの非喫煙者の保護を目的とする禁煙化が少しずつ始まり、最近では敷地内禁煙を実施する医療機関もどんどん増えている。2005年2月にはわが国も批准した「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」1)が発効し、本格的な喫煙対策が求められている。日本循環器学会をはじめとする9つの医科・歯科の学会が合同で作成した「禁煙ガイドライン」2)が2005年11月に発表され、2006年度には禁煙治療の保険適用も開始され、“喫煙は病気、喫煙者は患者”と認識され始めた。このような現状の中、わが国より一歩先に公共の場・職場の法的な全面的喫煙規制を行った世界各地から、公共の場・職場の完全禁煙によって心臓病が大幅に減少したという驚くべきデータが、最近次々と報告されている。本稿ではそのデータを紹介し、冠動脈疾患の罹患率や死亡率を減らす有効な手段として喫煙者が禁煙することはもちろんのこと、法的禁煙環境整備による受動喫煙防止が心臓病減少にいかに重要であるかを述べたい。

2.法的喫煙環境規制による心臓病の減少
 法的喫煙環境規制によって心臓病が減少したことが報告された7つの報告を表1にまとめて発表順に示す(内5報告3~7)が論文発表)。

表1.法的喫煙規制による心臓病減少効果に関する報告

  調査機関 調査地域 結果
(1) Sargent RP, et al. BMJ 20043) 米国モンタナ州ヘレナ(人口68,140人) 禁煙法施行後AMI入院患者は40%減少した。ヘレナの外(禁煙法施行していない)では変わらなかった。
(2) Bartecchi C, et al. Circulation, 20064) 米国コロラド州プエブロ(人口147,751人) 公共の場所(屋内の職場や公共施設、レストランやバーなどの飲食店、娯楽施設)が禁煙となって18か月。AMI発作の患者が禁煙法の施行前と比べ、約27%減少。
(3) Barone-Adesi F, et al. The European Heart Journal 20065) イタリア北部ピエモンテ州(人口約430万人)  公共の場の禁煙法施行後5か月間の心臓病患者数(心臓発作による入院患者数と死亡者数)が、前年同期と比べて 11 %減少。
(4) Khuder SA, et al. Prev Med. 20076) 米国オハイオ州ボーリンググリーン 喫煙関連疾患による入院をオハイオ州ケント(禁煙法未施行)と比較検討したところ、CADの減少が最も著名(2002年3月公共の場・職場の禁煙開始。禁煙法施行1年間は39%減少、3年間で47%減少)にみられた。
(5) Juster HR, et al. Am J Public Health. 20077) 米国ニューヨーク州 2003年公共の場の全面禁煙開始。2004年には,全面禁煙になっていない場合の予測数より、3813人少ないAMI入院患者数であった。このことによって2004年には$5600万の医療費削減できた。脳卒中による入院数の変化はなかった。
(6) Cronin E, et al.欧州心臓学会2007年09月04日発表 アイルランド 2004年3月に世界で初めて職場での禁煙制度を全国的に導入。禁煙制度導入後の1年で南西部の公立病院に心臓発作で入院した患者は11%減ったことが明らかになった。
(7) Donnelly P, et al.    スコットランド自治政府 2007年9月10日発表 英国スコットランド、英国スコットランドの9病院(この地域の2/3の心臓発作を受け入れる施設) 公共の場の全面禁煙が2006年3月開始。全面禁煙が導入される前の10年間は、心臓発作で入院する患者の数が年平均3%のペースで減少していたが、導入後の1年間でその減少比率は一気に17%に上昇した。

(1) 米国モンタナ州ヘレナからの報告3)
 米国モンタナ州ヘレナは、人口68,140人の地理的に孤立した地域で、公共の場と職場を禁煙にする条例が2002年6月5日に施行され、2002年12月3日に裁判所命令によって停止された。この地域には1病院があり、急性心筋梗塞患者は全員この病院に搬送される。1997年12月から2003年11月までの入院についてPoisson分析を用いて検討している。禁煙条例が施行されていた6か月間の急性心筋梗塞の入院は計24件で前後の期間の同期間平均40件に比べて、16件 (95%信頼区間:31.0から0.3件)、すなわち40%減少した。同期間にヘレナ以外の地域では12.4件から18件へと有意ではないが5.6件増加しており、ヘレナと、ヘレナ以外の地域の変化はこの間有意に異なっていた(図1)。この結果は、職場と公共の場所を全面的に禁煙化する法的規制が、直ちに心臓病の減少をもたらし、逆に法的規制が解除されることによって再度増加したことを示唆している。

(2) 米国コロラド州プエブロからの報告4)
 米国ヘレナからの報告を受けて、地理的に同様で、少し大規模な地域であるコロラド州プエブロ(推定人口147,751人、平均年齢36.5才、ブルーカラー人口が多く喫煙率が高い集団)において検討された。公共の場の喫煙禁止が法的規制をうける前後の1年6か月(合計3年)の急性心筋梗塞で入院する患者数が禁煙の法律が施行されているプエブロ内と、プエブロとは離れ禁煙の法律が実施されていないエルパソでの患者数と比較検討された。禁煙の法律が施行される前の2002年1月1日から2004年12月1日まで1年半の間に855名が急性心筋梗塞で入院していたが、禁煙の法律の施行後は相対危険度が0.73倍(C.I. 0.63-0.85)に減少し、禁煙の法律が施行されなかったプエブロ外では、0.85(0.63-1.16)と変化なく、また、エルパソ(0.97)でも変化がみられなかった。プエブロ内の急性心筋梗塞の減少はプエブロ以外の地区と比べて有意であった。


図1.急性心筋梗塞による6月から11月までの入院数
(喫煙禁止法は2002年6月5日に施行され、2003年は施行されず。ヘレナの外では施行されず)
Sargent RP, et al. BMJ. 2004 April 24; 328(7446): 977–980より引用

(3) イタリア北部ピエモンテ州からの報告5)
 イタリアでは2005年1月10日から政府がすべての公共の場の室内(カフェやバーやレストラン、ディスコも含む)を禁煙にする法律を執行した。そのような中、北イタリアのピエモンテ州(人口約430万人)で、急性心筋梗塞による入院数の変化について退院記録から、禁煙の法律施行前(2004年10月から12月)と施行後(2005年2月から6月)でそれぞれ季節による疾患の変動を考慮して1年前の状態と比較検討されている。60才以下の症例では喫煙禁止施行前と比較して、禁煙施行後に有意に急性心筋梗塞が減少した(2004年2月から6月で922症例に対し2005年2月から6月で832症例と減少。年齢、性別調整済みRRは0.89(C.I.0.81-0.98)であった)。しかし60才以上の人ではその傾向はみられなかった。喫煙率の低下など種々の条件検討による法的喫煙規制後の能動喫煙者の心筋梗塞減少は0.7%の減少と推計され、法的喫煙規制後に観察された心筋梗塞の11%の減少効果は主に受動喫煙が減ったことによると推測されている。すなわち400万人規模の都市においても公共の場の喫煙規制が、急性心筋梗塞入院を短期間で減少させると結論づけられている。

(4) 米国オハイオ州ボーリンググリーンからの報告6)
 2002年3月にオハイオ州ボーリンググリーンで職場と公共の場を禁煙にする法律が施行された。喫煙関連疾患による入院を人口規模、年齢性別構成がほぼ同等であるオハイオ州ケント(禁煙法未施行)と比較検討したところ、冠動脈疾患患者の減少が最も著明(禁煙法施行1年間は39%減少、3年間で47%減少)にあらわれたことが報告されている。

(5) 米国ニューヨーク州からの報告7)
 米国ニューヨーク州では2003年に公共の場の全面禁煙が開始されたが、2004年には,全面禁煙になっていない場合の予測数より、急性心筋梗塞入院患者は3813人少なく(15%の低下)さらに心臓発作による入院は32%低下した。このことによって2004年には推計$5600万の医療費削減できたことが報告されている。一方、脳卒中による入院数の変化はなかったとされている。

(6) アイルランドおよび英国スコットランドからの報告
 これらはまだ論文になっていない報告であるが、学会発表の速報によると、2004年3月に世界で初めて職場での禁煙制度を全国的に導入したアイルランドでは、禁煙制度導入後の1年で南西部の公立病院に心臓発作で入院した患者は11%減ったことが明らかになったことが報告されている。また、英国スコットランドでは公共の場の全面禁煙が2006年3月開始。全面禁煙が導入される前の10年間は、心臓発作で入院する患者の数が年平均3%のペースで減少していたが、導入後の1年間でその減少比率は一気に17%に上昇したことが報告されている。

 これら7つの報告においていずれの報告も、公共の場、職場の喫煙を法的に規制し、全面的受動喫煙防止区域を設定することによって、ごく短期間に急性心筋梗塞等の心臓発作による入院の減少効果があらわれることを示している。このことは、喫煙による冠動脈疾患の発生が、喫煙の慢性障害を中心にした発がんとは異なり、喫煙の急性障害によってもまた生じることを考慮すれば納得できることである。
 以上より、第一にわが国においても特定の自治体の首長・地方議会議員・市民等の協力を得て、全面的受動喫煙禁止区域を設定し、同様な結果であることを早急に明らかにする必要がある。また、第二に厳格な禁煙環境整備を我々医療者が国・社会・一般市民に強く訴えていく責任があること示すものである。特に循環器疾患は癌に次いでわが国の死亡原因の第2位を占め、さらに外来患者では第1位であり、癌と比較すれば死亡率が低いため膨大な生存患者がいることを考えれば、このことの重要性は明らかである。
 次にこのように循環器系に多大な影響を与える受動喫煙の急性・慢性影響(表2)についてさらに、まとめておきたい。

