2010年6月11日 |
タバコ規制枠組み条約第13条:タバコ広告、販売促進、スポンサー活動包括的禁止の実行要請書 |
平成22年6月11日
野田佳彦 財務大臣様
大串博志 財務大臣政務官様
タバコ規制枠組み条約第13条:
タバコの広告、販売促進、スポンサー活動の包括的禁止を
誠実に実行するように要請いたします。
NPO法人日本禁煙学会
理事長 作田 学
記 |
5年前の2005年2月27日に日本も批准しているタバコ規制国際枠組み条約(FCTC)が発効しました。FCTCは条約発効後5年以内にタバコの広告、販売促進、スポンサー活動の包括的禁止を実行するか、包括的禁止が憲法上の障害がある場合は、可能な限りタバコの広告、販売促進、スポンサー活動に制限を設けなければならないという責務を締約国に課しました。日本政府は国際社会にその内容を誠実に実行する義務を負ったことになります。しかし条約の約束期限の2010年2月27日を過ぎても、日本政府は、第13条の義務を果たしていません。
日本禁煙学会は以前にもFCTCの誠実な履行を求めて、2006年10月に政府に対し@タバコパッケージの両面の半分の面積と側面に画像を含む大きく明瞭な健康警告表示を義務付ける、Aタバコ銘柄名にライト・マイルド等の害を小さく見せる表現を禁止する、B自販機の前面及び側面両面に健康警告表示を義務づける措置等の誠実な実行を申し入れました。さらに、われわれは2009年9月、FCTC第11条について国内外の世論に反し国際公約を反古にした日本政府に強く抗議したところであります。
世界保健機関(WHO)が2008年2月に発表した「WHO Report on the Global Tobacco Epidemic, 2008 – The MPOWER package」の中には、禁煙を推進するために各国が優先的にとるべき6つの政策があげられています。その1つが「タバコの広告、販売促進、スポンサー活動の禁止を要請する」となっています。また、世界医師会も「タバコ製品の有害性に関する世界医師会声明」の中で、タバコ製品の宣伝と販売活動の完全禁止を含めたタバコの包括的規制の実施を求めています。すなわち、タバコの広告、販売促進、スポンサー活動を包括的に禁止する動きは世界の流れであり、多くの国々ですでに実施されています。とくに重要な事は、国民の生命を守る義務は、営利的な広告の自由よりもはるかに上位にあることです。従って、憲法上の制約はありません。
日本禁煙学会は今回、予防可能な喫煙による死亡をなくすために、FCTC第13条の早急な完全実施を日本政府に強く求めます。具体的には以下を要求いたします。
· テレビ・ラジオ、新聞・雑誌などにおけるタバコ広告を製品だけでなくマナー広告も含めて禁止すること
景品付きタバコを禁止すること
· 店頭におけるタバコ製品の展示を規制すること
· タバコ自動販売機や喫煙コーナーを利用したタバコの宣伝を禁止すること
· インターネットでのタバコ販売を禁止すること
· ライト、マイルド等の喫煙の害を小さく見せるブランド名を禁止すること
· タバコ会社による冠イベントを禁止すること
· タバコ会社のCSR(企業の社会的責任)活動を制限すること
· FCTC第13条を誠実に実行する義務を怠ったことに関する反省と早急な実施の意志を表明すること
以上
(参考-1)
タバコ規制枠組条約 第13条(外務省翻訳http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/treaty159_17.html)
第十三条 タバコの広告、販売促進及び後援
1 締約国は、広告、販売促進及び後援の包括的な禁止がタバコ製品の消費を減少させるであろうことを認識する。
2 締約国は、自国の憲法又は憲法上の原則に従い、あらゆるタバコの広告、販売促進及び後援の包括的な禁止を行う。この包括的な禁止には、自国が利用し得る法的環境及び技術的手段に従うことを条件として、自国の領域から行われる国境を越える広告、販売促進及び後援の包括的な禁止を含める。この点に関し、締約国は、この条約が自国について効力を生じた後五年以内に、適当な立法上、執行上、行政上又は他の措置をとり、及び第二十一条の規定に従って報告する。
3 自国の憲法又は憲法上の原則のために包括的な禁止を行う状況にない締約国は、あらゆるタバコの広告、販売促進及び後援に制限を課する。この制限には、自国が利用し得る法的環境及び技術的手段に従うことを条件として、自国の領域から行われる国境を越える効果を有する広告、販売促進及び後援の制限又は包括的な禁止を含める。この点に関し、締約国は、適当な立法上、執行上、行政上又は他の適当な措置をとり、及び第二十一条の規定に従って報告する。
4 締約国は、憲法又は憲法上の原則に従い、少なくとも次のことを行う。
(a)虚偽の、誤認させる若しくは詐欺的な手段又はタバコ製品の特性、健康への影響、危険若しくは排出物について誤った印象を生ずるおそれのある手段を用いることによってタバコ製品の販売を促進するあらゆる形態のタバコの広告、販売促進及び後援を禁止すること。
(b)あらゆるタバコの広告並びに適当な場合にはタバコの販売促進及び後援に当たり健康に関する警告若しくは情報又は他の適当な警告若しくは情報を付することを要求すること。
(c)公衆によるタバコ製品の購入を奨励する直接又は間接の奨励措置の利用を制限すること。
(d)包括的な禁止を行っていない場合には、まだ禁止されていない広告、販売促進及び後援へのタバコ産業による支出について関連する政府当局に対し開示することを要求すること。当該政府当局は、国内法に従い、当該支出の額を公衆に開示すること及び第二十一条の規定に従い締約国会議に開示することを決定することができる。
(e)ラジオ、テレビジョン、印刷媒体及び適当な場合には他の媒体(例えば、インターネット)におけるタバコの広告、販売促進及び後援について、五年以内に、包括的な禁止を行い、又は自国の憲法若しくは憲法上の原則のために包括的な禁止を行う状況にない締約国の場合には、制限すること。
(f)国際的な催し、活動又はそれらの参加者に対するタバコの後援を禁止し、又は自国の憲法若しくは憲法上の原則のために禁止する状況にない締約国の場合には、制限すること。
5 締約国は、4に規定する義務を超える措置を実施することが奨励される。
6 締約国は、国境を越えて行われる広告の廃止を促進するために必要な技術及び他の手段の開発について協力する。
7 特定の形態のタバコの広告、販売促進及び後援を禁止している締約国は、自国の国内法に従い、自国の領域に入る当該形態の国境を越えるタバコの広告、販売促進及び後援を禁止する主権的権利並びに自国の領域における国内の広告、販売促進及び後援について適用する制裁と同等の制裁を科する主権的権利を有する。この7の規定は、いかなる制裁をも科することができることを認め又は承認するものではない。
8 締約国は、国境を越えて行われるタバコの広告、販売促進及び後援の包括的な禁止のために国際的な協力を必要とする適当な措置を定める議定書の作成について検討する。
(参考−2)
タバコ枠組み条約13条のガイドライン(COP3: 2008年10月26日採択)
(日本禁煙学会翻訳委員会(松崎委員長)訳)
条約第13条施行ガイドラインの詳細
2008年10月26日
1. 世界保健機関タバコ規制枠組み条約第2回締約国会議は、第13条に関する作業部会創設を決定した(FCTC/COP2(8))。この作業部会には二つの義務が課された:(a)世界保健機関タバコ規制枠組み条約第13条の国内的および国際的取り決め部分の施行に関する包括的ガイドライン案を策定すること、(b)国境を越えた宣伝、販売促進、スポンサー活動に関する本ガイドラインを補完し、国境を越えた宣伝、販売促進、スポンサー活動の規制に寄与する対策に関する手順書の要点についての勧告を明らかにすることの二つである。作業部会は第3回締約国会議にガイドラインと勧告の案文を提出するよう要請された。この決定に基づき、本ガイドラインの骨組みを検討する主要ファシリテーター国1と専門家委員会の第1回会合が開催された(2007年9月17-18日、ジュネーブ)。
フィンランド政府が主催した第13条作業部会第1回会合(2007年11月27-29日ヘルシンキ)には、主要ファシリテーター国と作業部会パートナー諸国2が参加した。そのほかに、市民社会の諸代表、世界保健機関タバコフリーイニシアティブの本条約事務局も出席した。この会合において、作業部会はファシリテーターから提案された骨子について合意した。これは、その後の討議の基礎となるものである。この議案は会合の中で修正された。作業部会は主要ファシリテーターに対して第2回会合までガイドラインと勧告草案についての作業を継続するよう要請した。
