2013年7月16日

特定非営利活動法人 日本禁煙学会
JTの「奨学金」は国際条約に違反―白紙撤回を求める声明

特定非営利活動法人日本禁煙学会は、「JTの「奨学金」は国際条約に違反―白紙撤回を求める声明」を、政府、関係省庁等に送付しました。
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JTの「奨学金」は国際条約に違反―白紙撤回を求める声明

2013年7月16日
内閣総理大臣 安倍晋三様
財務大臣 麻生太郎様
文部科学大臣 下村博文様
外務大臣 岸田文雄様
NPO法人 日本禁煙学会
理事長 作田 学
JTの「奨学金」は国際条約に違反―白紙撤回を求める声明

政府、文部科学省、外務省、財務省、厚生労働大臣は、早急にJTに対し、当該「奨学金制度」の白紙撤回を求めるとともに、各教育機関に対し当該「奨学金制度」を利用しないよう学生に呼びかけるよう、対応をお願い申し上げます。



 日本たばこ産業株式会社(JT)が2013年7月11日、大学生を対象にした返済不要の奨学金制度「JT国内大学奨学金」を創設したと発表しました。
http://www.jti.co.jp/investors/press_releases/2013/0711_01.html
 それによれば、東京大学など国公立大学33校などに入学する学生で、JTが指定する全国トップクラスの公立高校を卒業することが条件となっています。
 この「奨学金制度」は、2005年2月27日に発効し,日本国政府も批准しているWHOの「たばこ規制枠組み条約」(FCTC)とくに第13条とそのガイドライン(下記)に違反しています。
 多くの研究により、タバコ産業のスポンサーシップ(資金提供)が、特に若者の喫煙開始を促進するということが明らかになっています。
 また、卒業までに500~1000万円の当該奨学金を無償で受け取った学生たちは、将来JTに配慮した言動をする危惧があり、「タバコの消費及びタバコの煙にさらされることが健康、社会、環境及び経済に及ぼす破壊的な影響から現在及び将来の世代を保護することを目的」としたFCTCの理念と相いれません。
 さらに、奨学金の原資となるタバコ産業のあげる利益は、国民を疾病に追いやり、死亡をもたらすことで得ているものであり、多くの国ではタバコ産業が奨学金を与える事を厳重に禁止しています。
 政府とくに文部科学省をはじめ、関連部局の適切で公正な対応を強く要望します。
以上


第13条(タバコ産業の宣伝禁止)とそのガイドライン
http://www.nosmoke55.jp/data/0811cop3.html (日本禁煙学会翻訳)

2ページ
背景となる原則
3. 本ガイドラインには以下の原則を背景として作られている。
  1. タバコの宣伝、販売促進、スポンサー活動がタバコ使用を増やしていること、タバコの宣伝、販売促進、スポンサー活動の包括的禁止がタバコ使用を減らすことが証明されている。
  2. タバコの宣伝、販売促進、スポンサー活動を効果的に禁止するためには、本条約第13条第1項および第2項に関して締約国会議が認識しているように、あらゆるタバコの宣伝、販売促進、スポンサー活動を例外なく包括的に禁止することが必要である。
  3. 世界保健機関タバコ規制枠組み条約第1条の定義に基づくなら、タバコの宣伝、販売促進、スポンサー活動の包括的禁止には、あらゆる形の商業的な広報、推奨および活動と、タバコ製品あるいはタバコ使用を直接的にあるいは間接的に推進することを目指すか、効果を及ぼすあるいは及ぼすおそれのあるすべてのイベント、活動、個人に対するあらゆる形態の貢献活動が含まれる。
4ページ
11. 本条約第13条によって禁止される宣伝、販売促進、スポンサー行為の例示(網羅的でない)リストは、本付属文書の追加文書にされている。

勧告
タバコ宣伝、販売促進、スポンサー行為の包括的禁止には以下の事項を含む:
・ すべての宣伝、販売促進、ならびにスポンサー行為。例外は認めない。
・ 直接的ならびに間接的な宣伝、販売促進、スポンサー活動。
・ あらゆるイベント、活動あるいは個人に対するあらゆる形の寄贈。

7ページ
企業の社会的責任
25. 援助の必要なことに寄付をするとか、自分の営業活動が「社会的責任」を果たしていることを強調して、タバコ産業が自らを善良な企業市民であるとみられるよう描き出そうとする傾向が強まっている。
26. 地域社会、健康推進、福祉、環境保護などの団体に直接あるいは別のルートを通じて、資金援助や現物支給の援助を行っているタバコ会社もある。このような寄付行為は、本条約第1条g項のタバコ産業によるスポンサー行為に該当する。したがって、このような寄付行為は、タバコ製品とタバコ使用を直接的あるいは間接的に促進奨励するという目的、効果あるいはそれらをもたらすおそれがあるがゆえに、包括的禁止措置の一環として禁止されるべきである。

20-21ページ
追加書
条約の条文の範囲内での、タバコの広告、販売促進、スポンサー活動の一覧表(すべてを網羅するものではない)
(テ) 企業による社会貢献活動を含めたイベント、活動、個人、団体(スポーツ、芸術イベント、個人スポーツ競技の選手またはチーム、個人の芸能人あるいはグループ、福祉団体、政治家、政治家の志願者または政党)に対して資金提供その他の支援をすること。見返りとしての宣伝活動の有無は問わない。