神奈川県の受動喫煙対策アンケートへの妨害に対する抗議文
(日本たばこ産業株式会社社長宛送付)

平成19年2月16日
日本たばこ産業株式会社 代表取締役社長

木村 宏 様

作田 学
NPO法人日本禁煙学会理事長
Japanese Society for Tobacco Control
URL:http://www.nosmoke55.jp/
E-mail
162-0063 東京都新宿区市谷薬王寺町30-5-201


JTは国民の健康を真剣に考えている神奈川県のアンケート調査を妨害してはいけません。今後二度とこの種の活動をおやめ下さい。

 新聞あるいはテレビ報道によれば、JTが「禁煙反対」の組織票をおこない、ネットアンケートに社員を動員したとあります。

「 神奈川県が、公共の場所を全面禁煙にする全国初となる条例の制定について賛否を問うインターネット・アンケートで、日本たばこ産業(JT、東京都港区)が社員を動員し反対の“投票”をさせていたことが14日、わかった。
 先月26日の締め切り直前に、反対が賛成を逆転。県はネットを使わずアンケートをやり直す。 JTは「社員に回答の協力を依頼した」と動員を認め、「条例が成立すれば、ほかの自治体に波及する恐れがあった」としている。 アンケートは昨年12月27日〜1月26日、県のホームページ上で実施。受動喫煙防止に関する設問の中で、「条例で公共の場所の喫煙を規制すること」について、「賛成」「反対」を聞いた。1月20日ごろまでは賛成が反対を大幅に上回っていたが、締め切り2日前になって逆転した。回答は4047人から寄せられた。 JT本社は1月、神奈川県を担当する横浜支店(横浜市西区)などにアンケートへの協力を複数回にわたり依頼、支店から社員全員に伝えたという。社員が、それぞれ担当するたばこ販売店にも回答を依頼していたとの情報もあり、JTは「調査する」としている。 アンケートは誰でも参加でき、ネット上でアドレスを登録すれば1度回答できる方式だった。松沢成文知事は「システムの改良が必要だ」と話している。」
(2007年2月15日3時4分 読売新聞)

 神奈川県の対策はこういうものでした。  

「神奈川県は受動喫煙対策を強化するため、公共施設での全面禁煙に向けた検討を始める。将来的には条例で喫煙を規制したい考えで、その第一歩として、県民を対象に、禁煙にすべきと考える施設などについて意見を募集する。公共施設での喫煙を規制する条例が制定されれば全国初となるといい、松沢成文知事は二十五日の定例会見で「先進的な喫煙ルールをつくりたい」と意欲を示した。 二〇〇三年五月に施行された健康増進法は、学校や病院など多数が利用する施設の管理者に対し、受動喫煙防止のために必要な措置を講じるよう規定。施設内を完全禁煙にするか、たばこの煙が漏れないよう壁で仕切られた喫煙室を設置することが求められているが、あくまで努力義務で罰則などはない。 これに対し、松沢知事は「努力義務では弱く、全面禁煙にすべき場所もある」と指摘。具体的には劇場、病院、学校を挙げ、「全面禁煙にすればかなりのコンセンサスが得られるのでは」と述べた。また欧米では既に法律で公共の場所を全面禁煙にする国があることなどにも触れ、「国がやらないならば、広域自治体の県が対策を実施すべき」との考えを示した。条例化までの期間については「一、二年はかかる」とした。 県民の意見は二十七日から来年一月二十六日まで、県が十二月から導入したインターネットを活用したアンケート「e-かなネットアンケート」で受け付ける。条例で喫煙を規制することについての賛否や、優先的に規制すべき施設などについて回答してもらう。回答するには登録が必要で、県のホームページにある同アンケートのトップページから登録する。 県健康増進課は「今回のアンケートは予備的なもの。来年度以降、県民、関係団体などから幅広く意見を聞いた上で、条例の必要性も含めて検討していきたい」と話している。」 というものでした。

 これは人口の圧倒的多数を占める非喫煙者の生存権(命と健康)を守る措置であり、日本禁煙学会は全面的に神奈川県の提案に賛成してきました。

 ところで、日本たばこ産業がこの神奈川県の提案に反対するパブリックコメントを組織したと報道されています。
 私たちはこうした日本たばこ産業の行動について以下の見解を持っています。

1. 日本たばこ産業が、非喫煙者の命と健康を守る対策の実現を阻むために会社ぐるみの活動を行ったことは、最も基本的な人権のひとつである生存権を侵害する反社会的行為であるといわざるをえません。
2. さらに、日本たばこ産業が自ら掲げる「行動規範」の第12項(わたしたちは、他人の権利・財産を不当に利用・侵害せず、これを最大限尊重します。)、13項(わたしたちは、社会から疑惑や不信を招くことがないように、透明度の高い健全かつ正常な関係を維持・確立します)、「行動指針」の第28項(環境に配慮した事業活動:環境法令と社内規則を遵守し、すべての事業活動において、環境にやさしい取組みを積極的に行います。)、29項(環境問題と個人の活動:私たちは個人としても環境問題を真摯に受け止め、積極的に取り組みます。)に反しています。
3. 私たちは、国民の目をあざむき企業としての社会的責任を果さない日本たばこ産業の行動を強く非難するとともに、今後とも厳しく監視を行っていきます。