インド政府が主催した作業部会第3回会合(2008年3月31日−4月2日ニューデリー)において、ガイドラインと勧告案の討議はさらに継続された。部会は主要ファシリテーターに、作業部会の討議に基づき、必要な場合にはこのプロセスに他の参加締約国や専門家の参加を求めた上で、草案をまとめるよう要請した。
その結果、主要ファシリテーター、討議への参加意思を持つ締約国、専門家ならびに条約事務局が出席した上での草案検討会合(2008年4月3−4日ニューデリー)がもたれた。この会合において、ガイドラインと勧告の草案がまとめられた。作業部会のすべての参加者は最新の草案に対してコメントを述べる機会を与えられた。
作業部会が草案作成会合において策定し承認したガイドラインと勧告の草案は、FCTC/COP2(8)の決定に従って、保護されたウェブサイトにアップされて、世界保健機関タバコ規制枠組み条約のすべての締約国によるアクセスが可能となった。9つの締約国からコメントが提出されたが、2カ国のコメントは提出期限に間に合わなかった。すべてのコメントが部会の内部ウェブサイトを通じて作業部会のメンバーに届けられた。
これらのコメントに対する広汎なレビューと内部討議を経て主要ファシリテーターは、FCTC/COP2(8)の決定とそれに次ぐ締約国会議事務局の決定により明らかにされた日程と手続きに従い、締約国会議への提出前にガイドラインと勧告の草案を修正した。
こうしたプロセスを経て締約国会議の検討に付されたガイドラインと勧告草案は付属文書1(本条約第13条の実施ガイドライン草案)、付属文書2(国境を越えた宣伝、販売促進活動、スポンサー活動に関する手順書の重点要素に関する勧告)、付属文書3(国境を越えた宣伝、販売促進活動、スポンサー活動の禁止に寄与するあらゆる措置に関する勧告)に示した。
締約国会議は本ガイドラインのレビューを行い、適切だと判断した場合、実行せられたい。
1 欧州共同体、フィンランド、インド
2 オーストラリア、ブラジル、ブルガリア、ブルキナファソ、カナダ、中国、クック諸島、ジブチ、フィジー、フランス、アイスランド、イスラエル、マダガスカル、マレーシア、モーリタニア、オランダ、ニュージーランド、パラウ、韓国、スウェーデン、タイ
付属文書1
世界保健機関タバコ規制枠組み条約第13条
(タバコ産業による宣伝、販売促進活動、スポンサー活動)
施行ガイドライン
目的
これらのガイドラインの目的は、締約国が世界保健機関タバコ規制枠組み条約第13条により課せられた義務を果たす援助を行うことにある。これらにはタバコ産業が行う宣伝、販売促進、スポンサー活動を制限禁止する上で締約国が実行できた効果的な対策に関する経験と活用可能なエビデンスが述べられている。これらは締約国に、タバコの宣伝、販売促進、スポンサー活動の包括的禁止措置を導入し施行するための手引きを示したものである。また、憲法上の規定あるいは、それに基づく原理のためにそれらの包括的禁止を実行することができない状況にある締約国に対しては、タバコの宣伝、販売促進、スポンサー活動の可能な限り包括的な制限を実行するための手引きを示している。
これらのガイドラインは、タバコの宣伝、販売促進、スポンサー活動禁止をうたった本条約第13条を国内および国際的に実施する最良の道筋を示す手引きとなる。
背景となる原則
本ガイドラインには以下の原則を背景として作られている。
(1) タバコの宣伝、販売促進、スポンサー活動がタバコ使用を増やしていること、タバコの宣伝、販売促進、スポンサー活動の包括的禁止がタバコ使用を減らすことが証明されている。
(2) タバコの宣伝、販売促進、スポンサー活動を効果的に禁止するためには、本条約第13条第1項および第2項に関して締約国会議が認識しているように、あらゆるタバコの宣伝、販売促進、スポンサー活動を例外なく包括的に禁止することが必要である。
(3) 世界保健機関タバコ規制枠組み条約第1条の定義に基づくなら、タバコの宣伝、販売促進、スポンサー活動の包括的禁止には、あらゆる形の商業的な広報、推奨および活動と、タバコ製品あるいはタバコ使用を直接的にあるいは間接的に推進することを目指すか、効果を及ぼすあるいは及ぼすおそれのあるすべてのイベント、活動、個人に対するあらゆる形態の貢献活動が含まれる。
(4) タバコの宣伝、販売促進、スポンサー活動の包括的禁止には、国境を越えた宣伝、販売促進、スポンサー活動が含まれる。これには(締約国の領域から発する)宣伝、販売促進、スポンサー活動の流出と、(締約国の領域に入り込んだ)宣伝、販売促進、スポンサー活動の流入が含まれる。
(5) 包括的禁止措置を効果的なものにするためには、タバコの宣伝、販売促進、スポンサー活動の製作、展示、配布にかかわるすべての人物と範疇を対象にする必要がある。
(6) 強力な市民に対する教育と地域社会への周知計画に支えられた効果的なモニタリング、執行、制裁が、タバコの宣伝、販売促進、スポンサー活動の包括的禁止を実行する上で不可欠な措置である。
(7) 市民社会は、タバコの宣伝、販売促進、スポンサー活動を対象にした法律の制定に向けた支援、改良、遵守を推進する中心的役割を果たす。したがって、このプロセスへの能動的パートナーとして参加させる必要がある。
(8) 効果的な国際協力を図ることが国内および国境を越えたタバコの宣伝、販売促進、スポンサー活動の禁止の基礎をなすものである。
包括的禁止措置の範囲
タバコの宣伝、販売促進、スポンサー活動の包括的禁止の範囲については、以下の概説(第5−11段落)に一般的説明を示した。そのあとの第12−34段落には、包括的禁止法を導入するに当たって立法者が新たに越えなければならない課題を述べた。
概説
タバコの宣伝、販売促進、スポンサー活動の禁止は、広汎なものでなければ効果が上がらない。最近の販売促進戦略は、直接販促、宣伝、個人販売、インターネット販促活動など精細に組み込まれたアプローチ法で構成されている。タバコの直接宣伝の一手法だけを禁止しても、タバコ産業は、必ず、資金を他の宣伝、販売促進、スポンサー活動に振り向けて、とりわけ若者をひきつける力のあるクリエイティブな間接的手法を編み出して、タバコ製品とタバコ使用の売込みを続ける。
したがって、タバコ宣伝を部分的に禁止しても、タバコ使用の低下は限定的なものにとどまる。この点はタバコの宣伝、販売促進、スポンサー活動に関する基本的義務を定めた本条約第13条において確認されている。第13条第1項には「締約国は宣伝、販売促進、スポンサー活動に対する包括的禁止がタバコ製品の消費を減らすと認識している」と述べられている。
本条約第13条第1項と2項に示された包括的な禁止を施行するためには、締約国は本条約第1条第1項(c)、(g)で定義された宣伝、販売促進、スポンサー活動を禁止する必要がある。第1条第1項(c)は「タバコの宣伝と販売促進」を「タバコ製品あるいはタバコ使用を直接的にあるいは間接的に推進することを目指すか、効果を及ぼすあるいは及ぼすおそれのあるあらゆる形の商業的な広報、推奨および活動」と定義している。また第1条1項(g)は「スポンサー活動」を「タバコ製品あるいはタバコ使用を直接的にあるいは間接的に推進することを目指すか、効果を及ぼすあるいは及ぼすおそれのあるイベント、活動、個人に対するあらゆる形態の貢献活動」と定義している。
1 例えば、小売業者への報酬制度、店頭ディスプレー、くじ、無料贈呈、無料サンプル、割引、コンペ(タバコ製品購入なしでも可)、同じ銘柄を買うと割戻しクーポンが当たるなど。
2 この文章には、締約国に「地域法、国内法で定められた年令または18歳以下の未成年者に対するタバコ製品の販売を禁止するための適切な行政府レベルにおける効果的な法的、行政的、管理的対策の制定と執行」を義務付けた第16条第1項の精神が反映されている。第16条第1項は、「これらの対策に(c)こどもにアピールするタバコ製品の形をしたお菓子、スナック、おもちゃなどの製造販売禁止」をうたっている。
「タバコの宣伝と販売促進」も「タバコのスポンサー活動」も特定のタバコ製品に関するものだけでなく、タバコ使用一般を包括していると認識することが重要である。販売促進を目的とした活動だけでなく、販売促進効果を持つ活動およびそのおそれがあると予想される活動をも含む。「タバコの宣伝と販売促進」は「伝達」だけでなく「推奨」と「活動」を含む。したがって、少なくとも次に述べるカテゴリーを含む。(a)さまざまな形態の販売と頒布1、(b)隠された宣伝、販売促進活動、例えば、さまざまなメディアコンテンツにタバコ製品やタバコ使用シーンを入れる(訳注:プロダクト・プレイスメントのこと)、(c)さまざまな方法でイベントや他の製品と一緒にタバコ製品を展示する、(d)販売促進のためのパッケージ、製品デザイン、外観、(e)紙巻タバコなどのタバコ製品に似せたお菓子、おもちゃなどの製造頒布2。「タバコ会社のスポンサー活動」には、この活動の公表の有無の如何を問わず、金銭授受を含もうと含むまいと「すべての形の貢献活動」が含まれる。
