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日本母乳の会への日本禁煙学会の要望
日本母乳の会から回答を頂きました
2008年(平成20年)9月5日
〒165-0026 東京都中野区新井3-9-4
日本母乳の会
運営委員長 山内芳忠様
事務局長  永山美千子様

NPO法人 日本禁煙学会
理事長 作田 学
http://www.nosmoke55.jp/
〒162-0063 東京都新宿区市谷薬王寺町30-5-201

要望書

「赤ちゃんにやさしい病院」認定におかれましては、「敷地内禁煙であること」「母親の喫煙率0%を目標に禁煙支援をしていること」など、是非とも禁煙推進を重要な認定項目に設定していただきたいと思います。


1.母親喫煙が乳汁分泌を阻害する大きな要因であるという強いエビデンスは今のところ明らかではありません。
2.しかし母子関係を良好にする視点から、喫煙を授乳中断の口実にしないよう、喫煙母を教育する必要はあります。
3.母乳保育の医学的利益のほとんどは母親の喫煙で帳消しになります。
4.ですから、母乳保育の効果が十分に発揮されるようにするためにも、妊娠前からの若いカップルの禁煙勧奨に力を入れる必要があります。
5.母乳保育を進める運動にとっても、「好きな人が出来たら禁煙!」の呼びかけを行う価値があると思います。

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 私たちの学会は、広く国民を対象に、タバコ規制、Tobacco controlに必要な科学的知識・技術の発展と普及に資することで、社会全体としての健康保持に寄与したいと思い活動いたしておりますNPO法人です。まず、 “一人でも多くの母子に母乳で育てられる幸せ“をモットーに多くの母親と子供たち、医療者のために素晴らしい活動をされている貴会に敬意を表させていただきます。

 ご承知とはぞんじますが、喫煙母親の母乳には血中濃度以上のニコチンが含まれております。その母乳を飲むことにより赤ちゃんの正常な発育を妨げることが分かっております。母乳をただ与えるだけでなく、ニコチンの含まれないきれいな母乳を与えることも重要では無いでしょうか?そのためには、母親の禁煙は必須であります。また、母乳以外でも、母親や家族の喫煙は赤ちゃんにいろいろな悪影響を及ぼすことは周知の事実であります。とくにSIDSは、親の喫煙、人工栄養、うつ伏せ寝によってそれぞれリスクが3〜5倍になると言われています。ですから、母乳栄養、無煙環境がとても重要になります。

 さて、貴会におかれましては、WHO・ユニセフが提唱する「母乳育児を成功させるための10か条」を長期にわたって遵守する産科施設を「赤ちゃんにやさしい病院(Baby Friendly Hospital)」に認定されております。大変素晴らしいことだと思いますが、認定施設の中には、禁煙推進に積極的でない施設が含まれているように思われ、残念でなりません。

 近年、若年女性の喫煙率が上昇しているという悲しい現実があり、中でも妊婦や母親の喫煙が非常に重要な問題になってきております。まず、医療機関がきちんとした禁煙推進を母親をはじめ若年女性に行うべきであり、そのためには禁煙推進が重要課題であることを医療機関自身に認識してもらうことが重要であります。病院機能評価でも、禁煙推進は重要な課題項目になっております。

 とくに授乳する母親の禁煙治療では、ニコチンパッチやニコチンガムは禁忌とされ、チャンピックスは厳重な使用制限がありますので、該当施設にはより高いレベルの禁煙支援態勢が必要です。

 わたしたちは、以前に「厚生労働省が「授乳・離乳支援ガイド」のパブリックコメント/ニコチンを含まない母乳が大切
http://muen2.cool.ne.jp/jyoho/jyoho.cgi?log=&v=55&e=msg&lp=55&st=20
で意見を申しあげたことがありました。

 貴会の「赤ちゃんにやさしい病院」認定におかれましても、「敷地内禁煙であること」「母親の喫煙率0%を目標に禁煙支援をしていること」など、是非とも禁煙推進を重要な認定項目に設定していただきたいと思いお願い申し上げる次第です。ご検討の程よろしくお願い申し上げます。








日本母乳の会からの回答
2009年(平成21年)1月30日


NPO法人 日本禁煙学会
理事長 作田 学殿

日本母乳の会
運営委員長 山内芳忠
165-0026東京都中野区新井3-9-4
Tel 03-5317-7833 FAX03-5318-7384

 貴会におかれましては益々ご清栄のことと存じます。

 貴会より日本母乳の会へ2008年9月5日付の要望書を受け取りました。2008年11月の運営委員会において討議、検討いたしましたので、その内容をお知らせいたします。
 日本母乳の会は「1人でも多くの母子が母乳で育てられる幸せを」を趣旨として、妊娠・出産・授乳・育児を通して母子を支援する活動を行っています。当然のことながら、喫煙による母子への健康の影響を看過することなく、禁煙指導にも取り組んでおります。
 会員の施設では妊娠中からの喫煙がいかに胎児に影響を及ぼすか、また、喫煙は母乳の分泌を抑制すること、家庭内の副流煙の子どもに及ぼす影響についても母親学級で指導もしており、当会主催のシンポジウムでもテーマにしています。貴会
の禁煙運動の趣旨は充分に理解しております。
 貴会の要望書はWHO・ユニセフ認定の「赤ちゃんにやさしい病院・Baby Friendly Hospital」に敷地内禁煙を認定項目とするようにという内容の要望ですが、この認定はWHO・ユニセフの全世界の参加施設への共同勧告である「母乳育児成功のための10ヵ条」を遵守していることがその要件です。母子の健康をとりまく要件はたくさんありますが、この10ヵ条を実践することが各施設における母乳育児への取り組みを確実にすることができるという内容を具体的に示したものです。禁煙運動の重要性は前述のとおり当会でも強く認識し、すすめておりますが、「母乳育児成功のための10ヵ条」の意図するものとは若干範疇が異なると考えます。
 そして、日本母乳の会はユニセフ東京事務所から日本国内の「赤ちゃんにやさしい病院」の認定業務を委嘱されております。また、「赤ちゃんにやさしい病院・Baby Friendly Hospital」は世界共通の固有名詞であることをご理解いただきたいと存じます。
 日本母乳の会は母子、家族の健康を守り、健全な社会を育むために努力をしてまいります。今後ともよろしくお願い申し上げます。