BBCニュース編集部Mark Easton氏のブログ
Pubs aren't
dying - they are evolving
パブはだめになるどころか、進化しつつある
2009年7月
【原文↓】
偉大なるイギリスの酒場は消滅の途上にあると言われている。毎週52軒のパブが閉店しているというニュースが広く報道されたが、どうもそうではなさそうである。事実、酒の呑める店は2、3年前よりも増えているようである。
二つのデータをご覧いただきたい。
営業免許条件改定と店内禁煙化に反対するキャンペーンを行っている英国ビール・パブ協会(BBPA)は、議会に対して、2008年のパブの閉店数は、開店数よりおよそ2000軒多いと述べた。(Economic Trends in the Beer and Pub Sector [1.05MB
PDF])
イギリス下院の委員会は、毎週39軒が閉店しているとのグラフを公式に発表している。
図1 週あたりパブ閉店平均件数.2004〜2008年(出典:CGA)
しかし、これまでに実施された営業免許に関する最も完全な政府調査のデータを見ると、まったく違ったストーリーが見えてくる。(Alcohol, Entertainment and Late Night Refreshment
Licensing [561KB PDF]).
2005年に新たな営業免許法が施行されてから、文化・メディア・スポーツ省は、イングランドとウェールズのすべての地方の営業免許許可機構に年報を出すよう要請した。
その結果、2007年3月から2008年3月までに、アルコール販売免許を持つ施設数は4200軒増加していた。これは毎週80軒の純増である。
下の表は、2007年3月から2008年3月の間に(会員制クラブを含む)酒販売免許保有施設数がどのように変化したかを示したものである。
【出典】http://www.culture.gov.uk/images/research/AE-Statistics-bulletin-2008.pdf
パブのロビー団体と営業認可統計の素っ気無い数字が矛盾しているのは、それぞれ別のものを集計しているからである。「パブ」の定義が違うためである。
BBPAデータの出所は、ストックポートにあるCGAストラテジーという会社である。この会社の資料によれば、「パブやバーの経営者とイギリスで流通しているアルコール飲料銘柄のオーナーにマーケット情報を配給する」ために1992年に設立された。
CGAは産業アナリストとして卓越した地歩を占めており、イギリスのパブの現状に関する情報照会は、彼らの会社に寄せられる。私は、かつてバー・エンタテインメント・ダンス協会を運営していた元政治ロビイストのジョー・コリンズ社長と話したことがある。「パブの定義は?」と私は彼に尋ねた。彼は「それはきわめて主観的なものだ」と答えた。
彼は、自分の会社では業種を66種類のカテゴリーに分類する複雑なコードシステムを採用していると述べた。もしパブが食品の販売を始めたなら、その店の業種は別のカテゴリーに入れ替わる。もし、食事を沢山出すようになれば、そのパブは「閉店」したとみなされ、レストランとして新規開店したことにするという。
「イギリスがインドに変わると言った方がわかりやすいかもしれない」とコリンズ氏は語った。しかし、彼は「より客観的に決める」こともあると付け加えた。
「もし客の80〜90%がディナーのために来ているのなら、レストランに分類される。だが、カウンターがあって、そこでビールを飲める店なら、そこはパブということになる」と彼は述べた。
コリンズ氏は、「カジュアルダイニング店」が増え、食べ物を出さないwet-led pub(アルコール飲料限定パブ)と呼ばれる店が減るというsegmental migrationと呼ばれる変化が起きたことを認めている。
事実、先週発表されたBBPAのマスコミ向け資料によれば、CGAが毎週52軒の閉店が発生していると発表した店のうち、51軒は「wet-led」の店だった。さらに、「パブとカフェスタイルのバーは毎週2軒の割で新規開店している」とも述べている。
私は、CGAのコードシステムの定義した酒類販売免許を持つレストランが増えてきたのではないかと述べたところ、コリンズ氏は、閉店したパブ数には「満たないが」、そのようなことが起きていることを認めた。
しかし、最新のCGAのデータによれば、景気後退期にもかかわらず、レストラン軒数はわずかに増えている(0.1%)と彼は明言した。
CGAストラテジー社のデータによって示されているのは、21世紀の営業環境を受け入れたくない居酒屋の主人の悩みであろう。
どんどん閉店しているのは、酒を飲みながらタバコを吸うことの好きな客を相手にしているパブである。もうもうとしたタバコの煙の中で安いビールを飲むという「雰囲気の魅力」がなければ、そのような店はもはや営業を続けることができないだろう。
コリンズ氏は次のように語った:
「もし仕事帰りに酒場に立ち寄ってビールを二杯飲み、タバコを吸う50代、60代の男性を営業の対象としているなら、必ず苦労するだろう。今や、このような人々は、スーパーマーケットで安いラガービールを4缶買って帰り、自宅でタバコを吸いながら呑むようになったのだから。」
新しい酒類販売免許法、酒税の増税、飲食店の完全禁煙化に反対の人もいるだろう。タバコのヤニにまみれた昔風の酒場がなくなることを悲しむ人もいるだろう。しかし、そのような変化をもたらすために法律が変えられたのだから当然だと言うこともできる。
「夜の経済」は変わりつつある。無数の「vertical-drinking」(立ち飲みのパブ)に代わって、カフェ、バー、レストランなどの、飲酒と食事がさまざまに混合した業態の店が増えている。
「社交方法も変わってきたのだろう」とCGAのコリンズ氏は認めている。(スペイン風の)タパス・バー、パンケーキハウス、ハンバーガーレストラン、ガストロパブでは、飲酒とともに食事することを勧めている。これは、健康的な方向への変化と言えるかもしれない。
国家統計局が行った喫煙に関する最近の調査に、喫煙規制の実施前後のパブ利用頻度の変化に関する質問がある。(http://www.statistics.gov.uk/downloads/theme_health/smoking2008-9.pdf)
興味深いことに、パブ利用者の14%は禁煙実施後利用が減り、17%は禁煙実施後利用が増えていた。結局、禁煙実施後パブに行く人が増えたことになる。
【出典】http://www.statistics.gov.uk/downloads/theme_health/smoking2008-9.pdf
私は、イギリスのパブがだめになったとは思わない。過去何世紀にわたってそうであったように、パブは、時代に合わせて変化し、進化し続けている。
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