「がん対策・喫煙率引き下げ目標」へのJT意見に対する
学会声明および政府への是正指導要請

(内閣総理大臣,厚生労働大臣,財務大臣,農林水産大臣,がん対策推進協議会長あてに提出しました)
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平成19年5月1日

内閣総理大臣 安倍晋三 様
厚生労働大臣  柳澤 伯夫 様
がん対策推進協議会 会長 垣添忠生 様
財務大臣  尾身 幸次 様
農林水産大臣  松岡 利勝 様


JTは国民と厚生労働大臣にウソをついてガン対策を妨害している
「『がん対策推進基本計画』に喫煙者率引き下げの数値目標を盛り込むことに
ついての日本たばこ産業株式会社の意見」に対する日本禁煙学会の声明
及び日本政府への是正指導要請


NPO法人 日本禁煙学会
理事長   作田 学
http://www.nosmoke55.jp/
東京都新宿区市谷薬王寺町30-5-201


1. JTが2007年4月25日に公表した「がん対策推進基本計画」に喫煙者率引き下げの数値目標を盛り込むことについての日本たばこ産業株式会社の意見」 は、虚偽の主張に基づいており、見過ごすことは出来ない。
2. JTの意見の要点は、(1)戦後数十年喫煙率が下がっているのに、日本人男性の肺ガン死亡率が減っていない、(2)喫煙を減らしてもガンが減るかどうか疑問だの2点だが、いずれも国民と厚生労働大臣をだまそうとする主張である(参考資料1)。
3. 意見(1)「戦後数十年喫煙率が下がっているのに、日本人男性の肺ガン死亡率が減っていない」について:公表されている統計資料によれば、日本人男性肺ガン死亡率は1995年頃から減少に転じている。これは1965年頃から始まった喫煙率の低下を反映している。喫煙率の低下と肺ガン死亡率の減少に約30年の差があることは、世界各国の肺ガンの疫学成績と合致する(参考資料2)。
4. 意見(2)「喫煙を減らしてもガンが減るかどうか疑問だ」について:日本人を対象とした学術的に信頼のおける公表済みの複数の調査により、禁煙がガンの発病率と死亡率の減少をもたらしたことが証明されている(参考資料5)。
5. JTは国民と厚生労働大臣をだますために「戦後数十年喫煙率が下がっているのに日本人男性の肺ガン死亡率が減っていない」 「喫煙を減らしてもガンが減るかどうか疑問だ」と主張したと考えられる。なぜなら、資金・情報・人材に恵まれたJTが、客観資料の分析においてこのような初歩的な誤りを犯すはずがないからである。
6. JTはこれまでくり返し虚偽の主張を行ってタバコ対策を妨害してきた。ウソをつかないという最低限の常識に反する行動をやめようとしないJTを市民社会の良き一員と認めることはできない。JTとその利害関係団体をタバコ対策策定作業に関与させることは、国民の健康を脅かすことになるから認めるべきでない。
7. タバコ規制枠組条約(FCTC)は、第五条(一般的義務)第3項で「たばこの規制に関する公衆の健康のための政策を策定し及び実施するに当たり、国内法に従い、たばこ産業の商業上及び他の既存の利益からそのような政策を擁護するために行動する」ことを日本政府に義務付けている。日本禁煙学会は、政府が、JTおよびその支援勢力の妄言に左右されることなく、積極的な禁煙勧告を含む国民のためのガン対策を進めることを強く要請する。

8. 昨年(2006年)11月30日まで行われた以下のガン対策推進の意見募集においては
http://www.mhlw.go.jp/public/bosyuu/iken/p1027-2.html
ガン予防に喫煙対策が重要との意見が多く寄せられた。
 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/01/s0129-9.html
 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/01/dl/s0129-9a.pdf

そして、このパブコメ結果、及びガン患者団体・ガン医療関係者・学会・団体などからのヒアリングと意見交換を基にまとめられた
「がん対策の推進に関する意見交換会」提言(平成19年3月28日)
   http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/03/h0328-3.html
   http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/03/dl/h0328-3a.pdf
   で、「がんの予防においては、たばこ対策が重要である」と提言されていることを踏まえ、ガン患者・家族・ガン医療関係者を含めて、喫煙対策の重要性は国民の声・願いであり、国際的にもエビデンスに十分に裏付けられた事実であるので、
日本政府・厚生労働省、及びがん対策推進協議会は、JTの理不尽な横槍を決して容れることなく、粛々と喫煙率低減の数値目標を進めていただきたい。

9. JTは、喫煙を個人の「嗜好」と言っているが、喫煙はニコチン依存症による「嗜癖」であり、この用語は、既に1999年11月に厚労省のホームページに掲載されている
「たばこ流行の抑制」(世界銀行)
http://www.health-net.or.jp/tobacco/sekaiginkou/Title.html
の訳で、第2章などで、嗜癖(addiction)として、今も載せている。したがって、
  「自らの嗜好・健康観等に基づいてそれぞれが判断すべきもの」
  「個人の嗜好の問題に国家権力が介入して」
の類(たぐい)のJTの不遜な主張・横槍を絶対に許すべきでなく、逆に、今後、JTは「嗜好」でなく、「嗜癖」を使うべきことを、日本政府・厚生労働省として強く申し入れるべきであり、あわせて財務省にもそのようにJTを指導するよう強く申し入れるべきである。

10. 世界第1位のタバコメーカーであるフリップモリスは、
 「健康日本21」中間評価報告書案に対する弊社意見
   http://www.philipmorrisinternational.com/jp/pages/jpn/press/pr_20060915_jp.asp

及び フィリップ モリスは包括的たばこ規制を支持しますU(和訳)
   http://www.philipmorrisinternational.com/jp/pages/jpn/press/speeches/pnixon_20060302.asp
   で、
   「3. 喫煙率の削減目標の設定について
  弊社は、政府が喫煙者に禁煙を促し、そしてそれをサポートしていくことは適切なことである
と考えています。しかし、特定の数値目標の設定については、政府が決定するべきことであ
ると考えます。弊社は、目標値についてではなく、規制がいかにして政府の目標である喫煙
率の減少に寄与することができるかという点に焦点をあてたいと思います。」
と明言しており、JTの非道な主張・横槍は、同種のタバコ会社と思えないほど際立っている。

このようなJTの居丈高な主張・横槍を許せば、ギャラハー社を買収して世界第3位のタバコ会社となったJTは、今後、世界各国で国際摩擦を引き起こし、国際問題を惹起することになり、必ずや国益を損ねることになるだろう。その歯止めのためにも、今回のJTの理由のない要求を、日本政府として決して受け入れることなく、毅然と撥ね返し、JTのその姿勢の是正をこそ指導すべきである。

11. タバコは、JT自身も認めているように、疾病のリスクを高める有害商品であり、それが原因でガンや心臓・循環器疾患、呼吸器疾患などタバコ病で発病し、また死亡した数多くの患者だけでなく、家族の無念さにも思いを致し、自己責任であるとの傲慢な物言いはすべきではない。
そして、有害商品の製造・販売責任者として、もっと謙虚に、国民の健康のために、日本政府の進める喫煙率低減目標に積極的に協力すべきで、そのような姿勢への転換を強く求めたい。

以 上









参考資料


参考資料1


参考資料2


参考資料3



参考資料4



参考資料5



参考資料6



参考資料7



参考資料8



参考資料9