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「タバコ1箱1000円以上に値上げ」を支持します(声明) |
2008年(平成20年)6月23日 |
「タバコ1箱1000円以上に値上げ」を支持します
−日本禁煙学会の声明−
NPO法人 日本禁煙学会
理事長 作田 学
162-0063 東京都新宿区市谷薬王寺町30-5-201
FAX 03-5360-6736
http://www.nosmoke55.jp/
私たちは、国民の健康と命を守るため、とりわけ若い世代の喫煙開始と継続防止のためにタバコ税の大幅増税により、タバコの小売価格を2010年までに欧米先進国並みの1箱1000円程度に上げることを支持し、要請します。
記
1.日本では、喫煙により年間11万3千人(肺がん5万5千人など)、更にその受動喫煙によって年間2〜3万人が死亡していると推計されています。WHOや世界銀行は、20世紀にはすでに1億人がタバコによって死亡し、21世紀中にはさらに10億人がタバコによって殺されると警告をしています。タバコが予防可能な疾病や早死の最大の単一因子であることが明らかになっています。
2.タバコ増税は、現在タバコを吸っている人を禁煙に導く最も効果的な対策の一つであり、世界各国で大きな喫煙率低下効果があることが証明されています。
3.未成年者は成人よりもタバコ値上げによる消費抑制効果が大きく、タバコの大幅値上げによって喫煙開始や喫煙の継続を防止することができるため、未成年者の喫煙を大幅に減らすことが可能です。これはイギリスやカナダで実証済みです。
4.タバコには依存性があるため、小売価格が2〜3倍になっても消費がすぐに1/2〜1/3以下に減ることはありませんから、タバコ税は必ず増収となります。これは欧米各国の経験で証明されています。
(たとえ中長期的に減収していくとしても、タバコによる損失の減滅により、国民経済と福祉向上による減収以上の増益、及び何よりも国民の健康増進が期待されます)
5.タバコ税の増収分は、喫煙が原因となっている多くの疾病の医療費の他、国民へのタバコに関する正しい情報提供、喫煙防止教育などの対策や、タバコ農家の転作支援、タバコ販売店の転業対策やグリーンタバコシックネス*の治療費などの諸費用に優先的に充てるべきです。(*生タバコ葉処理労働者の急性ニコチン中毒)
6.医療経済研究機構の試算によると、タバコ税収2兆円に対して、喫煙による直接の経済的損害は7兆円となり、毎年差し引き5兆円の経済損失がもたらされています(図1)。もし金銭的にこの直接的経済損失を埋め合わせようとするなら、タバコ増税によるタバコ大幅値上が最も妥当な施策でしょう。その場合、1箱1400円が「適正価格」であるという試算※もあり、タバコ1箱1000円以上とすることには合理的根拠があります。(※河野正道.タバコの適正価格について 禁煙会誌2008;3(1):2-3.)(言うまでもありませんが、この試算には、タバコによる早死にや障害によってもたらされる精神的被害および間接的経済損失は含まれていないことに留意する必要があります。)
図1
7.日本たばこ産業(JT)は、たばこの大幅増税に反対するJTコメント(2008年6月11日)
http://www.jti.co.jp/JTI/attention/about_comment.html
の中で、
「2003年、2006年に増税が行われましたが、そのたびに消費の減少が加速し、当初期待された税の増収は実現しておりません。したがって、たばこの担税力は既に限界にきているといえます。今回議論されているような大幅な増税は、大規模なたばこ離れを引き起こすことは必至であり、期待する増収効果が得られるものではありません。」
と述べていますが、実際にはタバコ税率を上げることによるタバコ値上げによって喫煙者の減少以上にタバコの税収増効果が得られます(図2)。さらに、喫煙者の減少によってタバコ関連疾患やタバコ関連医療費の大幅な減少が見込まれ、喫煙者の減少は受動喫煙被害や吸殻のポイ捨てや清掃費用の減少にもつながり、喫煙場所の設置費用なども不要となり、関連する波及効果は計り知れません。また、海外先進国の事例をみても日本のタバコの担税力にまだまだ余力があるのは明らかです。
図2
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080509AT1D080BT08052008.html
これは、タバコ値上げ反対運動を実施したり、今回再び値上げに反対している主旨に反するのではないでしょうか。JTの本心は、喫煙者や国民の健康のことなどどうでもよく、自身の金儲けだけにしか興味がないのは明らかです。便乗値上げの余地があるなら、すべてタバコ税を上げる方に回し、値上げ分はすべて有効活用すべきです。