表2.環境たばこ煙曝露がもたらす健康影響

3.受動喫煙の循環器系への急性・慢性影響
(1)環境タバコ煙(ETS)とは
 受動喫煙に関与するタバコ煙は、喫煙者が吸入後はき出した主流煙である呼出煙と、副流煙が混じった環境タバコ煙(ETS)である。ETSの多くを副流煙が占め、その有害物質の濃度は、主流煙に比べ、ニコチン2.6~4.9倍、一酸化炭素2.5~4.7倍、各種発がん物質で2~30倍と高くなる。非喫煙者が実際に受動喫煙を受ける程度は、部屋の広さや換気条件によって大きく異なり、また化学物質の種類によっても異なる。
 換気していない室内で、喫煙者と受動喫煙者の呼気中一酸化炭素濃度を経時的に測定したある研究によると、受動喫煙者では喫煙者の約3分の1の濃度に達していると報告されている。またレストランおよび事務室内で、タバコ煙中の各種発癌物質の吸入量を測定した研究によると、受動喫煙者では喫煙者に比べて、ニコチンは数十分の一から百分の一程度、ベンゾピレンは10分の1から50分の1量であったのに対し、ニトロソジメチルアミンでは等量から2分の1量であった8)。この他にも受動喫煙者のタバコ煙吸入量はガス相成分に関しては、喫煙者の数分の一に達するという多くの報告があり、受動喫煙によって非喫煙者は急性および慢性の健康影響を受けることが推察される。

(2)受動喫煙による血管内皮障害
 臨床及び実験研究において、能動喫煙や受動喫煙が種々の血管床において血管機能不全、動脈硬化促進、血栓形成を起こすことが示唆されている。未だその機序は確定されていないが、フリーラジカルに関連した酸化ストレスが、その中心的な役割をなしていることが明らかにされつつある。これらのフリーラジカルはタバコ煙そのものに含まれるものであるとともに、血管内皮からも発生するものである。したがって喫煙は外因性に強力な活性酸素、フリーラジカルを負荷し、明らかに酸化ストレスを増大させ、血管内皮機能障害や血管平滑筋細胞の活性化を通して血管病変形成に関与していることが明らかにされてきた9)10)
 生体内には生成された活性酸素を消去する系が存在するが、Tsuchiyaらによる若いボランティア喫煙者における検討11)において、タバコを一本吸っただけで、血漿中のアスコルビン酸、システイン、メチオニン、尿酸などの抗酸化物質が有意に低下して約1時間持続することが観察されており、タバコ煙が激しい酸化ストレスを生体に与えていることが示唆されている(図2)。喫煙期間が長いほど血漿中のアスコルビン酸濃度が低いことや、逆に活性酸素の消去系の指標の一つであるグルタチオンが慢性喫煙者では非喫煙時には非喫煙者より高く、喫煙するとその値が減少する事象も観察されている。血管壁に酸化ストレスがかかると、血管内皮機能障害が生ずるとされ、血管平滑筋細胞の活性化が起こり、血管壁から組織ACE、組織アンジオテンシンⅡ、エンドセリン、カテコラミン、サイトカイン、PAI-1などの物質が生成されて、血管収縮や血管の炎症を生じ、また、循環系を調節している一酸化窒素が喫煙により著明に減少することも観察されている(図3)。受動喫煙においてもOtsukaらは,健常非喫煙若年ボランティアにおいて、わずか30分の受動喫煙が血管内皮機能を傷害し冠血流予備能を低下させることを報告した12)。わずかな受動喫煙でも危険であり,すべての人がタバコ煙暴露から保護されなければならないことが示されたデータである。

(3)受動喫煙の慢性影響
 海外では一日1~4本の少量喫煙の危険性に関する新しいデータが報告されている。ノルウェーのオスロと近郊3地方で行われた研究開始時に35才から49才の約4万3,000例(男性23521人、女性19201人)の循環器疾患のないコホートの1970年から2002年の前向き調査の結果13)では、一日1~4本の喫煙者の虚血性心疾患による死亡の非喫煙者に対する相対危険度は男性2.74倍、女性2.94倍であり、軽度喫煙者の危険性が示されている。先に述べた、受動喫煙者のタバコ煙吸入量はガス相成分に関しては、喫煙者の数分の一に達するという報告からすると、受動喫煙による循環器疾患リスク増大は当然と考えられる。
 AHAは1992年に心臓死のリスクは家庭における受動喫煙では約30%上昇し,受動喫煙の程度がさらに高い職場では,さらに高いリスクがあるとしている。1999年にはHeらが基準に適合する疫学調査18件のメタアナリシスの結果を発表した14)図4)が、受動喫煙による冠動脈疾患の相対危険度は、1.25と有意に高く、さらにコホート研究1.21、症例対照研究1.51、男性1.22、女性1.24、家庭内曝露1.17、職場曝露1.11で、観察方法を問わず増加していた。また、同研究において受動喫煙のない非喫煙者と比較した受動喫煙のある非喫煙者の虚血性心疾患リスクは1日1~19本の場合1.23、20本以上の場合1.31と有意な量反応関係を示していた(図5)。

4.おわりにー今後の目指す方向―
 わが国は受動喫煙防止の後進国であるが、米国における心血管疾患と脳卒中の一次予防のためのAHAガイドラインと同様に、わが国の虚血性心疾患の一時予防ガイドライン(2006年改訂版) や心筋梗塞二次予防に関するガイドライン(2006年改訂版)でも「喫煙歴があれば、禁煙するように支援する。また、 退院後、受動喫煙が生じないようにするように指導する。」とされている。2005年11月に発表された9学会の合同「禁煙ガイドライン」においても、現在わが国においては受動喫煙の有害性の認識や、受動喫煙による被害を防止するための方策が十分でなく、「非喫煙者の保護」を目的とした方策を実行すべきであると提言されている。しかし今や、そのような抽象的な表現で満足すべきではなく、わが国でも具体的に法的に全面的受動喫煙禁止地区をいくつか設定することとその結果を調査・検討する時期にきている。そのためには各学会を中心に医療者・行政・市民が協力する必要がある。受動喫煙は予防可能な循環器疾患の最大のリスクファクターであり、非喫煙者が受動喫煙にさらされることを防ぐために医療従事者はあらゆる努力をする必要がある。

図2.喫煙前後の酸化ストレス指標の変化
(文献11より引用)



図3.心血管リスクファクター

(文献9より引用、和訳)
血管病変形成の中心となるのは酸化ストレスである。喫煙は酸化ストレスを増加させる。血管壁に慢性的に酸化ストレスがかかると、血管内皮機能障害や血管平滑筋細胞の活性化が起こり、血管壁から組織ACE、組織アンジオテンシンⅡ、エンドセリン、カテコラミン、サイトカイン、PAI-1などの物質が生成されて、血管収縮や血管の炎症を生じる。また、循環系を調節している一酸化窒素が喫煙により著明に減少することも観察されている。



図4.受動喫煙による虚血性心疾患相対リスクー18の疫学調査の
メタアナリシス(He, et al. N Engl J Med. 1999)



図5.受動喫煙本数による虚血性心疾患相対リスクー18の疫学調査の
メタアナリシス(He, et al. N Engl J Med. 1999)
文献
1) 外務省:たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約の説明書.2004年3月
2) 禁煙ガイドライン Circulation J 2005; 69, Suppl.Ⅳ: 1-99
3) Sargent RP, Shepard RM, Glantz SA. Reduced incidence of admissions or myocardial infarction associated with public smoking ban: before and after study. BMJ 2004; 328: 977-980
4) Bartecchi C, Alsever RN, Nevin-Woods C, Thomas WM, Estacio RO, Bartelson BB, Krantz MJ. Reduction in the incidence of acute myocardial infarction associated with a citywide smoking ordinance. Circulation. 2006;114(14):1490-6.
5) Barone-Adesi F, Vizzini L, Merletti F, Richiardi L. Short-term effects of Italian smoking regulation on rates of hospital admission for acute myocardial infarction. Eur Heart J. 2006 :2468-2472.
6) Khuder SA, Milz S, Jordan T, Price J, Silvestri K, Butler P. The impact of a smoking ban on hospital admissions for coronary heart disease. Prev Med. 2007 ; 45(1):3-8.
7) Juster HR, Loomis BR, Hinman TM, Farrelly MC, Hyland A, Bauer UE, Birkhead GS. Declines in hospital admissions for acute myocardial infarction in New York State after implementation of a comprehensive smoking ban. Am J Public Health. 2007; 97(11): 1-5
8) Remmer H. Passively inhaled tobacco smoke: a challenge to toxicology and preventive medicine. Arch Toxicol, 1987; 61: 89-104
9) Dzau VJ: Theodore Cooper Lecture: Tissue angiotensin ando Pathobiology of vascular disease: a unifying hypothesis. Hypertension 37, 1047-1052,2001
10) Heitzer T, Yla-Herttuala S, Luoma J, et al.: Cigarette smoking potentiates endothelial dysfunction of forearm resistance vessels in patients with hypercholesterolemia. Role of oxidized LDL, Circulation 93, 1346-1353, 1996
11) Tsuchiya M, et al: Smoking a single cigarette rapidly reduces combined concentrations of nitrate and nitrite and concentrations of antioxidants in plasma. Circulation 105: 1155-1157, 2002
12) Otsuka R, Watanabe H, Hirata K et al: Acute effects of passive smoking on coronary circulation in healty young adults. JAMA; 286:436-441, 2001
13) Bjartveit K, Tverdal A. Health consequences of smoking 1-4 cigarettes per day. Tob Control 2005; 14(5): 315-320
14) He J, Vupputuri S, Allen K, Prerost MR, Hughes J, Whelton PK. Passive Smoking and the Risk of Coronary Heart Disease ? A Meta-Analysis of Epidemiologic Studies. N Engl J Med 1999; 340: 920-926


Smoking bans prevent cardiovascular diseases ? It’s the time to investigate whether diseases decrease or not by the implementation of a comprehensive smoking ban in Japan.