直接であると間接であるとを問わず、販売促進効果は、タバコ製品、タバコ会社、タバコ輸入会社を連想させるブランド名、トレードマーク、ロゴ、タバコ製造会社名、輸入会社名、色彩あるいは色彩を用いた図を含む言葉、デザイン、イメージ、音、色彩を使用することでもたらされたり、言葉、デザイン、イメージ、色彩の一部分あるいはその組み合わせを用いてもたらされる場合もある。ブランド名やトレードマークの呈示なしに行われる(時にコーポレートプロモーションと呼ばれる)タバコ会社それ自体のプロモーション活動もまたタバコ製品あるいはタバコ使用のプロモーション活動である。タバコ製品の展示を含む宣伝広告および紙巻タバコ用の巻紙、フィルター、手巻きタバコ製造器具などの喫煙付属品の提供行為ならびにタバコ製品を模倣した品物の製造もまたタバコ製品やタバコ使用の促進効果があると考えられる。
禁止される行為のすべてを網羅したあるいはそう受け取られるリストを含む法律を作るべきでない。禁止行為の例を示すことが有用な場合もあるが、もし、法律でそれを行う場合には、そのリストが禁止行為の例を示しているだけで、すべての禁止行為を網羅しているものではないことを断っておく必要がある。その際「〜を含むがそれだけに留まるものではない」あるいは「あるいは他のあらゆる形態のタバコの宣伝、販売促進、スポンサー行為」というすべての状況に対応できる言い回しを用いるのが便利である。
本条約第13条によって禁止される宣伝、販売促進、スポンサー行為の例示(網羅的でない)リストは、本付属文書の追加文書にされている。
勧告
タバコ宣伝、販売促進、スポンサー行為の包括的禁止には以下の事項を含む:
すべての宣伝、販売促進、ならびにスポンサー行為。例外は認めない。
1 宣伝と販売促進をもたらすと言う理由で自動販売機を禁止することは、タバコからのこどもの保護を定めた第16条を補足するものである。第16条第1項に述べられている対策には「各々の管轄区域にあるタバコ自動販売機がこどもに使用されないよう、さらにこどもに対するタバコ製品の販売促進効果を持たないようにする措置」が含まれよう。また第16条第5項では、「締約国は強制力のある文書化された宣言文により、その管轄区域に対するタバコ自動販売機の導入を阻止する、あるいは、適切な場合、タバコ自動販売機を完全に禁止する意志を表明してもよい。」と明記している。
2 有害警告表示と誤解させる情報の表示を論じたプレイン・パッケージングの問題を取り扱った第11条施行ガイドライン草案も参照されたい。
直接的ならびに間接的な宣伝、販売促進、スポンサー活動。
販売促進を目的とした行為、ならびに販売促進効果をもたらすあるいはそのおそれのある行為。
タバコ製品ならびにタバコ使用行為の奨励。
営利を目的とした情報伝達ならびに奨励、活動。
あらゆるイベント、活動あるいは個人に対するあらゆる形の寄贈。
タバコブランドネームおよびタバコ産業そのものの売り込みのための宣伝ならびにプロモーション活動。
従来からある情報提供手段(印刷・テレビ・ラジオ)およびインターネット、携帯電話、映画を含むあらゆる形のニューテクノロジーを用いた情報提供手段。
小売販売および店頭陳列
小売店におけるタバコ製品の陳列それ自体が宣伝と販売促進活動に当たる。タバコ製品の陳列はタバコ製品購入の衝動を刺激し、タバコ使用が社会的に認められているという印象をもたらし、タバコ使用を中止することを困難にすることを通じて、タバコ製品の販売促進とタバコ使用の促進をもたらす決定的手段の一つとなっている。若者はタバコ製品陳列によってもたらされる販売促進活動に特に影響されやすい。
タバコ製品の販売場面がいかなる販売促進効果も発揮できないよう、締約国は固定的小売店と街頭の自動販売機におけるタバコ製品の陳列あるいはタバコ製品の露出を全面的に禁止する措置を導入すべきである。いかなる販売促進効果ももたらさないタバコ製品名のリストと価格の表示だけを認めるべきである。第13条のすべての観点に従い、この禁止措置はフェリー、飛行機、港湾、空港にも適用されるべきである。
自動販売機は禁止されなければならない。なぜなら、その存在そのものが本条約の規定する宣伝あるいは販売促進手段となっているからである。1
勧告
小売店においてタバコ製品を陳列あるいは露出させる行為はタバコの宣伝と販売促進活動とみなされるから禁止されなければならない。自動販売機は、その存在自体が宣伝と販売促進手段となっているから禁止すべきである。
タバコの包装と製品の外観2
15. タバコの包装は宣伝と販売促進活動の重要な要素である。タバコの包装すなわち製品の外観はさまざまな方法を通じて、例えば、タバコの箱や紙巻タバコ一本ごとに、あるいは他のタバコ
1 インターネットによるタバコ販売規制措置はタバコ製品の不法取引人関する手順書を検討する国際交渉機関で話し合われている。
製品の表面や中にロゴ、色彩、フォント、写真、形状などを利用して、消費者をひきつけ、製品の売り込、ブランドアイデンティティーの開拓と売り込みを図る。
16. パッケージングを通じた宣伝販売促進効果は、プレイン・パッケージングを義務付けることにより除去できる。プレイン・パッケージングとは、各国の当局が定めた白黒などのコントラストのはっきりした2色を用いて、ブランドネーム、商品名、製造社名、問い合わせ先、製品の量目だけを記載させたパッケージに限定することである。その際規定のフォントと大きさで描かれた有害警告、課税証などの政府が義務付けた情報やマーク以外のロゴなどのデザインを入れることはできず、標準化された形、大きさ、材質で作らなければならない。宣伝や販売促進につながる表示をタバコの箱や紙巻タバコ等のタバコ製品に入れることはできない。
17. もしプレイン・パッケージングが義務化されていない場合、動物などのキャラクター、面白い言い回し、色巻紙、魅力的なにおい、人目を引く小物やシーズンパックなど、タバコ製品を消費者に魅力的に見せるデザインをできる限り禁止する必要がある。
勧告
タバコ製品の包装と製品デザインは宣伝と販売促進上重要な要素である。宣伝と販売促進効果を上げるためにタバコの包装が変えられることを防ぐには、プレイン・パッケージングを義務化するのがよい。タバコの包装、紙巻きタバコ1本1本などのタバコ製品における宣伝や販売促進のための表示ならびに製品を魅力的に見せるための外観デザインを禁止するのがよい。
インターネット販売
18. タバコのインターネット販売は、本来的に本条約が定義するところの宣伝と販売促進効果を持つ。インターネット販売は、宣伝・販売促進禁止に触れるだけでなく、こどもへのタバコ販売、脱税、密輸を促進する問題もはらんでいる。
19. インターネットにおけるタバコ宣伝と販売促進行為をなくすもっとも直接的な方法は、インターネットを通じたタバコ販売を禁止することである。1 この禁止措置は、タバコ製品販売業者だけに適用するのではなく、クレジットカード会社などタバコ製品の代金支払いと郵送サービスに関連する業者にも適用される必要がある。
20. インターネット販売が禁止されていない場合、商品名と値段を文字で表示したリストを出す以外の画像表現や販売促進表現(値段が安いなど)を許可しない様規制すべきである。
21. インターネット上のタバコの宣伝販売促進行為はこっそり行われるため、見つけにくく、違反者を摘発することが難しいため、この対策を実効性のあるものとするためには、特別に金と人の投入が必要である。国境を越えた宣伝、販売促進およびスポンサー活動をなくするために付属文書3が勧告している対策、とりわけインターネット情報の連絡先を明らかにして、他の締約国からの通知を処理する部局を作る対策を実行するなら、国ごとの条約施行努力が無に帰さない
1 締約国会議によって設立された作業グループが練り上げた第5条第3項ガイドライン草案では、この問題を、タバコ規制に関する公衆保健政策をタバコ産業の利益とその他の利害関係者から守るという視点から取り上げている。
ようにすることができる。
勧告
タバコのインターネット販売は、本質的にタバコ宣伝と販売促進の役割を果たすため、禁止すべきである。
ブラントストレッチングとブランドシェアリング
22. 「ブランドストレッチング」とは、タバコ製品以外の物やサービスにブランド名、エンブレム、トレードマーク、ロゴ、記号などの目立つ外形(目立つ色の組み合わせを含む)を表示して、タバコ製品とタバコ製品以外の物やサービスを関連させ、ブランドを売り込むことである。
23. 「ブランドシェアリング」は、タバコ製品以外の物あるいはサービスにブランド名、エンブレム、トレードマーク、ロゴ、記号などの目立つ外形(目立つ色の組み合わせを含む)を表示して、タバコ製品あるいはタバコ会社と関連づけ、タバコ製品以外の物やサービスを見るとタバコ製品やタバコ会社がイメージされるようにする戦略である。
