日本禁煙学会 松崎道幸訳 2007年5月掲載
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Global Voices for a Smokefree World Campaign

タバコの煙のない社会を求める全世界の声キャンペーン

 

20076月に、タバコ規制枠組み条約(FCTC)第2回締約国会議のために世界中の政府代表がタイのバンコクに集まることになっています。この会議では、この条約の締約国が世界初の公衆の健康を守る国際条約の実行に関する討議を行います。

様々な議題の中でも、受動喫煙から公衆の健康を守ることを定めたFCTC第8条の実施ガイドラインに関する討議が行われ承認されることになっています。このガイドラインは条約締約国を法律的に拘束するものではありませんが、人々を受動喫煙から守るために必須の効果の試された対策を示すことになっています。締約国会議のリードのもとで、Global Smokefree Partnershipは各国が第8条ガイドラインの強力で効果的な実行に対する支持を確実なものにするためにGlobal Voices for Smokefree Campaignを開始する予定です。

 

 

Global Voices for Smokefree Air Campaignとはどのようなものですか?

 

FCTC8条はタバコの煙のない社会を作るための強力な武器です。しかし、大部分の国では、強力で実効のある受動喫煙法を制定して実施するためには、市民社会の相当の努力が必要であることも事実です。政府の担当者が第8条が各国に課した義務について知らない、あるいは理解していない国もあるでしょう。また、効果的な支援キャンペーンがなければ、強力な受動喫煙防止法令制定を先送りしたいと思っている政策決定者も少なくないでしょう。タバコ規制推進陣営には、公衆の健康をしっかり守ることのできる受動喫煙禁止法完全禁煙立法を支持し、できるだけ早くこれらの政策が効果的に実施されるように活動する重要な役割があります。

Global Voices for Smokefree Campaignは、全世界のNGOが各国の立法担当者に強力で効果的な第8条ガイドラインを支持するよう働きかける活動を援助します。Global Voices for Smokefree Campaignは、政府と市民社会の双方が最も効果があると証明された受動喫煙禁止法制を支持するようになることを目指して、メディアがもっと受動喫煙問題を報道するよう働きかけを行います。

 

Global Voices for Smokefree Campaignは、第8条に則り8つの基本原則を掲げています。

 

(1)         受動喫煙は健康に重大な影響を与える

(2)         受動喫煙に安全量はない

(3)         公衆の集まる場と職場の完全禁煙以外の対策はありえない

(4)         空調・空気清浄機・分煙によって受動喫煙の害をなくすことはできない

(5)         いかなる人々も受動喫煙の害を受けることのないよう対策を行なわなければならない

(6)         すべての労働者は完全禁煙の場で働く権利がある

(7)         人々を受動喫煙から守るには、一切の例外を認めない法的規制が必要である

(8)         実効のある受動喫煙防止法には、実効のある強制条項、施行措置条項、モニタリング条項が不可欠である

 

Global Voices for Smokefree Campaignの基本原則はタイのバンコクで開催される第2回締約国会議で出席者に提示される予定です。

 

このキャンペーンに参加ご希望の方は連絡を:info@smokefreepartnership.org

ウェブサイト:www.globalsmokefreepartnership.org



Global Voices for a Smokefree World Campaign

(完全禁煙を求める世界キャンペーン)

完全禁煙のための8原則

 

20076月に、タバコ規制枠組み条約(FCTC)2回締約国会議のために世界中の政府代表がタイのバンコクに集まり、受動喫煙から公衆の健康を守ることを定めたFCTC8条の実施ガイドラインに関する討議が行われることになっています。

  FCTC8条は屋内の職場、交通機関、公共施設ならびに公衆の集まる場所での受動喫煙をなくするために、効果的な法的、行政的諸対策をしっかり講じ実行するよう求めています。

FCTCは締約国に第8条の実行ガイドラインを策定するよう求めている。このガイドラインは条約の加盟国に対する強制力を持たない勧告となるが、公衆を受動喫煙から守るために試され済みの最上の方策を実施するよう求めています。

Global Smokefree Partnershipの開始に際し、Global Voices for Smokefree Air campaignは、締約国が強力で効果的なガイドラインを作り実行するよう求めます。ここにそれが必要な理由をいくつか指摘します。

 

