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平成18年5月31日(世界禁煙デー)付で、東京ディズニーリゾート、よこはま動物園ズーラシア、上野動物園、ユニバーサルスタジオジャパン、日光江戸村、東武ワールドスクウェア、とちのきファミリーランド、宇都宮動物園、りんどう湖ファミリー牧場、中央区長(銀座歩行者天国)、船橋中央公民館、船橋市長などにも送付しました。

平成18年(2006年)3月25日
静岡市長 様

                                 日本禁煙学会

   理事長  作田学

  181-8611三鷹市新川6-2-20

 杏林大学神経内科教授室内

  E-mail

  FAX 0422-47-5931

                          URLhttp://www.nosmoke55.jp/

屋外における受動喫煙防止に関する

日本禁煙学会の見解と提言

1.無風という理想状態下で、ひとりの喫煙者によるタバコ煙の到達範囲は直径14メートルの円周内である。複数の喫煙者が同時に喫煙する場合は、この直径が2〜3倍以上となる。

2.屋外と言えども、厚生労働省の室内分煙基準に準じて対策を講じなければ、行政の整合性が確保できない。

3.条例等で屋外喫煙を規制する場合、最低直径14メートルの非喫煙者通行禁止区域円が確保できる場合を除いて、屋外に灰皿を設置すべきでない。

4.壁と天井で囲まれた屋外喫煙室を設置する場合、十分な無害化処理を施してタバコ煙を排出しなければならない。普通このような無害化処理には膨大なコストを要することを銘記すべきである。

5.以上の科学的知見に基づいて判断するなら、屋外の受動喫煙を防止するための行政上の最上の対策は、路上および公共施設敷地内全面禁煙である。

 

<はじめに>

 

本学会がこの提言を発表した理由は、最近少なくない自治体で歩行喫煙禁止の条例が制定されるようになったにもかかわらず、屋外ではタバコの煙はすぐに拡散して薄まるから歩行喫煙を禁止する代わりに歩道の各所に喫煙所(灰皿の設置など)を作ろうという誤った対策を実行する動きが散見されるためです。

  屋外喫煙規制は、これまで、科学的根拠なく進められてきていました。しかしながら,エビデンスに基づく施策が求められております.そこでRepaceの論文(後述)を元に提言を行いたいと思います。


 
 後述するように、受動喫煙をなくするには、屋外で無風状態時最低直径14メートル、風のある実際の状況ではその2〜3倍の広さの非喫煙者立ち入り禁止・喫煙可区域が必要です。テニスコートが縦24メートル、幅8メートルですから、テニスコートが2面以上の広さが必要となります。
 

<厚労省の定めた分煙の条件>

屋外でも、厚生労働省の定めた分煙の条件に従うべきです。

その条件とは、

「屋内における有効な分煙の条件  (1) 喫煙場所から非喫煙場所に環境たばこ煙成分(粒子状物質及びガス状物質)が漏れ出ないこと(非喫煙者の受動喫煙防止)」 (平成14年 新しい分煙効果判定の基準)

http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/06/h0607-3.html

です。

屋内であろうと屋外であろうと、受動喫煙の影響を受けるのは、同じ非喫煙者なのですから。

  • 屋外で、タバコの発がん物質とにおいにさらされないためには、喫煙者から半径7メートル以上はなれる必要があるというRepace論文の結果は重要です。
  • しかし、これは喫煙者ひとり・無風状態での実験である。風があり、喫煙者が数人かたまって喫煙している場合は、さらに2〜3倍の距離が必要です。
  • したがって、屋外で、厚生労働省の考え方に合致する屋外灰皿置き場を作るなら、半径15〜20メートルの円が入る敷地(200〜400坪)が必要です。
  • もし、喫煙小屋を設置するとしても、タバコ煙を完全に無害にして排出するための設備コストは莫大です。
  • これらに要する費用(用地買収・喫煙小屋設置・ランニングコスト)は、きわめて高額となるでしょう。
  • 以上より、健康面から考えても、財政面から考えても、屋外に喫煙施設を作る行政判断は、賢明とは言えません。



<今回の提言の参考論文解説>

上記論文は下記から入手できる。

http://www.repace.com/pdf/outdoorair.pdf

 

Repaceは、米国公衆衛生総監勲章を授与され、米国環境保護局上級政策分析官だった生物理学者で、米国労働省職業安全健康局顧問の経歴を持ち、今までに受動喫煙に関する論文を60篇以上発表している国際的に五指に入る受動喫煙問題専門家です。(ホームページwww.repace.com

 

タバコ煙の粉塵濃度RSPと健康被害の関係

1μg/㎥ タバコ煙臭を感知(

4μg/㎥ 急性健康障害(目・鼻・のどの刺激症状、頭痛、めまい、はきけ)

 

【出典】Junker MH, Danuser B, Monn C, Koller T. Acute sensory responses of nonsmokers at very low environmental tobacco smoke concentrations in controlled laboratory settings. Environ Health Perspect 109:1045-52,2001

 

風のないときタバコの煙の粉塵と発がん物質がどこまでどれだけ届くかの実験

実験結果のまとめ
  • 屋外で喫煙者(1人)の4メートル以内に近づくと、急性の健康被害が起きるタバコ煙濃度となっていた
  • これはあくまでも、風のない理想状態での測定結果であり、風のあるとき、喫煙者が複数なら、もっと離れていても健康被害が起きる
  • タバコの煙のにおいと発がん物質は最低半径7メートルまで届く

この論文の結論

一本のタバコあるいは一人の喫煙者で行った実験の結果、微粒子や発がん物質濃度は、一人か二人に過ぎない喫煙者によるタバコ煙発生源から半径7メートル(23フィート)以内では、バックグラウンドレベルまで低下していなかった。喫煙者がもっと多くなれば、濃度はより高まる。なぜなら、喫煙者の集団により、タバコ煙の発生源が(点でなく)面となり、個々の煙が重なり、風下では、特に濃度の高い煙が薄まらないうちに届くためである。

 受動喫煙は多くの急性症状(目・鼻・のどの刺激症状、頭痛、めまい、はきけ)と慢性疾患(肺ガン、副鼻腔ガン、心臓病)を引き起こす。タバコの煙のそばを歩く学生や教職員は、喫煙者から7メートル以内で煙のにおいを感知し、4メートル以内で刺激症状が出る。

 それだけでなく、建物の出入り口でタバコを吸う喫煙者は、常にタバコ煙を建物の中に送り込むため、急性刺激症状だけでなく、受動喫煙による慢性疾患の危険を室内滞在者にもたらす。したがって、建物の出入り口から6メートル以内でタバコを吸わないよう喫煙者への警告を表示し、離れたところに灰皿を置く必要がある。

また、重症の気管支喘息患者の中には、受動喫煙が発作の引き金となる者がいることがわかっており、建物の出入り口の6メートル以内に喫煙者が集まらないようにする決まりが必要であることを改めて示している。

以上