24. 直接的にあるいは間接的にタバコ製品やタバコ使用を売り込む目的で行われる、あるいは効果をもたらす、あるいはその可能性のある「ブランドストレッチング」も「ブランドシェアリング」もタバコの宣伝・販売促進行為とみなすべきである。
勧告
締約国はタバコの宣伝販売促進行為である「ブランドストレッチング」「ブランドシェアリング」を禁止すべきである。
企業の社会的責任1
25. 援助の必要なことに寄付をするとか、自分の営業活動が「社会的責任」を果たしていることを強調して、タバコ産業が自らを善良な企業市民であるとみられるよう描き出そうとする傾向が強まっている。
26. 地域社会、健康推進、福祉、環境保護などの団体に直接あるいは別のルートを通じて、資金援助や現物支給の援助を行っているタバコ会社もある。このような寄付行為は、本条約第1条g項のタバコ産業によるスポンサー行為に該当する。したがって、このような寄付行為は、タバコ製品とタバコ使用を直接的あるいは間接的に促進奨励するという目的、効果あるいはそれらをもたらすおそれがあるがゆえに、包括的禁止措置の一環として禁止されるべきである。
27. タバコ会社は「社会的責任を果たす」企業活動(良好な労使関係や環境保護活動など)をやろうとしているようだが、他の分野には貢献活動をしようとしない。一般市民に「立派な」活動をやっていると宣伝することは、直接間接にタバコ製品やタバコ使用を推奨する目的、効果を意図してあるいはそのような期待のもとに行われるのであるから、禁止しなければならない。企業活動の年次報告書で触れたり、(採用活動や仕入れ先とのコミュニケーションなどの)企業管理上必要な場合以外に、一般市民にそのような情報を広めることも禁止しなければならない。
28. タバコ産業が行う「未成年者喫煙防止キャンペーン」などの市民教育キャンペーンは、タバコ産業以外の関係者が主催者の場合「寄付行為」と解釈され、タバコ産業主導で行われる時は企業宣伝そのものとなるから禁止しなければならない。
勧告
締約国はタバコ会社が「企業の社会的責任を果たすために」行ういかなる形態の寄付行為もスポンサー行為となるが故に、禁止すべきである。「社会的責任を果たす」ための企業活動を宣伝することは禁止すべきである。なぜなら、それそのものが宣伝、販売促進行為だからである。
29. タバコの宣伝販売促進、スポンサー活動を包括的に禁止する法律の実施をすると言っても、合法的な報道、芸術的、学術的意見表明、合法的な社会的あるいは政治的コメントを制限してはいけない。例えば背景に偶然にタバコ関連物が写りこんでいるとか、タバコ規制政策に関する歴史的特徴を論じたり、規制対策に対する見解を表明するなどである。しかしながらそのような場合にも、適切な警告や免責事項の呈示が必要であろう。
30. メディア報道、芸術表現、学術的表現、あるいは社会的政治的論評に、純粋なメディア報道、芸術、学術、社会的、あるいは政治的論評とは解釈しがたい、タバコの宣伝、販売促進、スポンサー行為に該当する内容が含まれる場合もある。このことは、たとえば、金を払ってタバコ製品を露出させるプロダクト・プレイスメントと言う手法によって、タバコ産業の営利上の理由で映像メディアにタバコ製品が描かれると言う事例において顕著にみられる。
勧告
タバコの宣伝、販売促進、スポンサー行為の包括的禁止措置の実施は、必ずしも報道、芸術、学術上、社会的政治的評論に関する表現の自由を阻害するものではない。しかし、締約国は、報道、芸術、学術、社会的政治的評論をタバコ製品とタバコ使用の宣伝奨励に利用する企てを防止する対策を講ずる必要がある。
娯楽メディアにおけるタバコの描写
31. 映画、演劇、ゲームなど娯楽メディアの作品におけるタバコの描写は、とりわけ若者のタバコ使用に強い影響を与える。したがって、締約国は、以下の対策を講ずる必要がある。
娯楽メディアの作品が種類を問わずタバコ製品それ自体、あるいはその使用を連想させる表現を行う場合、その娯楽作品の製作、頒布、上演に携わる企業の責任ある幹部に、その表現と引き換えに、いかなる金品の受領、無料宣伝、無利子ローンの供与、タバコ製品、広告宣伝をはじめとした利益供与も受けていないことを誓わせる義務を課す仕組みを作ること。
いかなる娯楽メディア作品においても、それが作品全体であろうと一部であろうとにかかわらず、銘柄やブランドイメージのわかる形でタバコ製品を露出させることを禁止すること。
タバコ製品そのものあるいはその使用やイメージを描いた娯楽メディア作品の上映に先立って、規則で決められた反タバコ宣伝を行うことを義務付けること。
タバコ製品、使用、そのイメージの描写状態を考慮に入れた娯楽作品の評価分類システム(例えば、こどもの視聴制限のためのアダルトレイティングシステムのように)を作り、子供向けの娯楽メディアにタバコ製品、その使用、それを思わせる映像が出ないようにすること。
勧告
締約国は娯楽メディア作品におけるタバコの表現に関する特別な対策を実行すること。すなわち、タバコを描くことによる利益供与を受けていないことを証明させる、タバコのブランドやそれを連想させる表現を禁止する、上映の前の反タバコ広告義務化、タバコの表現を考慮した作品の格付け、分類システムを作ることなどである。
タバコ取引におけるコミュニケーション
32. タバコの宣伝、販売促進、スポンサー行為を禁止する目的は、タバコ取引内部のコミュニケーションを禁止しなくとも、実現できる。
33. タバコ取引の当事者間で行われるタバコ製品情報の伝達をタバコの宣伝、販売促進、スポンサー行為の包括的禁止の例外とする場合、その例外の内容を厳密に規定する必要がある。そのような情報へのアクセスできるのは、タバコの取引のためにそれが必要な担当者に限定しなければならない。
34. タバコ製造者が発行するニュースレターは、それがその企業の従業員、委託業者、仕入れ先などの営業関係者に限定して発行され頒布されるなら、タバコの宣伝、販売促進、スポンサー行為包括的禁止法から除外できる。
勧告
タバコの宣伝、販売促進、スポンサー行為包括禁止法の適用を免除されるのは、タバコ取引関係者間の情報交換に限定されることを厳密に規定し徹底させなければならない。
憲法規定から見た包括的禁止法
35. 憲法および憲法上の原則のために、本条約第13条の規定に従った包括的禁止法の制定に制
1 これらの語句は、第11条第1項aから引用した。その際、「色彩」という言葉を追加した。この言葉について作業部会は、タバコ製品の性質、健康影響や危険性について誤った印象を与える可能性があると認識している。
2 第11条第1項aと第11条に関するガイドライン草案を参照のこと。
約がある締約国は、この制約の範囲でできる限り包括的な規制措置を実施すべきである。すべての締約国には、「憲法上のあるいは憲法上の規定により」「それを実行する状況にない場合」を除き、包括的な禁止法を策定する義務がある。この義務は、「タバコの宣伝、販売促進、スポンサー行為の包括的禁止措置がタバコ製品の消費を減らすということを認識した」という文脈で、かつ、本条約の大目標である「現在と未来の世代をタバコ使用と受動喫煙の莫大な健康・社会・環境・経済被害から救うこと」(第3条)という観点に照らして解釈すべきである。
36. 憲法上の原則との調和法は各締約国の憲法体系によって決められると認識される。
条約第13条第4項と関連する義務
37. 本条約第13条第2項と3項に従い、締約国にはタバコの宣伝、販売促進、スポンサー行為の包括的禁止(もしくは憲法あるいは憲法上の原則の許す範囲で最大限包括的な規制対策)を実施する義務が課されている。タバコの宣伝、販売促進、スポンサー行為の中には、本条約第13条第2および3項で定められた義務を実行しない締約国において、規制を免れるものもありうる。さらに、包括的禁止法が実施されたのちでも、極めて限定された形での商業的情報伝達、推奨、活動が残る可能性もある。また、憲法上の規定により包括的な禁止法が実施できない締約国では、タバコの宣伝、販売促進、スポンサー行為のあるものが残存する可能性もある。
38. 禁止されていないタバコの宣伝、販売促進、スポンサー行為はすべて、第13条第4項が規定する要件を満たさなければならない。とりわけ、これらの要件には「タバコ製品の特徴、健康影響、排出煙の加害性に関して虚偽、誤解、誤導させ、あるいは誤った印象を形成させるやり方でタバコ製品すべての形のタバコの宣伝、販売促進、スポンサー行為を禁止すること」(第13条第4項a)、「健康をはじめとした健康警告メッセージをすべてのタバコ広告と、適切な場合、販売促進活動およびスポンサー行為に表示する義務を実行すること」(第13条第4項b)、そして「包括的禁止法が施行されていない場合、適切な政府当局に対してタバコ産業が広告、販売促進、スポンサー行為のために支出した費用を開示する義務を負わせること」(第13条第4項d)が含まれる。