(1)   受動喫煙は健康に重大な影響を与える

(2)   受動喫煙に安全量はない

(3)   公衆の集まる場と職場の完全禁煙以外の対策はありえない

(4)   空調・空気清浄機・分煙によって受動喫煙の害をなくすことはできない

(5)   いかなる人々も受動喫煙の害を受けることのないよう対策を行なわなければならない

(6)   すべての労働者は完全禁煙の場で働く権利がある

(7)   人々を受動喫煙から守るには、一切の例外を認めない法的規制が必要である

(8)   実効のある受動喫煙防止法には、実効のある強制条項、施行措置条項、モニタリング条項が不可欠である

 

 

(1)       受動喫煙は健康に重大な影響を与える

受動喫煙は副流煙と主流煙の混合したものです。有毒成分濃度は喫煙者が吸い込む主流煙よりも副流煙のほうが高くなっています。 受動喫煙は病気と死亡をもたらします。短時間の曝露でも急性の健康障害が発生する。受動喫煙は肺がん、虚血性心疾患、乳幼児突然死症候群をはじめさまざまな病気や症状の原因となります。1 したがって受動喫煙防止法は健康と安全を守る法律です。

 

(2)       受動喫煙に安全量はない

複数の科学専門家機関、政府専門機関は受動喫煙をヒトに対するA群発がん物質と規定しています。A群発ガン物質に安全量はありません。2 タバコ煙を換気などの手段で薄めても、受動喫煙の害をなくすことはできません。 

毎日受動喫煙にさらされている非喫煙者は、そうでない非喫煙者よりも30%死亡率が高いことが科学的研究で明らかになっています。 心筋梗塞と冠状動脈心臓病のリスクはタバコ煙の吸入量と比例しない。受動喫煙のような少量のタバコ煙曝露によってリスクが急増するからです。45 わずか30分間の受動喫煙によって毎日1箱の喫煙者と同じ冠状動脈内皮機能障害がもたらされることが日本の研究者によって明らかにされています。6,7

 

(3)       公衆の集まる場所と職場の完全禁煙以外に有効な受動喫煙対策はありえない

完全禁煙だけが受動喫煙被害をなくす上で唯一有効と証明された対策です。完全禁煙政策は、非喫煙者の健康を守るだけでなく、喫煙者も含めたすべての人々の健康を速やかに改善することが、ますます多くの研究で明らかになっています。完全禁煙法が施行されると、飲食産業の従業員の健康が画期的に回復することが多くの調査で明らかにされています。

 

(4)       空調・空気清浄機・分煙によって受動喫煙の害をなくすことはできない

 最新式の換気・空気清浄化装置をもってしても、タバコ煙のすべての有毒成分をゼロにすることはできません。 それどころか、換気・空調装置によってタバコの煙が建物全体に広がるおそれがあります。

 

(5)       いかなる人々も受動喫煙の害を受けることのないよう対策を行なわなければならない

世界保健機関憲章の前文は「人種、宗教、政治的信条、経済状態、社会状態にかかわりなくすべての人が達成可能な最上の健康を享受することは基本的人権のひとつである」と保証しています。8 受動喫煙が健康を侵す要因であることがわかった今、一部の人だけでなく、すべての人々がこの権利を保証されなければなりません。

 

(6)       すべての労働者は完全禁煙の場で働く権利がある

働いたり日常生活をおくるときに、自分の健康を危険にさらすよう強いられることがあってはなりません。禁煙の職場は増えていますが、いまだに多くの労働者が職場で受動喫煙にさらされ健康を侵されています。

 

(7)       人々を受動喫煙から守るには、一切の例外を認めない法的規制が必要である

 分煙よりも完全禁煙の方が実施し徹底させやすいことがわかっています。9 分煙とは、ある場所は喫煙オーケー、別な場所は禁煙ということになり、喫煙者と非喫煙者の間に混乱とトラブルをもたらす。そのうえ喫煙所があると非喫煙区域をタバコ煙で汚染することになり健康は守るという目的は達成されません。

 

(8)       実効のある受動喫煙防止法には、実効のある強制条項、施行措置条項、モニタリング条項が不可欠である

完全禁煙を実行するためには、完全禁煙開始日、明確な禁煙の表示、あいまいさのないわかりやすい法令表記、罰則とその内容、苦情受付(電話番号の表示など)、取締り係の人数、違反検挙率の予測などをしっかりと練っておく必要があります。9

