2012年10月10日

盛岡地裁の受動喫煙訴訟不当判決に抗議する

抗議文

職場の受動喫煙対策を怠り職員に化学物質過敏症を発症させた被告・岩手県の責任を認めなかった盛岡地裁判決に抗議する。

平成24年10月10日
NPO法人 日本禁煙学会 理事長 作田 学


 公用車での受動喫煙により化学物質過敏症を発症した県職員が岩手県に損害賠償を請求した事案に対して、盛岡地方裁判所は10月5日に県職員の訴えを棄却し、岩手県の責任をまったく認めない不当判決を下した。
 日本禁煙学会は本判決に対して強く抗議する。その理由は以下の通りである。

 原告が公用車の受動喫煙による化学物質過敏症を発症させられたのは2008年1月である。その5年前に職場の受動喫煙防止を努力義務とした健康増進法第25条が施行された。その後厚生労働省通知等で再三職場の受動喫煙防止措置の推進がなされていた。しかしながら、岩手県は、地方自治体として民間職場に先んじて、職場の受動喫煙解消を進める立場にありながら、地方公務員の職場である公用車を一切禁煙にしていなかった。

 受動喫煙の健康影響には、長期間曝露の結果肺ガン等の致死的な疾患を発症する慢性影響と、曝露後ただちに人命にかかわる気管支あるいは急性心筋梗塞等の発作を誘発する恐れのある急性影響とがある。急性影響の中には直ちに死には至らないが、極めて重篤な体調不良を惹起してその後の社会生活に大きな困難をもたらす化学物質過敏症がもたらされることはすでに2005年に受動喫煙症診断基準に明示公表されていた。

 判決は、原告の受傷当時、他の自治体と比較して岩手県の受動喫煙対策がとりわけ遅れていたわけでない、しかも、受動喫煙で化学物質過敏症が惹起されるという認識は一般的ではなかった、と言う誤った認識に基づいて、岩手県に法的責任はないと断じた。

 しかしながら、法律に従って万全の受動喫煙対策を行っていなかったのだから、それによって引き起こされたすべての疾患と体調不良に岩手県当局は責任を負うべきである。
 受動喫煙によって化学物質過敏症が起きるとは認識していなかった、という理由でその責任が免罪されるという論理は、市民常識と相いれない。

 職場の受動喫煙で化学物質過敏症を発症させられた原告の受けた肉体的、精神的、社会的損害は実に甚大である。受動喫煙症、化学物質過敏症に対する誤った認識に基づいた今回の盛岡地裁判決に対して、本学会は強く抗議する。
以上




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盛岡地裁の受動喫煙訴訟不当判決に抗議する