Hisayoshi Fujiwara1, Mami Iida2

Even brief exposure to secondhand smoke has immediate adverse effects on cardiovascular system, such as arterial endothelial dysfunction. Exposure to secondhand smoke increases risk of fatal and non-fatal coronary heart disease in non-smokers by about 30%. A recent epidemiological study found that non-smokers exposed to secondhand smoke had higher blood chemistry values including white blood cells, C reactive protein, homocysteine, fibrinogen, and oxidized low density lipoprotein cholesterol concentrations compared with unexposed non-smokers, and that the values for these biomarkers of inflammation were similar to those observed in active smokers. Clean indoor air ordinances that ban smoking in public and work spaces may lead to significant reductions in the prevalence of smoking and cigarette consumption and therefore may reduce the prevalence of exposure to secondhand smoke. Reducing exposure to secondhand smoke may lead to a reduction in smoking-related diseases. Recently, growing evidence indicates that the implementation of a comprehensive smoking ban significantly and dramatically reduced the rate of hospital admissions for coronary heart diseases in Helena (Montana, U.S.A.), in Pueblo ( Colorado , U.S.A.), in Bowling Green (Ohio, U.S.A.), in Piemont region (Italy), in New York State (U.S.A.), in Ireland, and in Scotland (U.K.). Now it’s the time for Japan to implement a smoke-free legislation and to evaluate the short and long-term effects of the legal smoking ban on cardiovascular diseases. In this report, we reviewed that the comprehensive smoking bans constitute a simple, effective intervention to substantially improve the public health.

Key word: smoke-free legislation, smoking ban, secondhand smoke, cardiovascular disease, endothelial dysfunction

1. Hyogo Prefectural Amagasaki Hospital, Amagasaki, Hyogo, 660-0828, Japan
2. Department of General Medicine, Chuno-Kosei Hospital, Seki, Gifu, 501-3802, Japan


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《原著論文》

日本禁煙学会認定専門医による禁煙治療成績

日本禁煙学会禁煙治療委員会
東北大学病院 禁煙外来担当
山本蒔子

キーワード:ニコチン依存症、ニコチンパッチ、保険適用、禁煙成功率


はじめに
 2006年4月からニコチン依存症管理料が保険適用となり、さらに6月からはニコチンパッチも保険適用になった。長い間禁煙治療を進めてきた私たちにとっては、念願がかなったと言える。しかし、社会保険庁は保険適用1年後の治療成績を調査するにあたり、治療が終了していない症例までを含むものを分母とし、禁煙成功例を分子として計算することにしているため、禁煙治療の成功率は明らかに低い値となる。また、5回の受診者のみを対象としているため、5回以下の受診で成功している例を含めず、さらに低い値となることが考えられる。
 そこで、日本禁煙学会では、禁煙成功率を正しく認識して貰うことを目的に、学会認定の専門医に対して禁煙成功率の調査を行うことにした。その結果を集計したので報告する。

方法
 調査は以下の方法で行った。
 1.2006年6月から2007年6月までに、禁煙治療の保険治療を行ったもので、治療が既に終了しているものを対象とする。
 2.受診回数は必ずしも5回である必要は無いが、禁煙の成功後少なくとも4週後に禁煙が継続していることを確認できている症例を成功群とする。
 3.途中中断して禁煙の継続を確認出来なかった例、明らかに失敗である例は失敗群とする。
 4.成功および失敗群は、男女別に、例数、平均年齢、平均受診回数を報告してもらう。
 5.ニコチン依存症の保険制度の問題点についての意見を聞く。
 以上の条件での報告依頼を日本禁煙学会のメール通信にて会員に送信した。
 報告は、FAXでの報告が2名以外は山本にメールで報告された。
 男女別の成功群と失敗群の平均年齢と平均受診回数は、報告された値に例数を掛け合わせて、その後各々の群の総例数で割って求めた。

結果
 報告医師数(報告施設数)は34名であった(論文の最後に報告者名を掲載)。症例数は100例以上を越える箇所は4箇所あった。科は多くが内科であったが、耳鼻科と神経外科が1箇所づつあった。
 報告総症例数は1627例であり、成功群は男性688例、女性192例、失敗群は男性493例、女性254例であった。
 表1に各群の平均年齢と平均受診回数を掲げた。成功群の男性年齢が52.5歳であり、女性は47.7歳であった。失敗群では男性が48.9歳、女性が45.8歳であった。男性において年齢が高く、男女とも成功群の年齢が高い傾向があった。平均受診回数は、成功群の男性が4.6回、女性が4.7回であり、失敗群では男性が2.8回及び女性が2.6回であった。成功群のほうが男女共に、受診回数が多かった。
 表2に示したように、禁煙成功率は男性58.2%(688例 / 1181例)、 女性43.0%(192例 / 446例)であり、明らかに女性における成功率が低値であった(p<0.01)。全体での成功率は54.0%(880例 / 1627例)であった。

表1 禁煙成功群と失敗群における平均年齢と平均受診回数
  禁煙成功群 禁煙失敗群
例数 男性
688 493
女性
192 254
平均年齢 男性
52.5 48.9
女性
47.7 45.8
平均受診回数 男性 4.6 2.8
女性 4.7 2.6
表2 禁煙治療における男女別成功率
  症例数 成功例数 禁煙成功率 %
男性症例 1181 688 58.2
女性症例 446 192 43.0
総報告症例 1627 800 54.0
女性と男性の比率の検定p<0.01
 保険制度への問題点としては以下の意見が挙げられていた。
1.保険適用からブリンクマン指数を外すべきである。若年者こそ早く禁煙して欲しい。
2.受診回数の5回制限を止めて欲しい。特にニコチン依存症以外の精神疾患を有する患者では長期の治療を要する。
3.不適切な治療をしている医療機関(パッチを2ヶ月間処方のみでカウンセリングなし)があるとの情報を聞くので、関係官庁は定期的な監査をすべきと思う。

考察
 厚生労働省では、禁煙治療の保険適用開始後、平成18年6月と7月の受診者を対象に、禁煙治療終了後の追跡調査を行っている1)。この報告書では、4189例の報告を元にしている。5回の指導終了時の禁煙成功例数と5回より前に(1回から4回)中止した例の禁煙成功例数も報告されており、それら含めて成功率を算出してみると53.0%となる。ただし、この場合には受診が5回より少ない1回から4回の症例でパッチ終了後の禁煙を確認しているかは不明であるので、実際の成功率は、もっと低くなると思われる。なお、禁煙治療終了3ヶ月後における成功率は31.7%であった。今回の日本禁煙学会認定専門医会員による禁煙成功率は全体で54.0%であり、治療成績は良いと思われた。
 今回結果では、女性において禁煙成功率が有意に低かったが、女性の禁煙し難さは以前から指摘されている2)。自由診療時ではあるが、東北大学病院での101例のニコチンパッチによる治療では、男性の成功率が64.2%、女性では35.4%であり、やはり女性において明らかに禁煙成功率が低かった3)
 平均年齢では、男性の成功群の年齢が最も高く、女性の年齢は男性に比べると低く、年齢が若いことが女性の成功率を低くしている一因になっていると思われた。実際に診療していると、女性のほうが、家庭の事情など複雑な背景を持っているように思われた。また、女性の喫煙者では配偶者が喫煙している頻度が高い傾向があることも指摘されている。
 脳におけるニコチンの受容体であるアセチルコリンレセプターα4サブユニットの遺伝子多型の変異の検討によると、男女差が認められており、女性の禁煙の難しさの一因である可能性を示唆している4)
 今後の禁煙治療において、女性の禁煙成功率を高めるための方法の研究も必要と思われる。
 受診回数では、成功群の受診回数が多い傾向が見られた。成功群の平均受診回数が男性では4.6回、女性では4.8回といずれも5回未満であった。受診回数に関しては、5回未満でも成功者いることから、社会保険庁は成功例の算定には、5回でなければならないとの条件を付けるべきでないと思う。東北大学病院における成績でも、男女共に成功群における受診回数が多かった3,5)。厚生労働省の報告でも治療終了時及び3ヶ月後共に、受診回数が多いほど禁煙成功率が高い傾向が認められた1)。治療者としてはいかにして中断せずに通院してもらうかを考慮しなければならない。
 保険制度の問題点ではブリンクマン指数を条件から外すべきとの意見が多かった。ブリンクマン指数による条件の根拠がはっきりせず、若年者が治療できないことは疾病の予防にならず、この条件は、止めなければならないと思われる。ニコチン依存症は、治療が必要な慢性疾患であることから、受診回数を5回とすることも治療をし難くし、禁煙成功率を下げることにつながっていると思われる。

