2011年12月 6日掲載 2011年12月9日更新

兵庫県「受動喫煙防止条例(仮称)骨子案」についての意見
日本禁煙学会は兵庫県「受動喫煙防止条例(仮称)骨子案」についてのパブリックコメントに以下の意見を送付しました
意見その1   意見その2
  意見その3

意見その1

  • 骨子案全体について

    ・検討委員会報告書の内容を無視した、分煙を認める内容になっており、これでは受動喫煙から県民を守れません。検討委員会報告書の内容に戻して下さい。
    ・検討委員会で示されたように、兵庫県民は、食堂・レストランについて、非喫煙者で93.9%、喫煙者でも77.2%が実効のある喫煙規制実施に賛成であり、非喫煙者では55.0%が全面禁煙を望んでいます。また、旅館・ホテルについて、ロビー・食堂などの共用部分について、非喫煙者で95.6%、喫煙者でも86.1%が実効のある喫煙規制実施に賛成であり、非喫煙者では60.3%が全面禁煙を望んでいます。客室については、非喫煙者で95.2%、喫煙者でも81.7%が実効のある喫煙規制に賛成であり、非喫煙者では46.8%が全室禁煙を望んでいます。
    ・分煙業者だけが儲かる内容になっています。検討委員会でも明らかになったように、分煙で受動喫煙を防ぐことはできません。公費を無駄なことに使うのは止めて下さい。
    ・飲食店は禁煙にしたら、家族連れなどの来店が増えて、利益が増えるという検討委員会の資料や事実を県民に知らせて下さい。

  • 公共性の高い施設について

    ・官公庁、医療機関、教育機関については、条例施行と同時に罰則を適用して下さい。
    ・検討委員会報告書の通り、公共性の高い施設に民間商業施設を包括して、分煙を認めないで下さい。
    ・建物内禁煙の場合、兵庫県受動喫煙防止対策指針にある出入り口20m内の禁煙措置についても罰則の適用をお願いします。
    ・公共性の高い施設については、受動喫煙対策が特に緊急に必要であり、JTの言いなりになっている民間業者の反対意見をいちいち聞いて、対応を遅らせるべきではありません。
    ・タバコ小売店でしばしば行われているタバコ試飲についても、受動喫煙防止のため、厳格に罰則をもって禁止して下さい。

  • 旅館・ホテル・飲食店について

    ・ロビー、宴会場、廊下など共有の場は、受動喫煙を避けようがなく、サードハンドスモーク防止のためにも、全面禁煙として、条例施行当初より罰則を適用下さい。
    ・時間分煙は、人事院「職場における喫煙対策に関する指針(勤務条件局長通知)」においても明確に効果がないとされているため、認めないで下さい。
    ・時期や基準も明確にされないまま暫定的措置のみを認めることは、無駄なコストを掛けて対策を実施する民間事業者の混乱を招くので、いっそ、始めから費用がかからない全面禁煙だけを認めて、罰則を適用すべきです。
    ・暫定措置としても、喫煙率は20%しかないので、シングルルームとしても禁煙室8割、ツイン以上で客室内受動喫煙を防止することを考えると、9割以上を最初の義務とするのが相当です。
    ・飲食店や喫茶店については、受動喫煙被害が防止できない1/3とか1/2ではなく、当初から全面禁煙として、禁煙の面積割合ではなく、罰則適用の時期について猶予をするべきです。
    ・火災防止と類焼防止・犠牲者の軽減の観点から、低層階はフロアごと全面禁煙とすべきです。
    ・小規模スナック・バー等についても、妊婦や非喫煙者も利用し、従業員の受動喫煙もあり、例外として扱うべきではないと思います。

  • 喫煙席・喫煙室への立ち入り制限について

    ・喫煙席・喫煙室などは、受動喫煙の危険を知らせるために、兵庫県が指定した大きく目立つ表示を義務付け、罰則を適用して下さい。また、学校・医療機関・官公庁で、その喫煙表示のある場所には、未成年者・妊産婦・非喫煙者は立ち入ったり、近づかないように、啓発する義務を規定して下さい。集団で行動する際も1人でも未成年者・妊産婦・非喫煙者がいる場合は、喫煙表示のある場所や受動喫煙の危険性のある場所に立ち入ったり近づかないように啓発して下さい。
    ・「喫煙スペースへの未成年者立入禁止及びその旨の表示義務」となっていますが、「妊婦・非喫煙者」を入れて下さい。
    ・同様に、従業員の受動喫煙防止のため、従業員の立ち入りも禁止して下さい。
    ・表示と立ち入り制限については、抜き打ち検査と罰則化により、実行性を担保して下さい。