以上、タバコ価格をタバコ税率を上げることによって1箱1000円以上とすることに支持を表明し、JTの欺瞞を強く非難します。
以 上 |
参考
平成20年度税制改正(租税特別措置)要望事項
(厚生労働省健康局総務課生活習慣病対策室)
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/h20kaisei/kouseiroudou/20j03.pdf
制度名 たばこ対策としてのたばこ税の税率の引上げ
税目 たばこ税
要望の内容
「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」、「健康日本21」及び「がん対策推進基本計画」等を踏まえ、喫煙率の減少のためにたばこ税の税率の引上げを要望する。(たばこ税法第11条)
新設・拡充又は延長を必要とする理由
(1) 政策目的
たばこ税の税率を引き上げることによって、「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」及び「健康日本21」等で提唱されている喫煙率の減少に向けたたばこ対策の推進を図る。
(2) 施策の必要性
○ 平成17年2月に発効した「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」においては、たばこの消費及びたばこの煙にさらされることが死亡、疾病及び障害を引き起こすことが科学的証拠により明白に証明されていること、並びに価格及び課税に関する措置が、様々な人々、特に年少者のたばこの消費を減少させることに関する効果的及び重要な手段であること等が規定されている。また、他の先進諸国と比べて我が国のたばこ価格が低い状況にある。
○ 平成18年度税制改正大綱(自由民主党及び公明党)においては、「近年、国際条約の発効や国民の健康増進の観点から、たばこ消費を積極的に抑制すべきとの指摘も出てくるなど、たばこをめぐる環境は変化しつつある。このような指摘は、財政物資というたばこの基本的性格に係わるものであることから、たばこに関するあらゆる健康増進策を総合的に検討した結果を受けて、たばこ税等のあり方について、必要に応じ、検討する」とされ、平成19年度税制改正において長期検討事項とされている。
○ 「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」の批准国として、たばこ対策を強力に進めていくことが求められている。また、「健康日本21」において、成人の喫煙に関する目標が設定されていることや、「がん対策推進基本計画」においても、たばこ対策が重要な位置づけとされていることを踏まえ、引き続き、たばこ対策を強力に進める必要がある。
(3) 要望の措置の適正性
たばこが健康に悪影響を与えることは明らかであり、たばこ対策は重要な課題として、平成12年より「健康日本21」において、@喫煙が及ぼす健康影響についての知識の普及、A未成年者の喫煙の防止、B受動喫煙の防止の徹底、C禁煙を希望する者に対する禁煙支援の4つを柱として総合的なたばこ対策を推進してきた。その結果、喫煙率の減少はもとより、「健康日本21」に掲げているたばこに関する全ての項目において改善が見られ、一定の成果を上げてきたところである。今後、更なる喫煙率の減少を図っていくためには、「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」でも指摘されているとおり、これまでの取り組みに加え、成人喫煙率の減少のみならず、特に未成年者の喫煙防止に効果的なたばこ税の税率の引上げが必要である。
これまでの政策効果 −
政策の達成目標
喫煙率を減少させることで、たばこの健康に与える悪影響を低減させる。
予算上の措置の要求内容及び金額
平成20年度概算要求において、たばこ対策関係予算として、451百万円を要求している。
上記の予算上の措置と要望項目との関係
たばこの健康影響に関する普及啓発等を行うとともに、成人の喫煙率の減少、未成年者の喫煙防止に効果的なたばこ税の税率の引き上げを行なう。
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参考
先進国の最近のタバコ価格(マルボロ赤など平均的なタバコ価格)
イギリス 1300円
ノルウェー 1200円
アメリカ(ニューヨーク)1080円
アイルランド 1070円
フランス 830円
オーストラリア 780円
ドイツ 770円
イタリア 640円
日本 300円