結語
1. 日本禁煙学会の認定専門医34名の禁煙治療成績をまとめて報告した。
2. 総症例数は1627例であった。禁煙成功率は男性58.2%(688例 / 1181例)、 女性43.0%(192例 / 446例)であり、明らかに女性における成功率が低値であった(p<0.01)。全体での成功率は54.0%(880例 / 1627例)であった。
3. 平均年齢では男性の成功群がもっとも年齢が高く52.5歳であり、女性は男性に比べて年齢が低かった。成功群のほうが男女とも年齢が高い傾向があった。
4. 平均受診回数では、男女共に成功群の回数が多かった。平均受診回数は成功群の男性で4.6回、女性で4.7回であり、いずれも5回未満であった。
5. 社会保険庁は成功率の算定に受診を5回でなければならないとしているが、5回未満でも成功していることから、この条件は付けるべきでないと思われた。
6. 女性の禁煙治療率を上げるための研究が必要と思われた。
7. 受診回数を増やすために、中断しないような仕組みの検討が必要と思われた。
8. 現在の保険制度におけるブリンクマン指数による制限や5回のみ受診の適用とする制限を止めるべきである。


文献
1) 平成18年度診療報酬改定結果検証に関わる調査 ニコチン依存症管理料算定保険医療機関における禁煙成功率の実態調査 報告書(案)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/04/dl/s0418-3d.pdf
2) Perkins, K.A., Donny, E. and Caggiula, A.R.:Sex difference in nicotine effects and self-administration: review of human and animal evidence. Nicotine Tobacco Res. 1999 ; 1: 301-315.
3) 山本蒔子:東北大学病院の禁煙外来における禁煙成功率.2007年 2月
第1回日本禁煙学会学術総会にて発表
4) Ming, D.Li , Joke, B., Jennie, Z.Ma,et al : Ethnic-and gender-specific association of the nicotine acetylcholine receptor α4 subunit gene (CHRNA4)with nicotine dependence. Human Molecular Genetics
2005; 14: 1211-1219.
5) 山本蒔子:禁煙外来における禁煙指導.日本呼吸管理学会誌 2006年;15巻:392-396.

この禁煙治療委員会の調査に報告された専門医を以下に掲げた(敬称略・到着順)。
 細田昌良 (下伊那赤十字病院)、川瀬康裕 (川瀬神経内科クリニック)、寺本清、小林康夫 (世田谷区小林耳鼻咽喉科医院)、前田晃男 (西美濃厚生病院)、鍋島秀 (鍋島医院)、永岡隆、久藤文雄 (相模原クリニック)、河内久子 (犬山中央病院 専門看護師)、斉藤文典 (千葉市、京葉内科クリニック)、安陪隆明 (鳥取市 安陪内科医院)、山田修久 (山形県)、鷺野英麿 (兵庫県)、洞久美子 (慈泉会相澤健康センター)、Kiyoshi Sasamoto (山梨県)、高田三千尋 (大分記念病院)、井関冨美子 (和歌山県)、安藤由紀子 (宮城県金上病院)、加藤正隆 (愛媛県 かとうクリニック)、吉田元 (吉田内科医院)、宮武明彦 (大阪府 宮武内科)、佐藤克明 (岡山県)、小野彰史 (小野内科循環器科医院)、上村孝臣 (藤沢市 上村脳神経外科クリニック)、遠藤明 (北海道函館市えんどう桔梗こどもクリニック)、萩原真一 (栃木県 ホンダエンジニアリング健康管理センター)、木田さとみ (福島県)、玉垣芳則、佐藤静香 (専門医及び専門看護師 大阪府堺市 ベルライフケアクリニック)、豊田茂樹 (みかわクリニック)、小林弘明 (福井県済生会病院呼吸器外科)、加濃正人 (横浜市新中川病院)、大橋勝英 (愛媛県 大橋胃腸肛門科外科)、栗岡成人 (京都市 城北病院)、津島 久 (京都市 上京病院) 山本蒔子 (仙台市 東北大学病院)



The quit rate of tobacco smoking treated by the smoking cessation specialist admitted by Japanese Society Tobacco Control

Makiko Yamamoto M.D.
Quitting tobacco committee of Japanese Society of Tobacco Control
Tobacco quitting clinic of Tohoku University Hospital

From 2006 June medical insurance started to cover the nicotine replacement therapy by nicotine patch. The quitting tobacco committee of Japanese Society of Tobacco Control (JSTC) researched the quit rates in hospitals and clinics. Thirty four doctors admitted as the specialist of smoking cessation treatment by JSTC reported the quit rates in 1627 patients.
We considered that patients succeed , if they continued to quit at least 4weeks after finish of nicotine patch. The quit rate is 58.2% in men and 43.0% in women. The total quit rate is 54.0%. Women’s quit rate is significantly lower than men (p<0.01). The average age in successful men group is 52.5 years that is the highest among groups. The average visiting times to the clinic is 4.6 and 4.7 in successful men group and successful women group, respectively.

Key word: nicotine dependence, nicotine replacement therapy, quit rate, smoking cessation specialist, medical insurance


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《原著論文》

「健康日本21」等の喫煙率と消費量の半減目標達成の推計試算
-対2000年の10年後の半減は少し遅れても達成する可能性-

NPO法人 子どもに無煙環境を推進協議会 野上浩志

キーワード:喫煙率、タバコ販売本数、半減目標、健康日本21、がん対策推進基本計画

【要 旨】
 2000年の「健康日本21」や2006年の当該中間評価報告で、また2007年の「がん対策推進基本計画」で、立案段階で、喫煙率やタバコ消費量(販売本数)の半減目標あるいは数値目標が掲げられたが、タバコ関係業界の強い反対で見送られた。
 しかし男性喫煙率とタバコ販売本数は経年的に一貫して減少してきており、これらを推計曲線で外挿したところ、2000年の「健康日本21」での「まぼろし」となったこれら半減目標は、2010年よりも少し遅れても達成する可能性がある結果が得られた。2007年の「がん対策推進基本計画」の「まぼろし」の男性喫煙率の半減目標も、半減は8年後の2015年までには達成される試算結果であった。
 これらの現実の減少データ(エビデンス)と推計試算結果、及び減少に関わる複合要因を冷静に見れば、現実に進行している減少の動きは止めようがないように思われ、タバコ業界や販売側は、世論の批判を浴びるような数値目標反対を強硬に主張するのではなく、また国も事態の進展にただ手をこまねくのではなく、喫煙率、喫煙者、タバコ販売本数、収益、税収ともに急減が現実となってきているとの前提で、まだ対処が可能と思われる現時点で、早急に抜本的なタバコ対策と規制政策を進めるべきと思われた。

はじめに
 2000年の「健康日本21計画」1,2)や2006年の当該中間評価報告3)で、また2007年の「がん対策推進基本計画」4)で、立案段階で、喫煙率やタバコ消費量(販売本数)の半減目標あるいは数値目標が掲げられたが、タバコ関係業界の強い反対で見送られ(報道によれば)、これらの経緯はマスメディアでも批判的に取り上げられ、禁煙推進や医療保健関係者と団体の強い反対と失望があった5,6)
 しかしこの間、半減や数値目標では、その目標設定の説得力のある論拠が示された上で論議がされておれば建設的な進展があったかも知れないが、説得力のある論拠が十分に明示されたとは必ずしも言えないように思われ、日本たばこ産業(株)(JT)などタバコ業界や販売側の頑なさが際だってしまったように思われる。
 我が国における喫煙率及び販売本数は減少し続けている公表データがあるので、今後はこのような不毛なせめぎ合いがないよう、この公表データをもとに推計試算(外挿、シミュレーション)をすることによって、エビデンスに基づいたそれら目標設定の妥当性を検討し、また今後のあるべき目標設定にコメントすることを目的とした。