 

 

詳細はwww.globalsmokefreepartnership.org

 

 

参考文献

 

(1)     US Department of Health and Human Services, 2006. The health consequences of involuntary exposure to tobacco smoke: a report of the Surgeon General (Atlanta, GA): Department of Health and Human Services, Centers for Disease Control and Prevention, National Centre for Chronic Disease Prevention and Health Promotion, Office of Smoking and Health: Washington, DC. Available online at: http://www.surgeongeneral.gov/library/secondhandsmoke/report/

 

(2)     National Cancer Institute, 1999. Health effects of exposure to environmental tobacco smoke. Smoking and tobacco control monograph no. 10. Bethesda, MD: U.S. Department of Health and Human Services, National Institutes of Health, National Cancer Institute. NIH Pub. No. 99-4645. Available online at: http://cancercontrol.cancer.gov/tcrb/monographs/10/

(3)     Samet J et al, 2005. ASHRAE position document on environmental tobacco smoke. American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers (ASHRAE). Available online at: http://www.ashrae.org/content/ASHRAE/ASHRAE/ArticleAltFormat/20058211239_347.pdf

 

(4)     Raupach T et al, 2006. Secondhand smoke as an acute threat for the cardiovascular system: a change in paradigm. European Heart Journal, 27(4): 386-92.

 

(5)     Barnoya J& Glantz SA, 2005. Cardiovascular effects of secondhand smoke: nearly as large as smoking. Circulation, 111(2): 2684-98.

 

(6)     Otsuka R et al, 2001. Acute Effects of Passive Smoking on the Coronary Circulation in Young Healthy Adults. Journal of the American Medical Association, 286: 436-441. Available online at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=pubmed&cmd=Retrieve&dopt=AbstractPlus&list_uids=11466122&query_hl=7&itool=pubmed_docsum, downloaded on 2 April 2007.

 

(7)     Kato T et al, 2006. Short term passive-smoking causes endothelial dysfunction via oxidative stress in non-smokers. Canadian Journal of Physiology and Pharmacology, 84(5): 523-9. Available online at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=pubmed&cmd=Retrieve&dopt=AbstractPlus&list_uids=16902597&query_hl=1&itool=pubmed_docsum, downloaded on 2 April, 2007.

 

(8)     The World Health Organization, 1948. Constitution of the World Health Organization. Available online at: http://www.who.int/about/en/

 

(9)     The Association of European Cancer Leagues et al, 2005. The Limassol recommendations to obtain comprehensive smokefree legislation. Available online at: http://www.european-lung-foundation.org/uploads/Document/WEB_CHEMIN_190_1138705406.pdf

 


タバコ規制国際枠組み条約(FCTC)第8条

 

2007630日から77日まで、世界中の政府の代表がタイのバンコクに集まり、世界初の公衆の健康を守る条約=タバコ規制国際枠組み条約(FCTC)の履行に関する討議を行うことになっています。なかでも、受動喫煙の害をなくすることをうたったFCTC第8条の実行ガイドラインについてバンコクで討議が行われることになっています。

訳注:【履行(implementation)】決めたこと、言ったことなどを実際に行うこと。実行。

 

FCTCに関する基本事項

FCTCは、タバコが世界中に広まる厄災となっている現状に対応して制定された。FCTCは、エビデンスに基づいた条約であり、すべての人が最高レベルの健康を保つ権利を持つことを保障したものです。20035月にWHO締約国のうち192カ国の賛成で制定され、2005227日に発効した。2007227日現在、世界人口の80%を占める146カ国が批准しました。FCTCの批准をした国には、受動喫煙被害から健康を守ることをはじめとする諸条項の履行が義務付けられます。

 

受動喫煙と「smokefree」について、FCTCは何を主張しているのですか?

