JR東海に対するN700系車両全面禁煙の要請
2007年10月26日
JR東海

会長 葛西敬之様
社長 松本正之様

新幹線鉄道事業本部長様
取締役広報部長 宮澤勝己様

本社 〒4506101 名古屋市中村区名駅一丁目14号(JRセントラルタワーズ)

本社(東京) 〒1088204 東京都港区港南二丁目185号(JR東海品川ビルA棟)

新幹線鉄道事業本部 〒1000005 東京都千代田区丸の内一丁目91号(丸の内中央ビル)


NPO法人 日本禁煙学会 理事長 作田 学
162-0063 東京都新宿区市谷薬王寺町30-5-201
FAX 03-5360-6736
http://www.nosmoke55.jp/

JR東海の進めているN700系車両を全面禁煙としてください。

私たちは個人会員1300人を超える医師・弁護士などの団体で、日夜、禁煙を推進しております。

 

1) JR東海は、東海道・山陽新幹線を全面禁煙化する代わりに、将来の主力になるN700系車両の371015号車に喫煙ルームを設置しておりますが、喫煙ルームへの人の出入りによって、タバコ煙が客室内に漏れ、この4両が喫煙車並にタバコ汚染されていることが報告されております。

 また種々の研究によって実証されている通り、喫煙車からのタバコ煙の流出によってその両隣の車両が禁煙車であっても、実質上喫煙車と同様タバコ煙汚染されてしまいます。従って、N700系車両では本当の禁煙車はわずか4両しかないことになり、現在主流の700系車両(名目上の禁煙車は12両、本当の禁煙車は7両) に比べて改善どころかむしろ改悪になっております。

http://tenji.med.uoeh-u.ac.jp/smoke/documents/0710PublicHealth-JR_000.ppt(19.7MB)

 

2) 本年6月にタイのバンコックで行われたFCTC(タバコ規制枠組み条約)のCOP2(第2回締約国会議)で日本も含め満場一致で採択された第8条(受動喫煙防止)のガイドラインがあります。このガイドラインによれば第22項で報酬を得るために一般市民を運ぶすべての乗り物を含むとあり、当然のことながらJR東海の車両はすべて受動喫煙を防止する策を取らねばなりません。

 そして、第25項に受動喫煙には安全レベルはない。また第一回FCTC締約国会議で承認されたように、換気、空気清浄装置、喫煙区域の限定などの工学的対策は、受動喫煙防止対策にならないとあります。

 またこの措置は罰則を伴う必要があるとしています。

 

3) 海外の鉄道禁煙事情ですが、既に全面禁煙となっているアメリカ・カナダ・イギリス・フランス・スイス・イタリア・スペイン・オーストラリア・ニュージーランド・韓国・台湾・タイに加え、この9月1日よりドイツ国内が車両全面禁煙となりさらに駅構内やホームの喫煙ゾーンまで廃止される計画が進んでいます。国際航空機ですら,全面禁煙となっていて,トラブルは特にはないのですから,それよりも乗車時間の短い新幹線で全面禁煙が出来ないはずはありません。まして日本を代表する新幹線だけが諸外国に比べ、タバコ臭いことで良いのでしょうか。

 

4) このように厳しく法律を定めなければならないとしている理由は、一言で言えばFCTC81項にあるように、締約国は、タバコの煙にさらされることが死亡、疾病および障害を引き起こすことが科学的証拠により、明白に証明されていることを認識することにあります。発癌物質は粉塵や臭いなどが無いところへも拡がるのです。多くの発癌物質は無色・無臭です。たとえば、平地で一人の人が吸うと、半径4メートルの範囲に臭いなどが拡がります。しかしながら、じつに半径7メートルの空間まで発癌物質が拡がるのです。そして誰よりも職員の多くが受動喫煙の害を受けるのです。

 また煙が漏れるだけではなく、喫煙者の呼吸に伴う吐出煙により,他の客はもちろんのこと,乗務員の受動喫煙危害もおこることから,許されないことです。

 

5) 多大な資金導入によって「喫煙ルーム」を作っても結果的に「無駄」となるでしょうから,今の内に「喫煙ルーム」導入は撤退・中止とすべきです。

http://jr-central.co.jp/news.nsf/news/2007926-11326/$FILE/n700.pdf

 また、今後はこのような喫煙室を作ることで、多くの裁判が知っているにもかかわらず防止対策をやらなかったという不作為をめぐって争われることでしょう。

 

6) 全面禁煙は,出来れば禁煙したいと願っている多くの喫煙者の禁煙を促す副次効果もあり,これは日本政府の禁煙推進施策にも合致することで,公共の利益のあることです。

 さらに時代に逆行するこの「喫煙ルーム」導入拡大は,航空機との競争が一因とされていますが,乗客の健康と安全・安心を無視した営利一辺倒の方針は指弾されるべきです。むしろこのように危険な新幹線であれば、航空機に乗り換える人も出るでしょう。

 

 以上から、閉鎖空間はすべて禁煙とすることを強く要請します。

  なお、20071130日までにお返事を頂きたく存じます。

 

(参考)

「【コラム・断】JRよ、しっかり分煙せよ」  09/09

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/dan/83540

 東海道・山陽新幹線の新型車両(N700系)は「全席禁煙」が売り物である。しかし、これは名ばかりで喫煙ルームの近くの席を購入すると煙たくって仕方がない。 新型車両は東京発の場合、3号車の前方、7号車の後方、10号車の後方と15号車の前方に喫煙ルームがある。一応、二重扉のようになってはいるが、スモーカーの出入りが多いと、完全に煙を遮断することはできない。先日、東京から大阪に向かうため、旧型車両なら禁煙車である8号車の前方に座っていたら、なにやら煙たいのでびっくりした。7号車の後方に喫煙ルームがあり、そこから煙が流れ込んできていたのだ。 告白すれば40歳まで私は愛煙家だった。医師に「狭心症」と診断されたのをきっかけにタバコをやめた。「タバコをとりますか、命をとりますか」と言われれば「命をとります」というしかない。タバコを断って、かれこれ8年になる。 だから愛煙家の気持ちもわからないではない。東京から博多までは5時間もかかる。「全席禁煙」なら喫煙ルームは必要だろう。全面禁煙にしろとか、そこまで固いことは言わない。 JRに言いたいのは、喫煙ルームをつくる以上は煙の漏れないものをつくれ、ということだ。新型車両で喫煙ルーム付近に座ると、号車の自動ドアが開くたびにモアーッと煙が充満してくる。これでは全席禁煙の意味がない。 乗客の中には妊婦もいれば喘息(ぜんそく)の患者もいるはずだ。全席禁煙だからと安心して乗ったところ、煙がモアーッでは気の毒だ。煙の漏れないような工夫をJRには求めたい。(スポーツジャーナリスト・二宮清純)