  • 全面禁煙店への報奨について

    ・条例施行と同時に全面禁煙としたホテル・宿泊施設・飲食店については、兵庫県から県民に知らせる、空気がおいしい安全安心な店としてステッカーを交付する、ポイントラリーや割引券の配布などのインセンティブを与えて下さい。
    ・意味のない分煙設備などに補助金や貸付等として公金を使うのは全くの無駄ですのでおやめ下さい。
    ・従業員への禁煙補助などとしてなら、一石二鳥になると思います。

  • その他

    ・兵庫県民の受動喫煙被害を顧みず、JTの利益のためだけを考えていいなりになっている、業界からのやらせメール、やらせ文書は無視すべきです。

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意見その2

  • (1)たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約に準拠した条例とすること

    日本国政府はたばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(以下「FCTC」という。)に平成16年に署名・批准し、平成17年に当該条約が発効している。日本国憲法98条第2項において「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」とあることから、FCTC締約国である日本国政府および日本国における地方公共団体である兵庫県(以下「地方公共団体たる兵庫県」と表記)は、以下の認識および義務があります。

    1. FCTC8条第1項において、「締約国は、タバコの煙にさらされることが死亡、疾病及び障害を引き起こすことが科学的証拠により明白に証明されていることを認識する。」とあることから、締約国である日本国政府および地方公共団体たる兵庫県は当該事項について認識している。
    2. FCTC5条第2項(b)において、日本国政府および地方公共団体たる兵庫県は「タバコの煙にさらされることを防止し及び減少させるための適当な政策を策定するに当たり、効果的な立法上、執行上、行政上又は他の措置を採択し及び実施」することが義務付けられている。
    3. FCTC8条第2項において、日本国政府および地方公共団体たる兵庫県は、「屋内の職場、公共の輸送機関、屋内の公共の場所及び適当な場合には他の公共の場所におけるタバコの煙にさらされることからの保護を定める効果的な立法上、執行上、行政上又は他の措置を国内法によって決定された既存の国の権限の範囲内で採択し及び実施」することが義務付けられている。
    4. たばこ規制枠組み条約第2回締約国会議(COP2)において採択されたFCTC8条第2項のガイドライン(以下、「FCTCガイドライン」という。)の6項・原則1において、「特定の場所あるいは環境における喫煙とタバコ煙を完全に除去して、100%タバコ煙のない法的環境を作り出す必要がある。タバコ煙曝露に安全レベルはない。また受動喫煙の毒性に閾値があるという考えは棄却さるべきである。なぜなら、そのような観念は科学的証拠により否定されているからである」としていることから、受動喫煙において「飲食店等サービス業の経済的影響を考慮した受動喫煙規制の緩和」や「分煙」を論じることは科学的医学的知見に反する解釈というべきであり、日本国政府および地方公共団体たる兵庫県においては100%タバコ煙のない環境を作り出し受動喫煙を防止する措置を講ずる法的義務がある。
    5. 同ガイドラインの31ないし34項において立法措置は罰則付きであるべきとされており、日本国政府および地方公共団体たる兵庫県は、受動喫煙防止にかかる立法措置にあたっては、罰則付きとする義務がある。
       従って、兵庫県は、受動喫煙防止義務について事業面積規模により努力義務としたり、分煙を認めたりすることは当該FCTCに反することとなるため、例外なく受動喫煙防止義務が法的義務として適用されるよう、FCTCに沿った条例を策定しなければなりません。

  • (2)経済的影響を正しく評価すること

    受動喫煙防止に係る立法措置が経済的な悪影響をもたらすという懸念が当該条例案をFCTCに準拠しないものとさせたように思慮しますが、そもそも本当に経済的な悪影響をもたらすのか、以下のとおり適正な検証する必要があります。