FCTCは、批准国に人々を受動喫煙から守る効果的な対策を実施する義務を負わせます。第8条により、FCTCの締約国は「受動喫煙が死と病気と障害をもたらすことは明確に科学的に証明されていることを認識した」(81)ことになるからです。この条項により、タバコ産業が受動喫煙の有害性を疑問視したり結論が出ていないと思わせようとする策動を絶え間なく続けてきたにもかかわらず、世界全体が受動喫煙の危険に憂慮していることが確認されたのです。

8条第2項は、各国の履行能力に応じて人々を受動喫煙の害から守る効果的な対策を実施することを法的義務として批准国に負わせています。政府が受動喫煙対策を全国レベルで実施する行政権限がない国では、そのような対策を、その国の適切な行政レベルで実行できるよう積極的に努力する法的義務が課されています。さらに、受動喫煙対策は「屋内職場、交通機関ならびに対策の実施が適切だと思われる公衆の集まる場すべてに」適用されなければならないと述べています。

 

FCTCの受動喫煙防止条項の目指すものは?

FCTCは条約締約国に、すべての国民・市民を公衆の集まる場や職場における受動喫煙の害から効果的に守る義務を課しています。科学的証拠と国際的経験によれば、職場と公衆の集まる場を100%禁煙にする法的規定を作り実施する以外に公衆を受動喫煙から「効果的に保護する」ことは実現できないことが確認されています。

 

FCTC第8条を履行するうえで次に何が必要でしょうか?

FCTCは締約国会議に第8条実施ガイドライン策定を求めています。このガイドラインは、締約国に対する法的拘束力のない勧告の形で出されます。このガイドラインの目的は、締約国が第8条で課された義務の履行を援助することです。このために、ガイドラインは、市民を受動喫煙から効果的に守る対策を実現した国々の最良の経験と証拠に基づいて作成される必要があります。

 

FCTC8条ガイドラインの中身は?

このガイドラインは、基本原則の呈示と述語の定義、受動喫煙被害を防ぐ上で必要不可欠な対策の中身についての勧告を含みます。したがって効果的な一連の立法措置、公衆への周知法、公衆を参加させる方法、対策の実施、モニター、効果の評価などについての説明が述べられることになります。

 

8条ガイドライン()は誰が作っているのですか?

締約国会議の命令に基づき第8条ガイドラインの作成に関与するのは本条約事務局です。その際、WHOのTobacco Free Initiative (現在内部的に条約事務局となっている)と相談を行いながら、地域ごとに自主的に参加を希望する締約国の助けを受けつつ作業を行います。20062月スイスのジュネーヴで行われた第1回締約国会議で、フィンランド、アイルランド、ニュージーランドが公式に第8条ガイドライン案作成作業を先導すると表明しました。条約事務局とこれらの核となる作業グループは、ガイドラインの骨組みと章の構成案について合意しました(20065月)。

作業グループメンバーはガイドライン案作成を円滑に進めるための諮問的作業グループ会合を持つことに合意しました。この会合は200611月にアイルランドのダブリンで行われ、核となるメンバー、WHOのTobacco Free Initiative、共同作業国(下に記した締約国諸国)、招待された市民社会の代表が集まりました。ガイドライン案作成に参加した締約国は、ブラジル、カメルーン、マリ、中国、ジブチ、フィジー、フランス、ドイツ、ハンガリー、ジャマイカ、マダガスカル、メキシコ、パナマ、ペルー、スウェーデン、タイ、イギリス、ウルグアイ、バヌアツです。

ガイドライン草案は、レビューを受け持った締約国―ケープベルデ、マーシャル諸島、ノルウェー、パラウに承認された。ガイドラインの最終草案は、第2回締約国会合で公表され、締約国会議に付託され承認されることになっています。

 

問い合わせ・参考情報リンク

 

www.who.int/fctc

 

www.who.int/gb/fctc/PDF/cop1/FCTC_COP1_DIV8-en.pdf

 

www.fctc.org


受動喫煙問題:解説

 

受動喫煙で吸い込む室内のタバコの煙とはどんなものですか?

室内のタバコの煙(secondhand smoke)は『環境タバコ煙(environmental tobacco smoke)』ともよばれています。火をつけた紙巻タバコの先から出る煙(副流煙)と喫煙者が吸い込む煙(主流煙)の混合したもので、4千種類以上の化学物質が含まれています。刺激物質、人体に対する有毒物質、遺伝子を傷つける物質のほかに、ヒトにガンを起こすと認定された発ガン物質も50種類以上含まれています。

 

なぜ問題になっているのですか?

