がん対策推進基本計画(案)に関する御意見の募集について(パブリック・コメント)
(2007年5月21日必着) について本学会は以下の意見を送りました。


2007年5月17日送付

がん死亡率の減少のために,タバコ対策の包括的戦略目標が不可欠です

1.「がん対策基本法」の附帯決議十九【がんをはじめとする生活習慣病の予防を推進するため、革新的ながんの予防についての研究の促進及びその成果の活用、喫煙が健康に及ぼす影響に関する啓発及び知識の普及を図るほか、喫煙者数の減少に向け、たばこに関するあらゆる健康増進策を総合的に実施すること】に則り,ガン死亡率の減少のためには,喫煙者数の減少目標が極めて重要です。

2.国立がんセンターの廣橋総長より「がん死亡率20%削減 75歳未満、今後10年目標」で喫煙率の半減などが示されているところ,この半減目標に賛同しますが,タバコ対策のための包括的な抜本的戦略策定が必須です。

3.その具体的戦略として,(1)喫煙者に禁煙を促す社会環境,(2)受動喫煙をなくす社会環境,(3)青少年が吸い始めない社会環境を整える の3点の基本理念を基にして,具体的年次及び数値目標を立てることが不可欠です。

4.その具体的戦略目標として,期限を決めて(5〜10年),以下の目標を提案します。


(1)公共の場・事業所の全面禁煙化(例えば数年以内に目標を設定)

(2)禁煙指導・禁煙治療の適用要件拡充の目標設定(喫煙指数要件の撤廃,入院患者への適用,歯科への適用など)

(3)健康診査や人間ドック受診時に,喫煙者には「禁煙治療」の助言・サポートシステムを導入し,またこれによる禁煙成功者にはインセンティブを設ける(試験運用と評価を経て,順次拡充する目標を設定する)

(4)タバコ税と価格を順次引き上げる(例えば隔年毎に約10%を引き上げ,10年後に約1.6倍の引き上げの数値目標を設定する。現在1箱300円が約480円となる。)

(5)タバコ税引き上げの税収の一部をガン対策等特定財源に充てる目標設定(初回引き上げ時で1年で約1500億円前後の税収増の20%を充てれば年300億円)

(6)タバコパッケージに健康警告のビジュアル表示と50%面積表示を導入(5〜10年以内に目標を設定)

(7)タバコ銘柄名にライト,マイルド等を禁止する目標措置を設定する(たばこ規制枠組条約は第11条で「虚偽・誤認させる表示等で販売を促進しないこと(規制としてライト・マイルドなど含めることができる)」としているのでその遵守をはかる)

(8)たばこ規制枠組条約第13条で「条約発効5年以内に,憲法上の原則に従い,包括的な広告の禁止を行う。その状況にない国は,制限を課する。」となっていて,その趣旨に則り,タバコの広告の全面禁止を10年の目標として設定する

(9)未成年者が自販機及び店頭でタバコを買えない社会システム保証の導入(評価を含め)を目標として設定する

(10)禁煙教育・啓発の充実を目標として設定する(4項の税収増の例えば10%を特定財源に充てる方法もあり得る)

(11)特に家庭内での受動喫煙は子どもの成長後の発ガンリスクがあることからも,例えば毎年10%ずつ減らし,10年後には65%減とする数値目標を設定する


関連報道:がん死亡率20%削減 75歳未満、今後10年目標
http://www.sankei.co.jp/seikatsu/kenko/070508/knk070508000.htm
これまでの議論の過程では、がんによる死亡率を減らすため「喫煙率半減」の数値目標設定なども検討された。喫煙はがんのリスクを高めるとされており、厚労省は昨年末に国民健康づくり運動「健康日本21」の一環としても喫煙率削減の数値目標の設定が議論された。しかし、たばこ業界の猛反発で断念した経緯があり、厚労省が今月18日に提示する基本計画の原案への盛り込みは困難とみられる。

関連意見書:日本禁煙学会は,5/1に以下の声明・意見書を出しました。
http://www.nosmoke55.jp/action/0705jt_hihan.html