禁煙治療(ニコチン依存症管理料)の保険適用に関わる診療報酬改定の要請 |
平成19年(2007年)10月6日
厚生労働大臣 舛添要一様 中央社会保険医療協議会 会長 土田武史様
NPO法人 日本禁煙学会 理事長 作田 学 162-0063 東京都新宿区市谷薬王寺町30-5-201 FAX 03-5360-6736 http://www.nosmoke55.jp/
禁煙治療(ニコチン依存症管理料)の保険適用に関わる 診療報酬改定の要請
2006年4月に制度化された禁煙治療の保険適用は、医療機関と喫煙者・家族だけでなく社会の関心も深く、本会ホームページに掲載している保険適用機関(現時点で約4,900機関で、実数は5,000を超えているかと思われる)のアクセスや問い合わせも多くあります。 → http://www.nosmoke55.jp/nicotine/clinic.html 制度導入の2年後の評価に対する期待や、継続と要件緩和の社会的要請もある現状かと思いますので、後記の【関係資料1】「第104回中央社会保険医療協議会総会(平成19年5月16日開催)での検証部会評価」、及び【関係資料2】「本学会集計の禁煙成功率結果」、また【関係資料3】「本学会の2006年10月内閣府全国規制改革要望」を踏まえ、標記について以下を要請いたします。
記
(1)禁煙成功率の算出には調査時点で治療が終了しているものを対象とすべき。 (報告前年の4月から報告年の3月までの治療終了者、など) (2)受診回数は5回に限定すべきではない。4週と8週の間が開いて喫煙してしまうので、6週も保険が利くようにすべき。 また、現在ニコチンパッチの投与期間が決められていますが、あまりにも画一的。基本は現在のものとするものの、他の疾患の治療のように、もっと裁量が可能な形としていただくと、より禁煙成功者が増えると思います。
(3)最初の禁煙治療後1年を経過していない場合の保険適用不可は合理的でない。1年を経過していない場合も保険適用を認める要件緩和が必要とされる。 (4)タバコが原因の疾病の予防には若年層の禁煙治療が必要であり、ブリンクマン指数(喫煙指数、1日の喫煙本数×喫煙年数)による制限をなくすべき。 この指数は、本制度化のときに要件を厳しくするために出されてきたものと思われ、合理性がなく、ニコチン依存症の治療を妨げ、不当な制約を課している。特にニコチン依存症は早期に治療するほど治療効果が高まるので、本指数が200以下の若年層の禁煙治療の開始が遅れると治療成功率が低下することは明らかであり、このような保険適用外の要件は中長期的に医療費増加を招くことが容易に予見されている。 (5)保険治療対象に入院患者を含めないのは不合理なので、制限を撤廃すべき。 喫煙者の入院患者の治療疾病は、喫煙に関わる要因が多い可能性があり、また治療や手術成績に禁煙が必要不可欠で効果が上がる場合が多いことから、入院患者の禁煙治療は疾病治療と不可分とされるべきで、当然に保険適用とされるべき。 また、入院中は主治医の指導で禁煙することが当然視されており、かつ入院患者の禁煙のインセンティブ(動機)も高く効果的で、退院後も禁煙の持続で治癒と健康増進に寄与することが期待され、なおかつ中長期的な費用効果の点からも医療費減少にも役立つ。 (6)歯科も保険適用に含めるべき。 歯周疾患と喫煙の関連性は既に明らかにされており、動脈硬化や糖尿病悪化等諸疾患にも関わっていることが国際的にも明らかにされてきている。歯周疾患は本人も目で見ることができることからも禁煙治療の効果が大きい。歯科が保険適用外であることで、歯周疾患の治療と悪化防止からも効果が期待される臨床の機会が損なわれていることの改善が必要である。
(7)禁煙治療に係る専任の看護師又は准看護師を1名以上配置している要件の撤廃・緩和が必要。 (8)ニコチン依存症の治療薬(パッチ)の10、20がOTC化(薬局販売)され、30はされない可能性があるようですが、ニコチン依存症は依存性が強い疾病で治療が必要なので、医療機関でこれら10、20のパッチも保険適用処方薬として残していただくべきかと考えます。これはニコチンガムについても同様かと考えます。 特に上記(4)項に関連しますが、若年層や女性では最初からパッチ20や10を処方するケースもあることから、これらがOTC化により保険適用外になれば、折角の禁煙治療制度の効果が部分的なものにとどまることになり兼ねません。
【関係資料1】 第104回中央社会保険医療協議会総会(平成19年5月16日開催)での検証部会評価 「平成18年度診療報酬川改定の結果検証に係る特別調査(平成18年度調査)の結果について http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/05/dl/s0516-5a.pdf 3 「ニコチン依存症管理料算定保険医療機関における禁煙成功率の実態調査」の結果について (5)検証部会としての評価 ニコチン依存症の治療の効果に関しては、指導終了3ケ月後に「禁煙継続」と「失敗」がそれぞれ約3割である。しかし、患者数の最も多い禁煙指導を5回受けた患者に限定すれば指導終了3ケ用後に「禁煙継続」が58.9%、「失敗」が21.6%であったことから一定の治療効果があると認められる。 今後、更に専門家の意見も踏まえつつ、平成19年度に行われる継続調査においてより長期間で禁煙指導の効果がどの程度持続するのかを明らかにする必要がある。また、これらの結果を国際比較することも重要である。 さらに、指導の回数が多いほど、禁煙継続率が高い傾向が認められることから、禁煙指導が途中で中止されないような工夫を検討することも必要である。」
【関係資料2】 日本禁煙学会集計の禁煙成功率結果 「日本禁煙学会として、学会が認定した禁煙治療専門医による保険診療開始後の治療成績を、本年6月に調査し、成功率を算出した。平成18年6月から平成19年3月の間に禁煙治療を終了した例を対象にした。受診回数は必ずしも5回に限定せず、禁煙に成功した後、外来において1ヶ月は経過を追い確認した例を含めた。 その報告症例数は1627例で、禁煙成功率は男性が688例 / 1181例の58.2%、女性は192例 / 446例の43.0%であった。」
【関係資料3】「2006年10月の内閣府全国規制改革要望」 http://www.eonet.ne.jp/~shiryo/kiseikaikaku0610.htm ・禁煙治療の保険適用においてブリンクマン指数200の要件を削除する http://www.eonet.ne.jp/~shiryo/kiseikaikaku0610.htm#RANGE!A34 http://www.eonet.ne.jp/~shiryo/kiseikaikaku0610.htm#RANGE!A36 http://www.eonet.ne.jp/~shiryo/kiseikaikaku0610.htm#RANGE!A38 |