室内のタバコの煙にさらされる(受動喫煙)と、病気になったり、命を失ったり、障害をわずらうようになります。1  国際ガン研究機関(IARCは、室内のタバコの煙を発ガン物質と認定しました。また、多くの政府機関あるいは学術専門機関はタバコの煙を「有毒室内空気汚染物質」と規定しています。 

室内のタバコの煙には、それ以下なら害がないという安全濃度はありません。また短時間さらされるだけでも病気になったり、病状が重くなります。 わずか30分の受動喫煙で毎日1箱吸う喫煙者と同じくらい心臓の血管がせまく硬くなる事がわかっています。3,4

 

誰が被害を受けているのですか?

タバコの煙は、職場、公共の場、交通機関、地域、家庭など禁煙でない室内の空気を汚す代表的な汚染物質です。全世界で幾千万人の労働者が職場でつねにタバコの煙にさらされています。飲食業やサービス業で働く人々のタバコ煙への暴露度はしばしば他に例を見ないほど高いレベルとなります。

これに加えて、世界中のこどもたちの半数=7億人以上が受動喫煙にさらされています。 男性喫煙率の高い国や地域では、女性やこどもたちが濃厚な受動喫煙にさらされています。世界保健機関の専門家報告によれば、世界中で毎年5千万人の妊娠女性が受動喫煙にさらされています。

 

受動喫煙はどのような病気をおこしますか?

受動喫煙はタバコを吸わないこどもと大人の両方に命取りの病気をもたらします。受動喫煙はタバコを吸わない健康な人に肺ガン、虚血性心疾患、急性心臓死を起こす代表的な原因となっています。科学的調査によって、受動喫煙のある非喫煙者は受動喫煙のない非喫煙者より30%死亡率や病気にかかる率が高くなる事が明らかになっています。 急性心筋梗塞のリスクと受動喫煙の度合いは比例しません。受動喫煙が少し増えるだけで、心臓病のリスクは大幅に増えます。1、8

受動喫煙があると、こどもは気管支炎や肺炎、中耳炎、気管支喘息、慢性気管支炎にかかりやすくなり、肺の成長が遅れ、乳幼児突然死症候群のリスクが増えます。 こどものときに受動喫煙にさらされると大人になってから心臓病にかかりやすくなります。また、神経行動異常の出現するリスクが増えます。また、妊娠中の喫煙により胎児の成長が遅れます。

国際労働機関(ILO)は毎年職場の受動喫煙によって20万人が命を落としていると推定しています。

 

受動喫煙被害をなくすにはどうしたらよいのですか?

換気や空気清浄機などによる「解決策」によって受動喫煙の害をなくす事はできません。1, 10 また、「分煙」はいくらか受動喫煙を減らす可能性はありますが、これもまた解決になりません。1 完全禁煙だけが健康を守る唯一の効果のある対策です。

 

「完全禁煙」のメリット

完全禁煙にすると健康が守れます。11,12 完全禁煙にすると喫煙者にもメリットがあります。多くの喫煙者が、これを機会に禁煙したいと望んでいるからです。職場が完全禁煙になると、タバコを止める意欲が高まり、煙のない状態を続ける気持ちが起きて、禁煙しない人でも喫煙量が減ります。完全禁煙はとても支持率の高い対策です。完全禁煙政策を実施している国であろうとなかろうと、多くの喫煙者をはじめ、ほとんどの一般市民が賛成する対策です。13

 

受動喫煙防止に役立つ法律はありますか?

タバコ規制国際枠組み条約(FCTC)第8条には、この条約が各国に、屋内の職場、交通機関、公共施設ならびにその他の公衆の集まる施設での受動喫煙をなくする効果的な法的、行政的対策を実行する事を義務付けていると書かれています。14

FCTCは、締約国会議に第8条の施行のためのガイドラインを作るよう求めています。締約国の政府代表が集まり、2007年6月30日から7月7日までタイのバンコクで第2回締約国会議(C0P-2)が開催されます。

Global Smokefree Partnershipのイニシアチブのもとで、各国政府と市民社会の代表にバンコクでのC0P-2において第8条の施行のための強力で効果的なガイドラインが策定されるよう呼びかけるGlobal Voices for A Smokefree World Campaignが行われています。

 

タバコ産業は完全禁煙化を阻むためにどのような抵抗をしているのですか?

