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日本政府のFCTC第11条履行義務違反に対する抗議文 |
約束した期限を過ぎても第11条:タバコ警告表示の抜本的改善義務を果たさなかった
日本政府のタバコ規制国際枠組み条約違反に抗議する
2008年2月27日
NPO法人日本禁煙学会
日本では、3年前の2005年2月27日にタバコ規制国際枠組み条約(FCTC)が発効した。FCTCは条約発効後3年以内にタバコのパッケージに目立つ有害警告を表示する義務(第11条:下記【参考】参照)を締約国に課した。日本政府は国際社会にその義務を誠実に実行する義務を負った。しかし約束期限の2008年2月27日現在、日本政府は、第11条の義務を果たしていない。
日本禁煙学会はFCTCの誠実な履行を求めて、2006年10月に政府に対し@タバコパッケージの両面の半分の面積と側面に画像を含む大きく明瞭な健康警告表示を義務付ける、Aタバコ銘柄名にライト・マイルド等の害を小さく見せる表現を禁止する、B自販機の前面及び側面両面に健康警告表示を義務づける措置等の誠実な実行を申し入れた。われわれは国内外の世論に反し国際公約を反古にした日本政府に強く抗議する。
世界保健機関(WHO)が2008年2月7日に発表した「WHO Report on the Global Tobacco Epidemic, 2008」は、@世界全体で毎年540万人がタバコによって殺されている、A今後10年間で世界のタバコによる死亡の80%以上が発展途上国において発生する、B今すぐ対策を講じなければ21世紀には10億人がタバコによって殺されると警告している。
日本禁煙学会は、この事態を食い止めるためにWHOが提起した以下の6つのタバコ使用低下対策の実施を強く支持する。
@喫煙率調査ならびに防煙と禁煙を柱としたタバコ対策の評価
Aすべての職場と公衆の集まる場所の完全禁煙を法律で義務付けすべての人々を受動喫煙から守る
B禁煙サポート
Cタバコが危険であることが一目でわかる写真やイラストで強烈に訴えかける警告表示ならびに説得力のある持続的なメディアキャンペーンを用いてすべての人々を警告し効果的に教育する
Dタバコの広告・宣伝・スポンサー活動および「ライト」「低タール」などの誤解を誘う言葉をタバコ製品につけることを法律により包括的に禁止し徹底させる
Eタバコ税増税
これらの対策のうち、CとDはFCTC第11条に関するものであり、タバコパッケージの警告表示・ブランド名をFCTCに沿って改善・規制することがタバコ対策の前進のための緊急課題となっている。
FCTC第11条の完全実施がタバコ対策に大きな効果を持つことは多くの研究で明らかになっている。国際健康増進教育連合(International Union for Health Promotion and Education)の2004年の研究は、タバコパッケージに目立つ有害警告メッセージを表示することが喫煙の健康リスクを自覚し禁煙への意欲が増すことを明らかにした。タバコ規制対策評価研究(Tobacco Control Policy Evaluation Survey)の一環として2005年に実施された国際比較調査によれば、喫煙の害を具体的に目に見える形で描いた警告表示の方が喫煙の危険性がしっかり認識されることがわかった。また多くの調査で、文字だけの表示よりも図や写真を用いた警告表示の方がはるかに効果的であることが証明されている。一般住民はもちろん喫煙者の間でも、大きな警告表示を支持する声が過半数であることから、写真や図を用いた有害警告表示を採用する国*は増えつつある。(*オーストラリア・ベルギー・ブラジル・カナダ・チリ・香港・インド・ヨルダン・ニュージーランド・パナマ・ルーマニア・シンガポール・タイ・イギリス・ウルグアイ・ベネズエラ)
日本禁煙学会は、予防可能な喫煙による死亡をなくすために、FCTC第11条の早急な完全実施を日本政府に強く求める。具体的には以下を要求する。
· タバコパッケージの両面の半分の面積と側面に画像を含む大きく明瞭な健康警告表示を義務づけること
· ライト、マイルド等の喫煙の害を小さく見せるブランド名を禁止すること
· タバコ自動販売機の前面及び側面両面に健康警告表示を義務づけること
· FCTC第11条を誠実に実行する義務を怠ったことに関する反省と早急な実施の意志を表明すること
【参考】タバコ規制国際枠組み条約(FCTC)第11条(タバコ製品の包装及びラベル)
1. 締約国は、この条約が自国について効力を生じた後三年以内に、その国内法に従い、次のことを確保するため、効果的な措置を採択し及び実施する。
(a) タバコ製品の包装及びラベルについて、虚偽の、誤認させる若しくは詐欺的な手段又はタバコ製品の特性、健康への影響、危険若しくは排出物について誤った印象を生ずるおそれのある手段(特定のタバコ製品が他のタバコ製品より有害性が低いとの誤った印象を直接的又は間接的に生ずる用語、形容的表示、商標、表象による表示その他の表示を含む。)を用いることによってタバコ製品の販売を促進しないこと。これらの手段には、例えば、「ロー・タール」、「ライト」、「ウルトラ・ライト」又は「マイルド」の用語を含めることができる。
(b) タバコ製品の個装その他の包装並びにあらゆる外側の包装及びラベルには、タバコの使用による有害な影響を記述する健康に関する警告を付するものとし、また、他の適当な情報を含めることができること。これらの警告及び情報は、
(i) 権限のある国内当局が承認する。
(ii) 複数のものを組合せを替えて表示する。
(iii) 大きなもの、明瞭(めいりょう)なもの並びに視認及び判読の可能なものとする。
(iv) 主たる表示面の五十パーセント以上を占めるべきであり、主たる表示面の三十パーセントを下回るものであってはならない。
(v) 写真若しくは絵によることができ、又は写真若しくは絵を含めることができる。
2. タバコ製品の個装その他の包装並びにあらゆる外側の包装及びラベルには、1(b)に規定する警告に加え、タバコ製品の関連のある含有物及び排出物であって国内当局が定めるものについての情報を含める。
3. 締約国は、1(b)及び2に規定する警告その他文字による情報をタバコ製品の個装その他の包装並びにあらゆる外側の包装及びラベルに自国の主要な一又は複数の言語で記載することを要求する。
4. この条の規定の適用上、タバコ製品に関する「外側の包装及びラベル」とは、当該タバコ製品の小売販売に使用されるあらゆる包装及びラベルをいう。
以上