方法
 喫煙率のデータは、JTの公表データ7,8)で、一貫して明らかな減少が見られ始めた1991年以降の男性喫煙率データを用いた。参考データとして、厚生労働省の国民健康栄養調査9)の1995年以降の男性喫煙率を用いた(理由は前述に同じ)。これらのデータは、「調査方法及び標本数を変更しており、従来の調査と連続性が無いことから前年までの調査結果との比較はできないと考えております。」(JT)8)、また国民健康栄養調査でも同様の注意書きのある年度があるが、以下の検討でこれらは変動あるいは誤差の範囲内で、減少傾向は一貫していて近似曲線での外挿評価に支障はないと考えた。
 健康日本21計画におけるタバコ消費量の半減目標では、国民一人あたりのタバコ消費量の半減であったが、本稿の解析にはタバコ販売本数を用いることとし、その年推移のデータは、日本たばこ協会の公表データ10,11)で1998年度(本稿では「年」と表記した)以降のデータを用いた(理由は前述に同じであるが、特に1997年4月に消費税が3%から5%に上がった関係で、1996年度の販売本数が多く、1997年度は減少幅が大きいので、1998年度からのデータを用いた)。
 推計解析はエクセル統計2004(社会統計サービス)を用い、関数式のあてはめと曲線推定を検討し、二次多項式とロジスティック曲線などを検討し、ロジスティック曲線が外挿推計に適していると思われたので、これを使って図表を作成し解析した。この外挿方法は、データ計算の区間や今後の新規データ値によって結果が違ってくる可能性はあるが、過去2年間の喫煙率とタバコ販売本数の年推移のモニタリング推計では、実績値とのずれは小さかったので、今回試算結果として提示することとした。
 なお健康日本21では基準値として1999年のデータを主として使っているが、今回の解析には2000年の実績データを用いた。

結果
(1)JTデータによる男性喫煙率の減少と外挿推計
(1-1)2000年実績の喫煙率(53.5%)は2012年までには概ね半減達成の可能性
 JTデータの男性喫煙率は、図1及び表1に示すように、1991年以降2007年まで、一貫して減少しており、この減少推移はロジスティック曲線で近似でき、この曲線に外挿すると、2000年実績の喫煙率(53.5%)は2012年までには概ね半減達成(26.4%、図1に青い横線を入れた、95%信頼区間は24.6-28.3%)が推計され、2000年当時の喫煙率半減目標は2年は遅れてもほぼ達成される推計値となった。また2010年の推計中央値は31.7%(95%信頼区間は30.3-33.3%、以下同表現)で、対2000年の40.7%減(43.9-37.8%減)あった。

(1-2)2000年までの喫煙率だけで試算した場合、実績値の方が低くなった
 1991年から2000年までの喫煙率だけで近似曲線を試算した場合は、表2に示すように、2007年の推計中央値は44.9%(43.5-46.2%)であったが、2007年実績の喫煙率は表1に記載のように(表2にも再掲)40.2%で、実績値の方が2000年までのデータでの推計中央値よりも4.7%低く、ロジスティック曲線近似では推計値が高めとなって、実績値を超えることはない結果であった。またこの近似曲線による2010年の推計中央値は40.8%(39.1-42.6%)で、2007年の実際の男性喫煙率40.2%にほぼ同じで、3年早く達成されたことになった。

(1-3)「がん対策推進基本計画」で見送られた喫煙率半減目標は、2年早くには達成する可能性
 また、2007年の「がん対策推進基本計画」で見送られた喫煙率半減目標は、この外挿試算の上では、図1及び表1に示すように、目標の10年後を待たずに8年目の2015年までには推計中央値は19.2%(17.3-21.2%)となり、2年早くには半減達成する可能性が推計された。

(2)国民健康栄養データによる男性喫煙率の減少解析(ほぼ同じ達成推計)
 国民健康栄養調査で1995年以降の男性喫煙率について同様の推計試算をした場合には、図2及び表3に示すように、2000年実績の喫煙率47.4%(文献1)の基準値には1999年の喫煙と健康問題に関する実態調査52.8%と記載されているが)の半減達成は2013年には24.1%(図2に青い横線を入れた、17.5-31.3%)と推計され、また2010年の推計中央値は30.5%(24.9-36.1%)で、対2000年の35.7%減(47.5-23.8%減)あった。

(3)タバコ販売本数の減少の推計解析(2012年までには概ね半減達成の可能性)
 タバコ販売本数は、図3及び表4に示すように、1998年以降一貫して減少しており、この減少推移はロジスティック曲線で近似でき、この曲線に外挿すると、2000年実績の販売本数(3,245億本)は2012年には概ね半減達成(1,684億本、図3に青い横線を入れた、1,551-1,818億本)が推計され、2000年当時の販売本数の半減はほぼ2年遅れて達成される推計中央値となった。また2010年の推計中央値は2,047億本(1,939-2,153億本)で、対2000年の36.9%減(40.2-33.7%減)あった。

考察
(1)半減目標と数値目標の経緯、及び公表データについて
 1999年~2000年の健康日本21計画では、当初、喫煙率とタバコ消費量の半減目標が掲げられた1)(男性喫煙率の基準値:52.8%〔平成10年度喫煙と健康問題に関する実態調査〕、国民一人あたりのタバコ消費量の基準値:3,152本)が、タバコ産業・業界とタバコ族議員の猛反対12)により、半減目標は見送られたが、ただ半減目標推進の世論を全く無視はできず、健康日本21には「『喫煙率半減』をスローガンに、喫煙率の減少が大幅に進むよう努める。」の文言のみが残った経緯がある2)
 2006年8~9月には、健康日本21の中間評価報告のパブリックコメントがあり、喫煙率の低減目標を含め、意見募集が行われた結果、コメント総数は876件で、「喫煙率低減の数値目標」などのタバコ分野については829件というコメント総数の95%もの意見が寄せられ、タバコ問題に国民の関心の高さが示されていて、「喫煙率低減の数値の新規目標設定」は、賛成305、反対265で、しかも最も厳しい第三案目標値(男性25%、女性5%)が205人と最も支持が多い結果であった。しかしJTはまたも猛反対をし、結果的に厚生労働省は低減目標を断念し、「やめたい人がやめる」という表現としてしまった3)
 そして、2007年4月1日の「がん対策基本法」の施行を受け、国の「がん対策推進協議会」は、「がん対策推進基本計画」を策定し、当初、がん予防のために「喫煙率半減目標」が委員の提案で盛り込まれる動きがあり、パブリックコメントでも賛同の意見が多数寄せられた。しかしJTがまたも強く反対し、厚生労働省及び国(政府)は、盛り込むべきとの委員の意見を採用せずに喫煙率半減目標を見送り、委員提案にあったタバコ税上げも盛り込まれなかった4)
 しかし、公表されているJT調査の喫煙率7)は、喫煙率の高い男性に限ると、厚生労働省の最新たばこ情報では、1965年(82.3%)以降ほぼ一貫して減少し続けており、2007年には40.2%と42年を経て半減以下となっている。しかもこの減少は2001年以後には加速されているように思われる。またタバコ販売本数10,11)も、1998年以降は減少し続けている現実がある。

(2)喫煙率の半減等の目標達成の推計試算と、今後の目標設定について
 健康日本21計画以降の喫煙率とタバコ消費量(本稿では販売本数)の半減目標と数値目標においては、これらの公表データを基に推計試算をした上で目標設定とその妥当性を論議すべきであったと考え、今回推計解析を行ってみた。
 まず、関数式のあてはめと曲線推計を検討し、ロジスティック曲線近似が推計に適していると思われた(いずれもp<0.001で有意)。いずれの実績データもこのロジスティック曲線によく乗っており、外挿すると、JTデータ及び厚生労働省の国民健康栄養調査ともに、2000年実績の喫煙率(JT53.5%、国民健康栄養調査47.4%)は、2010年には前者で40.7%減(43.9-37.8%減)、後者で35.7%減(47.5-23.8%減)が推計され、2012~2013年までには概ね半減達成する可能性が推計されて2000年当時の喫煙率半減目標は2~3年遅れてもほぼ達成される推計値となり(図1表1図2表3)、男性喫煙率についての半減目標は「まぼろし」でなく、達成実現の可能性が十分にある目標値であったと思われた。
 この推計計算が非現実的な試算でないことは、表2に示したように、この近似曲線を1991年から2000年までのJTデータの喫煙率だけで計算した場合は、2007年の推計値は44.9%(43.5-46.2%)であったが、2007年実績の喫煙率は表1に記載のように(表2にも再掲)40.2%で、実績値の方が2000年までのデータでの推計値よりも4.7%低かったことが示されていて、これは2001年以後の喫煙率がそれまでの喫煙率減少よりも減少幅が大きくなってきていることを示している。そしてこの減少幅が大きくなる傾向が今後も続き、喫煙率の低減がもっと早まるようであれば、2000年当時の喫煙率半減目標は2~3年遅れでなく、もっと早く実現する可能性があると考えられる。
 そしてこれは、健康日本21中間評価での男性喫煙率の第二案目標値(35%以下)、第一案目標値(30%以下)はもちろん、第三案目標値(25%以下)が、その目標値の前で下げ止まりするかも知れないものの、達成される可能性のあることも考えられる。
 これらのことは、健康日本21計画で、また中間評価の過程で、数値目標の根拠を推計解析やシミュレーションなどで提示し、例えば、近似曲線を1991年から2000年までの喫煙率だけで計算した場合の2010年の推計値は40.8%で10年間で12.7%減なので、上乗せとしてその倍の25.3%減の28.2%を目標値として設定するなどの選択もあり得たのではないだろうか。中間評価においては、男性喫煙率の推計試算よりも現実の実績値の減少の方が大きく、喫煙率の低減速度が早まっていることが容易に中間評価できたはずであることから、そのような具体的データに基づいたエビデンスの試算事例を提示すれば、JTなどタバコ業界の反対側の理解と説得は可能であったようにも思われる。
 また、2007年の「がん対策推進基本計画」で見送られた「まぼろし」の男性喫煙率の半減目標は、この外挿試算の上で、目標の10年後を待たずに8年目の2015年までには推計中央値は19.2%(17.3-21.2%、図1及び表1)となるが、この推計値までは下がらずに下げ止まりする可能性はあるものの、推計計算の上では2年早く半減達成することが試算されたので、このような推計試算結果も踏まえ、JTなどが即反発を起こす「半減」という表現にとらわれることのない目標値を提案・設定し、論議をすれば、今少し建設的な計画策定が可能であったようにも思われる。

