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タバコ産業等から資金を受けている人を講師としない要請
平成20年3月3日

 

都道府県健康福祉主幹部長 様

都道府県医師会長 様

NPO法人 日本禁煙学会

理事長 作田 学

162-0063東京都新宿区市谷薬王寺町305201

http://www.nosmoke55.jp/

FAX: 03-5360-6736

 

タバコ産業及びその関係団体から、資金や物資提供・便宜供与を受けている人を禁煙をテーマとする講演会の講師としないようお願いします

 

前略 

 タバコは世界中で6秒間に一人の犠牲者を出し、日本でも、毎年113000人の死亡を招いていると指摘されていることはご承知のことと存じますが、タバコ問題の重大性に鑑み、昨年秋世界医師会が改めてタバコ製品の有害性に関する声明を出しました。

タバコ製品の有害性に関する世界医師会声明(勧告)

http://www.nosmoke55.jp/data/0712wma.html

その中で、タバコ産業からの資金について次のように述べています。

「タバコ産業とその関連団体は、長年にわたってタバコと健康に関するさまざまな観点の研究と報告書作成に資金を出してきた。そのようなタバコ産業の活動に参加した研究者個人あるいは研究機関は、タバコ産業が彼らの出した研究データを、タバコの売込みのために直接活用できないような場合においても、タバコ産業の見かけ上の社会的信頼性を高める役割を果たしてきた。また、このような活動に関与することは、健康増進という医学医療の目標と相容れない重大な利害相反をもたらしている。」

として、

「タバコ産業からいかなる資金も教育的物資ももらわないこと。そして医学校、研究施設、研究者個人に対しても、同様のことを要請する。これは、タバコ産業にいかなる社会的信頼性も与えないためである。」と勧告しています。

 

実は、日本国内でも同様の問題が存在しています。JT喫煙科学研究財団にはJTから多大の寄附金が投入され、JTとは表裏一体の関係にあります。このような財団から研究助成を受けることは、その理由の如何を問わず、国民の生命と健康を犠牲にしたタバコマネーを受け取るのと同じことと言わざるを得ません。しかし、一見タバコ問題を科学的に解明する研究者のようにふるまう医師や関連分野の学者、および学識者の中にも、この喫煙科学研究財団からの研究助成を受けたり、助成研究の選考に関わったりしている人物が多数おり、演者の選考には、細心の注意が必要な現状です。

 

JTは、禁煙治療の保険適用の制度導入時に、中医協のパブリックコメントで、これに強く反対しました。2006年1月、 http://www.jti.co.jp/JTI/attention/20060123.html

 2006年8月からの「健康日本21中間評価」における喫煙率低減目標の設定においても、JTはこれに強く反対し( http://www.jti.co.jp/JTI/attention/about_measure.html )このため厚生労働省はこの低減目標を断念せざるを得ませんでした。

  また2007年5月からの「がん対策推進基本計画」における喫煙率半減・低減目標設定においても、同様にJTはこれに強く反対し(リンク先:同上)、このため国はこの半減・低減目標を断念しました。

  JTは若者や若い女性(思春期児童や妊産婦も含む)をターゲットにしてタバコ商品を販売し、販拡を続けるなど、国民(とりわけ若い世代)の健康をタバコの危害から守る動きに冷水を浴びせ、タバコによる健康危害を生み出し続けています。

 

 

日本におけるこのような現状を憂慮し、世界医師会の声明に呼応して日本禁煙学会では下記の声明を出しました。

日本禁煙学会の声明「タバコ産業からいかなる資金も受け取るべきではない」

http://www.nosmoke55.jp/action/0712dirtymoney.html

 

また、217日に開催された通常総会で下記の倫理指針を採択いたしました。

【日本禁煙学会及び会員は、タバコマネーとはいっさい関わらない倫理指針】

(1)タバコ製品の有害性に関する世界医師会声明(勧告、2007.10)及び日本禁煙学会の声明(2007.12.10)「タバコ産業からいかなる資金も受け取るべきではない」を踏まえ、日本禁煙学会及び会員は、タバコ会社及びその関係団体・関係者から、直接的または間接的な資金や物資提供・便宜供与を受けない。またこれらが主催あるいは後援・協賛するイベント・催し等には協力しない。

 

【タバコマネーとは関わっていない旨の投稿・学術総会発表規程、及び細則】

(1)日本禁煙学会雑誌に投稿し、あるいは日本禁煙学会学術総会で発表する研究は、国内外のタバコ産業及び関連団体から研究助成を受けていないことを要件とする。

(2)投稿論文および学術総会発表内容に、他機関から研究助成・補助、及び利益・利害相反がある場合は、その内容を明記すること。

 

さて過日、某医師会と行政の共催で禁煙治療に関する講習会が開催されましたが、この講演会の講師のお一人が喫煙科学研究財団から助成を受けておられることが判明しました(参考資料)。主催者側は、「喫煙科学研究財団から助成を受けているものをタバコ対策に参加させてはいけない」という認識はありましたが、自らが選んだその講師が喫煙科学研究財団から助成金を受けていたことを把握していませんでした。それほど、間違えやすいのが実態です。私どもは、医師会及び行政の健康関連部局はその催し、とりわけ禁煙推進や禁煙治療に関わる講演会やシンポジウムで、タバコ産業及びその関係団体から、資金や物資提供・便宜供与を受けている人物を講師とすべきではないと考えます。

また「タバコが健康のみならず、社会、経済及び環境に及ぼす影響が破壊的であること(FCTC)」を熟知している禁煙推進や禁煙治療に携わる人々には、資金を受け取らないだけでなく、その意味を医療関係者はもちろん一般の人にも啓発していく義務があると考えます。

上記のとおり、タバコ産業からの資金を受け取ることの問題点が指摘されていますので、都道府県、都道府県医師会におかれましても、今後はタバコ産業及びその関係団体から、資金や物資提供・便宜供与を受けている人物を講師としないよう十分ご留意いただきますようお願いします。

なお、喫煙科学研究財団の関係者あるいは助成者のリストは日本禁煙学会が把握しておりますので、いつでもお尋ねください。

草々