萩本欽一氏のウルトラマラソンに関する日本禁煙学会の見解
2007年8月16日
日本禁煙学会 理事長
作田 学
162-0063 新宿区市谷薬王寺町30-5-201

このほど日本テレビでは萩本欽一氏にウルトラマラソンをおこわなせる企画を検討していると聞き、つぎのような見解を広報する。


1. 66歳のヘビースモーカーに酷暑の中で70kmのウルトラマラソンを行わせるこの企画は、医学的に見てきわめて非常識である。
2. 全国民に感動と生きる勇気を与えたいというこの国民的タレントの気持ちは理解できるが、それをウルトラマラソンという形で表す事は、上記の理由によりきわめて不適切である。
3. 自らが禁煙して全国民に禁煙のメッセージを送ることによって、欽ちゃんの気持ちはじゅうぶん生かすことができる。
4. 日本禁煙学会は、欽ちゃんがこれからも元気で長生きし全国民に夢を届ける活動がつづけられるよう、この機会に禁煙を実行することを強く望む。
以上



 到着し、安堵いたしました。直ちに入院して、医師の診察をあおいで頂きたいと思います。
 それとともに、老人をこのように虐待するとは、怒りとともにじつにひどい番組だと思います。

2007年8月19日
NPO法人 日本禁煙学会 理事長
作田 学



- お問い合わせにお答えして -
なぜ日本禁煙学会が非常識と言ったのか
2007年8月24日
1.なぜ日本禁煙学会が非常識と言ったのか。

高齢(66歳)、酷暑、喫煙の三拍子がそろう可能性があったこと。

2.なぜ喫煙するとマラソンに悪いのか。

 a. 若い頃から喫煙していると約10歳よけいに年をとることになる。
 b. ヘマトクリットが上昇し、血液がどろどろになる。この結果梗塞をおこしやすくなる。
 c. HDLコレステロールが低下することによって動脈硬化を起こす。
 d. 交感神経が刺激され、高血圧になる。その結果、血管が破綻しやすい。
 e. 血管内皮が障害されるため、内皮由来の一酸化窒素産生が低下し、内皮依存性の血管拡張が障害される。これは血管攣縮の原因となる。
 f. COPDが発症すると、息切れ・咳・痰が見られるようになり、運動時の呼吸困難を生じる。
 結局、a〜eで心筋梗塞・脳梗塞など血管障害のリスクが高まる。またfで持久性の運動が困難になる。
図1図2、および喫煙学(南山堂)、タバコ病辞典(実践社)を参照)

3.なぜ今回は、完走できたのか。

1. たまたま冷涼な気候であった。最高気温も20度台に下がった。
2. 本当のウルトラマラソンではなく、70Kmのなんちゃってウルトラマラソンであった。
3. したがって、走る必要がなかった。
4.  日本テレビのバックアップが万全の体制であった。(数人が一緒に走り、大きなバスが並走し、休憩所が所々に設けられ、信号待ちでは車いすに乗るなど)
図3を参照)

今回はたまたまうまくいったが(それでも24時間を大幅に過ぎたが)、このような無謀な試みは二度とやらないでいただきたい。


図1.運動に関する指針
(日本体育協会(1994) 熱中症予防のための運動指針より)



図2.環境省熱中症予防情報サイトより



図3.運動と突然死