2008年2月7日 |
WHO10億人の命を救うタバコ対策実施を呼びかける新たな世界保健機関報告書発表にあたって |
WHO
10億人の命を救うタバコ対策実施を呼びかける
新たな世界保健機関報告書発表にあたって
NPO法人 日本禁煙学会
理事長 作田 学
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ホームページ http://www.nosmoke55.jp/
2008年2月7日に世界保健機関(WHO)は、タバコ対策に関する画期的な報告書「WHO Report on the Global Tobacco Epidemic, 2008」を発表しました。
(世界保健機関報告書WHO Report on the Global Tobacco Epidemic, 2008はwww.who.int/tobaccoからダウンロードできます。)
その報告書は、タバコが世界における予防可能な最大の死亡原因であること、しかし、すべての国が有効性の確かめられた諸対策を実行するなら完全に防止できると述べています。この報告書はまた、世界の国々がタバコによる健康破壊を食い止めるために行ってきた活動を包括的に紹介し、多くの国におけるタバコ対策の取り組みが不十分であることを指摘しています。WHOが推奨する主要な諸対策がひとつでも実施された地域に住む人は全地球人口の5%に過ぎません。
わが国では、2000年には11万4千人の命がタバコ(能動喫煙)により奪われたと推定されており*、それまでの増加傾向から推測すると2008年には15万人を超す可能性があります。タバコによってもたらされたこのような重大な健康被害をなくすために、日本禁煙学会は、タバコの有害性についての情報の普及、受動喫煙防止、禁煙治療推進、タバコ規制枠組み条約の実践、国際活動等を行ってきました。(*http://www.health-net.or.jp/tobacco/risk/rs410000.html)
「WHO Report on the Global Tobacco Epidemic, 2008」によれば、世界全体で毎年540万人がタバコによって殺されており、今後さらに増えると予測されています。さらに、報告書は今後10年間で世界のタバコによる死亡の80%以上が発展途上国において発生すること、今すぐ対策を講じなければ21世紀には10億人がタバコによって殺されると警告しています。
日本禁煙学会は、これまでの禁煙推進の活動をさらに強化する必要があることを認識しており、今回のWHO報告書は10億人のタバコによる死亡を防ぐ重要なロードマップとなると確信しています。
幸いなことに、タバコによる健康被害を食い止めることはやろうと思えば十分可能であり、そのために何をやればよいかもわかっています。WHOは6つの有効で費用のかからないタバコ使用低下対策を提起しました。
1. タバコ使用率の調査ならびに防煙と禁煙を柱としたタバコ対策の評価
2. すべての職場と公衆の集まる場所の完全禁煙を義務付けた法律を制定してすべての人々を受動喫煙から守る
3. 禁煙したい人に対する禁煙サポートの提供
4. タバコが危険であることが一目でわかる写真やイラストで強烈に訴えかける警告表示ならびに説得力のある持続的なメディアキャンペーンを用いてすべての人々を警告し効果的に教育する
5. タバコの広告・宣伝・スポンサー活動および「ライト」「低タール」などの誤解を誘う言葉をタバコ製品につけることを法律により包括的に禁止し徹底させる
6. タバコ税増税によってタバコ製品の小売価格を上げる
この報告書が推薦する対策は、すべて少ない費用で最大の効果が上げられることが科学的に証明されており、2005年に国際法として発効したタバコ規制のための国際的条約である「タバコ規制国際枠組み条約(FCTC)」にもうたわれています。FCTCの批准国は現在までに152カ国に達しています。しかし、WHOは、これらの対策のうちひとつでも実施されている国に暮らす人々は全世界の人口のわずか5%に過ぎないと指摘しています。
2004年にFCTCを批准したわが国には、2010年までにすべてのタバコの宣伝・広告・スポンサー行為の禁止を実行するなど多くの条約上の義務が負わされていることに注意を喚起したいと思います。
全世界に広がったタバコという人災を解決する効果の確認された対策があるにもかかわらず、発展途上国にタバコが広がりつつあるのは、単に発展途上国の人口が増えたからではなく、タバコ産業が強力に巧妙にタバコを売り込む活動を行っているためです。
タバコは毎年10数万人の命を奪うだけでなく、受動喫煙により数千万人の非喫煙者の生命と健康を脅かしています。さらに経済にも大きな悪影響をもたらしています。医療経済研究機構**によれば、1999年のわが国のタバコ税収は1兆円台ですが、喫煙による経済損失は7兆円台にのぼることを指摘しておかなければならなりません。(**http://www.ihep.jp/publish/report/past/h13/h13-6.htm)
やるべき課題は多いのですが、国際的なタバコ対策にはますます大きな支持が寄せられています。今年に入り、フランス・トルコ・タイでは、強力な受動喫煙防止法が施行されました。さらに、ブラジル・タイ・ベルギー・オーストラリア・カナダでは、タバコのパッケージにイラストや写真を用いた警告表示がなされ、喫煙者にタバコ使用の害をしっかり伝えることができるようになりました。
わが国においても、WHOの報告書に沿い、以下のタバコ対策を早急に実行する必要があります。日本禁煙学会がこれらの実現を目指し活動を強化するのは言うまでもありませんが、多くの団体個人の方々の協力なしには成功しない課題でありますので、皆様の御支援をよろしくお願いいたします。
1. すべての屋内施設の完全禁煙を義務付ける受動喫煙防止法の制定
2. 日本におけるタバコ規制対策の最大の障害となっている「たばこ事業法」の廃止
3. すべてのタバコ広告・販売促進活動・スポンサー活動の禁止
4. タバコ税の大幅増税
5. 禁煙希望者へのサポートの充実
6. 最大の健康危険因子であるタバコ対策を中心にすえた医療予防対策の確立
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