「第4章の4 がんの予防」に関する意見を申し上げます。 「喫煙率の低下と受動喫煙の防止」がわが国のがん予防の鍵であることは明らかであり、「基本計画(変更案)」において、これを推進するとのべられていることは、まことに適切と考えます。
以下にそれを支持するエビデンスを示します。
- 東大グループは喫煙が日本人男性の予防可能ながん死原因の半分を占めると指摘しています。
(Ikeda N, et al. (2012) Adult Mortality Attributable to Preventable Risk
Factors for Non-Communicable Diseases and Injuries in Japan: A Comparative
Risk Assessment. PLoS Med 9(1): e1001160.)
- 現在急増している乳がんに関しても、タバコの影響がきわめて大きいことが明らかになっています。JPHC研究で、日本人非喫煙女性の閉経前乳がんの61.5%が受動喫煙と関連して発生しており、さらに喫煙女性の閉経前乳がんの75%が能動喫煙と関連して発生していることが明らかにされています。
(Int J Cancer. 2005 Mar 20; 114(2):317-22. Active and passive smoking and
breast cancer risk in middle-aged Japanese women. Hanaoka T, Yamamoto S,
Sobue T, Sasaki S, Tsugane S)
- 日本人男性のがんの34.8%、女性のがんの7.8%がタバコ(能動喫煙+受動喫煙)で起きているという最新のレビューが国立がんセンターのチームから発表されています。
(Ann Oncol. 2011 Nov 2. [Epub ahead of print] Attributable causes of cancer
in Japan in 2005--systematic assessment to estimate current burden of cancer
attributable to known preventable risk factors in Japan. Inoue M)
- がんの危険因子を除去する費用効果についても、能動喫煙低減、受動喫煙防止という対策は、他の対策(肝炎ウイルス対策、ヘリコバクター除菌、HPVワクチン等)と比較にならないほど低額で実施が可能であることは自明です。特に、諸外国での先行例が証明しているように、受動喫煙の完全防止法令は、それを施行することにより、能動喫煙率が明らかに減少するだけでなく、循環器疾患の発症も有意に減少するという相乗的効果がみられ、まさに一石で二鳥、三鳥の対策といえます。
- 以上列挙いたしましたように、喫煙対策は、わが国のがん予防のもっとも効果的かつ優先的課題であることが科学的検討によって証明されております。このエビデンスを正面から受け止めて速やかに政策化することが求められております。
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