39. 締約国は、直接的であろうとなかろうと、虚偽、誤解、誤導あるいは用語、記述子、トレードマーク、記章、マーケッティングイメージ、ロゴ、色彩、図形などの形象1を用いて、タバコ製品の特徴、健康影響、排出煙の加害性に関して虚偽、誤解、誤導させ、あるいは誤った印象を形成させるやり方でタバコ製品あるいはタバコ使用を推奨することを禁止しなければならない。このような禁止措置は、とりわけ、誤解と誤った印象を与える「低タール」「ライト」「ウルトラライト」「マイルド」「エクストラ」「ウルトラ」を意味する用語を使用することを禁止する必要がある。2
40. 締約国はすべてのタバコの宣伝、販売促進、スポンサー行為に、それらと同じ程度に目立つ有害警告表示等のメッセージを表示できるよう対策を講ずるべきである。表示を義務付ける有害
1 この項目は本条約の目的にかなう場合、タバコ産業に関する広範な情報を一般市民が知ることができるよう努める義務を規定した条約第12条cをサポートしている。
警告の内容は適切な行政当局が決定し、タバコ使用の健康影響、依存性、タバコ製品使用の停止ならびにその動機付けの促進を効果的に伝達するものにすべきである。その効果を最大限に発揮するためには、各締約国が条約第13条4項bの規定に従って表示を義務付けられている有害警告のメッセージの内容を第11条の規定で義務付けられたパッケージにおける警告文の内容に合致させることが求められる。
41. 締約国は、タバコ産業に対して、適切な行政当局に彼らの行っているすべての宣伝、販売促進、スポンサー行為活動の内容を開示させる義務を負わせるべきである。この開示は定期的にあるいは要請がある場合実行するよう法律で定めるべきである。また、総計と銘柄別に以下の情報を開示させるべきである。
宣伝、販売促進、スポンサー行為の種別、内容、形態、伝達メディア
宣伝、販売促進、スポンサー行為の実施範囲、回数
宣伝、販売促進、スポンサー行為に含まれるすべての分野の属性。宣伝と制作会社を含む
締約国を発信地とする国境を越えた宣伝、販売促進、スポンサー行為の場合、それらの情報を受け取る国および地域
宣伝、販売促進、スポンサー行為に要する資金と資源
42. 締約国は、商取引上の秘密を保護しながら、これらの情報を一般市民がたやすく入手できる手段を講ずるべきである(例えばインターネット)1。
43. 条約第13条第4項dに述べられた、禁止を免れているタバコの宣伝、販売促進、スポンサー行為のための支出開示をタバコ産業に義務付けることは、包括的禁止法が制定されていない締約国だけに適用されるものであるが、すべての締約国は、締約国に対して条約第13条第4項で規定された義務を越える対策を講ずることを促す第13条第5項の規定に従って、勧告された対策を施行することが必要である。タバコ産業にタバコの宣伝、販売促進、スポンサー行為費を開示させる義務を課すことにより、締約国は従来の禁止法の網をすり抜けている、あるいは、包括的禁止法に違反してタバコ産業が行っているすべての宣伝、販売促進、スポンサー行為をあぶりだすことのできる包括的禁止法を作ることが必要であるとの認識を深めることが容易となるからである。開示義務を課すと、タバコ産業がやろうと目論んでいるタバコの宣伝、販売促進、スポンサー行為を思いとどまるようになるという効果もある。
勧告
締約国は、禁止されていないすべてのタバコの宣伝、販売促進、スポンサー活動に関して条約第13条第4項に示された義務を実行すべきである。締約国は、虚偽、誤導、誤った印象をもたらす可能性のある手段を用いて行われるすべてのタバコ製品の販売促進活動を禁止し、有害警告などの適切な表示文やメッセージを義務付け、適切な行政当局にすべての宣伝、販売促進、スポンサー行為に使用した費用の開示することをタバコ産業に義務付けなければならない。
整合性
44. 国あるいは地域レベルの禁止法制定とその効果的な実施は全世界レベルでタバコの宣伝、販売促進、スポンサー行為包括的に禁止する実効性のある対策の要である。インターネット、映画、衛星放送などの現代メディアプラットフォームは容易に国境を越えて情報を広げる。そしてイベントのスポンサー行為など地域や国内の法律で規制されているさまざまな形態の宣伝、販売促進、スポンサー活動が、放送を通じて他の国々に盛大に振りまかれる。さらに、宣伝と販売促進活動は、衣料品やIT製品、出版物と抱き合わせで展開されることもあるため、これらの商品が国外に輸出されると、タバコ産業の宣伝活動も国外に輸出されることになる。
45. 国際的協調活動がなければ、国レベルの禁止法の有効性が失われてしまうことは明らかである。
自国の領域から発する国境を越える広告、販売促進およびスポンサー活動(国外向けコンテンツの国外流出問題)
46. 条約の第13条2項には、「締約国は、自国の憲法又は憲法上の原則に従い、あらゆるたばこの広告販売促進及び後援の包括的な禁止を行う。この包括的な禁止には、自国が利用し得る法的環境及び技術的手段に従うことを条件として、自国の領域から行われる国境を越える広告、販売促進及び後援の包括的な禁止を含める。」(外務省訳)と記載している。
47. 禁止措置の対象とするのは、例えば、自国領域内の住民向けか、他国の領域の住民向けかを問わず、自国の領域内で印刷、制作されたあらゆる出版物ならびに製品とすべきである。自国内を対象とし実際に使用されている出版物・製品と、外国を対象としそこで使われているものとを区別することは往々にして難しい。
48. 禁止措置は、国外向けであろうと国内向けであろうと、その国の領域内の個人または団体によって、インターネットまたは他の国境を越えるコミュニケーション技術メディアを用いて発信されるすべてのタバコの広告、販売促進、スポンサー活動に適用すべきである。
49. また、禁止措置は、他の国で受信可能なタバコの広告、販売促進またはスポンサー活動の放送を行う個人または団体にも適用するべきである。
50. 自国の領域内から発する広告、販売促進、スポンサー活動の包括的禁止措置は、自国民−自然人あるいは法人−が、それが自国へ再輸入されるものであろうとなかろうと、他の国の領域内で広告、販売促進、スポンサー活動に従事することを禁止するよう策定する必要がある。
自国領域内へ入ってくる国境を越える広告、販売促進、スポンサー活動
51. 第13条7項は、「特定の形態のたばこの広告、販売促進及び後援を禁止している締約国は、自国の国内法に従い、自国の領域に入る当該形態の国境を越えるたばこの広告、販売促進及び後援を禁止する主権的権利並びに自国の領域における国内の広告、販売促進及び後援に
1 締約国は、ある状況においては、自国民でない者に対しても禁止法を執行する可能性がある。他の締約国の国民に対してどのように対応するかは、国境を越えた宣伝、販売促進、スポンサー行為に関する対応手順書の予定テーマの一つとなるだろう。
ついて適用する制裁と同等の制裁を科する主権的権利を有する。この7の規定は、いかなる制裁をも科することができることを認め又は承認するものではない。」(外務省訳)と述べている。
52. 禁止措置の施行の対象とするのは、例えば、他国で作製されて当該締約国に流入した、あるいは当該締約国の住民に向けて他国で作製された出版物あるいは印刷物とすべきである。締約国は印刷された出版物の輸入品の抜き取り調査を実施することを考慮すべきである。もしそのような出版物が自国内の国民または団体によって印刷、出版、頒布されていれば、その者の責任を問い、禁止措置を出来るだけ完璧に施行するべきである1。また禁止措置は、自国の領域内の住民に向けられている物であろうとなかろうと、自国内でアクセスが可能なインターネット上の、あるいはそれ以外の、放送その他の方法で自国内で受信されるあらゆるオーデイオ、ビジュアル、オーデイオビジュアルコンテンツに適用されるべきである。
勧告
タバコの広告、販売促進、スポンサー活動を包括的に禁止あるいは規制する締約国は、自国領内から発する国境を越えるタバコの広告、販売促進、スポンサー活動が、国内のタバコの広告、販売促進、スポンサー活動と同じ方法で禁止すなわち規制されるように図るべきである。締約国は、それぞれの主権を行使して、規制を行っている締約国からであろうと、非締約国からであろうと、自国領域内に流入してくるいかなる国境を越えるタバコの広告、販売促進、スポンサー活動も制限、予防するために効果的な行動を取るべきであり、場合によっては効果的ないろいろな行動を、手順書として示す必要もあることを認識しておくべきである。
責任を負うべき者
53. 責任を負うべき者とは、マーケテイングを担当するチェーン全体を対象として、幅広く定義されるべきである。タバコの広告、販売促進、スポンサー活動を開始した者に最大の責任があることを明記すべきである。すなわち、通常はタバコ製造者、卸売り業者、輸入業者、小売業者およびそれらの代理業者、提携者がそれに当たる。
54. さらには、タバコの広告、販売促進、スポンサー活動に関わる多くの関係者にも責任があることを明記すべきである。
