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学習研究社発行 育児雑誌「おはよう赤ちゃん」 平成18年4月号記事に対する申入れ(2006年11月3日) → 11月7日付で「おはよう赤ちゃん」編集部から誠意ある対応をお手紙で頂きました |
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1.オーストラリアなど広く喫煙の害が周知されている環境では、「授乳中の嗜好品&薬」の記事は正しいと言える。すなわち、喫煙によってニコチンが乳汁中に移行するとしても、母乳の有益性が損なわれるものではない。オーストラリアでは、テレビコマーシャルなどで連日のようにタバコの害を政府の責任で広告している。したがって、オーストラリアではタバコの害を知ってしまったために、ニコチン中毒になった授乳婦が母乳をあきらめてしまわないように母乳育児を呼びかけているという性格が強い。 2.しかし、日本においては、喫煙の害が十分に周知されているとはいえず、同記事を読んだ多くの女性や、乳児を持つ家庭の人たちに、喫煙は安全との誤解を与えかねない。 3.授乳中の喫煙は、乳汁中にニコチンも分泌され、それに由来する乳児の急性毒性も無視できない。すなわち、乳児の不眠、嘔吐、急性のニコチン中毒が起こる危険性を否定できない。 4.さらに、乳児を取り巻く環境のタバコ煙も乳児に多大な障害、健康被害を与える可能性が高いことを周知する文章にする必要がある。 5.基本的に乳幼児がいる家庭、学校、訪れる可能性のある食堂・レストラン、種々の施設はすべて禁煙である必要がある。 6.以上は、母乳を与えることの有用性をいささかも否定するものではない。しかし、それを上回る喫煙、環境のタバコ煙の危険性を見逃してはならない。 「ママにも赤ちゃんにも有害です。でも、喫煙を理由に母乳育児をやめるよりは、多少喫煙しても、母乳を与える方がメリットがあります。禁煙の努力はしつつ、どうしても吸いたい場合は、授乳前は避け、授乳後に屋外で。」 という記述には重大な疑義があり、妊娠・育児にさいしては禁煙するという原則を強調してほしい。 「母親が喫煙する乳幼児の場合、母親が絶対に家の中では吸わない群と、家の中で吸うという群間の毛髪中コチニン量に有意差がない」という報告が最近大勢を占めてい る。つまり、家の外で吸っても中で吸っても乳幼児には同じくらいタバコ煙の毒素が吸収されている。これは、喫煙母の体、呼気、家具、壁、床、寝具についたタバコ煙が原因のようである。だから、禁煙できない母親が「外で吸う」ことは、受動喫煙の害の低減にはならない。 母乳育児は大事だが、禁煙できない母親が家の外で吸うことで、幾分かでも受動喫煙の害が減らせるとアドバイスすることは誤っている。また、別室で吸う、吸ったあと換気をしっかりするというアドバイスも、子供の受動喫煙防止に効果があるかのように巷間に流布されているが、これらの「対策」にもまったく効果がないことは多くの研究で証明されている。子供と接するすべてのおとなが禁煙することが唯一・確実な受動喫煙防止法であることを、未来の母親・父親にしっかり伝えることこそが大事である。 本学会は小児科関連学会も同じような啓発活動を行うように望んでいる。
(参考) 1)受動喫煙の影響についての米国公衆衛生長官報告(2006年6月27日) 結論 この報告書は、1986年の公衆衛生長官報告が論じた受動喫煙を再び取り上げている。その後20年間に、受動喫煙に関する調査研究に数多くの進歩が見られ、膨大なエビデンスが発表された。本報告書は、2004年の公衆衛生長官報告で策定された因果関係の有無を示す新たな用語を用いている。各章ごとにエビデンスの包括的レビュー、適切な場合エビデンスを定量的に統合する作業、調査成績の解釈に影響する可能性のあるバイアスの発生原因の厳密な評価が行われている。本報告書のレビュー結果は、1986年度報告書の結論の正しさを再確認し補強するものだった。非喫煙者のタバコ煙への暴露について、科学的エビデンスに裏付けられた結論を以下に示す。 1. 受動喫煙は、タバコを吸わないこどもと大人の生命と健康を奪う。 2. 受動喫煙は、乳幼児突然死症候群、急性呼吸器感染症、耳の病気、重症気管支喘息のリスクを高める。親の喫煙は、こどもの呼吸器症状を増やし、肺の成長を遅らせる。 3. 大人が受動喫煙に暴露されると、ただちに心臓血管システムに悪影響があらわれる。また虚血性心疾患と肺ガンがおきやすくなる。 4. 受動喫煙に安全無害なレベルのないことが科学的に証明されている。 5. タバコ対策が相当進んだにもかかわらず、アメリカの数千万人のこどもと大人が、家庭や職場でいまだに受動喫煙にさらされている。 6. 屋内における喫煙の禁止により非喫煙者の受動喫煙暴露を完全になくすことができる。分煙、空気清浄機、エアコンディショニングによって非喫煙者の受動喫煙を防ぐことはできない。 |
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