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平成19年4月16日
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JT主導の「未成年者喫煙防止キャンペーン」と称する
偽装したタバコ販売促進戦略にだまされないでください
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NPO法人 日本禁煙学会
理事長 作田 学
http://www.nosmoke55.jp/
東京都新宿区市谷薬王寺町30-5-201
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無垢で純真な子ども達、日本の将来を担う子ども達を騙すキャンペーン、成年になったら吸うように誘導する、タバコ販売偽装キャンペーンが大々的に行われています。この種のキャンペーンは、各種の調査でも、喫煙防止どころか「かえって喫煙に興味がわいた」という結果が出ています。これは、巧妙に仕組まれた「偽装したタバコ販売促進戦略」とも言えるでしょう。
(淡路医師会・淡路島全校一斉喫煙状況調査 http://nosmoke.hp.infoseek.co.jp/school/)
タバコ会社は莫大な資金力を有し、医学専門家をやとい、心理学者を使って喫煙行動の心理分析を積み重ねています。たとえば、内部文書の暴露によって、シックスティーン計画というものが明らかにされました。それによると、子供たちを喫煙に誘導するのは、タバコの持つイメージが大切であるということです。
つまり、子供たちは背伸びをしたい、早く大人になりたいという共通した心理傾向を持ちます。しかも禁じられたりすると、それらを犯して、社会に刃向かう自分の姿に優越感を感じるという青年期特有の心理があるのです。
「タバコは20歳になるまで吸ってはいけない。これがルール」という広告は、この意味で非常に練られた戦略です。子供たちが一番いやがる「ルール」という言葉を用いていることに注意すべきです。
フィリップモリス社の役員会の草案には次のように書かれています。
「若者にとってタバコを吸い始めるという行為は、象徴的な意味もあります。すなわち『オレはもうおふくろべったりのガキじゃねえ。タフで、命知らずで、イケてる・・』といった具合です。いずれにせよ、こうした心理的な動機づけが薄れていったとしても、今度はタバコの薬理学的な作用が働くようになり、禁煙は困難になるわけです。」(フィリップモリス社1969年)
「ブランドのプロモーションでは、”仲間意識”や”連帯感”、そして”親密感”といったイメージを強調していく。一方で、”個性”や”自己の尊重”といったイメージも付けていくのだ」(RJ レイノルズ社 1973年)
たとえば、埼玉県K市の未成年者 飲酒・喫煙防止キャンペーンにはこれらが露骨にあらわれています。制服をきちんと着た男の子に「みんなやってるよ。友達と同じことをしなきゃ。かっこいい。やせたいから」と言わせ、これまた制服をきちんと着た女の子に「みんなで飲むと楽しいし。知り合いに勧められるから。少しだけなら平気でしょ」と言わせています。反論はしても、これがタバコ会社が宣伝したいことなのです。タバコを吸うことは猿やネズミでもできることで、かっことは関係ありません。やせるのも不健康なやせ方をするだけ、つまりタバコ毒でやつれるだけです。
しかもズック靴を履いて、高校の制服を乱れず着ているところがミソです。これはすべての未成年者喫煙防止キャンペーンに共通しています。なぜセーターとかジャンパーとかジーンズなど高校生が見てかっこよい姿で話しかけないのでしょうか。 それは写真や図に出ている人が、未熟・従順の象徴でなければならないからです。
肝心なことは、20歳になっても健康を害するタバコには手を出さないでおくことです。喫煙防止を大々的に宣伝して、陰でこっそり自動販売機で売りつけることをしないことです。
未成年者に喫煙をさせない方法は、すでに世界中で知られています。
それは
1.自動販売機を撤廃する
2.タバコの価格を上げる
3.タバコにビジュアルな健康警告をのせる
ことに尽きます。そして、これらはいずれもタバコ会社がすべての力を総動員して、妨害していることです。これだけでも、タバコ会社の姿勢はあきらかです。
偽装したタバコ販売促進策にだまされないでください。ましてや中高校・教育委員会や警察がこれに追随することがあってはならないと考えます。防煙教育の計画・資金拠出・実行にタバコ産業を参加させてはなりません。
(文献)
1) Anne Landman et al.:Tobacco industry youth smoking prevention programs: Protecting the industry and hurting tobacco control.(タバコ産業による未成年者喫煙防止キャンペーンは、むしろ未成年者の喫煙開始を促す効果をあげている)
American Journal of Public Health 2002;92(6):917-930.
2) 日本禁煙学会編: 禁煙学 南山堂 東京 2007
3) 伊佐山芳郎: 現代たばこ戦争 岩波書店 東京 1999
4) 切明義孝、津田敏秀、上野陽子: 悪魔のマーケティング。タバコ産業が語った真実。日経BP出版センター 東京 2005
5)Philip J Hilts: Smoke screen. The truth behind the Tobacco Industry Cover-up. Addison Wesley Reading 1996(タバコウォーズ 早川書店 1998年)
6) Henriksen L et al: Industry sponsored anti-smoking ads and adolescent reactance: test of a boomerang effect. Tobacco Control 2006;15:13-18.
7) Assunta M et al: Industry sponsored youth smoking prevention programme in Malaysia: a case study in duplicity. Tobacco control 2004; 13(supplII):37-42
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