(3)タバコ販売本数の半減目標達成の推計試算について
 タバコ販売本数についても、実績は1998年以降一貫して減少しており、この減少傾向を外挿すると、2000年実績の販売本数(3,245億本)は、2010年には36.9%減(40.2-33.7%減)が推計され、2012年には概ね半減達成(1,619億本、1,084-2,186億本)が推計されて2000年当時の販売本数の半減はほぼ2年遅れて達成される推計値となった(図3及び表4)が、確度の高い推計にはもう1~2年の実績データが必要かも知れない。
 しかし喫煙率の急減と並行して、タバコ販売本数も1998年の3,366億本からこの9年で2,700億本と19.8%減(特に国産タバコはこの9年で32.1%減〔827億本減〕となって、国産タバコの販売金額も17.7%減〔5,474億円減、税込み〕)10)となるなど急減していて、我が国における喫煙率、喫煙者、タバコ販売本数ともに、縮小が明確化してきたように思われる。
 このタバコ販売本数の急減は、今後タバコ販売額の減少をもたらし、収益減と税収減は避けられないように思われるが、これについては別稿で論考と検証をしたい13)

(4)喫煙率とタバコ販売本数減少の要因の考察と、急務なタバコ政策の転換
 これらの減少の要因は、喫煙者の早期死亡、若い男性の喫煙開始の減少7)、禁煙者の増加、健康志向、タバコと受動喫煙の害の普及と周知、喫煙防止教育、未成年者喫煙対策、禁煙環境の拡大と受動喫煙防止対策(特に2003年5月の健康増進法)、禁煙外来と治療の広がり(保険適用2006年4月)、タバコの値上げ(2003年7月、2006年7月)、健康注意表示(2005年7月)、公共の場の広告制限(2004年10月、2005年10月)、タバコ規制枠組条約発効(FCTC、2005年2月)14)、がん対策推進(2007年4月にがん対策基本法の施行4))などが複合的に絡んでいると考えられる。今後もICカード式タバコ自動販売機の導入(2008年)と義務化の動きで不十分ながらも未成年者の購入アクセスがしにくくなるなどで、男性喫煙率とタバコ販売本数は減少しこそすれ、上向く可能性はほとんどないように思われる。ただ女性の喫煙率は低いものの横ばいで、特に若い女性の喫煙率が漸増している7~9)ので、この対策は焦眉となっている。
 本稿の男性喫煙率とタバコ販売本数の減少推移の外挿方法は、先にも述べたように、データ計算の区間や今後の新規データ値によって結果が違ってくる可能性はあるものの、現実の減少データ(エビデンス)と推計試算結果、及び減少に関わる複合要因を冷静に見てみれば、現実に進行している減少の動きはもはや止めようがないように思われ、タバコ規制枠組条約の国際的動きもあることから、JTなどタバコ業界や販売側は、世論の批判を浴びるような数値目標反対を強硬に主張するのではなく、現実を虚心坦懐に受け入れ、また国も事態の進展にただ手をこまねくのではなく、これら喫煙率、喫煙者、タバコ販売本数、収益、税収ともに急減が現実となってきているとの前提で、まだ対処が可能と思われる現時点で、早急に抜本的なタバコ対策と規制政策を進めるべきではないだろうか。
 JTが海外のギャラハー買収などを進め、財務省がそれを追認するのは、上記の我が国の喫煙率減少とタバコ販売本数の急減(特に国産タバコの急減)の現実を承知の上でのことと思われるが、JT株価が一時的に上がっても、国際的にタバコ消費は加速的に減じていくであろうことから、タバコ関連産業の縮小は時間の問題であるとの観点に立って、国際的にタバコの害を広げ、国際的批判を招くことになるグローバル戦略を止め、日本政府もJT株を至急に放出し、タバコ販売育成と依存を断ち切る時期が早くに来ていると思われる。
 以上の減少(急減)推移を見る限り、我が国のタバコ行政の抜本的な政策転換は急務で、残されている時間は少なくなってきている現実を直視することを願ってやまない。

図1.男性喫煙率の減少と外挿推計(1)



表1.男性喫煙率の減少と外挿推計(1)



表2.2000年までのJTデータによる男性喫煙率の減少と
外挿推計(2010年まで、%)



図2.男性喫煙率の減少と外挿推計(2)



表3.男性喫煙率の減少と外挿推計(2)



図3.タバコ販売本数の減少と外挿推計



表4.タバコ販売本数の減少と外挿推計

文献
1)健康日本21 各論 たばこ(原案、1999年11月)
http://www3.ocn.ne.jp/~muen/kenkounihon21/tobaccotaisaku21genan.pdf
2)健康日本21 各論 たばこ(現状と目標)(2000年3月)
http://www.kenkounippon21.gr.jp/kenkounippon21/about/kakuron/4_tabako/index.html
3)健康日本21中間評価報告書(2007年4月)
http://www.kenkounippon21.gr.jp/kenkounippon21/ugoki/kaigi/pdf/0704hyouka_tyukan.pdf
原案(2006年8月)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1030&btnDownload=yes&hdnSeqno=0000013048
抜粋
http://www.eonet.ne.jp/~tobaccofree/tobaccobassui.pdf
4)がん対策推進基本計画(2007年6月)
http://www.ncc.go.jp/jp/cis/admin_council/pdf/3nd_ref01.pdf
5)「喫煙率引き下げの数値目標を断念」に対する日本禁煙学会コメント(2006年12月)
http://www.nosmoke55.jp/action/0612kenko21.html
6)日本禁煙学会要請書「がん対策推進基本計画には包括的なタバコ対策行動計画が不可欠です」(2007年6月)
http://www.nosmoke55.jp/action/0706gannkeikaku.html
7)厚生労働省の最新たばこ情報-成人喫煙率(JT全国喫煙者率調査)
http://www.health-net.or.jp/tobacco/product/pd090000.html
8)JT発表データ
2006年11月 http://www.jti.co.jp/News/2006/11/20061122_01.html
2007年10月 http://www.jti.co.jp/News/2007/10/20071017_01.html
9)厚生労働省国民栄養調査-成人喫煙率
http://www.health-net.or.jp/tobacco/product/pd100000.html
2005年データは http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/05/h0516-3.html
10)日本たばこ協会-国内販売数量・販売金額 http://www.tioj.or.jp/info/info18.html
11)厚生労働省の最新たばこ情報-たばこ販売本数 
http://www.health-net.or.jp/tobacco/product/pd070000.html
12)自由民主党政務調査会(たばこ・塩産業特別委員会、葉たばこ価格検討小委員会、総合農政調査会、農林部会)の決議(1999年11月)
http://www3.ocn.ne.jp/~muen/kenkounihon21/huuzen.htm
13)タバコ税率を段階的に引き上げる施策のシミュレーション試算と論考
http://www.eonet.ne.jp/~shiryo/tax/tax0710.htm
14)子どもに無煙環境を推進協議会:たばこ規制枠組条約Q&A
http://muen2.cool.ne.jp/fctcQ&A.htm


Reduction by half target of smoking rate and cigarette consumption in 21 Healthy Japanese Plans will achieve even if late a little.

Hiroshi Nogami ; Coalition on a Smoke-free Environment for Kids in Japan

The reduction by half target of smoking rate and cigarette consumption in 21 Healthy Japanese Plans of 2000 gave up by the strong objection of the cigarette-related industry.
However, the male smoking rates and cigarette consumption decrease every year throughout. When these data were calculated with an estimation curve, the result was provided that the reduction by half target might achieve even if these reduction were delayed a little from 2010.
The real decrease of the male smoking rates and cigarette consumption cannot be stopped when these calculation results were watched calmly. The cigarette industry should not strongly object, and the government should not look on, too.
It seemed that the cigarette industry and the government should have been able to go ahead through an anti-cigarette measure and the regulation policy radical early at present that these measures were possible.

