JR特急「しなの」「あずさ」の全車禁煙化要請
(国土交通大臣、JR東日本社長、JR東海社長に送付)(2006/12/11)
→JR東日本からの回答(2006/12/25) →JR東海からの回答(2007/1/4)

国土交通大臣様
JR東日本社長様
JR東海社長様

タバコ規制枠組み条約を批准した政府と
JR東日本,JR東海はあずさとしなのを全車禁煙にすべきです


平成18年12月11日
日本禁煙学会 理事長
作田 学
〒162-0063
東京都新宿区市谷薬王寺町30-5-201
E-mail
URL:http://www.nosmoke55.jp/


1. あずさとしなのでは喫煙車が指定席・自由席にあり,自由席は2?3両しかないにもかかわらずその一両が喫煙車になっています。したがって,混雑時には禁煙席をとれず,喫煙席で堪え忍ぶ妊婦やこどもがいるのが実情であります。とくに松本方面の方々は堪えがたきを堪えていらっしゃいます。
これは実際にお尋ねになってみれば容易にわかることです。

2. ここで問われるのは、政府の姿勢です。特に、タバコによる健康被害を廃絶するために作られた国際条約「たばこ規制枠組み条約」(日本での発効日は平成17年2月27日)を批准した日本政府には、条約の内容を誠実に、かつ迅速に実践する国際的責務が課せられていることに注意を喚起したいと思います。この条約の第8条は、国民を受動喫煙被害から守る積極的な対策を講ずる責務が政府にあることを明示しています。第8条を誠実に解釈し適用するために、各国政府には、喫煙者と非喫煙者を保護するために最大限に可能な限りの幅広い公共の場、職場、電車やタクシーを含む公共交通機関に完全禁煙を広げることが要請されています。政府には閉鎖空間となっているすべての職場と公共の場を例外なく完全禁煙とすべきであると勧告する責務があります。以上のことが行われない限り、すべての市民を受動喫煙という致死性の毒への曝露から保護するという要求を達成することはかないません。

3. 列車の全面禁煙化を求める世論が高まっている現在、もし政府が何の行動も起こさなければ、国際的にはタバコ規制枠組み条約違反、国内的には健康増進法違反という二重の背信を犯すことになります。

いまや,いかに喫煙する人の利便を図るかではなく,はるかに多い,吸わない人たちの健康と人権を守ることこそが一番大切であります。

4. 結論:政府は早急に列車の全面禁煙化を実現する諸措置を講ずるべきですし、JR東日本とJR東海はそのもっとも健康被害のひどい列車の一つであるあずさとしなのを早く禁煙化すべきです。


(注)
タバコ規制枠組み条約
 第8条 たばこの煙にさらされることからの保護
1. 締約国は、たばこの煙にさらされることが死亡、疾病及び障害を引き起こすことが科学的証拠により明白に証明されていることを認識する。
2. 締約国は、屋内の職場、公共の輸送機関、屋内の公共の場所及び適当な場合には他の公共の場所におけるたばこの煙にさらされることからの保護を定める効果的な立法上、執行上、行政上又は他の措置を国内法によって決定された既存の国の権限の範囲内で採択し及び実施し、並びに権限のある他の当局による当該措置の採択及び実施を積極的に促進する。

健康増進法第5章第二節 受動喫煙の防止
第25条
 学校,体育館,病院,劇場,観覧場,集会場,展示場,百貨店,事務所,官公庁施設,飲食店,その他の多数の者が利用する施設を管理する者は,これらを利用する者について,受動喫煙(室内またはこれに準ずる環境において,他人のたばこの煙を吸わされることをいう.)を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない.

厚生労働省健康局長通達(2003年4月30日)
(健康増進法第25条の)「その他の施設」とは、鉄軌道駅、バスターミナル、航空旅客ターミナル、旅客船ターミナル、金融機関、美術館、博物館、社会福祉施設、商店、ホテル、旅館等の宿泊施設、屋外競技場、遊技場、娯楽施設等多数の者が利用する施設を含むものであり、同条の趣旨に鑑み、鉄軌道車両、バス及びタクシー車両、航空機、旅客船などについても「その他の施設」に含むものである。
http://nosmoke.hp.infoseek.co.jp/card/



JR東日本からの回答
(2006/12/25)

NPO法人日本禁煙学会 理事長 作田 学様

 拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます.
 平素は弊社をご利用賜りまして,誠にありがとうございます.このたび作田様から頂戴いたしました弊社宛のお手紙につきまして,弊社のサービス全般を担当いたしております私よりご回答を申し上げます.
 弊社では,たばこを吸われるお客さまと吸われないお客さま双方が,快適にご利用いただけるよう,分煙を基本的な考え方として,さまざまな取り組みを行ってまいりました.このようななか,2003年5月の健康増進法の施行を機に,受動喫煙の防止対策など,社会の禁煙志向が急速に高まってきたことから,2004年3月のダイヤ改正より,新幹線や優等列車の喫煙席の設定を,原則として指定席1両と自由席1両といたしました.しかしながら,列車内は密閉された限られた空間であり,完全な分煙を実施することが困難であることから,昨年12月のダイヤ改正で,比較的乗車時間の短い長野新幹線「あさま」,「成田エクスプレス」,房総特急を全面禁煙としたところでございます.その後,列車内の全面禁煙の拡大を求める要望も数多く頂戴しているため,2007年3月18日のダイヤ改正より,新幹線及びご指摘のございました「特急あずさ」を含む弊社管内を相互発着する在来線特急列車を全面禁煙とさせていただくことになりました.
 JR東海の所有車両を使用しております「特急しなの」につきましては,2007年3月18日のダイヤ改正より禁煙車を増やすことになっております.弊社といたしましては,全面禁煙化に向けて引き続き関係各社と協議してまいりますので,何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます.
 今後とも,みなさまに愛され親しまれるJR東日本を目指してまいりますので,引き続きご愛顧賜りますようお願い申し上げます.
 末筆ではございますが,作田様のご健康とますますのご活躍をお祈り申し上げます.
敬具
平成18年12月25日 東日本旅客鉄道株式会社
お客さまサービス部次長
西山隆雄



JR東海からの回答
(2007/1/4)

平成19年1月4日
日本禁煙学会
 作田 学様

拝啓
 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます.
 このたび頂戴いたしましたご意見につきまして,ご回答申し上げます.

 列車内での受動喫煙防止に関する基本的な考え方につきましては,不特定多数のお客さまにご利用いただく鉄道事業の特性から,タバコをお嫌いなお客さまと喫煙を希望されるお客さまの双方への配慮が不可欠であり,弊社では「分煙」の徹底を基本としております.

 「しなの」につきましては,昨今の喫煙・禁煙の状況に鑑み,平成19年3月のダイヤ改正時から,自由席車両を全面禁煙とし禁煙車両を増やします.
 具体的には,現在,喫煙車両と禁煙車両が一両ずつある自由席車両は,全車両を禁煙車両といたします.1列車に3両以上ある普通車指定席につきましては,お客さまに予め喫煙車両・禁煙車両を選択していただけることから,喫煙車両を一両引き続き設定いたします.
 また,同ダイヤ改正では,他の特急列車につきましても,禁煙車両を増やします.

 これからもお客さまの動向やご要望などを踏まえつつ,「分煙」の徹底を行ってまいりますので,ご理解を賜りますようお願い申し上げます.
               敬具

                        東海旅客鉄道株式会社 広報部