55. あらゆる者に対して同じように責任があるとすることは出来ない。タバコの広告、販売促進、スポンサー活動の制作、実行、流布への関与の程度がそれぞれに異なるからである。タバコのスポンサー活動の場合は、責任を負うべきは、目的に沿った形の拠出(資金提供)を行う者、その目的に沿った形の拠出を受け取る者、そして目的に沿った形の拠出の企画、受け取りを工作する仲介者である。タバコの広告、販売促進、スポンサー活動にコミュニケーションが含まれている場合には、負うべき責任は、コミュニケーションのコンテンツの制作と宣伝において彼等の果
たす役割とそれをコントロールする可能性の程度によって決まる。宣伝を受け持つ者は、自身で広告と販売促進のコンテンツを知り、もしくは知り得る立ち場にあった場合に、責任があるとされるべきである。これは、どのような媒体すなわちコミュニケーション技術を使おうとも当てはまることであるが、特に、インターネットと直接衛星放送におけるコンテンツをコントロールすることについて当てはまることである。
56. あらゆる形式のメデイアとコミュニケーションに関連して:
コンテンツを制作、出版する個人または団体(例: 広告代理店、デザイナー、新聞その他の印刷物の発行者、放送会社と、映画、テレビ、放送番組、ゲームやライブ公演の製作者、そしてインターネット、携帯電話、衛星電話用のゲームコンテンツの制作者)が、タバコの広告、販売促進、スポンサー活動をコンテンツの中へ挿入することは禁止さるべきである。
メデイア、イベント主催者、スポーツ界のスター選手、映画スターおよび他の分野のアーテイストといった個人と団体が、タバコの広告、販売促進、スポンサー活動に従事することは禁止されなければならない。
アナログあるいはデジタルのメデイア、コミュニケーション(ソーシャル・ネットワークのサイト、インターネットサービス・プロバイダーおよび電気通信業者)に従事する者には、タバコの広告、販売促進、スポンサー活動が行われているとの通告を受け場合、特別な義務(コンテンツを削除したりアクセスを出来なくするなど)が課せられるべきである。
法人の場合には、その責任は通常個人ではなく事業体に帰すべきものと解釈すべきである。
57. 包括的禁止措置に違反して締結されたタバコの広告、販売促進、スポンサー活動に関する契約、協定、取り決めは、無効であるとすべきである。
58. 例えばインターネットに関しては、禁止措置もしくは特別な規制を課すべき責任を負う事業体には、主として5つのカテゴリーがある。
コンテンツのプロデユーサーはコンテンツを直接間接に制作する。この中には、タバコ会社、広告代理店、テレビ番組、映画、オンラインで配信されるゲームのプロデユーサーが含まれる。コンテンツのプロデユーサーは、自分の制作するコンテンツの中に、タバコの広告、販売促進、スポンサー活動を挿入することを禁じられるべきである。
コンテンツの発行者とは、インターネット・ユーザーに届く前にコンテンツの選択をする出版社、団体(例:新聞社や放送会社のウエブサイト)である。コンテンツの発行者は、提供するコンテンツの中へ、タバコの広告、販売促進、スポンサー活動を挿入することを禁止されるべきである。
コンテンツ・ホストとは、インターネットに接続したコンピュータのサーバーを管理し、コンテンツを保有している者で、ユーザーに対して提供する前にコンテンツの選別を行わない事業主(インターネットのソーシャルネットワークのサイトのようなもの)も含まれる。コンテンツ・ホストは、一旦そのコンテンツについての違反通告を受け取ったならば、タバコの広告、
販売促進、スポンサー活動を削除しまたはアクセスを無効にする義務を課せられるべきである。
􀂾 コンテンツ・ナビゲータとは、インターネット・サーチエンジンをはじめとした、コミュニケーションサービス利用者のコンテンツ探しを援助する事業を行う者である。タバコの宣伝、販売促進、スポンサー行為に当たるコンテンツが存在することを通知された場合、コンテンツ・ナビゲータはそれらにアクセスできないように対策を講ずる義務を課す必要がある。
􀂾 アクセスプロバイダーとは、インターネットプロバイダーや携帯電話会社などのような、末端のユーザーに通信サービスへのアクセスを提供する事業主である。アクセスプロバイダーは、一旦そのコンテンツについての違反通告を受け取ったら、タバコの広告、販売促進、スポンサー活動へのアクセスを無効にする義務を課せられるべきである。
59. 締約国は、コンテンツプロデューサー、コンテンツ発行者、コンテンツ・ホストに対する義務とは違い、コンテンツナビゲーターやアクセスプロバイダーに対しては、技術的に可能かどうかを見極めつつ、アクセスを無効とする相当の努力を払うように義務を限定しても良い。
勧告
タバコの広告、販売促進、スポンサー活動に対する責任を負う事業体は、幅広く定義しておくべきであり、責任を課せられる程度はその果たす役割に応じて定められるべきである。
�. 第一義的責任はタバコの広告、販売促進、スポンサー活動を手がける者、通常はタバコ製造者、卸売り業者、輸入業者、小売業者およびそれらの代理業者、提携者にある。
�. メデイアコンテンツを制作、発行する個人または事業体は、その制作、発行するコンテンツの中にタバコの広告、販売促進、スポンサー活動を挿入することを禁止されるべきである。
�. 個人または事業体(イベントの主催者、スポーツのスター選手や有名人)は、タバコの広告、販売促進、スポンサー活動を行うことを禁止されるべきである。
�. その他のアナログ、デジタルのメデイアにたずさわる事業体には、タバコの広告、販売促進、スポンサー活動についての違反通告を受け取った場合、特別な規制(コンテントの削除など)を実行する義務を課すべきである。
タバコの広告、販売促進、スポンサー活動に関する国内法の施行
罰則
60. 締約国は、(罰金、訂正広告による修正、免許の中断もしくは取り消しなど)の効果的で、均衡が取れていて、且つ抑止効果のある罰則を導入し適用するべきである。課せられた罰則に抑止力を持たせるためには、罰則は段階をつけ、違反の内容と初犯などその重大さに見合ったものとし、タバコの広告、販売促進、スポンサー活動から得られると予測される経済的利得を上回るものでなくてはならない。
61. 再犯者の違反は、製造者または責任者に対して、きわめて重大な罰を受けるものとすべきである。頻繁な、また目に余る違反行為の場合は、さらに厳しく収監も含めた制裁を課すべきである。制裁措置には、違反行為を、下記の例の如くに是正する義務も含めるべきである。
�. 広告、販売促進、スポンサー活動の削除;
�. 裁判所が定める方法により、裁判所が定める当事者の費用負担により、その裁判決定の公開;
�. 訂正広告、あるいは逆広告への費用負担。
62. 罰則は個人に対してだけでなく事業体の行為に対しても適用されるべきである。(国の領域外で行われるが、その影響が国内に及ぶような関係事業体の行為に対して責任を負うべき事業体も含む)。その事業体の経営者、重役、役員あるいは法定代理人がその事業体の不法行為の実行責任者である場合は、それら個人も罰則の対象とすべきである。
63. タバコ製造者、卸売業者、輸入業者、小売業者への営業免許制度は、タバコの広告、販売促進、スポンサー活動の規制を有効に行う方法になり得る。免許申請者が法的必要事項のコンプライアンス(遵守)を誓う場合に限り免許が発行あるいは更新される。順守義務違反があれば、免許の一時取り上げ、または取り消しが出来る。放送会社の様に、直接にタバコの製造や販売に関わらないがタバコ宣伝の問題に関する責任の事業体に対しては、営業免許の必要な事業体であれば、タバコの広告、販売促進、スポンサー活動についての条項へのコンプライアンスを、免許の許可、更新、中断、取り消しの条件に含めるべきである。
64. もし抑止的制裁措置があれば、執行当局は裁判所の手続きを踏まなくとも、違法行為を終わらせることができるであろう。(通告、面談、警告、行政処分、定期的な罰金徴収などによる)
モニタリング、施行、司法制度の利用
65. 締約国は、適任な独立機関を指名して法律執行状況のチェックにあたらせるべきであり、必要な権限と資源をそこへ与えるべきである。その機関は、苦情を調査し、不法な広告や販売促進を差し止め、苦情に対して公式見解を述べ、適切な法的処置に進むべきである。
66. 市民社会と市民が禁止措置のモニタリングと施行に参加するよう対策を講ずる必要がある。市民社会、とりわけ公衆衛生、医療、予防、青少年保護、消費者団体などが、厳しい監視を行うことが期待される。また法令には一般市民が苦情の申し立てを出来ることを明文化しておくべきである。
1 「教育、情報の伝達、訓練及び啓発」