Key word: smoking rate, cigarette consumption,  reduction by half target of the cigarette, 21 Healthy Japanese Plans, anti-cancer measure promotion basic plan


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《資 料》

日本呼吸器学会総会(1996-2007)参加者の喫煙アンケート調査 (速報)


北村 諭1)、小林 淳2)、重永哲洋3)


1.自治医科大学名誉教授・南栃木病院院長
2.本田技研工業健康管理センター所長
3.海老原総合病院内科部長

キーワード:呼吸器学会アンケート、喫煙率、施設禁煙状況、施設内タバコ販売、施設での禁煙指導

目的
 日本呼吸器学会は、1997年の禁煙勧告に加えて、2003年には禁煙宣言を発表し、喫煙者は専門医の資格を取得出来ず、更新も不可能となった。また、本学会の会員の全てが非喫煙者であることが期待される。そこで、2007年6月の日本呼吸器学会総会で、参加者の喫煙意識調査を実施した。

対象及び方法
 過去6回の日本呼吸器学会総会参加者(1996,1999,2001,2003,2005,2007年)に、総会総合受付前で、アンケートを配布・回収(無記名方式)した。
 アンケートの内容は、現在の喫煙・過去の喫煙習慣・所属施設が全面的に禁煙か否か・医師及び患者の分煙・施設内たばこ販売(自動販売機・売店)禁煙指導の有無及びその方法・年齢、性、職業とした。

調査結果
 表1に結果の概要を示した。回収率は、48.6%から93.2%に分布した。平均年齢は41歳代であった。
 図1に喫煙率の推移を示した。回答者の中に、医薬品や医療器具関連の展示要員がおり、彼らの喫煙率は、かなり高率であった。
 全体の喫煙率は、1996年には22.7%、1999年には19.7%であり、01年には15.1%、03年には13.9%、05年には7.9%、07年には5.8%であった。
 そこで、回答者を医師のみに限定してみると、01年には12.9%、03年には12.7%、05年には5.1%、07年には3.9%となった。
 図2に全面禁煙の施設からの参加者の割合を示した。1996年以降は漸増し、07年には60%に増加した。
 図3に施設内たばこ販売の有無について示した。たばこ自動販売機、院内売店でのたばこ販売の状況を示した。両者ともに、経年的に漸減した。

考案
 総会参加者の喫煙率は、此の11年間で、22.7%から5.8%にまで低下した。これを医師のみに限定すると、03年に12.7%であったものが、07年には3.9%にまで低下した。
 回答者の施設が全面禁煙である割合は、03年に30%であったものが、07年には60%と増加した。
施設内たばこ販売の割合は、著明に低下した。

表1.調査結果の概要



図1.喫煙率の推移

図2.全面禁煙の施設からの参加者


図3.施設内たばこ販売の有無
結語
 日本呼吸器学会総会参加者の喫煙習慣、所属施設の喫煙環境は、11年間で著明に改善した。
 その一方で、禁煙指導への取り組みは、まだ不十分であった(図4図5)。
 近年になり、施設内でのたばこ販売は自粛されたが、まだ、全面禁煙の施設や院内たばこ販売については、更なる努力が必要と考えられる。

図4 あなたは患者に禁煙を勧めますか?
「しばしば勧める」の割合が60%台、時々を含めた割合も80%台で増加が見られない



図5 禁煙指導の方法
パッチ、ガム、パッチ+ガム全てを合わせた割合が55%から60%台で増加が見られない

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《WAT特集》

WALK AGAINST TOBACCO
2006
WEEK 7 REVISITED

Mark Gibbens

 なぜ、歩こうと思ったか
 鹿児島の佐多岬から、北海道の宗谷岬までの約3000 Kmを歩いて、このメッセージを伝えていきたいと考えています。

 あなたの健康を大事にして下さい。
 あなたの家族を大事にして下さい。
 あなたの友達を大事にして下さい。
 あなたの国 を大事にして下さい。
 禁煙は愛です!


 なぜ私がこのキャンペーンを計画したか、それは私はオーストラリアから来ています。オーストラリアは喫煙率の低い国です。でも、昔からではありません。人々が喫煙、受動喫煙の危険を知り、今の数字になっていったのです。政府はとても明確な喫煙の害のCMを流し、タバコの表示も写真付きでわかりやすくしています。タバコ税も高く、建物、バーであっても禁煙エリアは何%と法律で決まっています。
 今、世界の多くの国が禁煙の動きになってきています。政府の広告も日本に比べ、とてもはっきりと喫煙の危険を警告しています。
 ところが、日本は成人男性の47%が喫煙者と、驚く数字です。
 また、若い女性の喫煙率は増えていっているようです。
 これは、喫煙、受動喫煙の危険性の認識がそれほど重要視されてないからではと思いました。ただ、体に悪いとは知っていても、どう悪いのかといった知る機会がない。三度の食事より口にするのに何が成分でそれはどう体に影響する、またその煙の方が害があるのに、その影響もあまり知られていない。吸う人も吸わない人もそこを知る機会もなく、禁煙、分煙と言われてもただ困惑し、憤慨すると思います。それを知るべきだ、知ってもらいたいと歩く事にしたのです。
 また、私自身が主にICUの看護師でした。多くの医師、歯科医師が禁煙を推進しています。吸い続ける事がどんな事になるか、知っている私達が教えてあげなくてはいけない。治す事だけが、医療ではなく予防をする事も医療だと思います。こうして、歩くことも私の日本においてできる看護師としての仕事の一つと考えています。
 こうして、歩く事ははたして意味があるのかと思われるかもしれません。でも、何もしないよりした方がいいと思っています。このメッセージが一人でも多くの人に伝わるきっかけになればいいなと願い、遍路姿で歩きます。


前号からの続き―

 Week 7 was certainly a memorable week, as it marked the half way point of the walk in both time and distance. I now had little doubt that I could complete the journey as long as I remained injury free and healthy. This busy week kicked off with a visit to the Shizuoka City Office to meet with the Deputy Mayor, Mr Matsuda, a reformed smoker who is doing his best to improve conditions for non-smokers in his city. We actually caused a mild commotion, arriving at the back entrance and surprising both the welcome committee and the 3 camera crews and 6 journalists on hand to record the event as they scrambled to reposition themselves. The most memorable impression for me however was not the reporters or even the Deputy Mayor but the unique group of ventriloquists and their dummies, led by Mr Hamamura, who volunteer their time to teach school children about the dangers of smoking. Mr Hamamura is an interesting man. When not performing with his own dummies, “Ken” and “No-smonkey” he is chef and owner of a no-smoking steak house in the down town area.
 To my surprise the now famous Mr Takemoto from Okayama was again in the crowd and walked with me the morning ’s first 4km before handing over to that other walking stalwart Dr Inamoto (Rain man) who helped me to complete the day again in wet weather at Fuji City. Returning to Shizuoka the four of us joined with the local no-smoking NPO group to enjoy the beautiful smells and delicious food at Mr Hamamura ’s steak house after which we again enjoyed the hospitality of Dr Yokoyama.
 Day 42 was free of reporters and events and I was able to enjoy the days walk, in particular a 10km long 100m wide strip of wooded land between ocean and highway with a well maintained and clean path. It was like an oasis after all the bitumen and concrete of the large cities. As a result, Numazu with its greenbelt, river and lifestyle friendly environment, is now one of my favourite cities in Japan.
 Returning to Route 1 it was not long before I began the long and winding, 8km climb to Hakone Pass at 849m.
 Reaching the top in darkness I prepared to push on to Odawara another 25km away. However Reiko and the weather had other ideas and we found accommodation in a small hotel just as a fierce storm hit the area.
 By morning the storm had spent its anger and we were left to enjoy a beautiful Spring morning highlighted by a majestic, snow-capped Mt Fuji glowing radiantly on the far side of a tranquil Lake Ashinoko. Arriving in Motohakone we were enticed to the waters edge by the lake ’s beauty and began a conversation with a fisherman. He was in fact a reformed smoker, having suffered a heart attack in his 50 ’s. He was a typical matter of fact guy who had removed himself from his first hospital because they told him to stop smoking but gave him no reason. Moving to another hospital he was advised that continued smoking would cause him to have another heart attack and death. Reason given, he quit smoking from that day; which goes to show that if you present people with the truth, rather than giving them an unreasonable order they are more likely to comply.
 Mulling over his words I continued my walk and for the second day found myself bathed in green as I followed the Edo period, old stone path down the mountain and ultimately to Tokyo. Along the way I passed a large group of girls coming towards me on a school walking excursion.
 Some were flushed with the mornings exertions, but all radiated the wonder of nature and the joy of living which becomes muted in the concrete jungles that they normally stagger through as lifeless zombies, programmed to daily chores. I wish all Japanese could come and walk the old stone path to revitalize their lives and escape the sick-city syndrome but then again if they came they would destroy this haven with their tobacco smoke and garbage.
 Anyway I continued down the mountain for three hours suffering one fall on the slippery rocks but surviving with only a few bruises to reach Odawara and then back onto the not so pedestrian friendly highway to the home of Mr Sekiguchi in Sakae town on the outskirts of a sprawling Yokohama City. I arrived at 8pm after a days walk of 61km to enjoy a late dinner with Mr Sekiguchi, Dr Harada and Reiko.
 Day 44 saw me planning to walk all the way into Tokyo but event commitments and a request by supporters to walk with me into Tokyo on Sunday precluded this and I settled for Kawasaki City 20km short of my goal having achieved half the total distance of my walk, some 1500km. Returning to our accommodation at the Royal Park Hotel in Yokohama City thanks to the generosity of Dr Harada and his uncle who owns it. At 3:30pm we again met Mr Sekiguchi, a local politician and walked 2km to the Kanegawa Prefectural Medical Association, a TV interview and a less than satisfactory meeting with the association President. This was followed by an evening meeting with Dr Harada in the Hotel ’s coffee shop where we were also fortunate to be introduced to his uncle, Mr Nagasaka and personally thank him for his generosity.
 The next day saw us arriving in Tokyo by train to be greeted as we emerged from the underground by the beaming face of Mr Bungaku Watanabe. He had been working tirelessly to organise our Tokyo event schedule, kicking off today with a group of about 25 supporters, including some real Shikoku Henro on a walking cigarette butt scavenger hunt filmed by NHK Tokyo across the country on their daily news services. With Mr Watanabe leading the way we covered about 2km in the rain from the station to the afternoon symposium location where we gave a brief speech to the 150+ audience and participated in a panel Q and A session concluding with a press conference and post event dinner with about 40 members from Mr Watanabe ’s NPO group.
 The next day finally saw me walk the last 20km into Tokyo, setting off from the Kawasaki City Medical Association building with 9 other walkers. Due to a slow paced start we eventually had to walk very hard to meet the 1pm deadline for arriving in Nihonbashi, so that we could make our afternoon commitment; the “How to Quit” seminar being led by Dr Kano in Yokohama.
 For a bit of light relief Reiko and I followed his presentation, giving comments to a slide show of our walk prepared by Dr Harada. The meeting was followed with a stroll along Yokohama ’s waterfront by about 15 NPO members waving no-smoking flags and continuing into China town to a Chinese banquet for today ’s speakers and support staff.
May 29th was a scheduled rest day, although Mr Watanabe had other ideas. I don ’t think he knows the meaning of the word rest as he seems to have a bottomless cup of energy. We met him at the Australian Embassy where in the Year of Australia and Japan Exchange we were introduced to Mr Ross Westcott, counsellor in the public diplomacy section and long time Tokyo resident for a pleasant chat about my activities. A few pictures in the Embassy for Bungaku ’s scrapbook, then to the Japan Medical Association for a lunch meeting with the President and staff followed by a short speech by me requesting that the Japan Medical Association encourage all its members to promote a tobacco free, healthy lifestyle. Next on the agenda, a visit to the Japan Cancer Society for a meeting with Mr Ichikawa and Mr Sekido where again the feeling was positive and they gave us information about their goals for the 21st century. From here Bungaku led us to his favourite bath house for a freshen up before an interview with Ms Ito from the Japan Times newspaper, where I almost exploded with information and ideas about the tobacco problem, as she spoke very good English. An hour speaking with her was followed by dinner at the same bath house and then a taxi ride across town to home stay with Dr Saito.
 Day 48, another rest day saw us meet up with Dr Saito and Mr Watanabe at the Japanese parliament for a meeting with Democratic Party member, Yoko Komiyama, a politician who seems genuinely concerned about the problems of tobacco in this country. Unfortunately she is not in the ruling party, which makes her job of effecting change that much more difficult. Still, I appreciate what she is trying to do and I hope that many other politicians will put morals before money and support her efforts.
The afternoon saw us appearing at the District Law Courts with Bungaku to add our own moral support for the news conference of Mr Yasui, a Tokyo taxi driver who has been suing his former employer for; work place discrimination in favour of tobacco smoking customers. Yet despite 8 reporters and one TV crew interviewing Mr Yasui, his follow up story wasn ’t to appear in the following days press which was very disappointing for me personally as the papers readily report about a gaijin walker but not an important issue like the health of taxi drivers. Thankfully Dr Sakuta tried to alleviate my disappointment by hosting a welcome dinner for Reiko and I and some of our many wonderful Tokyo supporters followed by a short walk to our accommodation at the Naniwa Hotel where we continued to work into the early hours of the morning on my speech to be presented at the Ministry of Health World No Tobacco Day Symposium the following morning. A story which I will tell you about in the next issue.