タバコ産業は完全禁煙化を邪魔するためにさまざまな策動を行っています。「受動喫煙に害があると言うエセ科学を暴く」「完全禁煙にすると景気が悪くなる」と宣伝して、「喫煙室を作れ」「問題はマナーで解決できる」とキャンペーンをしています。

 

受動喫煙の健康影響、完全禁煙対策、Global Voices for A Smokefree World Campaignについての詳しい情報:www.globalsmokefreepartnership.org

 

参考文献

 

(1)   US Department of Health and Human Services, 2006. The health consequences of involuntary exposure to tobacco smoke: a report of the Surgeon General (Atlanta, GA): Department of Health and Human Services, Centers for Disease Control and Prevention, National Centre for Chronic Disease Prevention and Health Promotion, Office of Smoking and Health: Washington, DC. Available online at: http://www.surgeongeneral.gov/library/secondhandsmoke/report/

 

(2)   International Agency for Research on Cancer (IARC), 2004. Monograph on the evaluation of carcinogenic risks to humans. Tobacco smoke and involuntary smoking. Lyon, France: WHO International Agency for Research on Cancer, Volume 83. Summary available online at http://monographs.iarc.fr/ENG/Monographs/vol83/volume83.pdf

 

(3)   Otsuka R et al, 2001. Acute Effects of Passive Smoking on the Coronary Circulation in Young Healthy Adults. Journal of the American Medical Association, 286: 436-441. Available online at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=pubmed&cmd=Retrieve&dopt=AbstractPlus&list_uids=11466122&query_hl=7&itool=pubmed_docsum, downloaded on 2 April 2007.

 

(4)   Kato T et al, 2006. Short term passive-smoking causes endothelial dysfunction via oxidative stress in nonsmokers. Canadian Journal of Physiology and Pharmacology, 84(5): 523-9. Available online at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=pubmed&cmd=Retrieve&dopt=AbstractPlus&list_uids=16902597&query_hl=1&itool=pubmed_docsum, downloaded on 2 April, 2007.

 

(5)   The World Bank Group, 2002. Smokefree workplaces at a glance. Available online at: http://www1.worldbank.org/tobacco/AAG%20SmokeFree%20Workplaces.pdf

 

(6)   The World Health Organization, 1999. International consultation on environmental tobacco smoke and child health. Available online at: http://www.who.int/tobacco/health_impact/youth/ets/en/print.html

 

(7)   World Health Organisation, Institute for Global Tobacco Control Johns Hopkins School of Public Health, 2001. Women and the tobacco epidemic: Challenges for the 21st century. Chapter on Smoking, Cessation and pregnancy by RA Windsor.

 

(8)   Law MR&Wald NJ, 2003. Environmental tobacco smoke and ischemic heart disease. Progresses in Cardiovascular Disease, 46: 79-90.

 

(9)   Takala J, 2005. Introductory report: decent work, safe work. International Labor Organization: Geneva. Available online at: http://www.ilo.org/public/english/protection/safework/wdcongrs17/intrep.pdf

 

(10)              Samet J et al, 2005. ASHRAE position document on environmental tobacco smoke. American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers (ASHRAE). Available online at: http://www.ashrae.org/content/ASHRAE/ASHRAE/ArticleAltFormat/20058211239_347.pdf

 

(11)              Heloma A et al, 2001. The short-term impact of national smokefree workplace legislation on passive smoking and tobacco use. American Journal of Public Health, 91(9): 1416-8.

 

(12)              Barone-Adesi, F et al, 2006. Short-term effects of Italian smoking regulation on rates of hospital admission for acute myocardial infarction. European Heart Journal, 27(20): 2468-72.

 

(13)              Jones S& Muller T, 2006. Public attitudes to smokefree policies in Europe. In: Smoke Free Partnership: Lifting the smokescreen. 10 reasons for a smokefree Europe. Available online at: http://dev.ersnet.org/uploads/Document/46/WEB_CHEMIN_1554_1173100608.pdf

 

(14)              The World Health Organization, 2003. WHO Framework Convention on Tobacco Control. Available online at: http://www.who.int/tobacco/fctc/text/final/en/