    1. しばしば引き合いにだされる富士経済および三菱UFJリサーチ&コンサルティング社が発表した神奈川県の受動喫煙防止条例における経済的影響として237億円の損失とあるが、神奈川県のGCPはおよそ30兆円であり、当該237億円の損失という数字だけを見ると多額なようにみえるが、GDP比では0.1%程度であり経済的影響として極めて大きいと評価することは妥当ではない。
    2. 同発表において、「損失」の定義によりその経済的影響の評価結果は変わり、具体的には分煙のための設備投資を損失とみている場合には空調工事会社にとっては利益となるし、外食控えを外食産業における損失とみている場合は、家での食事が増えることから食材業者の売上が増すとも考えられるため、ひとつの側面のみをもって経済的影響を論ずることは妥当ではない。
    3. 同発表において、237億円の損失が見込まれるのは「受動喫煙防止」の規制をしたためではなく、分煙を認めたり一定の規模の事業者は努力義務としたりするなど、十分ではない受動喫煙規制にしたために損失となったという見方もできる。三菱総合研究所の研究結果「全面禁煙規制・分煙規制に対する 経済的影響の事前評価」(http://www.mri.co.jp/NEWS/magazine/journal/54/__icsFiles/afieldfile/2011/06/10/9-kinen.pdf)によれば、分煙規制の場合は経済的影響はマイナスだが、全面禁煙規制の場合は経済的影響はプラスであると評価されている。
    4. 経済的影響の評価においては飲食店等サービス業への影響が特に取り沙汰されるが、愛知県において平成22年に3ヶ月間かけて行われた禁煙営業の実証実験において、全面禁煙化した飲食店の9割以上が売上が変わらなかった、もしくはあがったとの結果が発表されている。その他、ハワイ大学のマークAレビン教授の調査によればハワイにおいて全面禁煙化の法律が施行された前後でのサービス業における売上を調査した結果、愛知県と同様に売上が変わらないか、もしくはあがったという結果が発表されている。これらは一例であるが、このような様々な「喫煙者がこなくなる」という点のみを殊更に強調せず、調査結果に基づく評価が必要である。 

    上記のとおり、経済的影響については様々な側面、評価手法により異なってくることからも、飲食店等サービス業の「感覚的な懸念」のみをもって分煙を容認する、事業面積により努力義務とする受動喫煙防止条例を制定することは失当です。

  • (3)飲食店等サービス業への支援は、インセンティブ形式で実施すること

    受動喫煙防止のための立法措置と、飲食店等サービス業の保護は、必ずしも相反する概念ではありません。当該条例制定の目的に照らし、両方を満たせる提案を以下の通り摘示します。

    1. 全面禁煙化することが直ちに客足の減少および売上の低下に繋がらないこと、その事例、ノウハウを収集し県として飲食店等サービス業へ啓発、コンサルティングを行うこと
    2. 全面禁煙にした飲食店等サービス業に対し補助金を支給すること
    3. 全面禁煙にした飲食店等サービス業について県のホームページ、広報誌等に掲載するなど県が積極的に広報し県民・他県からの利用を促進すること
    4. 全面禁煙にする飲食店については一時的な売上減に供え、低金利または無金利の貸付金等の制度を整備すること

  • (4)世界的な潮流に従うこと

    上記(1)で述べたとおり、FCTCに批准した世界各国では全面禁煙が当たり前となっております。神奈川県受動喫煙防止条例のモデルとなったスペインの「分煙」規制も、後にスペイン政府は分煙規制の誤りを認め、全面禁煙措置に移行しています。
     このような世界的な潮流からも国際都市である兵庫県がその潮流に反する条例を策定することは世界から失笑を買うばかりか、そう遠くない時期にわが国においても全面禁煙が当たり前という風潮になった場合に事業者における分煙設備投資が無駄になります。
     県民の健康はもちろんのこと、国際都市を目指し経済をより活性化するためにもFCTCに沿った受動喫煙防止条例の制定が必要と考えます。

  • (5)さいごに

    上記(1)で示したとおり、FCTCの誠実な履行義務がある上に、受動喫煙による健康への有害性が立証されている昨今において、FCTCに沿わない不完全な受動喫煙防止条例を制定することは、のちに立法不作為の責任を追及されることになります。タバコ会社、タバコ販売業者およびそれらに踊らされている飲食店等サービス業者からの「反発」と、立法不作為責任の追及および巨額の賠償の責めを負うことの、どちらが県にとって懸念すべき事項であるかは比較衡量するまでもなく明白です。
    上記までの意見を踏まえよくよくご賢察賜りますようお願い申し上げます。

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意見その3

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兵庫県受動喫煙防止条例パブリックコメントその3

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