To be continued・・・

静岡市役所にて


花村さん達と


花村ステーキハウスにて


富士山を背景に


関口前神奈川県議ご夫妻と


神奈川県医師会で


川崎市医師会館で

大畠さんの禁煙タクシー

横浜市中華街で


横浜でのシンポジウム後に


東京で真の遍路さん達と

日本医師会で昼食会


小宮山国会議員さんと

千代田区シンポジウム


東京女子医大西條先生と

東京地裁前にて


東京最後の夜
参考サイト:Walk Against Tobacco 2006 (Galleryにいろいろな写真があります)
※WAT:WALK AGAINST TOBACCO


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《文献紹介》
国内文献紹介
内田和宏:内田クリニックの禁煙外来の状況と禁煙成功率の検討、女性の禁煙成功率が低い理由 (日呼吸会誌、2007,45(9):673-678)

 06年4月より07年1月までに、ニコチンパッチ処方を中心に禁煙治療を行った143例について禁煙成功率を算出し、サブグループ解析を施行した。治療開始2ヶ月迄の早期禁煙成功率は61.2%で、禁煙成功率の高くなる 要因としては、男性である事、喫煙本数20本/日未満、喫煙依存度が低い、他に家庭内喫煙者が居ない事であった。女性の禁煙成功率の低い原因の一つとして、男性に比し女性は、家庭内に他の喫煙者の居る率が高い事が考えられた。

(南栃木病院院長 北村  諭)


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海外文献紹介
Jae Hee Jeong, Sang Bong Choi, Wou Young Jung, Min Gwang Byun, Moo Suk Park, Young Sam Kim, Se Kyu Kim, Joon Chang, Chiharu Yoshii, Sung Kyu Kim:Evaluation of Social Nicotine Dependence Using the Kano Test for Social Nicotine Dependence (KTSND-K) Questionnaire in Korea(Tuberc Respir Dis 2007; 62: 365-373)

加濃式社会的ニコチン依存度調査票~韓国語版 (KTSND-K) を用いた韓国人における社会的ニコチン依存の評価
背景:喫煙は疾病の罹患や死亡の最も重要な原因のひとつである。喫煙習慣はニコチン依存として認識されているが、これは身体的依存と心理的依存から成り立っている。社会的ニコチン依存を評価するために、日本において加濃式社会的ニコチン依存度 (KTSND) ワーキンググループが、10問30点満点からなる新しい質問票を作成した。我々は新しいKTSNDを使って健康成人で社会的ニコチン依存を調査し、韓国におけるKTSNDの有効性を評価した。
方法:韓国語版KTSND version 2を病院職員、大学生、健康診断受診者に用い、記入漏れのない741名の回答者から得られたデータを解析した。
結果:回答者の平均年齢は31.8歳で、男性は57.8%だった。喫煙者、前喫煙者、非喫煙者はそれぞれ13.8%, 12.8%, 73.4%だった。喫煙状況別では、喫煙者のKTSND総得点は前喫煙者や非喫煙者より有意に高かった(17.1±5.4対14.3±5.5、12.3±5.5、p<0.001) 。男性のKTSND総得点は女性より高く、男性が女性よりも社会的にニコチンに依存する傾向を持つことが示唆された(それぞれ14.3±5.7対11.7±5.4、p<0.001)。10問の質問のうち8問で3つの異なる喫煙別グループで有意差が出た。喫煙者を身体的ニコチン依存を表すheavy smoking index (HSI)で亜分類したが、低HSIグループ (4点未満)と高HSIグループ (4点以上) の間で有意差はなかった。このことから、喫煙において、心理社会的依存は身体的ニコチン依存とは異なる役割を演じているかも知れないことが示唆された。また非喫煙者の多く (62.8%) が、特に公共の場において有害な受動喫煙を経験していた。
結論:我々の研究は、KTSNDが喫煙の心理社会的側面を評価するのに有用な方法になり得ることを示した。
筆者解説:
1)本論文は2007年5月、韓国の大韓結核・呼吸器学会雑誌 (Tuberc Respir Dis)に掲載された韓国語論文 (abstractのみ英語)である。
2)KTSND-Kは加濃式社会的ニコチン依存度調査票日本語版 (KTSND-J) を韓国語に直訳したもので、2006年3月に完成した。
3)本論文は、KTSNDを韓国人で使用した最初の報告であり、また日本からの報告も含め、成人においてKTSNDに男女差があることを示した最初の論文である。
4)heavy smoking index (HSI) とは、FTNDの項目中、①1日喫煙本数 (1-9本、10-19本、20-29本、30本以上)、②起床時から最初の喫煙までの時間 (5分以内、6-30分、31-60分、60分以降)の2項目の点数を合計したもので、6点満点である。HSI score 4点以上で身体的ニコチン依存が強いと見なされる。
5)本論文の要旨は、2006年11月大韓結核・呼吸器学会(ソウル)、2007年2月みやこ禁煙学会(京都)において発表した。

(産業医科大学呼吸器内科 吉井千春)


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日本禁煙学会の対外活動記録
(2007年10・11月)
10月6日 禁煙治療(ニコチン依存症管理料)の保険適用に関わる診療報酬改定の要請
10月13日 タバコの価格を上げる要請
10月26日 JR東海に対するN700系車両全面禁煙の要請
10月30日 養老孟司氏・山崎正和氏に催促状を送付
11月9日 国交大臣・JR各社への要請書(駅ホームでの喫煙者による暴力行為について)
11月16日 タバコに関する全国規制改革要望書を提出
11月21日 ミシュランガイドに対して室内全面禁煙を基準および絶対要件に採用するよう求める要請書を送付



日本禁煙学会雑誌
(禁煙会誌)
ISSN 1882-6806

第2巻第8号 2007年12月1日

発行 特定非営利活動法人 日本禁煙学会


〒162-0063
新宿区市谷薬王寺町30-5-201 日本禁煙学会事務局内
電話 090-4435-9673
ファックス 03-5360-6736
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