67. また、民事的にタバコの広告、販売促進、スポンサー活動に異議を唱えられるようにするべきである。国内法令によって、利害関係のある個人または非政府組織が、タバコの広告、販売促進、スポンサー活動に異議を唱える法的措置を講じることを可能にしておくべきである。
68. 施行のためのプログラムには、通話無料の苦情ホットライン、インターネットのウエブサイトなど一般人が違反を通告することを奨励するようなシステムが含まれよう。
勧告
締約国は、違反の重大さに見合う抑止効果のある罰則制度を導入すべきである。締約国は、適任で独立した機関を指名して、査察と施行に当たらせ、必要な権限と資源をそこへ与えるべきである。市民社会は禁止措置の査察と執行に参加し、司法制度を容易に利用できるようすべきである。
市民教育と地域社会の啓発
69. 条約の第12条1の精神に鑑み、締約国はタバコの広告、販売促進、スポンサー活動問題についての一般市民の啓発を、あらゆる利用可能なコミュニケーション手段を駆使して、社会のあらゆるセクターで推進し強めていくべきである。締結国は、特に一般市民に包括的禁止措置の重要性を示し、その必要性を啓発し、タバコの広告・販売促進・スポンサー活動を許容できない理由を説明する効果的で包括的な啓発教育プログラムに広くアクセスできるよう適切な措置を取るべきである。
70. タバコの広告、販売促進、スポンサー活動に対してのコンプライアンスを監視し、違反行為を報告するために地域共同体の支援を得ることは、禁止法施行の重要な一部をなしている。その共同体の一員がこの役割を担うには、各人がこの問題を意識し法令を理解し、違反行為に対してはどう対処すべきかを理解するようにしておくべきである。
71. 締約国は、一般大衆への啓発と意識喚起プログラムを実施し、タバコの広告、販売促進、スポンサー活動についての現行の法律、広告、販売促進、スポンサー活動について関係機関に違反を通告するために取るべき方法、法律に違反してタバコの広告、販売促進、スポンサー活動を行う者に対して取るべき方法について、地域住民への周知をはかるべきである。
勧告
締約国は、社会のあらゆるセクターにおいて、タバコの広告、販売促進、スポンサー活動を排除することの必要性、それに対する法令、そしてその法令の違反に接したらどういう行動を取ればよいかについての意識を喚起し、高めるべきである。
国際協力
72. タバコの広告、販売促進、スポンサー活動を排除する努力の有効性は、各国の活動だけでなく、タバコの広告、販売促進、スポンサー活動の対策における締約諸国同士の協力の程度にかかっている。効果的な国際協力は、国内国際両面におけるタバコの広告、販売促進、スポンサー活動の排除に不可欠となろう。
73. 条約の締結国は、国際協力に関しては、すでに第13条6項(締約国は、国境を越えて行われる広告の廃止を促進するために必要な技術及び他の手段の開発に関する協力)、第19条(責任)、特に第20条(研究、監視および情報の交換)、特に第20条4項(国内法に従い、この条約に関連する科学的、技術的、社会経済的、商業的及び法的な情報並びにたばこ産業及びたばこの栽培の業務に関する入手可能な情報の交流促進):第21条(報告及び情報の交換)、第22条(科学的、技術的及び法的な分野における協力ならびに関連する専門知識の提供)および第26条(資金)などにより責務が規定されている。
74. このガイトラインの勧告に加えて、作業部会では国境を越える広告、販売促進、スポンサー活動(付属文書3を参照)の排除に寄与する他の手法について、締約国会議に対して勧告を行う。勧告は締約諸国間の情報交換や他の協力について行われる。締約国会議が、国境を越える広告、販売促進、スポンサー活動に関する締約諸国間の協力のために策定された付属文書3に概略されているような手段を確定することを決定したならば、作業部会はそのような手段を、締約国自身が国境を越えるタバコの広告、販売促進、スポンサー活動だけでなく、あらゆるタバコの広告、販売促進、スポンサー活動に関しての情報、経験と知識を共有することにより利益を得ることを認識した上で、国内向けのタバコの広告、販売促進、スポンサー活動に対しても適用することの利点に考慮を払うべきことを推奨する。
追加書
条約の条文の範囲内での、タバコの広告、販売促進、スポンサー活動の一覧表(すべてを網羅するものではない)
(ア) オーデイオ、ビジュアル、またはオーデイオビジュアルの手段によるコミュニケーション:印刷(新聞、雑誌、パンフレット、小冊子、ビラ、手紙、看板、ポスター、サインを含む)、テレビ、ラジオ(地上波放送、衛星放送を含む)、映画、DVD、ビデオ、CD、ゲーム(コンピューターゲーム、ビデオゲーム、オンラインゲームを含む)、及び他のデジタルコミュニケーションプラットホーム(インターネット、携帯電話を含む)、劇場などのライブ公演。
(イ) 娯楽施設および小売店において、また乗り物および設備を利用したブランド売り込み表示(例としてはブランドを表わすカラー、色の組み合わせ、ロゴ、トレードマークなど)。
(ウ) 店頭におけるタバコ製品の陳列。
(エ) タバコ製品の自動販売機。
(オ) インターネットを利用したタバコ製品の販売。
(カ) ブランド拡張及びブランド共有(製品多様化。22,23参照)。
(キ) 製品呈示(プロダクト・プレイスメント:金銭授与などの優遇措置を得て、その代償としてタバコ製品またはトレードマークを情報伝達(上記参照)の流れの中で挿入したり言及したりすること)。
(ク) タバコ製品の購入に伴う贈呈品または製品の価格割引の供与(例としては、キーホルダー、Tシャツ、野球帽、タバコのライターなど)。
(ケ) 市場調査、試用などと組み合わせたタバコ製品の無料供与。
(コ) おまけつき販売促進または顧客抱き込み商法(例えばタバコ製品の購入に伴う払い戻しクーポン券など。
(サ) タバコ製品の購入を必要とするとしないにかかわらず、タバコ製品やブランド名に関係付けたコンペ。
(シ) ダイレクトメール、電話勧誘、「消費者調査」または「研究調査」などのような販売促進資料(情報も含む)を使って個人客を獲得すること。
(ス) 割引製品の販売促進。
(セ) タバコ製品に似せたおもちゃ、菓子の販売または供与。
(ソ) 小売成績の向上を誘導するための(たとえば売上目標を達成したなら割戻をするなど)小売店に対する現金などの利益供与。
(タ) 製品の包装、製品デザイン上の凝った趣向。
(チ) 小売店、催し会場、イベント会場における、特定の製品または特定の製造会社の製品を独占的に販売することの代償としての金銭授与または優遇措置、あるいはある製品を際立たせる陳列
(ツ) 教育施設、接待、スポーツ、芸能、音楽、ダンス、社交のための会場またはイベントにおいて、製品を販売、試供、呈示、陳列すること。
(テ) 企業による社会貢献活動を含めたイベント、活動、個人、団体(スポーツ、芸術イベント、個人スポーツ競技の選手またはチーム、個人の芸能人あるいはグループ、福祉団体、政治家、政治家の志願者または政党)に対して資金提供その他の支援をすること。見返りとしての宣伝活動の有無は問わない。
(ト) タバコ製品の販売と使用促進を目的とした新築、改装あるいはひさしや日除けの設置の見返りとして、タバコ産業がパブ、クラブその他の娯楽場などの店の経営者への金銭等の支援を与えること。
1 document A/FCTC/COP/2/10の第21段落参照
2 同上第17〜21段落参照。
3 同上第22〜26段落参照。
4 同上第27〜28段落参照。
付属文書 2
国境を越える広告、販売促進、スポンサー活動についての手順書の重要部分についての勧告
�. 締結国会議の要請を受けて、国境を越えるタバコの広告、販売促進、スポンサー活動についての専門家グループにより締約国会議の第二回会合で提出された報告書を勘案し、作業部会は以下の勧告を行う。
�. 締約国会議が、現時点あるいは将来のある時点で、タバコの広告、販売促進、スポンサー活動についての手順書作成への折衝に着手することを決定するならば、その折衝の範囲を決定する締約国会議の権利を侵害することなく、そのような手順書に含まれるのが妥当と考えられる以下の領域に考慮が払われるべきことを勧告する。
�. 国境を越えるタバコの広告、販売促進、スポンサー活動に関連する通告書と返答についての手続き。それには通告書の受領確認を行い、調査のための手段を講じ、通告をした当事者に返答をすることの義務を含める。1
�. 起こりうる法律違反の捜査と、法執行への法的手続きの実行に関しての関係国法執行機関の間の協力。それには情報交換、家宅捜索、証拠文書捜索、証拠物件押収などが含まれる。(文書の呈示と証人尋問)2
�. 複数の締約国の機関が同一の行為に対して同一人格を相手取って法的措置に出ること、あるいは反対に、他の締約国の機関が法的措置を取るものと思い込み、法的措置に出る者がいないという不測の事態に対処するために、国境を越えたタバコの広告、販売促進、スポンサー活動に関する司法権の行使をすること。3
