タバコ規制枠組み条約第21条の規定により提出された
日本の条約履行状態に関する最初の報告書について

 2005年2月27日に発効したWHOタバコ規制枠組み条約第21条によると、参加国は条約発効後2年以内に最初の報告書を提出することになっています(その後、5年目、8年目にも報告することになっている)。その報告書が公開されましたので、ここに紹介します。なお、今回、日本が提出した報告内容に関して重大な疑義があり、コメントを下記に掲載します。

参加国の報告書一覧
http://www.who.int/tobacco/framework/cop/party_reports/en/index.html
日本が提出した報告書(PDFファイル211KB)
http://www.who.int/tobacco/framework/cop/party_reports/japan_report.pdf


FCTC(たばこ規制枠組み条約)の日本国のレポートについての問題点
(赤字がコメント)
2007年6月18日  日本禁煙学会

5. 立法、行政指導などの方法をとったか。

8.2 タバコ煙からの保護

建物内部の勤務場所

     政府の建物      Partial

     病医院        Partial

     学校         Partial

     個人の仕事場     Partial

     その他        Partial

公共輸送機関          Partial

建物内部の公共の場所      Partial

     文化施設       Partial 

     バー、ナイトクラブ  Partial   *

     レストラン      Partial

     その他        Partial

 

健康増進法25条は、罰則規定がない。また施設長の責任となっている。公共の場所は一部で,特に個人の仕事場、レストラン、バー・ナイトクラブなどではほとんど守られていないのが現状である。早急に罰則規定を法制化するべきであるが、申し入れをしても、その必要はないという態度である。

 

健康増進法第5章第二節 受動喫煙の防止

第25条 学校,体育館,病院,劇場,観覧場,集会場,展示場,百貨店,事務所,官公庁施設,飲食店,その他の多数の者が利用する施設を管理する者は,これらを利用する者について,受動喫煙(室内またはこれに準ずる環境において,他人のタバコの煙を吸わされることをいう.)を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない.

(健康増進法第25条の)「その他の施設」とは、鉄軌道駅、バスターミナル、航空旅客ターミナル、旅客船ターミナル、金融機関、美術館、博物館、社会福祉施設、商店、ホテル、旅館等の宿泊施設、屋外競技場、遊技場、娯楽施設等多数の者が利用する施設を含むものであり、同条の趣旨に鑑み、鉄軌道車両、バス及びタクシー車両、航空機、旅客船などについても「その他の施設」に含むものである。(2003430日 厚生労働省健康局長通達)

 

次の事について、法制化あるいは行政指導などの方法をとったか。

タバコのパッケージとラベルについて

11.1(bi) 健康警告が所管官庁により、許可されているか  Yes

11.1(bii) 健康警告は交替制か              Yes

11.1(biii) 健康警告は大きく、クリアで良く見え、良く読めるか Yes

11.1(biv) 健康警告は30%を下回らない面積か      Yes

11.1(biv) 健康警告は50%を下回らない面積か       No

11.1(bv)  健康警告は絵あるいは絵文字かあるいは含むか  No

11.2   包装あるいはラベルは内容物あるいは放出物を適切にあらわすことを要求しているか Yes

 

 健康警告は読みにくい、細かい字体で書かれており、実際に何が書いてあるか読んでいる人は少ない。また子どもたちにはむずかしい字が読めないこともある。したがって、健康警告の意味をなしていない。

 

タバコの広告、販売促進、スポンサーシップについて

13.2   包括的なタバコ広告、販促、スポンサーシップを禁じているか  答えなし

13.3   すべてのタバコの広告、販促、スポンサーシップを制限しているか  Yes

13.4a   タバコ製品のウソの、誤った、誤らせるあるいは間違った印象を与える広告、販促、スポンサーシップを禁じているか                   Yes

13.4b  すべての広告、販促、スポンサーシップにおいて、健康あるいは適当な警告メッセージを要求しているか                         Yes

13.4c  大衆にタバコ製品を買おうとさせる直接あるいは間接的な奨励を制限しているか                                    Yes

13.4d  タバコ産業がまだ禁止されない広告、販促あるいはスポンサーシップを所管官庁に報告することを義務づけているか                    Yes

13.4e  タバコの広告、販促あるいはスポンサーシップををラジオ、テレビ、印刷物、インターネットなどに出すことを制限しているか               Yes

13.4f  国際的なイベントや活動、参加者に対してタバコのスポンサーシップを禁じるあるいは制限しているか                          Yes

 これらタバコの広告、販促あるいはスポンサーシップの制限はタバコ産業の自主規制によって行われている。政府はこれに介在していないので、むしろNOとつけるべきである。

Yes というのなら、法制によって、これらを禁止していくべきである。

 

 あなたは包括的、多面的な国全体のタバコ規制策を策定して実行しましたか?  Yes

 Yesとあるので、おどろいた。どういうタバコ規制策を策定して実行したのか尋ねてみたい。

 

 教育、情報伝達、訓練および公衆に報せること

12a 健康のリスクについて効果的、包括的な教育あるいは公衆に周知させるプログラム Yes

  成人および大衆に対し                           Yes

  こどもおよび若年に対し                          Yes

12b 公衆にタバコを使用するあるいは煙の健康リスクをしらせること、そして禁煙をすることとタバコのない生活の利点をしらせる。                   Yes

12c 公衆に、タバコ産業について広汎な情報を提供する             Yes

12e 公的・私的な部局あるいはタバコ産業と関わりのないNGOの情報を与え、参加させ、タバコ規制のための各部間のプログラムやストラテジーを作り、実行する      Yes

 これらが実際に実行されているとはとうてい考えられない。少なくともNGOに資金を拠出し、このようなプログラムを作ろうとすることがまず最初なのではないか。