子どもたちが学ぶ場の完全禁煙に向けて大きな前進
しかし、公立校の3~4%と私立中高の30%超が建物内に喫煙室
-これでは受動喫煙は防げません-
「学校における受動喫煙防止対策実施状況調査について」に寄せて
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PDF版
(177KB、2ページ)
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NPO法人 日本禁煙学会 受動喫煙対策委員長 松崎道幸
理事長 作田 学 |
2012年8月11日
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文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課は2012年8月6日に、全国のすべての幼稚園から高等学校までの受動喫煙防止対策の調査結果を発表しました。(文献1)
それによると
- 公立学校の97.5%と私立学校の79.7%が敷地内完全禁煙あるいは建物内完全禁煙でした。また20の指定都市の学校(4,890校)は全てが「敷地内全面禁煙」でした。学校などの教育機関・子ども・青少年施設は、医療・保健・健康関連施設と同じように、子ども達を受動喫煙の危害から守り、かつ子ども達の喫煙防止を学校ぐるみで進めるために、「敷地内全面禁煙」が本来のあるべき姿として、このことは高く評価されることです。
- 公立学校の81~89%が「敷地内全面禁煙」で、高く評価はされるものの、7~14%が「建物内全面禁煙」にとどまっており、2~4%は未だに「建物内分煙措置」であるのは論外の残念な状況です。建物内分煙(建物内に喫煙場所を設置)では、タバコ煙は必ず漏れざるを得ず、受動喫煙防止対策とはなり得ません(FCTC第8条のガイドラインでも「技術工学的方法や「分煙」では受動喫煙は防止できない」と指摘されています)。
- 幼稚園から高校までの大部分の学校が校内・敷地内完全禁煙を達成したことは大きな前進です。20年前に職員室での受動喫煙被害を訴えた学校の先生の訴訟が敗訴に終わったこと、15年前の人事院の報告では当時官公庁の事務室内一切禁煙率は3.8%に過ぎなかったことなどを想起すると、隔世の感があります。ここまで学校の禁煙化が進んだことは、受動喫煙被害をなくすための多くの人々の運動とそれに応えた国民の良識の成果であると考えます。
- しかしながら、「建物内に喫煙室を設置」している学校が中学高校を中心に全国に2000校、「建物内禁煙」が小学校以上で4,660校も残存することは、子ども達の受動喫煙防止対策上も、また喫煙防止対策上も大きな問題です。建物内に喫煙室を設置しても、子供たちの行動区域への煙の漏れを防ぐことはできません。建物内を禁煙にしても屋外の喫煙場所によっては受動喫煙を避け得ない場合が多々ありますし、喫煙直後に子どもと接することによりタバコの吐出煙危害及びサードハンドスモーキング(残留煙害)をもたらす恐れを防げません。さらに就業中に容易に喫煙できる状況があると、教育者として子ども達への行動規範とならないだけでなく、タバコをやめたいと思っている多くの教職員の禁煙挑戦を阻害することになります。
- したがって、今後、建物内の喫煙室をゼロにすること、及び「建物内禁煙」→「敷地内全面禁煙」への移行が大至急に求められます。子ども達が学ぶ学校は、100%「敷地内全面禁煙」であるべきで、それを実現している20の指定都市所管校を、その他のすべての公立・国立・私立学校は見習うべきです。学校、及び関係機関のなお一層のご努力をお願いし、期待いたします。
日本禁煙学会は、スモークフリー・スクール、スモークフリー・キャンパス(文献2)を実現するために今後も奮闘を致します。
文献1 平成24年度学校における受動喫煙防止対策実施状況調査について
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/24/08/1322894.htm
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/24/08/__icsFiles/afieldfile/2012/08/06/1322894_01.pdf
文献2 タバコフリーキャンパスガイド(邦訳版)
http://www.nosmoke55.jp/data/tobaccofree_campuses_guide.html
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