・ 締約国が、自国の領域内に居住せず領域内に資産を持たない人格に対して裁定が他国から下される可能性があることを認め、他国による裁定の承認と執行を行うこと。4
1 Decision FCTC/COP1(14), contained in document A/FCTC/COP/1/DIV/8.
付属文書 3
国境を越えたタバコの広告、販売促進、スポンサー活動の排除に寄与すると考えられる手段についての勧告
�. 作業部会は、その審議の段階で、国内及び国境を越えるにタバコの広告、販売促進、スポンサー活動の排除には国際協力が不可欠であることが分かった。作業部会は、締結国会議により、タバコの広告、販売促進、スポンサー活動の排除に寄与するであろう他の手段を案出する任を受けた。以下にその手段を記す。
勧告
�. 作業部会は、タバコの広告、販売促進、スポンサー活動を排除する取り組みの効果は、個々の国によって行われる活動だけでなく、締約諸国がタバコの広告、販売促進、スポンサー活動対策にどの程度まで協力し合えるかにかかっていること、また、条約の締結国は、国際協力に関してはすでに第13条6項(締約国は、国境を越えて行われる広告の廃止を促進するために必要な技術及び他の手段の開発について協力する)、第19条(責任)、特に第20条(研究、監視および情報の交換)、特に第20条4項(締約国は、国内法に従い、この条約に関連する科学的、技術的、社会経済的、商業的及び法的な情報並びにたばこ産業及びたばこの栽培の業務に関する情報であって公に入手可能なものの交換を促進し及び容易にする)、第21条(報告及び情報の交換)、第22条(科学的、技術的及び法的な分野における協力並びに関連する専門知識の提供)および第26条(資金)などにより責務を負っていることを考慮して、以下の如く勧告する。
�. 締約国会議が採択すべき報告書の第13条に関する質問は:1
�. 締約会議の第3回会合で採択予定の第13条のガイドラインの条文を反映するように修正すべきこと、
�. 以下の質問を含めるように修正すべきである:「貴国の憲法または憲法上の原則は、あらゆるタバコの広告、販売促進、スポンサー活動の包括的禁止措置を実施することを禁止していますか?もしそうであれば、詳しく説明してください。」及び、
�. 「任意の質問」から「重点質問」に変えるべきである。
�. ウエブサイトを立ち上げて国境を越える広告、販売促進、スポンサー活動についての知識の中核となし、国境を越える広告、販売促進、スポンサー活動の事例を通告する手段として活用できるようにはかり、関連のある資料を常時そのサイトに更新すべきである。このウエブサイトは、個人情報とビジネス上の機密の保護をすると同時に:
(i) 締約国のみがアクセスできるセクションを設けて、次のようなものを備えておく、
(a) 締約国の最新のコンタクト先、
(b) 関連事項に関して技術的な支援と指導のできる専門家の名簿、
(c) 締約国あるいは条約事務局によりもたらされ、締約国同士のみで持ち合うべき他の情報。
(ii) 締約国とオブザーバーがアクセスできるセクションを設け、次のようなものを備えておく:
(a) 国際的な広告、販売促進、スポンサー活動の実例を報告する場所、
(b) 締約国あるいは条約事務局から提供される情報で、締約国あるいはオブザーバーにのみ受け取られ、一般には公開されない情報、
(iii) 一般に公開されるセクションを設けて、次のようなものを備えておく:
(a) 締約国あるいは事務局から提供され一般にも公開される情報、
(b) 国境を越えるタバコの広告、販売促進、スポンサー活動の影響力の証拠とタバコの広告、販売促進、スポンサー活動の禁止措置の有効性、および、
(c) 他の関連のある団体のリンク集。
�. 締約国は個人情報とビジネス上の機密を保護しつつ:
�. タバコの広告、販売促進、スポンサー活動に関することについての自国への連絡先(コンタクト)を条約事務局へ明らかにして、変更があれば詳しく事務局へ通知すること、
�. 他の締約国から、自国の領内から発信され、または発信されたと見られる国境を越えるタバコの広告、販売促進、スポンサー活動について通告を受けた場合には、通告の受領確認を行い、しかるべき期間内に、それに対する調査その他の通告に対して取った行動について、通告を行った当事者へ通知する、
�. ウェブサイトを活用して関連のある情報を他の締約国、もし適切であれば以下のオブザーバーと一般市民にも、特に以下の件について知らせる:
�. 国境を越えるタバコの広告、販売促進、スポンサー活動の制作、呈示、流布について責任のある個人または団体、
�. 国境を越えるタバコの広告、販売促進、スポンサー活動の新しく生み出されて来る手法や形式、
�. 技術の進歩内容、
�. 国境を越えるタバコの広告、販売促進、スポンサー活動への対処から得られた教訓、
�. 必要とされる研究とそれの募集情報、
�. 法令とそれらへのリンク、
�. 法令違反あるいは違反の容疑とその通告または苦情申し立ての出所、
�. 適切な場合には、現在進行中の捜索あるいは法執行行動、
�. 適切な場合には、捜索あるいは法執行行動の結果、
�. 法理念、その法理念へのリンク集をふくめて、
�. 実施予定のあるいは実施済みの教育、研修、一般向け啓発プログラム、
�. 事務局に対して、政府関係者あるいは非政府関係者で、これに関連する事項について締約国に技術的支援を提供することの出来る専門家を知らせること。
�. 締約国会議が決定する方法で、以下の作業を国際レベルで行うこと:
�. 国境を越えるタバコの広告、販売促進、スポンサー活動の事例の通告を、その事例が領域内で発生しつつある、あるいは発生したと思われる締約国の連絡先へ伝達すること、
�. 事務局に対して、政府関係者あるいは非政府関係者で、これに関連する事項について締約国に技術的支援を提供することの出来る専門家を知らせること、
�. 国境を越えるタバコの広告、販売促進、スポンサー活動に関して、締約国へ技術的支援を提供することをやり易くするように図る、
�. 国境を越えるタバコの広告、販売促進、スポンサー活動に関しての研究の必要の評価と、この必要を締約国、研究費の資金提供団体と関心を有する研究者へ伝えること、
�. 第13条の施行に当たって関係のある国際的、地域内の政府間の団体及び非政府団体との連絡、
�. 国境を越えるタバコの広告、販売促進、スポンサー活動の排除に役立つ新しい技術の発見のための締約国の取り組みをコーデイネートすること;
�. 国境を越えるタバコの広告、販売促進、スポンサー活動に関する事柄についての、一般への啓蒙推進、
�. 第13条の施行に関する締約国の進行状況について定期的な報告書を作成すること、それには第13条の見直しすなわち修正なども含む、
�. 国境を越えるタバコの広告、販売促進、スポンサー活動に関する国際協力を容易にするために設立する取り決めの実効性および、その取り決めの実効性を高める方法についての定期的な報告書を作成すること。
�. 締約国会議にオブザーバーを招いて、国境を越えるタバコの広告、販売促進、スポンサー活動に関して条約事務局へ関連のある情報を提供することとする。それには以下を含む:
�. 国境を越えるタバコの広告、販売促進、スポンサー活動の制作、呈示、流布に責任のある個人、あるいは団体、
�. 技術の進化、
�. 必要とされる研究と募集情報、
�. 実施予定または実施した教育、研修、啓蒙プログラム。
�. 条約事務局は、発展途上国および市場経済移行国には特殊なニーズがあることに考慮を払いつつ締約国が)2)(3)(4)に言及したような取り決め事項にアクセスを実現するのに役立ちそうな機構を調べて関連のある情報を締約各国へ伝えるべきこと;
�. 国境を越えるタバコの広告、販売促進、スポンサー活動に関しての専門家集団を設立して、以下の機能を果たすように定めること;
�. 締約国会議を、国境を越えるタバコの広告、販売促進、スポンサー活動の技術発展について最新の情報を持ち、国境を越えるタバコの広告、販売促進、スポンサー活動に対する最適の対応が出来るような状態に保つこと、
�. 第13条の施行についてのガイドラインと、国境を越えるタバコの広告、販売促進、スポンサー活動に関して、国際協力のために設立される取り決め事項を査察し、内容の見直しを行うこと、
�. 事務局を通じて、締約国会議にその機能の発揮状態についての報告を行うこと。
以上